あれからしばらく経ったが、全く進展がない董卓、反董卓両軍。
向田
「じれったいなぁ……なんかイライラしてきた」
雪蓮
「……動かないわね」
冥琳
「そのようだな……あまり良くない
穏
「時間を掛ければ掛けるほど、相手に冷静さが戻ってきてしまいますからね……何か手を打たないと」
雪蓮
「ふむ……冥琳。私、ちょっと袁術ちゃんのところに行ってくるわ」
冥琳
「何をしにだ?」
雪蓮
「後で説明するわ……じゃあね」と言い残してこの場を離れる雪蓮。スイもフェルに言われた通り雪蓮を監視する為、その後ろをついていく。
袁術が自らの陣地で暢気にダラケているところへ雪蓮が訪ねてきた。
袁術
「んくんくんく……プハァー!やっぱり蜂蜜水はさいこーなのじゃ!」
張勲
「美羽様ぁ~。孫策さんがいらっしゃいましたけどぉ~?」
袁術
「孫策が?何のようじゃ?」
張勲
「何でも、膠着している戦線を動かす作戦を伝える為だとか……何でしょうね?」
袁術
「ふむぅ~……よし、通して良いぞ」
雪蓮
「あら、ごめん。勝手に来ちゃってた」気づくと、袁術の目の前に雪蓮が居た。
袁術
「ふおっ!?無礼じゃぞ、孫策」
雪蓮
「ごめんごめん。ちょっと急ぎの用件だからさ」
袁術
「むぅ……まあ良い。それより何か作戦を思いついたという事じゃが?」
雪蓮
「そ。今みたいに、汜水関を囲んでいるだけじゃ、事態は動かないでしょ?事態が動かないと袁術ちゃんも活躍する事が出来ないし……そこでちょっと提案をね、持ってきたのよ」
袁術
「ふむ。苦しゅうない。続きを話すのじゃ」
雪蓮
「じゃあ話の続きね。知ってると思うけど、汜水関に籠もっているのは張遼と華雄……そのうち華雄の方は私と因縁があるの。だから私が前に出て、劉備軍と連携をとって華雄を挑発すれば、事態は動くと思うんけど」
袁術
「劉備軍と連携をのぉ……」
雪蓮
「でも私は袁術ちゃんの部下でしょ。一人で勝手に動くつもりはないけど、袁術ちゃんの命令があれば、すぐに動けるわ……どうする?」
袁術
「ふむ。では妾が命ずるぞ。孫策は劉備と連携して汜水関の敵を引っ張り出すのじゃ!」
雪蓮
「……了解。じゃあ今すぐに軍を動かすわ」雪蓮は自らの陣地に戻っていった。
張勲
「美羽様ぁ~、劉備軍との連携、許しちゃって良かったんですかぁ?」
袁術
「ふお?七乃は反対なのかや?」
張勲
「反対じゃないですけど、ちょっと心配だなって」
袁術
「ふむぅ……でも、きっと大丈夫なのじゃ。孫策は妾の部下だと認めていたしの」
張勲
「あ、そう言えばそんな事言ってましたね……大丈夫かー!」
袁術
「うむ!大丈夫なのじゃ!」
張勲
「ですよねぇ~♪あははー♪」やはりこの2人、今日も相変わらずのバカコンビであった。
雪蓮
「冥琳。さっさと軍を動かすわよ」袁術の元から帰ってきた雪蓮が告げる。
冥琳
「ん?いきなりどうした?」
雪蓮
「袁術ちゃんに許可をもらったの。私達は袁術ちゃんの命令で劉備軍と連携するわ」
冥琳
「……それを許すか。つくづくだな、袁術は」
雪蓮
「だけどあの娘、ワガママだから。気が変わる前に前に出ましょ」
冥琳
「そうしよう……興覇!幼平!」思春と明命を呼び出す冥琳。
思春
「はっ」
明命
「はいっ!」
冥琳
「劉備の横まで前進する。その後は華雄の挑発に参加するぞ」
思春
「はっ!」
明命
「了解です!」
雪蓮
「挑発には私も出るわね」
冥琳
「却下」
雪蓮
「却下は却下よ……今の状況を長引かせる訳にはいかないでしょ。なら私が餌にならないと」
冥琳
「……文台様を絡めて挑発するのか?」
雪蓮
「そういう事……良いでしょ?」
冥琳
「……分かった。興覇、幼平。二人共くれぐれも頼むぞ」
思春
「……(コクッ)」
明命
「お任せ下さい!」思春は無言で頷き、明命は気合いの入った返事をする。
雪蓮
「よろしくね。冥琳と穏、それに剛は後曲の部隊を指揮……釣り上げた大物を逃がさないようにしてよね」
冥琳
「心得ているわ……雪蓮。気を付けてね」
向田
「無茶したらダメだからな?スイも見張っといてよ」
スイ
『わかったー』
雪蓮
「ん……じゃあ行ってくる」
~その頃の汜水関~
兵士(モブ)
「華雄将軍!連合軍先鋒に新たな部隊!旗標は……孫です!」
華雄
「なにぃっ!」
~先鋒の陣地にて~
雪蓮
「はぁ~い劉備ちゃん。中々手こずっているみたいね」
劉備
「あ、孫策さん……敵さんが思ったより冷静みたいです。このままじゃマズいかも知れません……」
雪蓮
「うん。そう考えて私が前に出てきたのよ」
劉備
「え、でも大丈夫なんですか?」
雪蓮
「大丈夫。袁術ちゃんには許可をもらったし……腹立つけどね」
劉備
「あははっ。ところで、その足下のプルプルした丸いモノは……」
雪蓮
「これ?一応、私の監視役」
スイ
『
劉備
「監視役……ですか?」
雪蓮
「まぁ、それは一時置いといて……とりあえず、華雄の挑発は私が受け持つわ。劉備は釣り上げた魚の調理をお願い」
劉備
「はい。でも……勝てるんでしょうか」
雪蓮
「大丈夫。勝てるわよ……劉備は張遼を。私達は華雄を。それを基本方針にしましょ。余力があったら助けるけど、こっちも限界ギリギリかもしれないから、その辺りは分かっておいて」
スイ
『スイがやれば簡単なのにぃ』とスイがボヤくが、その言葉は生憎と通じない。
劉備
「了解しました……私達の部隊だけで張遼さんと華雄さんを相手するトコだったんです。どんな状況になっても、それよりはマシですから」
雪蓮
「ありがと……じゃあ行ってくるわ」
劉備
「ご武運を」劉備の言葉を受け、踵を返す雪蓮。飛び跳ねながらその後ろをついていくスイ。
慶子
「何でスライムが……?」
竜馬
「そういや呉にも俺達と同じ、あっちの世界からきたと思えるヤツが居たな」
隼人
「ああ。恐らくそいつが関与しているんだろう」劉備を護衛していた、蜀の現代人トリオは怪訝な顔で雪蓮を見送っていた。
雪蓮
「汜水関守将・華雄に告げる!我が母、孫堅に破られた貴様が、再び我らの前に立ちはだかってくるとは有り難し!その頸をもらうに、いかほどの難儀があろう?……ないな。稲を刈るぐらいに容易い事だろう!どうした華雄。反論はないのか?それとも江東の虎、孫堅に破れた事がよほど怖かったのか?そうか怖かったか。ならば致し方なし……孫堅の娘、孫策が、貴様に再戦の機会を与えてやろうと思ったのだがな!」戦線に立った雪蓮は剣を汜水関に向けて、華雄を挑発している。
雪蓮
「それも怖いと見える。いやはや……それほどの臆病者、戦場に居て何になる?さっさと尻尾を巻いて逃げるが良い。ではさらばだ!負け犬華雄殿!」
向田
「よくまぁ、あれだけの長ゼリフを……」
~再び汜水関~
華雄
「い……言わせておけばぁ……!」
張遼
「待て待て待て待て!落ち着け!落ち着かんとアカンて!あんな見え透いた手に乗ってどうすんねんな!」
華雄
「我が誇りが傷つけられているのだ!例え何らかの策があったとて、罠など食い破って見せる!だから止めるな張遼!」
張遼
「アカンて!賈駆っちに言われたやろ!長期戦に持ち込めばこっちの勝ちやって!ここで華雄が出て行ってどうすんねん!」
華雄
「奴らを蹴散らす!」
張遼
「そんな必要ないねんて!」
華雄
「うるさい!離せ張遼!」
張遼
「アカンっ!ウチかて悔しいの我慢して耐えとるねん!華雄ももうちょっと我慢してくれ!」
華雄
「うぅ……あぁぁぁぁ!」
~雪蓮と劉備は~
雪蓮
「むー。中々出てこないわね……悔しくないのかしら」
劉備
「本人は悔しいって思ってるんだと思います……だけど周囲の人が止めてるのかも」
雪蓮
「その可能性が高いわね……なら今の内に寄せちゃおっか」
劉備
「え……城門に、ですか?」
雪蓮
「そっ。無造作に寄せてくる敵を見て、果たして華雄は屈辱に耐えられるのか!ってね」
劉備
「でも……大丈夫でしょうか?」
雪蓮
「大丈夫。我が軍の精鋭が貴女を守ってあげる」
劉備
「……分かりました。では孫策さんの案を実行しましょう」
雪蓮
「ありがと……興覇!幼平は居るか!」将
思春
「はっ!」
明命
「お側にっ!」
雪蓮
「華雄を釣るぞ。汜水関に軍を寄せろ」
思春・明命
「「御意!」」2人はそれだけ返事をすると軍の再編成の為、離れていった。
劉備
「ふあー……お二人共、何の疑問も持たずに行っちゃいましたね」
雪蓮
「私の為に死んでくれる娘達だからね」
劉備
「スゴいです……」
雪蓮
「でもあの二人を死なすつもりはないわよ……念の為言っておくけど」
劉備
「あははっ、分かってます……大分孫策さんの事、分かってきましたから」
雪蓮
「あら。私はそんな簡単に見透かされる女じゃないわよ?」
劉備
「あぅ、それはそうですけど。ただ何となく、優しい人なんだろうなって」
雪蓮
「優しくないわよ。だって私、王様だもの……」
劉備
「お優しいですよ」
雪蓮
「……じゃあそう思っておけば良いわ。それよりも……仕上げに掛かるわよ、劉備」
劉備
「はいっ!」
~三度汜水関~
兵士(モブ)
「華雄将軍!連合軍が押し寄せて参りました!」
華雄
「この状況で寄せてくるだと……!やはり我らを舐めているんだ、奴らは!」
兵士(モブ)
「華雄将軍!我らは……我らは最早限界です!このような謂われのない罵倒など、奴らの息の根と共に止めてしまいましょう!」
兵士(モブ)
「そうです!あんな戯れ言、今すぐに吐けなくしてやりましょう!」
張遼
「わー!アホ、何言うてんねんお前ら!」
華雄
「良くぞ申した!それでこそ華雄隊
兵士達(モブ)
「「「「応ーっ!」」」」この瞬間、長きに渡り愚か者と天下へ恥を示す、愚将軍・華雄が誕生したが、それはこの物語では語られまい。
華雄
「全軍出撃の準備をしろ!口先だけの敵なんぞ
兵士達(モブ)
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーっ!」逆上する華雄とその配下達の中、張遼は未だ冷静さを保っていた。
張遼
「くっ、アカン、これはもう止められん……!誰かおるか!」
兵士(モブ)
「はっ!」僅かに残った、理性ある兵士が張遼に応える。
張遼
「虎牢関の賈駆っちに、汜水関はもう保たん、と伝えてくれ。追々状況は伝令で送るから言うてな」
兵士(モブ)
「御意!」
張遼
「華雄を見捨てる訳にはいかん……張遼隊!ウチらも出んぞ!」
兵士達(モブ)
「「「「応っ!」」」」
~孫陣営~
明命
「孫策様!城門が開きましたよ!」
思春
「旗標は漆黒の華一文字!華雄です!」
雪蓮
「ようやく釣れたか……後方に伝令!これから大物を引っ張って行くから、しっかり対応しろと命令しておけ!」
兵士(モブ)
「御意ー!」
雪蓮
「続いて袁術にも伝令を出せ!全線に動きありと伝えておけ!」
兵士(モブ)
「御意!」兵士達に指示を与えた雪蓮は劉備に向き直り、
雪蓮
「劉備!作戦通り、華雄は私が、張遼は貴女が相手をする。それで良いな?」
劉備
「はい!」
雪蓮
「よし。さぁ孫呉
兵士達(モブ)
「「「「応っ!」」」」
雪蓮
「全軍抜刀!」雪蓮の叫びを合図に兵士達が全員、鞘から抜いた剣を振りかざす。
雪蓮
「かかれーっ!」
~向田視点に戻る~
俺が連合軍の勝利を確信していると、何日か振りにあの神様から念話が送られてきた。
デミウルゴス
『久しいの。ムコーダ』
向田
『デミウルゴス様?一体どうなさったんですか?』
デミウルゴス
『此度の汜水関の戦い、お主らの勝利で間違いなかろう。ま、これで終わりではないが……良くやったと言うべきじゃな』
向田
『いえいえ、俺1人の力じゃありません。雪蓮や呉のみんなが居たからこそです』
デミウルゴス
『それでのぅ……良くやったついでに一つ、頼み事を引き受けてはくれんか?』どうしたんだ?デミウルゴス様、いつになく歯切れの悪い喋り方だな……
向田
『頼み事とは?』
デミウルゴス
『うむ。人知れず、董卓を助け出してはくれまいか?』え、どういう事?
デミウルゴス様の真意は一体?