今回、とんでも側の出番が少ないなぁ。トリオのセリフもかなりムリヤリ入れちゃったし……
~黄巾党のその後~
黄巾党の首領、大賢良師率いる本隊を撃破した雪蓮の勇名は、大陸全土に広がった。江東の麒麟児と噂されるまでになった雪蓮の下には、街の若者達が集まるようになっていた。有力者達へ(今まで売れ残っていた)宝石や貴重な素材を売ると、資金繰りも良くなり、俺達の軍勢はその規模を大きくしていった。そうなれば当然、袁術の目と耳を気にしなくてはいけない。俺達は今まで以上に気を配り、フェル達の事を袁術に悟られないよう気をつけていた。やがて1ヶ月が経過し──。独立に向けて水面下で動き出していた俺達にとっての吉報が、この大陸を駆け巡る。
それは漢王朝滅亡の足音──。後漢王朝第十二代皇帝、霊帝の死去の報だ。黄巾の乱によって無策ぶりと無能ぶりを存分に発揮してしまった後漢王朝。その要である霊帝の死去が奉じられてから、諸侯の動きが活発になる。
大将軍何進と十常侍の確執から始まった混乱劇は、やがて霊帝の後継者たる少帝弁の暗殺に続き、最後には地方領主である董卓の手によって劉協という皇太子が献帝として祭り上げられるに至った。
その内乱の最中、大将軍何進は十常侍に暗殺され、十常侍も何進の副将であった袁紹に殺され……そして十常侍の筆頭だった張讓が董卓に殺され、と血で血を洗う暗殺劇が繰り広げられていた。馬鹿らしく、滑稽でもあるその政争も董卓の手によって一応の鎮静を見たのだが──権力を欲する人間が居る限り、権力争いはどこまでも続き、大陸に嵐を巻き起こす。
大陸全土に吹き荒れたその嵐──反董卓連合の檄文は、割拠し始めていた諸侯の心中にある、野心という名の炎を盛んに煽り立てる。そして、それこそ俺達が望んでいた混乱。独立する為の絶好のチャンスだった──。
俺は冥琳と一度呉へ帰り、3日後に改めて1人でカレーリナに戻った。穏や蓮華も一緒に行きたがったが丁重に断ったよ。冒険者ギルドで買取金を受け取り、再び呉に帰ってきて、事のあらましを聞かされた。
雪蓮
「ふぅ……ただいま」ちょうど袁術の元へ出掛けていた雪蓮も帰ってきたところで、冥琳が尋ねた。
冥琳
「お帰り……首尾は?」
雪蓮
「上々……上々過ぎて拍子抜けしちゃったわ」
向田
「どういう事?」
~雪蓮の回想~
剛が向こうの大陸から帰ってくる日、私は袁術の城にいた。今回は呼び出しじゃなくて、あるモノを見せる為に私から出向いていった訳だけど。
雪蓮
「袁術ちゃん。私のところにこんな檄文が届いたんだけど……そっちには来てる?」
袁術
「檄文?何じゃそれは?」
雪蓮
「貴女の従姉の袁紹からの手紙よ。はい」私は袁紹から送られてきた檄文を渡す。
袁術
「ふむ……では見て進ぜよう。ええと……んと……とうたくは許せないので、みなさん、やぁっておしまいー」
張勲
「あらほらさっさー♪」
袁術
「……なんじゃその掛け声は」
張勲
「いやぁ……何だか言わなくちゃならない気がして……えへへ」
袁術
「バカな事言っとらんで、七乃よ、この手紙を読んでたも。妾は手紙を読むのは嫌いじゃ」
張勲
「はいはーい♪ええとー……ふむふむ……ふんふん……なるほどぉ~」
袁術
「どういう事なのじゃ?」
張勲
「董卓さんが洛陽を制圧しちゃってるから、袁紹さんはそれが許せないみたいですねー。それでみんなで袋だたきにしますわよっ!って言ってます」
袁術
「何じゃそれは……めかけの娘の分際で、妾にこんな手紙を寄越すなんてふざけとるのじゃ」
雪蓮
「……私に来たんだけどね、それ」相変わらず他人の話を聞かない娘ね。
袁術
「もっと失礼な話なのじゃ!孫策の主は妾なんじゃぞ?妾を無視するなんて酷いのじゃ」
雪蓮
「……」誰が主ですって!(怒)腹が立つけどここはグッと堪える。耐えなさい私!
張勲
「でも美羽様ー。これって大陸全土の諸侯に送られてるみたいです……参加しないとあとあと面倒な事になっちゃいそうですよ?」
袁術
「例えそうだとしても、妾はめかけの娘の下になんぞつきたくないのじゃ!」
張勲
「もぉー。ワガママなんだからぁー」
袁術
「いやじゃいやじゃ!妾はいやなのじゃ!」いつも通り駄々を捏ねる袁術を見て、私は閃いた。
雪蓮
「……でもさ、袁術ちゃん。ちょっと考えてみなさいよ」
袁術
「何をじゃ?」
雪蓮
「これってさ、好機だと思わない?……袁紹が呼びかけて集まった諸侯を、貴女が上手く操れるとしたら?」
袁術
「ええと……どういう事じゃ?」
雪蓮
「袁紹と仲が良い振りをして、連盟で反董卓連合の発起人って事にすれば、今後、袁術ちゃんの発言力が強くなると思うの。それに首尾良く董卓を追い払って都に入った暁には……袁術ちゃん。袁術ちゃんが皇帝になる事だって不可能じゃないわ」
袁術
「妾が皇帝っ!?」
雪蓮
「そうそう。皇帝は既に董卓の傀儡でしょ?董卓を追い払えば実権が宙に浮く……それを袁術ちゃんがにぎれば、後はやりたい放題じゃない」
袁術
「妾が皇帝……」
張勲
「皇帝……新皇帝美羽様万歳!やりたい放題万歳!将来偽帝と呼ばれる事間違いなし!」張勲たら(呆)褒めてるようで、バカにしてるわよ……。
袁術
「妾は皇帝になるのじゃ!」
張勲
「なりましょう~♪美羽様、皇帝になったら蜂蜜水が飲み放題ですよ!あとあと、ごま団子とか桃マンとか食べ放題です!」上手くいった♪アッサリと私の口車に乗った袁術のバカさ加減に、ついニヤニヤしてしまう。
袁術
「食べ放題かや!う~ん……決めた!妾は皇帝になるのじゃ!妾が皇帝になった暁には七乃には杏仁豆腐で建てたお城をやるのじゃ!」うわぁー……やっぱりこの娘、バカだわ。
張勲
「杏仁豆腐で建てたお城!?わ~い!」
雪蓮
「……はぁ」張勲もナニ本気で喜んでんのよ?主が主なら、部下も部下ね……。
雪蓮
「じゃあ……袁術ちゃんは参加するのね」
袁術
「うん!するのじゃ!」
雪蓮
「分かったわ。袁術ちゃんが参加するんだったら、私達も参加するわね……袁術ちゃんが皇帝になる為に協力してあげる」
袁術
「うむうむ。良い心がけじゃな。今までの恩を返す為、しっかりと働くのじゃぞ」………何が恩よ、恨みしかないっての。(ムカッ)
雪蓮
「はいはい……」
~向田視点に戻る~
戻ってきた雪蓮から話を聞いた俺達は、袁術のアホッ娘振りに脱力した。とりあえず一言言わせて欲しい。
向田
「杏仁豆腐の城ってなんだよ!そんなのすぐに潰れるだろ!脆いにもホドがあるわい!」
冥琳
「……向田。気持ちは分かるが、そんな本気で突っ込まなくても良いだろ?」全員にジト目で見られてハッとする。何か最近、突っ込みキャラになりつつあるな、俺。
雪蓮
「始めは袁紹が発起人って事で渋ってたんだけど、皇帝になれるかもって言っただけで、あっさり参加を決めちゃった……バカ過ぎるわ」
祭
「さもありなん。強勢を張っているとはいえ、袁術はワガママな
雪蓮
「そうだけど。でも、もう少し張り合いが欲しいんだけどね……復讐する対象なんだから」
冥琳
「相手が愚かであればあるほど、それだけ楽が出来ると言うものよ」
雪蓮
「それはわかるけど、私の魂が満足してくれないのよ」
冥琳
「贅沢な事言わないの」
雪蓮
「はぁ~い……ま、袁術がバカだったおかげで、独立の好機が巡ってきたのは僥倖ってやつかな」
冥琳
「……いよいよね」
雪蓮
「うん。いよいよ……ううん、ようやく孫呉独立に向けて動き出せるわ」
蓮華
「ようやくですね……」
雪蓮
「ええ。だけどまだまだ……反董卓連合に参加し、諸侯の動きを見極める必要があるわ」
冥琳
「この戦の後にくる割拠の状況によって、我らが取るべき道も変わる、か」
雪蓮
「そういう事……皆、ここからが正念場。頼りにしてるわよ」
祭
「応っ!」
思春
「はっ!」
明命
「はいっ!」
蓮華
「はいっ!」
穏
「はいっ♪」
向田
「あ、ああ」
フェル
『やぶさかではない』
スイ
『は~い』
ドラちゃん
『しょうがねーなぁ』
いよいよ独立に向けて動き出せる。その嬉しさを静かに噛みしめながら、皆は出撃準備に明け暮れる。諸侯は董卓を追い詰めようと必死らしいが、俺達にとってはそんな事はどうでも良い。この乱を足がかりにして、独立の準備を行う。それが俺達の基本方針だ。忙しい日々が過ぎていき、やがて──。出陣準備も一通り整った頃、袁術より出陣の命令が下った。
俺が提供した宝石で得た金と、雪蓮の勇名を慕って、各地からやってきた屈強な兵士達で編成された、さしずめ孫呉軍団Ver2.0をを引き連れた俺達は、反董卓連合が駐屯している合流地点へと向かっていた。
雪蓮
「冥琳。反董卓連合に参加してる諸侯って、どれぐらい居るの?」
冥琳
「発起人である袁紹と、その尻馬に乗った袁術を筆頭に、北方の雄、公孫賛。中央より距離を置きながら着々と勢力を延ばした曹操。
穏
「他にも涼州連合や
向田
「大なり小なり、野心を持つ人間が集まってきている……といったトコか」
冥琳
「さもありなん……既に後漢王朝が死に瀕してる今こそ、飛躍にはもってこいの時機だ」
雪蓮
「ただし、全員が飛躍出来るとは限らないけどね……さてさて。一年後まで生き残っていられるのはどの諸侯かしら」
穏
「有能な人もいれば、無能な人も居る……なかなか予測はつきませんねぇ~」
雪蓮
「まぁねぇ……冥琳はどう見てる?」
冥琳
「ふむ……まず一人。人材、資金、兵力……全てを潤沢に用意している曹操だろう。次に我ら孫呉だ。向田のおかげもあって、資金も兵力も充実の兆しを見せているし、人材も揃いはじめている」
雪蓮
「ふむ……袁紹や袁術ちゃんはどうなの?」
冥琳
「確かに袁紹の兵は強大だ。だが北方に公孫賛という強敵を抱えてるし、率いる人材を上手く使いこなせていないように感じるな。袁術は我らが倒すだろう?」
雪蓮
「勿論」
冥琳
「なら、一年後、我らの天下取りの道のりを邪魔するのは、今のところ曹操のみという事になるな」
雪蓮
「なるほどね……けど、私はもう一人、気になる子が居るわ」
冥琳
「劉備か?」
雪蓮
「そ。義勇軍の大将だったのに、いつの間にか平原の相に成り上がってる。そして配下には勇将、知将が揃ってるって噂……人の和もある」
冥琳
「後は地の利か……今のところ、地の利だけが劉備にはないな。平原の東には公孫賛や袁紹。南には董卓と曹操……これでは領土の拡大は出来ん」劉備っていやあ、仲間には自衛隊OR軍人風の、現代人っぽいが居たな。まさかとは思うが、戦闘機とか持ち込んでたりして……?でもこの世界はまだ石油が発見されてないし、あったとしても動かせないか。なら一安心だな。俺が1人で納得しているのを横目で見ながら冥琳は話を続ける。
冥琳
「しかし気になる人物であるのは理解出来る……英雄となる人物かもしれんな」
雪蓮
「ふむ……なら一度話してみましょうか」
冥琳
「それが良いかもしれん」
雪蓮
「じゃあ時機を見て接触しましょう……剛」
向田
「へっ!?」
雪蓮
「何が、へっ、よ……最近、影が薄いわよ?」
向田
「あ、ごめん……ちょっと考え事をしてて」
冥琳
「ほお。その考え事とやらを拝聴したいな」そろそろ俺の正体を明かしても良い気もするけど、今はその時じゃないよな。こんなワタワタしてる時に『実は俺、異世界から来ました』なんて言うのは違うよな。それなら他の考え事について話そう。
向田
「……反董卓連合と董卓との闘い。これ、どっちが勝ったとしても、世は動乱の時代になる……ってのは良く分かるんだ。反董卓連合が勝てば、後漢王朝は既に必要なしと判断されてしまう……董卓が勝てば、そもそも後漢王朝が存続するハズがない。つまり国の要がなくなるって状況は、既に確定してる訳だろ?そんな中で、どうやって独立に向けて動くのか。それが気になって……ずっと考えてたんだ」俺の正体は、この闘いが終わってから話せば良いか。劉備達に接触する時が意外とチャンスかもしれないな。
冥琳
「ふむ……で、出した答えは?」
向田
「まず、今の大陸の状況って、かなり特殊な状況だと思うんだ。大陸全土を巻き込んで陣営の二極化が起こってる……董卓と、董卓に味方する人間。反董卓連合を組み、董卓を排除しようとする人間。そしてこの闘いに参加してない諸侯の目も、董卓と反董卓連合との闘いの成り行きに注がれている……今、演劇の舞台は洛陽で、観客達の目も洛陽に注がれているって事だよな。となると……今こそ、独立に向けて仕込みをするには絶好の機会じゃないかなって」
冥琳
「……うむ。良い答えだな」
向田
「お?じゃあ……」
冥琳
「ああ。既に動いているさ……蓮華様と黄蓋殿の二人が居ないのに気付かないか?」
向田
「……あ。そういえば」出陣した時には姿があったけど、今は居なくなってるな……
穏
「お二方には建業に行ってもらってるんですよ♪」
向田
「建業って?」
雪蓮
「私達の本拠地だったトコよ」
向田
「本拠地だったって事は……孫家に関係のある人間が多いって事だよな?……何考えてる?」
雪蓮
「分かるでしょ?」
向田
「……ん。分かる。となると……この演劇では端役を決め込むつもりなのか」
雪蓮
「そうしたいけど出来ないのよねぇ。袁術ちゃんに二心を疑われないようにしなくちゃだし……」
冥琳
「それだけではないぞ、雪蓮。我らはこの闘いで知勇兼備の軍隊であるという風評を得ねばならん」
穏
「しかも兵力の損失を最低限に抑えて、ですね」
向田
「うわ……それって凄く難しいんじゃないの?」余力を充分に残しながら、大陸に響く名声を得なければならないって……今はフェル達を出せないしなぁ。
冥琳
「難しくはあるが、やらねばならん」
雪蓮
「ま、今回は新人や若者達の修練の場って事でいきましょうか」
向田
「新人かぁ……」
冥琳
「そうだ。お前を筆頭にな」
向田
「うぇ!?俺ぇ!?」
雪蓮
「そっ。剛に明命、思春に穏……まぁ人数が人数だから、私と冥琳も出張るけどね」
向田
「うへぇ……」
冥琳
「幾たびかの闘いをくぐり抜けてきているとはいえ、戦場では経験が物を言う……しっかり励め」
雪蓮
「槍働きをしろとは言わないからさ……ま、男としての気概は示して欲しいかな?」
向田
「頑張る……よ」
雪蓮
「頑張ってね、新人さん♪」こうして俺達は反董卓連合が天幕を張る、大本陣へ向かっていった。
活動報告で募集した、蜀陣営オリキャラのアイディアが締め切り間近です。一応、3/4の23:59までとさせて頂きます。