とんでもスキルで真・恋姫無双   作:越後屋大輔

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段々話を作るのにスランプが増していくような気が……


第四十四席呉軍、再びダンジョンへ潜るのこと

~向田視点~

 

冥琳

「……やれやれ。黄蓋殿は幾つになっても血の気の多い方ですね」祭さんが出かけていってから、冥琳が苦笑しながら漏らす。

蓮華

「母様の代からの前線指揮官だからな……後進に道を譲ったとしても、若い頃の(たぎ)りはそうそう収まらないのだろう」

冥琳

「本当に。まぁ……手綱を委ねてくれるだけ、雪蓮よりはマシ……というものかもしれませんね」2人してタメ息吐いてるよ……当の雪蓮といえば

雪蓮

「ぶぅ。二人共ヒドーい……」って膨れっ面だけどね。

冥琳

「それにしても。よくぞ間に合ってくれました。あのまま呂布に攻められ続けていれば、一週間も経たずに建業は落とされていたでしょう」

蓮華

「兵糧の手配などを剛が効率良くやってくれたからな。軍を素早く動かす事が出来た」

冥琳

「ほお。向田が……」感心するように俺を見つめる冥琳だけど、別にそこまで大した事はしてないよ。冥琳や穏がいつもやってる事を見様見真似でやってみただけだからね。

雪蓮

「やっぱり、私の目に狂いはなかったわね。良い将になったじゃない?」

冥琳

「……自分で言わないの」

蓮華

「そんなの当然だ」

向田

「へっ?」

蓮華

「……剛は常に、私の傍に居たのだからな」

雪蓮

「あらあら」

冥琳

「おやおや……ふふっ」まるで自分が育てたとでも言うような口ぶりに、雪蓮と冥琳が本気とも冗談とも取れる笑いを漏らす。

蓮華

「なんだ?」

雪蓮

「いやあ……蓮華の成長ぶりが頼もしく思えただけよ。ねぇ剛」

向田

「ははっ、そうだな」

蓮華

「……当たり前だ。いつまでも私は昔の私じゃない……私は孫呉の次期王なのだからな」少し胸を張って答えた蓮華の姿が何だかとても可愛く思える。

 

冥琳

「さて。南方を制覇し、呂布を退けた今、次の相手はいよいよ曹操という事になりそうですな」遂に最大の敵とぶつかるか……俺達の誰もがそう考えてると、有希君が首を捻っている。

有希

「う~ん……」

蓮華

「どうした有希?」

有希

「劉備はどうなんです?僕が聞いた噂だと、何やら不穏な動きがあるとか……」

雪蓮

「劉備か……一応友好関係を結んではいるけどね」

向田

「でもそれって、連中が小規模だった頃の話だろ?今の劉備軍は、俺達や曹操に並ぶほど膨れ上がっているぞ」

蓮華

「……なるほど。いつ友好を捨て、裏切ってくるかも分からんか」

冥琳

「少なくとも視野には入れておく必要がありますね」

 

 こうして──。様々な出来事と共に、ひとまず南方制圧は成功のうちに終わった。次はいよいよ曹操か……はたまた劉備か。天下統一への道は果てしなく遠く、困難に満ちていると。俺はそう思わずには居られなかった。

 

 南征の隙を突いて攻めてきた呂布軍を、何とか撃退した俺達は、追撃を敢行して更に呂布の勢力を削った。追い散らされた呂布軍は、本拠地であるはずの小沛城( しょうはい )には戻らず、劉備が治める下丕(かひ)城へと退却。城内へと入ったらしい。祭さん達の再三(ダジャレじゃないぞ)の引き渡し要求にも応じず、劉備は呂布を保護していた──。つまり、呉との友好関係も破棄した事になる。俺と有希君の月と呂布を再会させる計画も白紙に戻った。

 

~軍議にて~

 

蓮華

「劉備が呂布の引き渡しを拒んだか……あの甘ちゃん君主なら、そうも動くだろう」

冥琳

「ええ。良い大義名分が手に入りました……これで大手を振って徐州に攻め込める」

「だけど、劉備さんもその辺りには気がついているんじゃないでしょうか?」

向田

「気付いてるだろうな……あの娘、雪蓮が言ってた通り、かなり強かだと思うし」

雪蓮

「ええ。今回の呂布の件で、同盟を破棄したところからも確かに強かな印象を受けるわね」

冥琳

「強かでなければ戦乱の時代に、勢力を伸ばす事は出来ないでしょう」

「可愛い顔して腹黒そうじゃからなぁ」人間、見た目に騙されちゃダメだね。まぁ中には月や有希君みたいに外見も中身も良い人間もいるけどさ。

「あれ?祭様、劉備さんに会った事ありましたっけ?」

「呂布の引き渡しを要求した時に少しな……ああいう腹黒い女、儂は好かん」

向田

「まぁ、祭さんとは合わないかもねぇ……」

「うむ!やはり武人は潔さを心情とせんとな!」

冥琳

「色んな意味で含蓄ある言葉ですが、腹黒さとは言い換えれば機知に富み、即決しない慎重さの顕れ……敵となれば手強いでしょう」

雪蓮

「そうね……劉備のその後の動きは?」

明命

「下丕城に兵糧を運び入れています。また徴募も頻繁に行っていますね」

思春

「闘いへの備えは充分、か……」

亞莎

「我らの行動を読んでいるのでしょう……ここは敢えてその推測に乗ってみる、というのも手では?」

蓮華

「それもありか……剛と有希はどう思う?」

有希

「んー……劉備が僕達の動きを読んでるんなら、それなりに備えをしている、と見て間違いはないでしょうね。劉備の推測に乗るのなら、それなりの準備をしてからの方が良いと思います」

雪蓮

「準備、か。穏。軍の再編成はどうなっている?」

「南征で投降してきた兵士達の内、半数はすぐに使い物になりますが、残り半数は、放逐しちゃった方が良いでしょうね~。兵糧、資金、それに武具や防具、軍馬の数はそれなりに潤沢にあるかと」

蓮華

「分かった。ならば降伏した兵を組み込み、調練を施した後で出陣しよう」

雪蓮

「確か、ここの近くにも魔窟があったハズよ。調練場にはうってつけじゃない?」あ……またダンジョン行くんだ。ハァ、嫌な予感しかしないよ……

向田

「仕方ない。フェル達の運動も兼ねて、いっちょ繰り出すか」俺はため息を吐いた。

フェル

『久し振りのダンジョンか。楽しみだな』

ドラちゃん

『へへっ。やっぱそうこなくっちゃな!』

スイ

『わ~い、ダンジョンだぁ~♪』

ジョージ

『今のご主人になって初めてのダンジョンだよ。腕が鳴るなぁ~』プリウス以外はやる気満々だよ、全く……

有希

「ご心配なく向田さん。トリオはプリウスに仕切らせますから」有希君が俺に囁く。そうだった……デミウルゴス様のペットであるプリウスって、正確には魔獣じゃなくて神獣なんだよな。だから実力はともかく、立場的には上位のプリウスにフェルもあまり強く出れないんだ。それなら俺も少しは楽出来るのかな?

「それだと少し時間を掛けすぎではないか?勢を整える時間を与えるのは感心せんが……」

冥琳

「然り……しかし今回は、軍の態勢を整えてからの方が良いでしょうね」

向田

「劉備に戦を仕掛けてそれに勝って、それでお終い……って訳じゃないもんな」

冥琳

「ああ。劉備の後は曹操が控えている……それを考えれば、今のうちに準備を整えておいた方が得策」

蓮華

「そうね。曹操に負ける訳にはいかないもの」

冥琳

「御意」

有希

「……それじゃあ充分に準備してから、劉備に対して呂布の引き渡しを要求。拒んだところで一戦……って感じで行きましょう」

雪蓮

「ええ。そうしましょう」

「よし!思春!明命!こうとなったら早速部隊の調練の為、魔窟へ繰り出すぞ!これから十日間、休みなしでぶっ通しじゃ!」

明命

「はうぁ!?と、十日間ぶっ通しですかっ!?」

思春

「お付き合い致しましょう」目を丸くしてショックを状態の明命だけど、思春はごく普通に受け入れたな。

明命

「うぇ……わ、私も頑張りますけど……」明命。俺は君の気持ち、よーく分かっているから。

「決まりじゃな!ついでにひよっこ共全員まとめて調練してやろう!覚悟しておけよ明命!」

明命

「名指しですか!?ふぇぉ~……」

思春

「御愁傷様だな」

「何を他人事のように言っとる。貴様もたっぷり調練してやるから、そのつもりでおれよ?」

思春

「……っ!?了解……です……」……?思春の驚いた顔って初めて見た気がする。てかちょっといじけてる?

有希

「……年寄りの冷や水にならなきゃ良いけど」有希君、さりげなく毒を吐いたな。

「では私達は兵站の準備を整えましょう……亞莎ちゃん、手伝ってね」

亞莎

「はいっ!」

雪蓮

「よし。では出陣は二十日後とする。各自、準備を頼むぞ」

蓮華・冥琳・祭・穏・思春・明命・亞莎・小蓮

「「「「御意!」」」」

 

~視点なし~

 

 翌日。建業のダンジョンにやってきた呉の軍勢と向田、有希の一行。まずは兵士が50ぐらいずつ、第1階層に入っていき。その後ろから向田達がついていく事になっている。それから少しずつ入っていく人数を増やしていき、この日は1000人ほどがダンジョンに潜っていく計画になっていたが……

兵士(モブ)

「ム、ムリですぅ!」

兵士(モブ)

「これ以上は身が持ちません!」下位の兵士達が次々にリタイアしてきた。ダンジョンの中に残っているのは、それなりの官位を持つ連中のみとなる。結果、短期間で予定より多くの兵士をダンジョンに送る事になった。

「……情けないのぉ」

雪蓮

「魔窟の化け物相手じゃ仕方ないわよ。それより私達も入りましょ♪」

「うむ。久し振りに骨のある奴らと闘えそうじゃ」

 

~向田視点~

 

向田

「はぁ……行こうか」

有希

「そうですね。ダンジョンボスさえ倒せば、兵士の皆さんも入りやすくなるでしょう」

向田

「……正直、あまり気は進まないけどね」俺は有希君とダンジョンを調整する為、互いの従魔を連れてダンジョン入りしたんだけど、第1階層には兵士達が酷く負傷して踞っていたり痛みに耐えきれず転がっていたりと酷い絵面だった。

有希

修復(リペア)!」固有スキルで兵士達の怪我を直す有希君。それ人体にも効果あるんだね……

兵士(モブ)

「た、助かったっ!」

兵士(モブ)

「有希様!ありがとうございます!」

有希

「いえいえ。それより早く退散して下さい」一目散にダンジョンを去る兵士達。この先は俺達というか、フェル達従魔5人(匹?)組(以下従魔クィンテットとする)の独壇場となった。

 

 まず始めに出てきたのは九頭(くず)虫という、文字通り頭が9つある巨大ミミズだ。どうやらこの第1階層は蟲系の魔物が主流のようだ。

フェル

『……雑魚だな。まぁ第1階層ならこんなモノだろう』九頭虫に雷魔法を喰らわせたフェルはつまらなそうに欠伸をする。

ドラちゃん

『何だよフェル~。1人で倒すなよぉ~』

スイ

『スイもビュビュッってしたかったのに~』

向田

「まぁまぁ、スイもドラちゃんも抑えて抑えて。また次があるからさ」その後もこの第1階層は蟲系の魔物のオンパレードだったよ……巨大なさそりの百眼魔に身体の半分が人の姿をした蜘蛛……その名もズバリ女郎蜘蛛。この2種はフェルでも見た事ないらしいから、この大陸独自の魔物だろう。ここでジョージが意外な活躍を披露した。

ジョージ

『……ヒュッ!』自分の体毛を数本、ブチッと抜いて手のひらに乗せて息で吹き飛ばす。すると忽ち毛は数羽の啄木鳥に化けて女郎蜘蛛を食い殺した。

ジョージ

『どんなモンだいっ!』胸を張るジョージ。まぁ俺とは念話が通じないけど、あまりにも分かりやすい態度に出るから、何を言いたいか大体は分かる。有希君も通訳してくれるしね。

ドラちゃん

『チキショー!また出番()られた!』

プリウス

『落ち着くっス。まだ百眼魔が残ってるっスよ』

スイ

『え~?さそりはスイが倒すぅ~』そう言うとスイは1人で先に進んで酸弾を乱射して、さそりを倒してしまった。これは……さぞドラちゃんの機嫌が悪くなると思ってたら、先方に残っていた雪蓮と祭さんと合流した。

雪蓮

「剛!来たのね!」

「これはちょうど良い。イヤ、些か厄介な魔物に道を塞がれての」祭さんが顎で示した先には、ドランのダンジョンにも居たジャイアントセンチピードがデン!と道進行を阻んでいる。因みにこちらでは一万足(いちまんそく)百足と呼ばれているそうだが、

ドラちゃん

百足(・・)なのに一万足って何だよ?100だか10000だかはっきりしろよ!』まるで八つ当たりするかの如く、火魔法を纏ってジャイアントセンチピードの土手っ腹に穴を空けるドラちゃん。それから現れた蛾の魔物もプリウスがドッグファイトを繰り広げた挙げ句、身体で押し潰しただけで倒しちゃったし。言うまでもなく従魔クインテットが蟲系魔物を次々に蹂躙していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




兵士達を鍛えるのか目的で潜ったダンジョンですが、結果として従魔クインテットのストレス発散の場に?

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