~向田視点~
俺と蓮華が敵城前にやってくると案の定、亞莎は穏の胸に顔を沈められていた。あまりに想像通りの展開に俺は乾いた笑いしか出なかったよ……
蓮華
「穏、策は決まっ……何をしてるんだ、一体?」
穏
「えっ?あ、あははー、ついつい亞莎ちゃんの可愛さに感動してしまいました」胸で窒息死なんて、流石に笑えないぞ?べ、別に羨ましくなんてないからな!
蓮華
「……大丈夫か、亞莎」
亞莎
「ケホケホ……はぁ~、だ、大丈夫です」
蓮華
「良かった……では亞莎。貴女の策を全軍に示しなさい」
向田
「頑張れ、亞莎」
亞莎
「は、はいっ!頑張ります!」大きく頷いた拍子に、落ちそうになった
亞莎
「スー……ハー……スー……ハー……」緊張しているのか、一
亞莎
「で、ではまず、敵軍に向けて軍使を出す!和平の使者を送ると申し伝えよ!」
兵士(モブ)
「はっ!」
亞莎
「軍使として文官一人を送る!……蓮華様。その者に持たせる手紙を二通、書いて頂けますか?」
蓮華
「書こう。文面は?」
亞莎
「一通には二名まで降伏を受け入れる、という強圧的な文面を。もう一通は相手を尊重するような、親しげな文面をお願いします」
蓮華
「ふむ?降伏勧告の手紙は分かるが、もう一通は何に使うつもりだ?」
亞莎
「疑心暗鬼を誘う為の布石とします」
向田
「あ…·なるほど。上手い事考えたなぁ」
蓮華
「剛は分かるの?」
向田
「うん……一方にきつく当たっておいて、もう一方には優しくすると……それを見た人はどう思う?優しくされてる人間を見て、何か裏取引でもあるんじゃないか……って勘ぐるだろ?」
蓮華
「……なるほど。布石とはそういう事か」
亞莎
「はっ……その後、敵の動きを見極めながら、軍を動かします。その時、手紙を渡した敵将の陣に向かって、旗を三度振ってから動きます」
蓮華
「手紙と、何かしら合図を送っているように見える旗、か……田舎者共はきっと内通者が出た、と思い込むだろうな。良い策だ、亞莎」
亞莎
「あ、ありがとうございます!」
蓮華
「では早速、その策を実行しよう……実務も全てお前に任せる。しっかりと頼むぞ」
亞莎
「御意です!」そう答える亞莎の表情はいつものオドオドしたモノではなく、自信に満ちていた。そして───
亞莎の示した策が早速実行に移された。その反応はドンピシャって奴か?敵軍に動揺が走っているのが、外部に居る俺達にも手に取るように分かった。
穏
「お見事~♪亞莎ちゃんの策が大当たりしたね。敵軍、動揺しまくりだよ」
亞莎
「ほあー……ホントですねぇ」
ドラちゃん
『……アハハッ!自分で考えた策の結果に、自分で感心してどうすんだよ』ドラちゃんよ、それは俺もちょっと思ったけど。わざわざ言わなくて良いからね?……通訳求められるのも俺なんだし。案の定、ドラちゃんの言葉を訳すハメになった俺。
亞莎
「あ、や……今まで、策の効果なんて意識した事ありませんでしたから……」まぁ…─やってみて初めて分かるってパターンだよな、これ。つーかこれまで策なんて考えもせず、ただ攻めまくるだけの君らに言われたくないと思うけど?
フェル
『……たかが縄張り争いにこれほど手間をかけるとは。人間とは厄介な生き物だ』イヤ、それほど手間でもないと思うけど……縄張りというか、土地の所有権なんて俺が元居た世界じゃ、やれ法律的にどうとか、居住権がどうだとか……手間が掛かるどころじゃ済まないけどね。まぁ、そんな事はこの際どうでもいいんだ。
蓮華
「とにかく効果を目の当たりにして、どう思った?」
亞莎
「凄いです。これが策の力なんですね……でも……今回は穏様の助言があったからこそだと思いますし……」
穏
「ううん。私は大した事してないよ?この結果は亞莎ちゃんの力があったからこそ……だからもっと自信を持って良いんだよ♪」
亞莎
「は、はぁ……自信、持って良いんでしょうか」
穏
「慢心はダメだけどね……そうして少しずつ、策の良い点、悪い点を覚えていこうね♪」
亞莎
「はいっ!これからもよろしくお願いします!」
穏
「ああんっ、もう♪素直で可愛い♪」そして亞莎は再び窒息死寸前に陥る。
亞莎
「む、むぐぐー、穏様、胸がむぐぐ」その様子を見ていたスイが穏と亞莎の間に入り込み2人を引き剥がし、亞莎はなんとか事なきを得た。
スイ
『大丈夫ぅ~?』
向田
「……穏、そういうのは後にしような」
穏
「あはは~っ、素晴らしい本を読んだ時みたいに、抑えが効かなくなっちゃいましてぇ~」
フェル
『お主……しばらく本は読むな』フェル……あの日の事を思い出したか。まぁそう言ってやるなよ。穏に本を読むなってのは、お前に肉食うなって言うようなモンなんだからさ。
穏
「さぁ亞莎ちゃん、最後の仕上げといきましょ♪」穏はフェルの苦言などどこ吹く風で、亞莎の肩を励ますように叩いた。
亞莎
「はいっ!では周泰の部隊に旗を振れと伝えろ!一刻の間に七度旗を振れ!その後、軍を動かします!」
兵士(モブ)
「応っ!」
~その頃。南方同盟の城門前~
南群兵A(モブ)
「お、おいっ!あれを見ろ!」
南群兵B(モブ)
「何だあれ?旗を振ってる……?」
南群兵A(モブ)
「そういえば、この籠城している軍勢の中で、内応している部隊があるって噂があったな……」
南群兵B(モブ)
「ならあの旗はその合図かよっ!?」
南群兵A(モブ)
「そんなの知るか!」
~呉勢に戻る(向田視点)~
蓮華
「……良い具合に混乱してきたな」
亞莎
「はい。後は軍を動かすだけです」
向田
「でも、どうやって軍を動かすの?」
亞莎
「ええと……前曲先鋒を明命に任せ、右翼に思春さん、左翼に蓮華様を配置。中曲に穏様と剛様、後曲は私と小蓮様で率います。右翼には策に利用した将が居ます。その将は徹底的に無視し、残りの将へと攻撃を仕掛けるのですが、策の性質上、右翼の攻撃はかなり激しくなると予想されます。その攻撃を右翼の思春さんと中曲の穏様の部隊でうまくいなして欲しいのです」
思春
「分かった。やってみせよう」
穏
「了解♪」
亞莎
「周泰隊の攻撃を、孫権様の本隊と私と尚香様の部隊で城門突破を助けます!向田殿一行は先鋒と本隊の間に入り
蓮華
「分かった!」
小蓮
「了解♪」
向田
「……だ、そうだ」
ドラちゃん
『今回は魔物も居なそうだし、簡単な仕事だな」
フェル
『まぁ、次回に期待しておこう』
スイ
『楽勝だね~』……なんか俺達だけ気が抜けてないか?そりゃ、こいつらとまともにやりあえる兵士なんてまず居ないだろうけどさ。
亞莎
「この闘いをもって呉の天下統一の狼煙とする!各員奮励努力せよ!」
兵士達(モブ)
「「「「応っ!」」」」
亞莎
「全軍、攻撃開始ーっ!」
さて。意気揚々と敵城へ突入した俺達。連中も一応フェル達の噂は耳に入っていたようで、櫓から弓で一斉攻撃を仕掛けたり地面に罠を張った
フェル
『今はその程度の事、どうでもよかろう』フェルにそう言われて俺も気持ちを切り替え、明命の結果報告を聞く事にした。
明命
「先行した部隊により敵玉座敵玉座の間の占拠を確認!生き残った敵軍は全て投降しました!」
蓮華
「よし!思春は兵糧庫と宝物庫の確保に行け!」
思春
「御意!甘寧隊、我に続け!」
亞莎
「投降した兵は百人単位で一纏めにしておいて下さい。後ほど検分して扱いを決定します」
穏
「了解~♪」
亞莎
「よろしくお願いします……ふぅ」
向田
「お疲れ様……良く頑張ったね」
亞莎
「あ、はは……私、頑張れたのでしょうか?」
蓮華
「充分だろう……敵に多大な損害を与えながら、味方の被害は最小だった。素晴らしい出来よ」
亞莎
「は、はい!ありがとうございます!」
蓮華
「これからも、私を支えてね、亞莎」
亞莎
「御意!」
向田
「これで南方はほぼ制圧……ってトコかな?」
穏
「そうですねー。結束して抵抗していた勢力も霧散しましたから、後は時と共に恭順を示す勢力が増えていくでしょう」
向田
「なら一段落ってトコか……」
穏
「南方はそうなるでしょうけど、まだまだ西と北が残っていますからねぇ~」
蓮華
「そうだな。まだまだ気が抜けんが……今は、住民達の慰撫が先決だろう。穏、手配を頼む」
穏
「了解です♪支援物資は剛さん、よろしくです~」
向田
「分かった。必要な物があったら言って」
蓮華
「代官の選抜、組織図の確定……やらなければならない事は山ほどある。手伝ってね、剛」
向田
「当然」
~一方、建業の城(有希視点)~
向田さんが孫権さんを中心とした南方制圧部隊についていく事になり、僕は孫策さん、周瑜さん、黄蓋さんとこの本拠地である建業の城に待機する事になった。今は城門前で、黄蓋さんと周瑜さんと一緒に外の様子を窺っている。
祭
「むぅ……つまらん……つまらん……つまらん。どこかから誰か攻めてこんかのぉ」何言ってんだこのオバハンは!?
有希
「こ、黄蓋さん。何を物騒な事を言ってるんです!もう、ワガママばかり言ってちゃダメですよぉ」
祭
「いやしかしだな。若い連中が戦場で暴れておるのに儂だけ留守番なんだぞ?……つまらんじゃろうが」
有希
「留守番だって重要な役目なんですから、つまらんとか言うのはやめて下さいってば」
祭
「無理じゃ」
有希
「無理じゃって……(呆)周瑜さんも笑ってないで何か言って下さいよぉ」
冥琳
「ふっ、すまん……相変わらずお元気な事だと思ってな。有希、黄蓋殿はこういうお方だ。諦めろ……」
祭
「むぅ~……暇なんじゃもん」いい
冥琳
「何がもんですか、いい年齢をして」周瑜さん言っちゃったよ!ま、長い付き合いだからこそなんだろう。
祭
「年齢の事を言うのは卑怯だぞ、公謹」
冥琳
「ワガママな先達にはそれぐらいは言わせてもらわないと。お前もそう思わんか」僕に振られても困ります。ところでさっきから誰か足りない気が……
祭
「むぅ……」膨れっ面の黄蓋さんをスルーして、僕は周瑜さんに尋ねる。
有希
「孫策さんはどうしたんですか?」
冥琳
「雪蓮なら『そろそろ敵が出そう』と一隊を率いて城を出たが?」
祭
「なんじゃと。策殿め、抜けがけしおって!」この人達は揃いも揃ってなに考えてんの?こんな事なら向田さんの頼みを断れば良かったかな……?その時、僕らとは別の場所で見張りをしていた兵士さんが、血相を変えて現れた。
兵士(モブ)
「も、申し上げますーっ!」
祭
「なんじゃ!」
兵士(モブ)
「つい先ほど、深紅の呂旗が国境線を突破!この城に向かう途中、孫策様の部隊と激突したとの報告が!」
祭
「やった!」何がやっただ!?いい加減にしろ、このオバハン!
冥琳
「すぐに蓮華様に伝令を出せ!我らは籠城の準備をするぞ!」
有希
「籠城ですか!?」
冥琳
「当たり前だ。この城の兵力は少ない。蓮華様達が戻って来なければ、飛将軍と讃えられる呂布に太刀打ち出来ないだろう」
祭
「儂がおるぞ!ここにおるぞ!」
冥琳
「居て貰いますよ。城内にね」
祭
「……公謹。ちょっとだけ出るのはダメか?」
冥琳
「却下です」
祭
「ううー……折角……折角、活躍出来る好機が来たと思ったのにぃ~……」
冥琳
「……それにしても。こんな時に限って、雪蓮はなにをしているんだか……有希よ。スマンが従魔と共に雪蓮を探して、連れ戻してくれんか」
有希
「……分かりました。プリウス!」
プリウス
『合点っス!』僕はプリウスに乗って、上空から孫策さんを捜索する事に……しかし呉の国って、ほぼ周瑜さんと孫権さんで保っているようなモノだな。
すみません。突然ですが、別作品を更新したいのでこちらをしばらく休載させて頂きます。楽しみにて下さる皆さま(居るのかな?)には申し訳ないのですが、次回更新はしばらくお待ち下さい。