フェル
『お主らの話を要約すると……その者はさぞ誇り高いのであろう?』ふーん……フェルって意外に周りを見てるよなぁ。そういやスイやドラちゃんに対して、普段から指揮官役もしているし。
向田
「祭さんとか見てると、自分の信念とか誇りをスゴく大切にしてる気がするし」俺もちょっとだけ援護射撃をする。
冥琳
「ああ。武官にとって、武こそが己の存在を最も輝かしめる要素だからな」
フェル
『なら、その心理を逆手にとって誘き出せば良いではないか』
雪蓮
「例えば?」
フェル
『うむ……外から罵って、神経を逆撫でするとかどうだ。で、腹を立てて飛び出したところを叩く。我も獲物を狩る時、よく使う手だぞ』人間とフェンリルを一緒にするなよ……と、俺が突っ込もうとしたら、
冥琳
「ふむ……悪くはないな。だがもう一工夫欲しいところだ」あれ?採用されちゃったよ……驚く俺にドヤ顔を見せるフェル……何か腹立つな(ムカッ)。
向田
「工夫?」
冥琳
「ただ罵っただけで突出するような愚か者ならば、汜水関の守りなど任せられるハズはなかろう?」
向田
「あ……それもそうか」
冥琳
「きっかけを作らねばならんな。例えば……充分に罵り、愚弄した後、闘いを仕掛けて退いてみる……というのはどうか?」
雪蓮
「それまでの罵声で鬱憤が溜まってるから、出てきそうではあるわね。冥琳ってば性格悪いんだから♪」
冥琳
「策と言ってもらおうか……ただこの策にも問題点は幾つかある」
向田
「どんな問題?」
冥琳
「まず第一点。罵倒する側の人間の質だ。残念ながら我が軍には、大陸中に名の知れた者一人しかいない」
向田
「あ、そっか……」
雪蓮
「私がやっていいならやるけど?」
冥琳
「却下よ」
雪蓮
「えぇ~……面白そうなのに」
冥琳
「却下」
雪蓮
「はぁ~い……」
冥琳
「続いて第二点。あからさまにしゃしゃり出るのは不味い……袁術に勘ぐられる可能性もある」
向田
「あ……その可能性もあったか」
冥琳
「今は極力目立つ行動は控えねばならん」
向田
「それは分かるけど。でも……じゃあどうする?」
冥琳
「だからこそ劉備に会ったのだよ」
雪蓮
「あら。じゃあ劉備にその策を伝えるの?」
冥琳
「ええ。劉備軍ならば上手くやるでしょう。関羽、張飛が居るからね」
向田
「でも、それだと劉備軍だけが危ない目に遭うんじゃないの?」
冥琳
「初めはな。だがすぐに我らが駆けつけるさ……理由は先鋒を支える為、だ」
雪蓮
「それなら袁術ちゃんの目も誤魔化せる、か……じゃ、それでいきましょ」
冥琳
「了解した」
おおよその方針を決めた俺達は、天幕に戻って出撃準備を開始する。
きっかり一刻後。反董卓連合の総大将となった袁紹から、脱力ものの命令が発せられた。
袁紹
「さぁ皆さん!雄々しく!勇ましく!華麗に出陣しますわよ!」あのバカっ娘の袁術に良く似た雰囲気の、年齢は蓮華ぐらいと思われる金髪縦ロールのお嬢様然とした、袁紹が高笑いを上げている。
??
「うぉーし!先鋒、劉備隊進めー!」ショートカットの女の子、袁紹お付きの文醜が劉備に指示を下す。
劉備
「はいっ!」
??
「続いて、曹操さん、孫策さんの部隊、前進して下さーい!」もう1人の袁紹のお付き。髪をボブにした袁紹軍唯一の良心、顔良からの指示が曹操へ伝達される。
曹操
「……」あからさまに面白くなさそうな表情を浮かべる曹操。
雪蓮
「あらら。曹操ってば不機嫌そうね~」
冥琳
「気持ちは良ーく分かるがな」
雪蓮
「袁紹って……つくづく袁術ちゃんの従姉って感じがするモノね」うん、どっちもバカだしな。
冥琳
「そういう事だ……行こう、雪蓮」
雪蓮
「はいはい。みんな出陣するわよー」
思春
「はっ」
穏
「はーい」
明命
「はいっ!」
向田
「俺達も行こうか」
フェル
『うむ』
スイ
『は~い』
ドラちゃん
『おうっ』袁紹の号令と共に動き出した反董卓連合軍は、洛陽への第一の関門・汜水関に向けて動き始めた。荒野を埋め尽くす人の波。風にはためく無数の旗。──決戦に向けて緊張が高まってくる。
峡谷を幾つか抜けると、左右を絶壁に囲まれただだっ広い道に到着した。
向田
「ここが汜水関?」
冥琳
「正確には今、我らの目の前にそびえ立つ砦の事を汜水関というのだよ」
向田
「あれが汜水関かぁ……」絶壁の間にある道を塞ぐ目的で巨大な城壁が、敵を威圧するようにそびえ立っていた。
向田
「難攻不落っていうの……良く分かるなぁ、これ」
冥琳
「包囲される事もなく、正面を防ぐだけで良い。しかも敵は部隊を展開出来ない……大陸にある関の内でも完璧な防御施設一つだろうな」
向田
「うへぇ……こりゃ苦戦しそうだな」ウチのトリオ抜きってのは、かなり厳しいぞ。
穏
「まぁ何とかなるでしょ~♪」
向田
「お気楽だなぁ」
穏
「眉間に皺を寄せてうーんとか唸ってても、現実は変わらないですからねぇ~♪」
向田
「……そりゃそうか」
雪蓮
「穏の言う通り……さっさと作戦を実行しましょ♪」
冥琳
「分かったわ。じゃあ私は劉備のところに行って作戦の説明をしてくるわ……雪蓮達は戦闘準備を」
雪蓮
「了解……よろしくね」
冥琳
「ええ」冥琳はこちらの陣営を離れ、再び劉備の元へ向かった。それと入れ替わるように思春と明命が雪蓮の側に付いた。
雪蓮
「さて……準備に取りかかりましょうか」
思春
「御意。前曲は我ら
雪蓮
「頼むわね。後は作戦の結果によって臨機応変に対応しましょ」
思春
「はっ」
明命
「剛様はどうやってお守りしましょうか?」
雪蓮
「従魔達が居るから、剛は大丈夫だと思うけど……どうする?後ろに下がっておく?」
向田
「……いや、俺も前に居るよ。雪蓮の側に居る」
雪蓮
「そう……乱戦になったら守ってあげられなくなるから、すぐに後ろに下がってよ」雪蓮なりの気遣いなんだろうけど、俺には【絶対防御】のスキルもある。それに、
フェル
『我らが居るから心配は要らぬ』
スイ
『あるじはスイたちが守るよぉ~』
ドラちゃん
『そうそう。それより自分の身を心配知ろっての』この3人が側に居れば敵兵も自ら近づこうとはしないだろう。
向田
「足を引っ張らないようにはするから。安心して」
思春
「……そう願おう。では孫策様。我らは前曲の編成を行います」
雪蓮
「ん。よろしくー」
明命
「御意!……ではです」明命と思春はこの場を離れ、(トリオを除けば)再び雪蓮と2人っきりになる俺。
向田
「うーん……思春にも嫌われてるんだな、俺」
雪蓮
「剛の事を?ああ、そんなの心配しなくて良いわ。あの娘は蓮華が大好きなだけよ」
向田
「それって、嫌われる要素満載って意味じゃんか」
雪蓮
「そんな事ないわよ?だって思春の目には蓮華だけが入ってて剛は入ってないもん」
向田
「えーっと……俺は眼中になし?」
雪蓮
「うん」バッサリ言われたーっ!
向田
「うわ……それはそれでへこむなぁ……」
雪蓮
「ま、蓮華と仲良くなれば、剛に好意を寄せるんじゃない?」
向田
「そういうモンかねぇ……」
雪蓮
「そういうモンよ……さ、雑談はこれでお終い。私達も部隊の編成を急ぎましょ」
向田
「了解」いよいよ汜水関攻略作戦が始まる──。体内で水位を上げていく緊張感。殺すか、殺されるか。だがそんな緊張感は恐怖という感情を呼び起こしはしなかった。元々のスキルにプラスして多分、雪蓮が側に居てくれるからかもしれない。やがて連合軍の本陣より、戦闘開始の命令が下った──。ハズなんだが……どういう事か、雪蓮は一向に軍を動かそうとしない。
向田
「……って。戦闘開始だろ?闘わないの?」
冥琳
「すぐにはな……もう少しすれば関羽と張飛が前に進み出るだろう」
向田
「罵声を浴びせるって作戦?……俺はまだ、闘いながらするんだと思ってた」
穏
「闘いながらじゃ声が届きませんよぉ。それに余計な損害も増えますしね♪」
向田
「……そりゃそうか」
冥琳
「ようは華雄をどうやって引き摺りだすか、だ……華雄さえ引き摺りだせば、それに釣られて張遼も出てくるだろう」
雪蓮
「神速の驍将・張遼か……一度手合わせしてみたいわね」
冥琳
「却下……貴女は一度、あの
雪蓮
「強い奴と闘いたいって思うの、武人の習性なんだから仕方ないでしょ?」
冥琳
「武人の前に王だって事、忘れないでね」
雪蓮
「はぁ~い……あーあ、つまんないなぁ」
フェル
『いい気味だ。我らにあまり暴れさせぬ報いと思え』……ここにも血の気の多いのが居たよ。
冥琳
「向田」
向田
「何?」
冥琳
「雪蓮の手綱、お前に任せるからな」うぇっ!?む、ムリだってばそんなの!
向田
「え、4人目!?」
雪蓮
「従魔と一緒にしないでよ……」
冥琳
「心配するな。雪蓮ならお前に迷惑をかけるような事はせんよ……ねぇ、雪蓮?」
雪蓮
「……べぇーだ」
冥琳
「……だそうだ」いや、意味が分からん。
向田
「まぁ……頑張ってみるけど……頼むよ、雪蓮」
雪蓮
「知らない。私は私の気の向くままに動くだけよ」
向田
「おおぅ……勘弁してよ……とほほ……」うちひしがれる俺だったが、
フェル
『何ならこやつにはスイをつけよう』
スイ
『フェルおじちゃん。スイ何するのぉ?』
フェル
『うむ、この者が暴走せんように見張っておくのだ。出来るな?』
スイ
『うん、スイに任せて』フェルの言葉から会話の内容を察したのだろう、冥琳と穏が吹き出した。
冥琳・穏
「「……ぷっ!(笑)」」
雪蓮
「もう!みんなして酷い!」雪蓮はブーたれるけど、スイに世話かけるようじゃね……
穏
「あっ!雪蓮様、冥琳様!前線の方で動きがありそうですよ!」
冥琳
「ようやく動くか!」
穏
「……あ、嘘でした。ごめんなさい」思わずズッコける俺とフェルとドラちゃん。
雪蓮
「嘘?どういう事?」
穏
「城壁の上の旗がブワーッて動き出したんですけど、どうしてか動きを止めちゃいました……」
冥琳
「ふむ……突出しようとして、張遼が止めた……と見るべきか」
雪蓮
「そんなところでしょうね」なるほど。華雄はともかく……張遼は知能が高いという事か。
~視点なし~
その頃、汜水関にて。劉備軍に散々
華雄
「離せ張遼!あれほど
張遼
「待ちってば!あんなん見え透いた手ぇや!それに乗ってもーたら、それこそ敵の思う壷やで!」古代中国風なこの世界で、ナゼか関西訛りの、胸にサラシを巻き付けた張遼が、華雄の腕を引っ張る。
華雄
「くっ……だが、今まさに奴らは私達の武を愚弄しているのだぞ!それを許せると言うのか!」
張遼
「許せん。許せんよ!せやけどウチらは何としても汜水関を守らんとアカンねん!その為やったら罵声ぐらいいくらでも耐えたる!だからお前も堪えてくれ!」
華雄
「くっ……!」どうやら皮肉にも、向田の読みは正しかったようだ。
久し振りに原作との違い
・華雄を引き摺り出す作戦を思い付くのは一刀→フェル
今回はほぼ恋姫の原作通り。もう少し、とんでも要素を入れたいです。