とんでもスキルで真・恋姫無双   作:越後屋大輔

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原作(真・恋姫呉編)では悲しい場面に向かう直前ですが……


第三十一席向田、孫堅に会う?のこと

 袁術の領地を手に入れた俺達は、その余勢をかって揚州全土を制圧した。まぁ制圧といっても、揚州の住民達は皆、諸手をあげて雪蓮を歓迎してくれたから、闘いらしい闘いは殆どなかったんだけど。俺達は着々と足場固めに力を注ぎ、先代孫堅こと孫文台が掲げた天下統一の夢を実現させる為、討って出るチャンスを、虎視眈々と狙っていた。

 だが、俺達にはフェル達がついているとはいえ、他の勢力も力をつけているだろう。于吉や白装束共も、あれで諦めたとは思えないし、恐らくこの先は奴らとの激戦も待っているだろう。だけど俺達には雪蓮が居る。英雄王と呼ばれ、大陸全土にその名を讃えられている雪蓮を、俺はこれからも支えていこうと思う。そうでもしなきゃ、デミウルゴス様に申し開きが出来ないからな。ま、理由はそれだけじゃないんだけど。

 とにかく。俺達は日々、軍備を整え、内政を行い……来るべき闘いに向けて着々と準備を進めていた。

 

 さて。今はみんなが一室に集まって、毎月の定例会議を行っている。一応ウチのトリオもここに居る、昼寝してはいるが。

「――という訳で、揚州全土の石高(こくだか)、及び生産量や人口に関してのご報告でしたぁ~」

雪蓮

「ご苦労様……洛陽からくすねてきた台帳が役に立ってるわね」えっ?いつの間にそんな事してたの?ああ、俺が月達をあっちの大陸に連れて行った、その間か。ちゃっかりしてんな。

冥琳

「台帳こそ政の( まつりごと )根底を支える物。これが手に入っただけでも、反董卓連合なんていう茶番劇に参加した甲斐があったというモノよ」

「それに他国の人口なんかも載ってますから、内政だけでなく、戦略を決定する上でも大いに役立ってくれますからね」

雪蓮

「良い物を手に入れたわね~」

冥琳

「これあるを予想していたからな」

雪蓮

「よっ。流石名軍師!呉の柱石!」

冥琳

「ふざけた事言ってないの……ここから先は諸侯との勝ち抜き戦よ……貴女の采配如何(いかん)で呉の将来が決まるって事、忘れないでね」

雪蓮

「重々承知してるわよ……じゃ、今月の内政担当の割り振りをしましょうか」

向田

「今の目標は富国強兵……って事は、税収増加と軍備拡張が基本方針になるのかな?」

冥琳

「概ね正解だ。しかしその二つは二律背反……天秤がどちらに傾いたとしても、民衆の心に不満の声が蒔かれるだろう」

「均衡を保ちながら、その二つの命題を達成しなくちゃいけませんからねぇ」

向田

「うわ……難しそう」

冥琳

「難しいさ。だがその命題を一刻でも早く成立はさせんと、諸侯に遅れを取る事になる」

向田

「厳しい現実って奴だなぁ」

「その厳しい現実を実現させる事こそ、我ら文官の仕事なのですよ♪」

雪蓮

「そういう事。戦場が武官の活躍の場なら、内政は文官の功名の場。厳しい現実だからこそ、やりがいがあるって訳」

向田

「なるほどねぇ~……」

冥琳

「他人事のように感心しているが、お前も呉の文官の一人なのだから、気合いを入れる事だな」

向田

「……うっそ。俺が文官って……マジ?」イヤイヤ、料理番兼指揮官(主にトリオの)で充分ですよ?これ以上肩書き増えても、扱い切れないってば!

「昔ならばいざ知らず、今の儂らは圧倒的に人手が足りんのだから、当然の事じゃな」

明命

「大丈夫ですよ、剛様。頑張って努力すれば、人は何でも出来ますから!」

向田

「そ、そういうモンかなぁ……」だったら君がやってくれない?ムリだとは分かってるけどさ。

冥琳

「文官に必要な基礎知識は穏に習えば良い。亞莎。お前もな」

亞莎

「はうっ!?わ、私もですかっ!?」

冥琳

「当然だ……お前にはまだまだ教える事が山ほどある……しっかり励めよ」

亞莎

「うう……私、勉強は苦手なんです……」

向田

「ええっ?そうなの?……頭の良さそうな格好してるのに」それで軍師が勤まるの?

亞莎

「こ、これはその……お母さんにこれを着ていきなさいって言われて……」と言って袖で顔を隠す亞莎。あ~、親心あるあるってヤツね。

向田

「あ、そうなんだ……」

亞莎

「で、でも……何とか頑張ります!頑張ってみせます!」

雪蓮

「うふふっ、素直ねぇ。可愛いわ……」雪蓮?何か恐いんだけど?

亞莎

「や、あの……そんな事、ないです……」

雪蓮

「そこで照れるのがまた可愛いの♪はぁ~、蓮華と小蓮にも見倣って欲しいわね」

小蓮

「ぶー。シャオはかわゆい女の子だもんね!」

蓮華

「私は……確かに可愛げはないかもしれません。悪かったですね」イヤイヤ蓮華も小蓮も充分可愛いって。それをいうなら、むしろ俺はフェルやドラちゃんに見倣って欲しいよ。

フェル

『オイ。お主、何か変な事を考えてないか?』

ドラちゃん

『全く……可愛くても得なんて何にもないぜ』

スイ

『ねぇあるじ~。スイは可愛いぃ?』いつの間にか目を覚ましていた3人が聞いてくる。ウンウン、スイは良い子で可愛いよ。蓮華はまだ膨れっ面だな……

雪蓮

「あら。拗ねちゃった」

蓮華

「す、拗ねていませんっ!」

雪蓮

「あはっ、今度は怒っちゃった♪剛助けてー」

向田

「ちょ、俺を巻き込むなっての!」

蓮華

「なんだ剛……お姉様の肩を持つのか?」

向田

「れ、蓮華さん声怖いッス!」

雪蓮

「ふふっ、あらら。蓮華ったら、もしかして妬いてるのかしら?」

蓮華

「だ、誰がこんな奴の為に!」……蓮華。こんな奴呼ばわりはなくない?ちょっとヘコむぞ。

雪蓮

「でも顔が真ぁーっ赤♪」

蓮華

「くっ……!し、知りません、そんなの!亞莎、行くぞ!ついてこい!」

亞莎

「は、はひっ!?」更に誂う( からか )雪蓮。蓮華は恥ずかしくてたまらないのか、やや強引に亞莎を伴って部屋を出ていく。

冥琳

「ふっ……蓮華様も可愛くなられたモノだ」

「うむうむ。良い傾向じゃな」そんな蓮華を温かい眼差しで見送る冥琳と祭さん。

「剛さん、蓮華様の嫉妬の炎で丸焦げになったりして」穏まで突っ込んできたよ……

向田

「それはそれで、光栄の至りではあるけどなぁ。ただ……」

雪蓮

「ただ……なぁに?」

向田

「そうなったらアイツらのメシ、誰が作るんだ?」全員が納得したような、呆れたような複雑な顔になる。

冥琳

「それはそれ、これはこれだ。しかし、お前も言うようになったモノだ」

向田

「色々と鍛えられてるからね……」

冥琳

「その調子で文官としての能力も鍛えてやろう。明日から授業開始だ」

向田

「……了解」ハァーッ、仕方ない。やるだけやってみよう……

 

 定例会議が終了し、各自解散になる。会議室には俺と雪蓮だけが残っていた。

向田

「雪蓮。蓮華をあんまり怒らせるなよ?あの子、真面目な子なんだから」

雪蓮

「真面目だからついつい誂うっちゃうなよね~」

向田

「尚、質が悪いわ!しかも姉なら、俺以上に蓮華の真面目さ知ってるハズじゃん?」

雪蓮

「剛って結構細かい突っ込みするわよね……ま、これも愛情ってヤツよ」軽く首を傾げるように言いながら、雪蓮は軽くウィンクする……相変わらずというか何というか。Sっ気の強い英雄さんだこと。

雪蓮

「それよりも……蓮華とは上手くいってるの?」

向田

「どうだろうなぁ。微妙なトコではあるけど」

雪蓮

「何よ、自信なさげね~……あなた達が上手くいってくれないと困るんだから、頑張ってよぉ」

向田

「困る?困るってどうしてだよ?」

雪蓮

「私が居なくなった時、孫呉を継げる人間は蓮華だけ……シャオがまだ幼い以上、蓮華が呉の王とならなければならないの。そんな時、あなたと二人くっついてれば、呉の力は更に増すでしょ?」

向田

「……そりゃそうかもしれないけど……でもあまり不吉な事言うなよ、雪蓮」

雪蓮

「不吉じゃないわよ全然……今は戦乱の世。そうなったとしても不思議な事じゃないわ」

向田

「そんな事……俺がさせないさ」

雪蓮

「……ふふ。ありがと」柔らかな笑みを浮かべた雪蓮が、

雪蓮

「あーあ……やっぱり蓮華に譲るの、止めよっかなぁ……」俺の肩に頭を乗せながら小さく呟く。

向田

「何言ってんだよ。雪蓮には冥琳が居るだろ?」

雪蓮

「男の中じゃ、剛が一番好きだもん」

向田

「またそういう事を言う。本気にしちまうぞ?」もう、いい加減俺も覚悟を決めないとな。

雪蓮

「私はいつだって本気だよ……けど、まぁ……剛には蓮華の傍に居て貰わないと。それが孫呉の為だもんね」

向田

「雪蓮……」

雪蓮

「ねぇ剛。今日、暇?」

向田

「えっ?……まぁ勉強は明日かららしいし、フェル達のメシを作る以外は暇といえば暇だけど」

雪蓮

「ならさ。ちょっと付き合ってくれる?」

向田

「どっか行くのか?」

雪蓮

「ん。そんなトコ」言葉を濁した雪蓮に手を引かれ、俺は会議室を出て城外へと向かった。

 

~視点なし~

 

 人目を憚った場所で、白装束を着た2人の男が何やら話し込んでいる。1人は于吉。もう1人の男は端正な顔立ちだが、その目付きから悪党であるのが分かる。

??

「作戦は失敗したようだな。于吉」

于吉

「すみません左慈。思わぬ邪魔が入りまして」左慈と呼ばれた男は、唾を吐き捨てる。

左慈

「デミウルゴスの加護を受けた奴か……ケッ、あのくたばり損ないの老いぼれが!」かつて世界の管理者だった左慈と于吉だが、謀反を企てたのがバレて、今は神界を追われた身となっていた。

于吉

「しかし、あの老いぼれには敵わないのもまた事実ですからね……苛ついたとしても所詮、何も変わりはしませんよ」

左慈

「ふんっ……決められた道筋を歩く事が、俺達の存在理由か……」

于吉

「そういう事です」

左慈

「くそっ……」

于吉

「ふふっ……子供のように拗ねますね、貴方は」

左慈

「うるさい……それより奴を処理する方法を考えろよ、于吉」

于吉

「それについては既に手を打っていますよ」

左慈

「何?どういう手を打ったんだ?」

于吉

「秘密の手です。あとは仕上げをご(ろう)じろ……ふふふっ……作られたとはいえ、私とてプロットの1つ。少しは動いてみせますよ……」意地の悪い薄笑いを浮かべる2人。しかしそれを見逃すまいと、誰かに見られていたのには気づかなかったようだ。

 

~向田視点~

 

 雪蓮に連れられ、俺は城からホンの少し離れた森の中にある小川へとやってきた。

向田

「……お。この城の近くにも小川があるんだ?……けど、何かあるのか?」

雪蓮

「ん。ここにね……母様が眠ってるの」

向田

「え……?」

雪蓮

「袁術……美羽の城は元々母様が落とした城……母様が死んでからはあの娘に奪われちゃったんだけどね」

向田

「そうだったんだ……でも、それじゃどうしてちゃんとしたお墓を建てないんだ?」

雪蓮

「母様が嫌がったのよ……死んでまで王という形式に縛られたくないってね」呆れたように苦笑する雪蓮……普通王なら大々的に葬儀を行い、立派な墓を建てるもんじゃないかと思うが、雪蓮のお母さんならそれぐらい言いそうな気もする……

向田

「それでこんなところに……」

雪蓮

「戦ばかりの毎日だったからね……死んだあとぐらいはのんびりしたかったんじゃないかしら」小さく笑いながらそう言った雪蓮が、持ってきていた布で墓石を磨き始める。

向田

「あ、手伝うよ」

雪蓮

「ありがと……」実は俺、今の思いを雪蓮に伝える前に、一度お母さんにご挨拶しておきたかったんだよね。雪蓮に倣い、川から水を汲み上げては、墓石に水を掛けて石を磨く。石を磨いたあとは周辺の掃除だ。雑草を抜き、重なった落ち葉を払って周辺を掃き清めた。

 

 

 

 

 

 




于吉の次の企みとは?あ、どうでもいいですけど蜀バージョンの26話を一部修正しました。主人公の闘い?方がより原作(恋姫でない方)に近くなってると思いますが、どうでしょうね……?
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