~曹操軍(視点なし)~
荀彧
「華琳様。右翼より秋蘭の一隊が合流します……これで状況は全て整いました」
曹操
「ありがとう……いよいよ英雄孫策との決戦……胸が高鳴るわね」
程昱
「敵は英雄孫策に率いられ、勇猛を謳う呉の兵士……新兵の多い先鋒部隊がどれほど持つのか。多少気になるところではありますね」
荀彧
「意気地のない新兵を奮い立たせるには、褒美をちらつかせるのが一番。戦場で名のある将を討ち取った者には、千金の褒美を取らすという触れを出しております。これで少しは意気地も出ましょう」
曹操
「兵は主義では闘えんか……それもまた当然でしょうね」
程昱
「しかし一部の部隊が抜け駆けの気配を見せていますからねぇ~。気をつけなければ」
曹操
「ふむ……春蘭にさえ手に負えない部隊か……どの部隊かしら?」
程昱
「呉郡より許昌に流れ着いた一団ですね。何でも許貢という人間に仕えていたらしいですが……」
曹操
「その部隊に数人つけ、挙動を監視しておきなさい。英雄との闘いを無粋な愚人に穢されたくはない」
程昱
「御意。しかし……孫策さんの動きが読めませんね……どうしてこんなに動きが遅いのでしょう?」
曹操
「そうね。それは私も気になっていたの……がっかりさせて欲しくはないな……巨大な敵を正々堂々と倒してこそ、この曹孟徳の覇道が華やかに彩られる……孫策。良い戦をしたいものね」
程昱
「御意」そこへ夏侯惇、夏侯淵姉妹が曹操へ報告に現れた。
夏侯惇
「華琳様!前線にて動きあり!呉の部隊が前方に展開し始めました!」
曹操
「ようやくお出ましか……」
夏侯淵
「展開が遅すぎますね…」
夏侯惇
「孫策がこの程度とは思えんな、確かに」
郭嘉
「何かあったと視るべきか……」
荀彧
「何か?何かとは何よ?」
郭嘉
「いや、そこまでは分かりませんが……何か気になります」
曹操
「……英雄同士の闘いに、天も無粋な真似をしてくれるものね。けれど、それが
程昱
「あらゆる事象、その全てに天意あり……そう考えれば、相手に合わせて私達が手加減をする必要は全くありませんね~」
曹操
「風の言う通りよ……春蘭、秋蘭。部隊を展開させなさい。誇り高く、堂々と。孫策と雌雄を決する為に……」
夏侯惇・夏侯淵
「「御意!」」
~孫策軍~
向田
「……曹操が来たな」
フェル
『うむ。して、どう出る?』
向田
「まず、雪蓮が曹操に舌鋒を浴びせる。そしたら俺達が突撃。以上だ」
ドラちゃん
『何だよ?いつものお前らしくねえな』
向田
「今度ばかりは俺も腹に据えかねてるからね。曹操を徹底的にボコらないと、気が済まないよ」
スイ
『あるじ怒ってるんだね~』
向田
「勿論」
フェル
『ならば遠慮は要らんな♪』
ドラちゃん
『殺るか♪』
スイ
『スイも殺るよぉ~♪』
作者
『字が怖い!あと向田はコイツら止めろ!』
スイ特製エリクサーのおかげでスッカリ元気になった雪蓮は部隊前方に躍り出て、舌戦を始めようとしていた。
向田
「……大丈夫か?」
雪蓮
「大丈夫……むしろ元気が有り余ってるわ……それに私は孫呉の王。いつまでも寝ている場合じゃないもの」
蓮華
「お姉様っ!」
冥琳
「雪蓮……!」
雪蓮
「……二人共。出陣するわよ」
蓮華
「念の為に治療を受けられた方が良いとお伝えしましたのに……受けてはくれないのですか?」
雪蓮
「必要ないわよ……さぁ、部隊にお戻りなさい」
蓮華
「はい。姉様」
冥琳
「……で?」
雪蓮
「で……って?」
冥琳
「文台様の墓前で何があった?」
雪蓮
「後で話すわ……」
冥琳
「……分かった」
フェル
『おい。今回は我にも挑発させろ』フェルが雪蓮の側まで寄ってきて、自分も舌戦に参加したいと伝える。
雪蓮
「えっ?うーん……面白そうね。それじゃ私に続いて何か言ってやれば?」
向田
「何考えてんだフェル?」
フェル
『気付かなかったか?奴らの中に、あの白装束がチラホラ混じっているぞ』
雪蓮
「……!」
冥琳
「……!」
向田
「なるほど……意趣返しって訳か」
フェル
『まぁ……そんなところだ』
曹操軍は城の手前で孫呉の軍を待ち構えている。自軍の前線にて、ジッと様子を窺っていた楽進が曹操の本陣まで下がり経過を告げる。
楽進
「敵軍より僅か二騎で前に出てくる影あり……あれは誰でしょう?」
曹操
「一人は孫策。侵略してきた我らの非を鳴らし、兵を鼓舞する為に舌戦を仕掛ける、か……定石通りね。その舌鋒はどこまで私の心に響いてくるのか……大人しく聞いてあげましょう」身内に裏切り者が出たのも知らずに、余裕ぶっこく曹操だった。
~向田視点~
雪蓮は馬に、俺はフェルに乗って自軍の先頭に並ぶ。これから雪蓮が曹操に舌戦を仕掛ける。フェルはその後に続いて敵を挑発するらしい。前に進みながら悪い笑みを浮かべてるけど、一体何を言うつもりなんだろう?
雪蓮
「呉の将兵よ!我が朋友達よ!我らは父祖の代よりうけついできたこの土地を、袁術の手より取り返した!」
雪蓮
「だが!」
雪蓮
「今、愚かにもこの地を欲し、無法にも大軍をもって押し寄せてきた敵が居る!敵は卑劣にも、我が身を消し去らんと刺客を放ち、この身を毒に侵させたのだ!」
フェル
『だが、我らが王は毒を制し、冥府の死神をはね除け、見事生還を果たした!』……なーんか最近のフェル、妙に芝居がかってるな。ひょっとしてその方面に目覚めちゃった?洛陽の件といい、袁術の件といい、俺が散々芝居させたのが原因かもしれないけどさ。
雪蓮
「この孫伯符、毒如きでは死なん!」
フェル
『我らが王の生死は天に委ねられた!すなわち呉こそ、この天下を治めるべしと、天が定めたのだ!』
雪蓮
「勇敢なる呉の将兵よ!その猛き心を!その誇り高き振る舞いを!その勇敢なる姿を我に示せ!」
フェル
『我らには天がついている!曹操なぞ恐れるに足らん!』まっ、まぁ……ある意味嘘ではないよな。あれ?額から変な汗が……。
雪蓮
「呉の将兵よ!我が友よ!愛すべき仲間よ!愛しき民よ!孫伯符、天命を受け、ここに大号令を発す!」
雪蓮
「天に向かって叫べ!心の奥底より叫べ!己の誇りを胸に叫べ!その雄叫びと共に、曹操を蹴散らせぇーっ!」
フェル
『アオォォォォ――――ッン!』フェルの咆哮が合図となって、一斉に曹操軍に突撃していく俺達。
~視点なし~
曹操
「どういう事だっ!誰が孫策を暗殺せよと命じたのだ!」雪蓮とフェルの舌鋒を聞いて、憤怒する曹操。
夏侯惇
「わ、我らがそのような事を、するハズがありません!」
曹操
「ならばナゼだ!ナゼ孫策が毒を受ける!ナゼこのような事が起こる!」
荀彧
「か、華琳様――――っ!」
郭嘉
「事情が判明しました!許貢の残党を名乗る者達で形成された一団が孫策の暗殺を目論み、失敗したようです!」
曹操
「その者共の首を
荀彧
「えっ!?だって暗殺は失敗したんじゃ……」
曹操
「例え孫策が無事だったにせよ……知勇の全てを賭ける英雄同士の聖戦を、下衆に穢された怒りが分からないのかっ!その者共、全ての首を刎ねよ!」
郭嘉
「しかし……」
曹操
「何だっ!」
郭嘉
「は、はいっ!我らが向かったところ、奴らは自ら舌を噛みきって、既に全員自決していました」
曹操
「……っ!どうなっている!?」
夏侯惇
「わ、分かりません!」
曹操
「……我らは一度退く!この戦で得る物は何もない!」
夏侯淵
「し、しかし華琳様!この状況で退却すれば、尋常ならざる被害を受ける事は必至!」
曹操
「ならば闘えというのか!?下衆に穢されたこの闘いを続ける事に、何の意味がある!どのような意義がある!最早この闘いに意味はなく、大義もなくなったのだ!軍を退かなければ私は――」
郭嘉
「ダメです!敵軍突撃を開始しました!」
曹操
「くっ……なんだこれは!このような闘い、誰が望んでいるというのだ……」悔し涙で目を潤ませる曹操。
夏侯惇
「華琳様!本陣を後退させて下さい!我ら
夏侯淵
「
許緒・典韋
「「はいっ!」」
曹操
「追撃やムダな闘いはするな!穢されたこの闘い……せめて無事に収拾せよ!」
夏侯惇・夏侯淵
「「はっ!」」
~向田視点~
一方、勢いづいた俺達孫策軍は、蓮華を筆頭に、後退する曹操軍の兵士を追いたてていた。俺?部隊の指揮をフェルに任せて、本陣に避難したけど何か?
フェル
『敵を殲滅せよ!我らに手向かう者は、天に背くも同然と心得よ!』戦場を駆け巡るだけで曹操軍の兵士を吹っ飛ばしていくフェル。
ドラちゃん
『みんなエラいブチ切れようだな。俺は暴れられるから良いんだけどよ』
スイ
『雪蓮おねーちゃんの仇だよぉ~!』火魔法を全身に纏って、辺りを火の海に変えるドラちゃんに、巨大化して敵兵達に覆い被さり、丸呑み状態にして窒息させるスイ。これだけで、曹操軍は半分ぐらい減ったんじゃないかな?あとスイ。雪蓮生きてるからね?ま、君のおかげなんだけど。その一方で、蓮華達の勢いも止まらない。
蓮華
「進め!進め!進め!進め!曹操の兵共を血祭りにあげよ!殺し尽くせ!腐った魂を持つ下衆共を!その血を呉の大地に吸い込ませるのだ!」馬で駆けながら、剣を振るい、兵士さん達を鼓舞する蓮華。
兵士達(モブ)
「「「「ウオォォォォーッ」」」」
祭
「黄蓋隊に告げる!一兵たりとも敵を逃がすな!みなみな殺し尽くせ!良いか!敵兵の耳を削げ!鼻をもげ!目玉をくりぬき、喉を貫け!敵
兵士達(モブ)
「「「「ウオォォォォーッ」」」」
思春
「殺せ!殺せ!殺し尽くせ!我らの怒り
兵士達(モブ)
「「「「ウオォォォォーッ」」」」
明命
「邪魔者は殺して下さい!一人として逃がしてはダメです!敵に……この世の地獄を味合わせてやるのです!」明命も!?やっぱみんな、冷静でいられないんだな。俺だってムカッ腹にキテるぐらいだしね。
兵士達(モブ)
「「「「ウオォォォォーッ」」」」
冥琳
「……雪蓮。向田」
雪蓮
「……なに?」
冥琳
「この状況、いつまでも続かん……全軍を投入して奴らの殿を痛撃するぞ」
向田
「……」
冥琳
「……冷静さを失うな……狂気に溺れるな……感情に流されるな。それが軍師というものだ」
向田
「冥琳……!」妙に落ち落ち着きはらった冥琳に、俺はイラッとして何か文句を言ってやろうとしたが、雪蓮に制された。
雪蓮
「ふふっ……良いのよ剛。冥琳……ちゃんと分かってるんだから」
冥琳
「闘いはここで終わりではない……上手く幕を引かなければ、我らはこの戦国乱世から退場するしかなくなるだろう。そんな事……私は望んではいない。雪蓮、貴女も望んではいないでしょう?」
向田
「雪蓮の望み。それは――」
雪蓮
「……皆が笑って暮らせる世界を作る」
冥琳
「その為にも……止まっては居られんのだよ」
向田
「……分かった。スマン冥琳」冥琳の言葉に頷きを返したあと、俺は大きく深呼吸をする。戦場の空気――。血の匂いの混じった空気は、鼻腔の奥に不快さを残す。だけど……沸き立っていた頭の中が、ほんの少しだけ落ち着いた。
今の俺達がやらなければならない事。それはこの闘いを無事に治める事。
向田
「そういう事か……」
雪蓮
「そうよ。冥琳、剛。協力してね♪」
~曹操軍の殿にて~
兵士(モブ)
「し、将軍!もう前線は保ちません!」
夏侯惇
「分かっている!くっ……なんだこの兵共は!死も考えず、がむしゃらに突っ込んでくる!」
夏侯淵
「皆、自分達の王が天祐を受けたと思っているのだ。毒にすら打ち勝ったという王に、絶対の信頼と忠誠を寄せているのだ」
夏侯惇
「忠誠を誓い、か……気持ちは分かるがな」
夏侯淵
「華琳様の心中、さぞ悔しさに満ちていらっしゃいるだろうな……」
夏侯惇
「こんな奴らとまともに闘うような気にもならん……さっさと退却しよう」
夏侯淵
「賛成だ……全軍、撤退するぞ」夏侯淵は伝令兵に、その旨を伝える。
兵士(モブ)
「はっ!」こうして俺達は何とか曹操軍を追い払うのに成功した。
原作との違い
・雪蓮が生きているので、彼女の死に関する蓮華達のセリフはカットしたり、冥琳達のセリフが一部の入れ替わったりしている。そのせいで何となくセリフが穴だらけのような気がします……
・次回は向田が針のむしろに?あと作者は荀彧アンチなので、ファンの方は次回以降はお読みになるのはお薦め致しかねます。