とんでもスキルで真・恋姫無双   作:越後屋大輔

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両原作を一旦離れたオリ展開になります。しばらく続きますが、お付き合い頂ければ幸いです。


第三十八席蜀トリオ、天下統一に向けて動くのこと

 有希が『不死鳥』と行動を共にしていた頃の話。いつものように冒険者ギルドから受けた彼らは、カレーリナから馬車で数日かかる街へとやってきた。今回の依頼はクーガルフという魔物の討伐だ。豹の斑模様の体毛の生えた狼型の魔物で、大きさは普通の狼とフェルの中間ぐらい。強さもCランクと、不死鳥のメンバーだけでも倒せるぐらいだったが、今回街に現れたのは100頭と、

如何せん数が多すぎた。しかし、彼らの中には辞退したとはいえ(実際は辞退というより拒否だったのだが)選ばれし勇者である有希が居た。

 

 結果、クーガルフの大半は有希の弓矢で退治された。

ラーシュ

「イヤ。ムコーダさんの従魔も()えーが、君もかなりの腕だな」

有希

「ええまぁ。弓は昔っからやってたんで……」幼少期から流鏑馬を習い、高校では弓道部に所属していた有希。だから召喚された時、弓士だったのかもしれない。勇者就任を蹴った今はもう、詳細を知る由もないが。

 何はともあれ、死体は回収し、依頼人から討伐証明のサインを受け取り依頼は完了した。そこまで終えると、日もとっぷりと暮れていた。有希は不死鳥に提案する。

有希

「今日中にカレーリナには戻れませんね。この辺りは宿もないし、野営をしましょう」不死鳥の面々も同じ事を考えていたようで、これを受け入れた。

 

 不死鳥と有希は別々にテントを張る。 有希は1人用の自分のテントを早々に張り終えると、不死鳥の面々の分も一緒に夕食を作り始めた。元々家が飲食店を経営していたせいか、料理は結構得意なのだ。

 来る途中でこのメンバーで捕獲したロックバードの肉と玉ねぎを鍋で炒めて水を入れて煮込んだら人参、じゃがいもを加えて火が通ったら、向田から譲られたカレールーを刻んで2つの鍋に溶かせば、チキンならぬロックバードカレーの完成だ。この国は米食があまり浸透していないので丸パンを添える。

有希

「皆さ~ん。夕食が出来ましたから食べて下さ~い」

ラーシュ

「おっ。もうそんな時間か」集まった不死鳥は鍋の中を覗き込む。最初こそ怪訝な様子だったが……

シードル

「これが晩メシか?」

ヘンク

「見た目は土っぽいけど……」

アロイス

「何とも良い香りだな……」

セサル

「……この香りには抗えない」香辛料の香りに鼻をくすぐられ、腹の音が鳴るラーシュ達不死鳥の面々。

ラーシュ

「もう我慢出来ん。俺は食うぞ!」

アロイス

「あっ、ずりぃぞリーダー!俺も食う!」

ヘンク・シードル・セサル

「「「俺も俺も!」」」全員がカレーの鍋に群がり、パンを漬けたり、塗ったりしながらバクバク食べていく。

有希

「やっぱりカレーは正義だよなぁ……」その様子を見ながらボンヤリ思っていた有希。その時、後ろの草むらからガサゴソと良何かが動く音がした。咄嗟に弓矢を構える有希の目の前に、牛ぐらいの大きさの奇妙な生き物が姿を表した。

??

『た、助けて欲しいっス。お、お腹が空いて死にそうっス……』驚く事に、生き物は人間の言葉を話した。これには有希も不死鳥のメンバーも茫然として、その場にで固まってしまった。

有希

「え?ムー○ン?」生き物は有希が小さい頃、絵本やテレビで見たフィンランドの某妖精にそっくりだった。勿論、ムー○ンを知るハズもない不死鳥は、生き物へ一斉に武器を向けるが有希はこれを宥めた。どう見てもこの生き物が、害ある魔物とは思えなかったのだ。

有希

「と、とりあえずカレーの残りで良ければ……」有希がまだ暖かい鍋と残りのパンを差し出すと、鍋に頭を突っ込んでガツガツ食べ始める。生き物はまだ7、8人分は残っていたカレーとパンをあっという間に平らげると、ようやく満足したらしい。四つん這いのまま、有希達に深々と頭を下げて礼を述べる。よく見ると四つん這いではなく、人の手に近い前足を地につけて、土下座の姿勢をとっていた。

生き物

『ありがとうっス。おかげで九死に一生を得たっス』下手な人間よりも、よっぽど律儀な生き物にスッカリ毒気を抜かれた有希と不死鳥。

有希

「良いよ気にしないで。元気出た?」

生き物

『おかげさまで。それで……お礼ついでにお願いがあるっスが……』

ラーシュ

「お願い?……俺達にか?」

生き物

『ボクを従魔にしてほしいっす。そんでご飯食べさせて下さいっす』生き物は再び頭を下げる。しかし、不死鳥のリーダーであるラーシュはこれを断った。

ラーシュ

「俺達は従魔を必要としてないし、メシを食わせてやれる余裕もないが……」言いかけてラーシュ以下、不死鳥の面々は有希を見つめる。

有希

「え、僕にこの子と従魔契約を結べと?」

ラーシュ

「そりゃそうだ。こいつはお前の料理が気に入って、従魔になりたいと言ってるんだし……」有希はしばらく頭を捻って考えていたが

有希

「分かりました。じゃあ僕が契約します」

生き物

『ありがとうっス。それじゃ早速名前を……』

有希

「その前にさ、君って何?」

生き物

『何?と仰いますと?』

有希

「種族だよ。僕らは人間であるように君だって、何らかの種族ではあるだろう?」

生き物

『種族っスか?……それがよく分からないっス』

有希

「そうなの?」有希が聞き返すと、生き物の声が耳ではなく脳に直接響いてきた。

生き物

『訳あってここでは詳細を語れないっス。他に誰も居ない場所でちゃんと事情はお話するっス』

有希

「(ああ。これが念話ってヤツか……)そっか。じゃあ今は仮契約って事にして明日の朝、家に帰ってから改めて契約しよう」

生き物

『了解っス!』

 

 不死鳥と別れると生き物を連れて、カレーリナの自宅に帰ってきた有希。始めは屋敷の全員に驚かれたものの、生き物が思った以上に人懐っこい性格だった事もあって日が沈む時間になると、生き物はスッカリみんなと打ち解けていた。

 そして夜も更けた頃。生き物と2人?だけになった有希が本契約を交わそうとすると、再び念話が頭に響いてきた。どうやら生き物からではなさそうだ。

??

『イズミ・ユキよ。儂が分かるかの?』聞きなれない老人の声に首を傾げた有希は向田達の話を思い出して、その声へ問いかけた。

有希

『ひょっとして……デミウルゴス様ですか?それとも元始天尊様とお呼びした方が?』

デミウルゴス

『どちらでも好きに呼べば良い。それよりお主に従魔を1頭、進呈したハズじゃが?』有希は生き物と身を見合わせる。

有希

『それって……この子ですか?』

デミウルゴス

『そうじゃ。四不象と( スープーシャン )いっての、元は儂のペット兼乗騎じゃ。それは利口じゃが世間知らずなトコがあるので、下界での修行も兼ねてお主に預けようと思ってのう。名前もお主が付けると良い』

有希

『では……謹んでお預かりします』

デミウルゴス

『うむ。よろしく頼むぞい』そう言い残してデミウルゴスとからの交信は途絶えた。

有希

「……つまり最初から僕と接触する目的だった訳だね。まぁ最高神様の使いじゃ滅多な事は口に出来ないか」

生き物

『お腹減ってて彷徨ってたのは本当っスけどね』

有希

「事情は分かったし、名前を付けようか」有希は結構切り替えの早い性格だった。もしかするとこの異世界に召喚されてから、割り切ったのかもしれない。

有希

「乗用……生き物……移動……うん、これかな。君の名前が決まったよ」

生き物

『ありがとうっス。それでボクの名前は?』

有希

「僕の世界にある乗り物から取って……プリウスってのはどう?」

生き物

『気に入ったっス。それじゃ今日からプリウスって名のるっス』

有希

「じゃあこれからよろしく。プリウス」

プリウス

『よろしくっス、ご主人!』

 

 こうして四不象のプリウスを従魔にした有希はその後はソロの冒険者として活躍した。その内ある街の冒険者ギルドで、奇妙な噂を聞いた。

冒険者(モブ)

「おい知ってるか、あの話?」

冒険者(モブ)

「あれだろ?海向こうにあるヨーク王国の……」

冒険者(モブ)

「ああ。何でもこっちの大陸に戦争を仕掛けるって、もっぱらの噂だぜ」

冒険者(モブ)

「やっぱりそうなると、俺達も兵として駆り出されるのかな……」

冒険者(モブ)

「かもな。あーあ、ヤだなぁ」これを聞いた有希とプリウスは真意を確かめようと、デミウルゴスに問い質す事にした。

デミウルゴス

『ヨーク王国が戦争を企んどると?』

有希

『はい。あくまで噂ですが』

デミウルゴス

『それはなかろう。しかし、ヨーク王国か……有希よ。お主、行ってみると良いぞ』

有希

『えっ……どういう事ですか?』

デミウルゴス

『うむ、何か面白い発見があるかもしれぬぞ。そやつに乗っていけば2日とかからず着くハズじゃ。それじゃあの』

有希

『え?ちょっと、待って下さいよ!』デミウルゴスは言いたい事だけ言うと、また交信を途絶えさせた。

有希

「ハァー……プリウス、デミウルゴス様っていつもあんな感じなのか?」

プリウス

『う~ん?昔からイタズラ好きなトコはあったっスね』

有希

「ここでボヤいてもしょうがないか。乗せていってくれるか、プリウス?」

プリウス

『合点承知っス!』有希はプリウスと共に、ヨーク王国へ行く決意をした。

 

 ヨーク王国のエドウィンという街に辿り着いた有希とプリウス。そこはこの世界の、どの国とも様子が違っていた。一言でいうと、現代地球の先進国さながらの文化文明を誇っていたのだ。

有希

「ビルに電車に自動販売機……一体どうなってるんだこの国は……?」プリウスから降りた有希は、ある意味では見慣れたハズの光景に唖然とする。

プリウス

『人もどこかせわしないっスね。まるでこの国だけ時間の流れ方が違うみたいっス』などと会話しながら街中を行く2人だったがプリウスが人酔いしたらしいので、人気のない場所を求めて町外れの湖まで移動した。

 

 その頃、蜀の現代人トリオはこの国の情報を得ようとエドウィンの街のあちこちを徹底的に探索していた。そしてこの街、もといこの国が地球の先進国に似た文明を持つ事を知ると、一軒の工房を訪れた。

 工房に居たのは1人のドワーフ。彼は金属を打ちながら、何かの部品を造っていた。一番人当たりが良く、女性である慶子がドワーフとの交渉に挑む。

慶子

「こんにちは。せいが出ますね」声をかけられたドワーフはぶっきらぼうに

ドワーフ

「何の用だ?言っとくが俺ぁ、武器は作らねえぞ。俺だけじゃなくこの国じゃ他のドワーフも同様だ」

慶子

「いいえ。武器じゃなくて移動用の乗り物を造ってほしいんです」

ドワーフ

「それなら受けても良いが……何を造りゃ良いんだ?」

こうは言ったが、実は蜀トリオは戦場へ大人数の兵士を連れていく為の大がかりな乗り物として、バスを生産するのが目的だった。

竜馬

「……これで当初の目的は果たしたな」

隼人

「ああ。これで蜀の天下統一に、一歩近づいたな」

竜馬

「桃香自身は天下には興味なさそうだけどな」

隼人

「しかし、奴の理想の為には天下統一は必須だろう」交渉を慶子に任せて、竜馬と隼人は件のドワーフの工房を見張りつつ、そんな話をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




オリ話はあと1話~2話半ぐらい続くと思います。なるべく原作ベースに近づけたいとは思いますが……
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