祭
「権殿……」
蓮華
「――――」
祭
「権殿……」
蓮華
「――――」
祭
「権殿っ!」
蓮華
「えっ!?」
祭
「えっ、ではありませんぞ。先ほどからお呼びしておるのに、ぼんやりとして……」
蓮華
「あ、す……すまない」
雪蓮
「構わないけど……蓮華。少し緊張しすぎよ」
祭
「これから行うは、たかが内乱の鎮圧……もう少し鷹揚に構えなされ」
蓮華
「う、うむ……」
冥琳
「敵の本拠地まであと四里ほど……そろそろ全軍に戦闘態勢を取らせた方がよろしいかと」
蓮華
「そ、そうだな……頼む」
冥琳
「御意」雪蓮、冥琳、祭さんはその場を去った。
今回の叛乱では総大将となって軍の指揮を執るようにと、雪蓮から命じられた蓮華。反董卓連合の時も、蓮華は呉の大将として闘ったが、あれは多くの諸侯の一軍に過ぎなかったからな。本格的に軍を背負うのは今回が初、といっても過言じゃない。いつになく鯱張っている蓮華の緊張を、どうにか解そうとする俺。とはいえ蓮華の性格じゃ、変に気を遣った言葉を掛けても素直に受け止めないだろう。それなら俺から弱音を吐くのもアリかな?
向田
「……なんか緊張してきたなぁ」
蓮華
「つ、剛もか?実は私もなんだ……」
向田
「総大将として初めての出陣だもんな……緊張して当たり前だと思う」
蓮華
「当たり前……なのか?」
向田
「少なくとも俺はそう思うよ?」
蓮華
「そ、そうか……剛もそう思うか」
向田
「だけどまぁ……その緊張にも慣れていかないといけないのかも」
蓮華
「そうだな……はぁ……」
向田
「どうした?」
蓮華
「こんな事で……私は姉様のように上手くやれるのだろうか……」
向田
「うーん……それはちょっと違うと思う」
蓮華
「違う?」
向田
「そう……雪蓮は雪蓮。蓮華は蓮華。雪蓮のやり方を真似たって、蓮華は雪蓮じゃないんだから、上手く出来るハズないって思うんだ」
蓮華
「……それは私が姉様より無能だと。そう言いたいのか?」
向田
「そうじゃない。その人にはその人に合ったやり方があるハズって事だよ。そもそも自分の真似をしろなんて、雪蓮は言ってないだろ?それなら雪蓮自身が総大将をやれば良いわけだし」
蓮華
「そう……なのか?」
向田
「そう改まって聞かれると、自信満々にウンとは言えないけど」
蓮華
「……ふふっ」
向田
「な、なんでそこで笑うんだよ?」なんか釈然としないが、蓮華の緊張も解れたみたいだし良しとしよう。
蓮華
「それより……剛の率いる後詰めの部隊、準備は整ってるの?」
向田
「ああ。幸い、副官さんが優秀だからな。俺が指示を出すのはフェル達だけ。楽なのは良い事だ」
蓮華
「何を言ってるんだか……剛の部隊も戦力の一つに数えているんだから、しっかりと頼むわよ」
向田
「了解」すっかり元気を取り戻した蓮華に満足した俺は、自分の部隊を率いるべく、後方へと下がった。
~視点なし~
蓮華
「ありがと……剛……」向田が後方へ下がり、姿が見えなくなってから聞こえないように呟く蓮華。
雪蓮
「蓮華。どうしたの……?」
蓮華
「姉様……いえ、何でもありません」
雪蓮
「ふふっ……剛の事を考えてるんでしょ?」
蓮華
「だ、誰があんな奴の事を考えてるものですか」
雪蓮
「じゃ、考えてないの?」
蓮華
「……当然です」
雪蓮
「……ならそういう事にしておくわ。でもね……人はみんな、本音と建前の狭間で生きてるモノ。真面目なのも良いけど、少しぐらいは自分に甘くないと、息が詰まっちゃうでしょ?」
蓮華
「何を仰りたいのですか?」
雪蓮
「公と私。その二つを上手く使い分けろ、って事よ。さっきのは現国王として次期国王へ言った公の言葉。私については……私がとやかく言う事もないんじゃない?」
蓮華
「……??ですから何を?何が言いたいのですか?」
雪蓮
「……あらあら。ここまで言って分からないなんて。真面目の上に下品な言葉がつくわね」
蓮華
「何を回りくどく言っているのですか?……意味が分からないのですが?」
雪蓮
「うーん……なら自分で考えてご覧なさい……もっとも剛なら、すぐに意味を理解するでしょうけど」
蓮華
「剛が?ふむ……ならばあとで聞いておきましょう」
雪蓮
「ふふっ……好きになさい♪」
蓮華
「はい。それより姉様。そろそろ敵軍との接触もあるでしょう。全軍を編成します」
雪蓮
「ええ」雪蓮は別動隊の元へ下がり、入れ替わりに思春が報告にくる。
思春
「蓮華様!叛乱軍は籠城を選択したようです!城門を固く閉ざし、城壁に弓兵を並べております!」
蓮華
「……城に籠もっただけで、我らの怒りを防ぐ事が出来ると考えるか。愚かな奴らだ……祭!亞莎と共に、先鋒を率いて正門を突破せよ!」
祭・亞莎
「「御意!」」
蓮華
「思春、明命はそれぞれ東門と西門に向かい、城内の兵を混乱せしめよ!」
思春・明命
「「御意!」」
蓮華
「小蓮と穏、剛は祭の後方より援護……城壁上の敵を一掃してしまえ」
小蓮・穏
「「はーい♪」」
向田
「了解。みんなも頼むよ」
ドラちゃん
『オウッ!……うん?フェル、何か変じゃねえか?』
フェル
『どうした?……うむ、奴ら魔物を使役しとるぞ』
蓮華
「何だとっ!?」
向田
「……マジっすか?」
スイ
『い~っぱい居るねぇ』
蓮華
「クッ……作戦を変えるか!?」
向田
「大丈夫じゃない?」
蓮華
「……しかしっ!」
ドラちゃん
『魔物っつっても大したのは居ねーよ。
フェル
『臆するな。我らに任せておけ』
スイ
『ぜ~んぶスイ達がやっつけるよぉ♪』
向田
「じゃドラちゃんが上空で大ホロ鳥を、フェルはジャイアントホッグの始末をお願い。スイは数が多い鉄鼠を倒して」
フェル
『うむ、よかろう。あの猪は旨いからな』
ドラちゃん
『大ホロ鳥も結構イケるぜ♪スイだけ食えねえ奴らに当たったな(笑)』
スイ
『むぅ~』
向田
『スイ。あとでお菓子を買ってあげるから、今は我慢して鉄鼠を倒してくれよ』
スイ
『♪分かった~』
蓮華
「魔物共は剛達に任せて大丈夫そうだな……冥琳は後詰めとして後方待機……姉様を守ってやってくれ」
冥琳
「御意」
雪蓮
「え~?私の出番は~?」
蓮華
「姉様は王として、後方でドッシリ構えて居て下さい……ではこれより全軍を展開する!相手は身の程知らずの謀叛人共だ……一気呵成に制圧するぞ!」
全員(フェル、スイ、ドラちゃん除く)
「「「「御意!」」」」
蓮華
「聞け!呉の勇者達よ!今、我らは全ての心を一つにし、呉を!呉の民を守らなければならない時にある!しかし、今、城に籠もって我らに叛旗を翻した者共は、自らの
兵士達(モブ)
「「「「応っ!」」」」
蓮華
「これより叛乱軍を鎮圧する!皆の者!我が旗に続けぇぇぇぇ――――っ!」
兵士達(モブ)
「「「「「うぉぉぉぉぉぉーっ!」」」」」
~向田視点~
……叛乱軍と魔物の連合はそれほどの脅威ではなく、思っていたよりずっと楽に制圧出来た。勿論、フェル達ありきだけど。つーか叛乱軍の奴ら、これだけの魔物をどうやって集めたんだろう?勿論、ウチのトリオが負けるハズないけどさ……
向田
「これで魔物は全滅かな……?」
フェル
『我らは退くぞ。手柄なんぞ興味はない』そうだな……あとは祭さん達に任せよう。
ドラちゃん
「それよか大ホロ鳥とジャイアントホッグを回収しようぜ。あとで食うんだからさ」言うと思ったよ……
スイ
「猪さんっ♪鳥さんっ♪ご馳走いっぱいだね~」スイ。その前に鉄鼠の死体を片付けよう……一応こいつらの遺体も回収したよ。後になってカレーリナの冒険者ギルドで前歯が良い武器になると、結構な高値で売れたのでホクホクだ。
祭
「策殿ー!城門を突破したぞ!」
雪蓮
「よし!全軍突入せよ!」
亞莎
「はっ!祭様、よろしくお願いします!」
祭
「任せろ!黄蓋隊、城内にカチ込むぞー!」
兵士(モブ)
「応っ!」
亞莎
「思春さんと明命に伝令!城門を突破後は、城内中央を目指すように!いち早く首謀者の首を取って下さいと伝えて!」
兵士(モブ)
「はっ!」
亞莎
「祭様に引き続き、呂蒙隊も突入する!みなさん、いきますよ!」
兵士(モブ)
「応っ!」亞莎も日々成長しているようだな。嬉しいような、寂しいような……
穏
「おおー。亞莎ちゃん、中々堂に入った指揮ぶりですねー」
冥琳
「まだまだだな……亞莎には、これからの呉を担う人材になってもらわなければならん……穏もそのつもりでいてくれ」感心する穏に対し、冥琳は手厳しい。
穏
「了解してますよ♪」ほんわか笑顔を浮かべ、穏は大きく頷いた。相変わらずポヤンとしているようで、実はちゃんと考えてるんだよな。最近になって気づいてきた。
向田
「これで内乱は終結……になるのかな?」
蓮華
「……分からないわ。内乱の初期状態で迅速に対応は出来たつもりだけど」
冥琳
「心配せずとも大丈夫です。内乱はこれで終結に向かうでしょう」
蓮華
「そうね……ご苦労様、冥琳」
冥琳
「私は何もしておりません」
雪蓮
「今回の闘いの功は全て蓮華に帰すんじゃない?……良い号令だったわ」
蓮華
「おだてないで下さい……あんな号令では、姉様が率いていた時の兵の強さが万分の一も出ていません」
穏
「そんな事ないですよ♪立派で格好いい号令でした♪」
冥琳
「穏の言う通り……威厳とは自然に出てくるもの。焦らず、蓮華様なりにやれば良いのですよ」
蓮華
「私なりに、か……それは剛にも言われたけど、王とはそういうモノなのですか?」
雪蓮
「そうね……ただ一つ。言える事は、王一人が優秀では臣下の立つ瀬がない、という事かしら?」
蓮華
「立つ瀬がない?」
冥琳
「ええ。王は勇敢でありながらも鷹揚に構え、臣下の活躍出来る余地を残しておいて下さい……そうすれば忠勤のし甲斐もある」
蓮華
「活躍の余地……そう。そうか……そういうところまで考えて、姉様はいつもずぼらだったのですね」イヤ蓮華、それは違う気が……
冥琳
「いえ、雪蓮にそこまで深い考えはないでしょうね」バッサリいくなぁ、冥琳。
向田
「まぁ……それが雪蓮のやり方っていえばそうとしか言えないし。乗り気じゃないとか、気が向かないとか」
冥琳
「面倒とか面白くないとかもあるな」
穏
「お腹減ったからとか、眠いとかもありますね」
蓮華
「……そうなのですか?」蓮華に顔を向けられると、わざとらしく口笛を吹いて、目を合わさずに惚ける雪蓮。
蓮華
「(ピキピキッ!)ね・え・さ・まぁー!」
雪蓮
「キャー怖いぃ。剛助けてぇん♪」怒りのメーターが振り切った蓮華に、攻め立てられそうになった雪蓮が俺の背中に隠れようとした。
蓮華
「……全く。こんな姉様がどうやって皆をまとめる事が出来るたんだろ?」誰にともなく吐き捨てる蓮華だったけど、俺達の答えは決まっている。
向田
「勘、だろうなぁ」
冥琳
「勘だな」
穏
「勘ですね」
蓮華
「勘……そんなもので?何だか私の中にあった姉様の像が音を立てて崩れていくわ……」眉間に皺を寄せ、思わず唸る蓮華の姿に、俺達は苦笑を漏らす。とにかく……内乱は終結し、呉の国内には平和が戻った。
一方魏では荀彧が人目を避けて、ある人物と待ち合わせていた。
荀彧
「于吉。居るのでしょ?出てきなさいよ!」荀彧が呼び掛けると、于吉がいつの間にか姿を現していた。
于吉
「ふふっ……こんにちは、荀彧殿」
荀彧
「何が『こんにちは』よ!あんたの立てた孫策暗殺計画は大失敗だったじゃないの!おかげで華琳様の矜持はズタズタだし、どうしてくれるのよ!」
于吉
「……何を今更。魏の天下統一の為なら、手段を問わないと言ったのは貴女でしょう?それに……まさかの想定外の出来事に、私も戸惑っているんですよ」
荀彧
「とにかく!あんたの計画にまんまと乗った私もバカだったわ。こんな事がバレれば、私だって無事じゃすまないの。だから二度と私の目の前に現れないで!」
于吉
「……良いですね。その傲慢さ、身勝手な物言い。貴女こそ私の傀儡に相応しい……」
荀彧
「何よ!?私が従うのは華琳様だけよ!」
于吉
「その曹操も、貴女は裏切ってますよ」憤慨する荀彧に、于吉は薄気味悪い笑みを見せる。と、その一瞬後。
于吉
「縛」
荀彧
「うっ……」
于吉
「操」
荀彧
「――――」荀彧の目は虚ろになり、まるでただの人形のようになってしまった。
于吉
「さて、ちょうど良い傀儡も手に入れましたし。せいぜい利用させてもらいましょう……」そう呟いて于吉は荀彧共々、そこから消え失せた。
原作との違い
・雪蓮のセリフの幾つかは本来、冥琳や一刀が喋っている。
・叛乱軍が魔物を使役している
・荀彧と于吉の会話。ここから無印をベースにした展開になるかも?
次回、タグに書き足した通り、全く違う作品とクロスオーバーさせる予定です。