第1階層のボス、ゴールデンヴェノムタランチュラを倒した俺達(俺自身は何もしてないが)は雪蓮と祭さんを連れて第2階層へ降りた。それからしばらくは蟲系魔物だらけの階層が続いた。勿論フェル、スイ、ドラちゃん、プリウス、ジョージのクィンテットに敵う訳がなかったが……そして第4階層を突破し、第5階層に向かっていった。
フェル
『蟲共の階層はさっきので終わりだな』
プリウス
『あいつら臭いし、やたら群れをなすから面倒なんっスよね』
フェル
『他に闘う術を知らんのだろう……彼奴らはバカだからな』フェルとプリウスがそんな会話をしていた。俺としては虫だらけだった第1階層を出られたので一安心……なんて思ってた時機もありました。
向田
「なんで海なんだよ!?」そう。第5階層には遥か遠くに水平線が見える、どこまでも果てしなく続いているような大海原が広がっていた。
祭
「何じゃこれは!?」
雪蓮
「ここって外の海に通じてるの!?だとしても遠すぎない!?」イヤイヤ雪蓮、魔窟(ダンジョン)ってそういうもんだから。とりあえず雪蓮と祭さんを巨大化したスイに乗せて海上を進んでいると遠くから、ザッパーンッ、と水しぶきの音が聞こえた。その姿はまるで鯨か鯱の息継ぎのようだ。
フェル
『メガロトゥーンか。我も実物は初めて見たぞ』
祭
「?見た事ないのに知っておるのか?」
向田
「俺とフェル……後、有希君は鑑定スキルがあるから、初見でも種族とか分かるんだよ」
雪蓮
「へぇ~……そのすきるってやつ、随分便利なのね」目を見開いて感心している雪蓮。
有希
「で……どうします?」
プリウス
『獲るっスか?』
ドラちゃん
『う~ん、魚より肉の方が良いや』
フェル
『我とて肉が食いたいぞ』
スイ
『スイも~お魚よりお肉食べたいなぁ』相変わらずの肉信者だね。ウチのトリオは。メガロトゥーンは鑑定によると要は鮪のデカい奴らしい。という事は時折海面から顔を出すのは息継ぎじゃないのかな?う~ん、久し振りに食いたくなってきた。よし、ここは説得しよう。
向田
「フェル。もう1度鑑定スキルで見てみなよ」
フェル
『うーむ。確かに『食用可』とは出ているが……身をドロップするとは限らんだろ?』あ、そういえば……このダンジョン、そういや蟲階層では何一つとしてドロップ品が出なかったな。じゃ倒しても調整を行う以外にメリットもないのか。せめてカレーリナで売れる素材が出てくれるとありがたいんだけど、贅沢は言えないか。俺が諦めモードになって肩を落とすと有希君がプリウスに乗って、ジョージを肩にメガロアトゥーンの居る沖まで、飛んでいった。
浮上するタイミングを狙って、有希君がプリウスの背に乗ったまま弓を引き、メガロトゥーンのエラを射ち抜く。矢が見事に刺さり、もがき苦しみ暴れるメガロトゥーンを抑えつけようとするプリウスだが、流石に身体の大きさが違いすぎて苦戦しているようだった。
有希
「ジョージ!分身魔法を!」
ジョージ
『任せて!』有希君がジョージに何かを叫んでいる。ジョージが身体を揺さぶり出すと、湧き水のように自身のコピーが増えてくる。
コピージョージ達はメガロトゥーンにしがみついてある者は喉を塞ぎ、ある者は背鰭を引っ張るといった地味ながらジワジワと攻撃をしかける。最後は耐久力勝負となり、征したのはジョージだった。
見事にメガロトゥーンを打ち倒した有希君達。意外にもその姿は消えずに、そのまま留まっていた。ホント、ダンジョンってなにがあるか分からんね。しかしこれだけ大きいと解体も一苦労なハズだけど、実家が洋食屋だったという有希君はどこで手に入れたのか、ミスリルの包丁をアイテムボックスから出して迅速かつ丁寧に捌き始めた。俺と雪蓮と祭さんも手伝って、何とか解体を終えてから、解体した部位は半分に分けてとりあえず俺と有希君のアイテムボックスに放り込む。俺は久し振りにマグロが食えると思ってついニヤついていた。
スイ
『あるじ嬉しそ~』
ドラちゃん
『……なんだよ?それホントに旨いのか?』怪訝そうに聞いてくるドラちゃん。ニヤついていたのがバレたみたいだな。
向田
「こいつは下手な肉以上に旨いぞ。俺は昔食った事あるから、味は保証する」まぁ実際に食った事あるのはこれより遥かに小さい地球の鮪だけど(そう思えるぐらいメガロトゥーンはデカい)。
その後もこの階層では海の幸獲り放題だった。ベルリアンの街でも狩った事があるクラーケンやタイランドフィッシュに、あっちでは見た事がない一角鮫……その名の通り、イッカクのような角、ン?あれって実際は歯なんだっけ?……まぁ、その角だか歯を持った鮫に出会ったが、これも従魔クィンテットがサクッと退治。鑑定でも『白身魚のよう。美味』とあったので、これも身を解体して残りはギルドへの売り物に分ける。
ここのダンジョンボスはスー○を凶悪にしたようなマリモのような魔物で鑑定スキルによると、ジャイアントウォークマリモというらしい(そのまんまだな)。こいつがまた、ムダに防御力が高かった。何せフェルと雪蓮が爪と剣を刺しまくってもビクともしなかったし、ドラちゃんお得意の氷柱攻撃もはね除けるし。有希君と祭さんの弓矢の攻撃も、逆に矢が折れる始末だった。結局ジョージが口から体内に入って腹の中を火魔法で燃やして、更にフェルとドラちゃんの雷魔法とスイの酸弾を浴びせまくって、やっとトドメを刺す事が出来た。しかもこいつは食用不可らしい。しかも姿が消えないから邪魔以外の何物でもない。
雪蓮
「最後の最後はとんだムダ骨だったわね……」
祭
『食えんにしてもどこかしら売り物にならんかの?』
有希
『……
さて、外ではそろそろ昼飯時だな。とはいえ、ここはダンジョンの中。普通ならメシどころじゃないんだけど……
フェル
『メシの時間だ』勿論そうなるよね。分かってたよ……俺はアイテムボックスから作り置きしていたミノタウロス牛丼をトリオに出してから、有希君とメガロトゥーンの下拵えを始める。
フェル
『ん?メガロトゥーンは食わんのか?』
向田
「これは下拵えをしてから。夕食に出すよ」
フェル
『うむ。期待しとるぞ』
プリウス
『……さっきまで食べるの渋ってたのに何言ってるっスか?ボク達に任せっきりだったくせに……』プリウスに呆れられているよ。
フェル
『むぅ……しかしだな……』フェルが珍しく言葉に詰まってるよ。やっぱプリウスには大きく出れないんだな。かくゆうプリウスとジョージは、有希君お手製フルーツサンドイッチと紅茶(但しウチのトリオ並みに大量だ)のランチを楽しんでいた。そんじゃ俺達人間組もメシにすっかな。有希君はプリウス達とフルーツサンド食べているし、雪蓮と祭さんも牛丼で良いだろう。この2人は甘い物より酒に合いそうな味が好きそうだし。
昼飯を終えて第3階層へコマを進める俺達。とにかく未開のダンジョンの為、いつになく慎重に行きたい。と思っていたんだけど……
??
「キャー!」誰かの悲鳴が上から聞こえる。そういや明命や亞莎も兵士を引き連れて俺達の後から来るって言ってたな。となるとどっちかの隊が、第1階層で蟲系の魔物に襲われたのか!?
有希
「僕が見てきます!」有希君は来た道を逆戻りして、またすぐに戻ってきた。その後ろを亞莎と明命がついてきていた。
有希
「九頭虫が早々に復活してました」有希君は上の状況を淡々と語るけど、明命と亞莎はガタブル状態だぞ。
明命
「き、巨大なミミズに、食べだでるがど~(泣)」
亞莎
「じ、
雪蓮
「……剛、何か変な事考えてない?」ムッとした雪蓮の顔がアップで俺に近づいてきた。ヤバッ……雪蓮の勘の良さ忘れてたよ。
祭
「まあまあ策殿、今は二人の無事を喜ぼうではないか。のう向田?」祭さんのフォローもあって、どうにか難を切り抜ける事が出来た……ホッ。
祭
「有希もよう二人を救いだしてくれた」
雪蓮
「そうね。ここは礼を言っておくべきね」
明命
「❤️はい!有希様、ありがとうございました!」
亞莎
「❤️お、おかげで命拾いしました!」あ、こりゃ2人共有希君に惚れたな……
有希
「イエ、大した事では……」謙遜する有希君は得物の弓をアイテムボックスにしまう。……それはいわゆる和弓じゃなくて、まるでス○○ボのラ○ディー○の持つゴッ○ゴー○ンみたいだった。つーかそんな重そうなモン、よく構えられるね。流石勇者に選ばれただけあるな。
そうして海の階層を彷徨い続けては魔物を倒すのを幾度となく繰り返し、第8階層でようやくセーフエリアであろう小島を発見して人心地ついた。時間はもう晩飯時になっているだろうな。
有希
「それじゃメガロトゥーンの調理を仕上げましょう」有希君と俺は昼に下拵えを済ませたメガロトゥーンの身と魔導コンロをアイテムボックスから取り出す。
向田
「まずは血合のステーキな」何度も言うが、メガロトゥーンはホントにデカい。だから本来は希少部位である血合やトロもたっぷり用意出来た。
フェル
『ほう。これがメガロトゥーンの料理か、どれ……う、旨い!これはまさに肉ではないか!』
ドラちゃん
『こんな旨ぇ魚、初めて食ったぜ!』
スイ
『スッゴく美味しぃお魚だぁ~♪』ふふん♪そうだろそうだろ、マグロは旨いんだぜ。この血合ステーキをおかずに白飯をかっこみながら、俺が内心でほくそ笑んでいると有希君も料理を完成させたようだ。
有希
「はいっ、揚がったよ」有希君は贅沢にもトロをカツにしたその名もズバリ、トロカツをだしてきた。
有希
「ホントは刺身で食べたいトコなんですけどねぇ」この世界の魚介にはヴォルバラスフィッシュワームという、人間に寄生するとヤバい寄生虫がいる為に生食は難しいんだよね。そんな事を考えながらも俺はメガロトゥーンの竜田揚げを作り、みんなに食わせる。有希君は更にあら汁と、ケチャップとウスターソースで味付けしたミートボールならぬマグロボールを作っていたよ。
明命
「ずっと海上を進んでいたので体が冷えてたんです。これは暖まります」あら汁を啜りながらホッとした顔を見せる明命。
亞莎
「この肉団子、いえ魚団子……甘辛くて、ちょっとだけ酸っぱくて……幾らでも食べられそうです」白飯と一緒にマグロボールを頬張る亞莎。
雪蓮
「ねぇ剛。この島の中って安全なんでしょ?」え?まあ、そうだけど……
祭
「ならば問題なかろう」この2人の言いたい事は予測がつく、確かにマグロと抜群に合うよ。しかしねぇ……
向田
「酒なら出しませんよ。魔窟内は油断できないからね」セーフエリアとはいえ酔って海に落ちないとも限らないし、いざ出るって時に酒が抜けてなけりゃ大変な事になりかねないぞ。有希君も呆れて、2人にジト目を向けながらため息を吐いていた。その後もブー垂れる雪蓮と祭さんを放っておいて、俺達はクィンテットに要求されるままお代わりを作り続けたのだった。
次回はどうにかダンジョンから脱出したい……