向田
「いよいよ明日かぁ……」夜、俺は寿春城に与えられた部屋でひとりごちる。明日は叛乱軍を鎮圧しに向かうのだが、今から不安と苛立ちが入り交じる中、この世界にやってきたあの日の事が頭に浮かんだ。
そもそも俺が元居た世界からレイセヘル王国に来たのは、『勇者召喚』に巻き込まれたのが原因だった。
神官(モブ)
「勇者召喚の儀に
それに召喚した勇者は4人だったのに5人だったらから、国のお偉いさん達はみんなビックリして、とりあえず全員鑑定の魔道具とやらでステータスの鑑定を調べられた。
その結果、俺以外の4人が、『選ばれし勇者』だったけど俺だけ『巻き込まれた異世界人』。流石に落ち込んだよ……体力の数値とかも、みんな700から800あるのに俺は100前後。それでもこの世界では強い方らしい。今思えば、あっちの大陸基準なんだろうな。こっちじゃ俺、恐らくシャオより弱いし。つーか雪蓮を始めとして、この大陸の人達強すぎないか?
話が逸れたがスキルに関しても、共通の鑑定やアイテムボックス以外、他の4人が聖魔法とか聖剣術、聖槍術に聖弓術とかお偉いさんを驚愕させるモノだったのに対して、俺のスキルは『ネットスーパー』。それを知った高校生4人の内、3人に笑われたよ。お偉いさん達は頭に?が浮かびそうな状態だったし。
しかもこの国の王様がまた、胡散臭かったんだよな。そもそも国が大変な危機に晒されているっていう話だったけど、身につけている王様のマントは、ゴテゴテと宝石を散りばめた、派手なモノだったし王妃様も明らかに贅を成してますって感じのドレスを着ていた。これはあかんタイプの異世界召喚だと思った俺は、舌先三寸で王様達を言いくるめ、当面の生活費だけ貰って城を後にした。
??
「向田さん、待って下さーい!」城を出た俺を呼び止める声がした。振り向くと高校生4人組の1人で、俺のスキルを唯一笑わなかった爽やかイケメンの男子だった。
向田
「君は確かあの高校生4人組の……なんで俺を追ってきたの?」
??
「僕は
向田
「そうか……で、君はこれからどうする?」
有希
「そうですね……行く宛もないし、しばらくご一緒しませんか?」これは渡りに船だ。勇者の実力のある彼なら護衛には最適だし、何より同じ境遇の人間が一緒なら精神的にも心強い。こうして俺と有希君は臨時のパーティーを組む事にした。
まずは服を何とかしようとなったので、街中で子供達に聞いた、まともそうな服屋に入る。スーツ姿の俺と、学生服の有希君の格好は何かと目立つからな。適当に服を見繕うと、俺が貰った金で支払う。有希君も幾らか所持金はあったみたいだけど、現代日本の金じゃあな……その夜は安宿に泊まり、今後の事を話し合った。
その後、俺独自のスキル『ネットスーパー』を試してみる。
向田
「ステータス・オープン」と唱えると、空中にネットスーパーまんまの画面が浮かんだ。その端にはコインの投入口がついている。銅貨を2、3枚入れてみると選択画面に変わり、あんパンと水を選択すると、そこから本当に出てきた。もう1回、今度は銀貨を1枚入れて、大きめの弁当を買う。現役高校生の有希君にはあんパンだけじゃ足りないだろうしね。
有希
「ありがとうございます。いつか代金は返します」そう言って有希君は弁当を食べる。因みにこの『ネットスーパー』、あっちの世界の金も使える事が、後になって分かったので弁当代は日本の通貨で返してもらった。
食後、俺は本人の了承を得て、有希君を鑑定させてもらって俺自身のステータスと比べてみる。以下が、俺と彼のステータス(初期)だ。
【名 前】ムコーダ
【年 齢】27
【種 族】人間
【職 業】巻き込まれた異世界人
【レベル】1
【体 力】100
【魔 力】100
【攻撃力】78
【防御力】80
【俊敏性】75
【スキル】鑑定、アイテムボックス、火魔法、土魔法
……で【固有スキル】がネットスーパーか……。そこへいくと有希君のステータスはスゲぇな……
【名 前】ユキ(ユキ・イズミ)
【年 齢】16
【種 族】人間
【職 業】召喚された勇者
【武 器】聖弓
【レベル】 1
【体 力】910
【魔 力】845
【攻撃力】877
【防御力】903
【俊敏性】799
【スキル】鑑定、アイテムボックス、氷魔法、光魔法
【固有スキル
へぇ……闘う時は弓を使うのか。まぁ、流石勇者に選ばれただけの事はある。俺はもう1度自分のステータスをみる。何か今更ながら、空しくなってくるよ。ん?ちょっと待て。【固有スキル】の創造と修復って何?
有希
「……何でしょうね?1度も使ってないから分かりませんが。ステータス・オープン」有希君が開いたステータスには
【固有スキル】
・創造。1度でも見たり触れたりした事があれば、有形無形に限らずどんな物でも創造出来る。但し、元の世界に実在しない空想上の物、概念しかない物は作れない。
・修復。この世界における壊れた物質、怪我をした生物等、有機物、無機物を問わず直せる。但し、、粉末状になる等原型を止めていない物は直せず、死んだ生物を生き返らせる事は出来ない。
……スゲぇスキルだな。ほぼ無双出来んじゃん。俺が呆気にとられてると、本人も自分のステータスにあぜんとしてたよ……
有希
「何だこれ?」
向田
「とりあえず使ってみなよ。やってみなくちゃどんなスキルか分からないだろ?」
有希
「そうですね……とはいっても、何でどんな物を……」この安宿の一室には固いベッドと、椅子と机しかない。有希君は少し考えながら、うーんと唸っていたけど何か閃いたらしく、無造作にベッドの上へ投げ捨てた学生服を手にする。
有希
「クリエイトッ……て唱えれば良いのかな?」すると学生服がバラバラに
向田
「ま、まぁ実験だしね……」俺は引きつった笑顔でどうにかフォローしようとする。
有希
「綿がないからでしょうね……一応、ガワになった生地の余りが中に詰まってはいますが」ぬいぐるみの目と鼻は袖のボタン、ジッパー部分は背中にくっついている。
『リペア』彼はもう1つのスキルを試した。ブサイクなぬいぐるみが元の制服に逆戻りしていく。因みに有希君の高校の男子制服は、前をボタンじゃなくてジッパーで閉めるタイプだった
翌日。この国を出て、隣のフェーネン王国へ行こうと決めた俺達は冒険者ギルドへ立ち寄り、隣国行きの馬車がないか問い合わせる。ちょうどタイミングよくこれから出発する乗り合い馬車があり、2人なら充分乗り合わせられると聞かされたのでそれに乗る事にした。
馬車内にいた冒険者パーティー
そういえばフェルと出会ったのも、この旅での出来事なんだよな。それから有希君と3人で、冒険者稼業に精を出すようになって(俺はメシ係だったけど)なし崩し的にスイとドラちゃんを従魔にしていって、気がつけば驚くほどの大金が手に入るようになっていった。しかも俺がニンリル様にどら焼や、色んなお菓子をお供えしたのをきっかけとして、自分達もお供え欲しさに神様ズがスイとドラちゃんに半ばムリヤリ加護を与えて、酒やらお菓子やら高級化粧品をねだるまでに。この世界の神様ってホント威厳ないよね……。
それまで稼いだ金を互いに出しあって、レオンハルト王国のカレーリナに豪邸を買ったんだけど、2人と従魔トリオだけじゃ広すぎるってんで、ランベルトさんを通じて奴隷を雇い家の管理やらその他業務をやってもらおうとなった。最初奴隷と聞いて、有希君はあまり良い顔をしなかったけどこの国は奴隷にも人権が認められているし、ある程度の自由も約束されてると分かるとようやく納得してくれた。
奴隷商でアルバン一家とトニ一家、3姉弟を含む元冒険者5人を購入して雇い、しばらくのんびり生活していた俺がいつものようお供えをしていたら、神界が何やら騒がしい。神様ズを怒鳴り散らす声が、俺の耳にも響いた。これがデミウルゴス様と最初の出会いだった。それでデミウルゴス様から転移魔法のスキルを貰って、その能力で三國志時代の中国にそっくりな、この大陸へやってきたんだよね。有希君もしばらくソロで冒険者を続けていくって事でこの世界に来て、彼とは初めて袂を分かつ事になった。そういえばこの前帰った時も家に居なかったからどうしたのかとアルバンに尋ねると、以前このレオンハルト王国を訪れる途中で知り合った冒険者パーティー『
??
『オイ起きろ』誰かの声で目が覚める。どうやら戻ってきて、色々考えている内に寝入ってしまい、今までの出来事を夢に見ていたようだ。
フェル
『早くしろ。今日は謀叛人共を始末しに行くのだろう?』始末って……まぁ今日はこれから、叛乱の鎮圧に向かうんだけど。そういえば雪蓮が、今後は蓮華に指揮を一任出来るように鍛えると言ってたな。ともなれば俺もいよいよ、当初の約束を果たさなきゃならないな。フゥーッ、ため息を1つ吐いて俺はトリオと一緒に城門を出た。
次回は叛乱軍の元へ。そして、上手くいけばアンチ荀彧話になります。