史実では孫羌は孫堅の兄、孫静は弟ですが、本作では孫羌を弟(オリ設定)に、孫静は妹(アニメ版に準拠)としています。
~閑話其の一~
叛乱軍の鎮圧へ出向いた俺達。連中は魔物を使って俺達を襲ってきたけど、トリオに敵う訳もなくあっさりと敗退した。
その後叛乱軍の居城に乗り込んで一番の首謀者を捕らえたが、これが意外な人物だった。
蓮華
「叔母上!?」
冥琳
「孫静様!?」なんと首謀者は先代の呉王(つまり雪蓮達のお母さんね)孫文台こと孫堅の妹、孫静だった。
雪蓮
「叔母上。ナゼ貴女が叛乱なぞ起こしたのです?」
孫静
「雪蓮よ。そなたは間違っている!たとえどれだけの物を得ようとも、これまでに流れ
向田
「だから叛乱を起こしたと?でも貴女のやっている事も雪蓮達と何も違いませんよね?」結局この人も目的のために、多くの人を死なせたんだ。雪蓮の事をどうこう言う筋合いはない。なんて考えてると孫静は薄気味悪い笑みを浮かべ、取り押さえていた兵士を振りほどくと、俺を小刀で突こうとしてきた。
孫静
「……貴様が例の御遣いか。貴様さえ、貴様さえ居なければ……!」けど当然のように俺に刺さる事はない。
フェル
『愚か者っ!』怒声を上げたフェルが孫静を前足で踏みつけて、再び取り押さえられた。
孫静
「……ひっ!」フェルの脚の下敷きになった孫静に冥琳は冷淡かつ事務的な口調で告げる。
冥琳
「孫静様。恐れながら反逆の罪で、身柄を拘束させていただきます……連れていけ」
兵士(モブ)
「はっ!」兵士2人が孫静の腕をガッチリ掴んで、どこかへと姿を消した。
孫静
「クッ……!せっかくあいつらから魔物まで手に入れたというのに、こんな事で……こんな事で……」最後、気になる言葉を吐いてたけど……何だったんだろう?
雪蓮
「これで内乱も終結ね」
祭
「しかし……首謀者が静殿だったとはのぉ」
向田
「……何で叛乱なんて起こしたんだろうな?」ひょっとして、雪蓮に代わって自分が呉王になるつもりだったとか?しかしこの大陸のこの時代において、王位や官位なんかは親から長子に継承されるのが一般的だ。むしろ妹に後を継がせようとしている雪蓮の方が特殊なんだよなぁ。まあ雪蓮に子供は居ないし、シャオじゃ呉を背負うのは早すぎるからね。
雪蓮
「三
向田
「そ、そうなんだ……」どうもこの国は女性の権力が強いというか、男の方が何かと苦労するみたいだな……
~閑話其の二~
ダンジョンでの調練を終えて、建業へ戻った俺達はある人物に出迎えられた。年は40代ぐらいか、口の回りから顎にかけて長い髭を蓄えた男性だった。何というか、これこそ三國志の人!ってな感じの風貌に今じゃ却って妙な安心感を覚えるよ。けど男性はどことなく切なそうな目を俺達、というより雪蓮達に向けた。
??
「ご苦労だったな雪蓮。それにしてもいつぞやの孫静にはガッカリさせられた……」
雪蓮
「ええ。けどこれも乱世が故ですわ。叔父様」叔父さんって事はこの男性が先代孫堅の弟、孫羌さんか。そして雪蓮は俺達を孫羌さんに紹介する。
向田
「初めまして。向田と言います」
有希
「有希です。以後お見知りおきを」俺達はそれぞれの名乗って頭を下げる。すると、孫羌さんは自ら手を差しのべて握手してくれた。
孫羌
「姪から聞かされていると思うが、儂は孫羌。真名を
向田
「え?今日会ったばかりの僕達に真名を?」つい、聞き返す有希君。
蓮地
「雪蓮を始め他の者は皆、既に真名を預けておろう?ならば儂だけ固持する訳にもいくまい。なに、貴殿らが信用に値する人物である事は、雪蓮達から聞いておる。従魔諸兄の噂も耳に入って来るしの」そう言って握手した手の力を強める孫羌さん改め蓮地さん。痛っ……!手が、手が痛い!この人も相当力あるな……。
ともかく、この日の晩は劉備戦を控えた激励会兼、蓮地さんの歓迎会という事で宴を開かれる運びとなった。勿論料理を作るのは俺達。
向田
「何作ろっかなぁ?」と、しばらく考える。そういえばこっちでまだ作ってない料理ってあるかな?アイテムボックスを開くと、この間の南征で敵が使役していた大ホロ鳥が何羽か丸々残っていた。ならここはローストチキンかな?前にトリオに食わせた時もまた作ってくれって頼まれたし、これならパーティーというか宴席にもピッタリだよね。
向田
「じゃ俺はローストチキンを作るよ」
有希
「向田さん。バゲット手に入ります?」有希君にローストチキンを作ると伝えたら、彼にしては珍しく俺のネットスーパーを頼りにしてきた。
向田
「多分ネットスーパーで買えるけど……何するの?」
有希
「パーティーのメイン料理は向田さんのローストチキンとして、僕は前菜にカナッペを出そうと思いまして」なるほど。良い案だ。俺は有希君にバゲットを大量に手渡してからローストチキンの準備に取りかかった。
~有希視点~
……さて、バゲットもゲットしたし。早速カナッペの具材を作るとしよう。
まずはカリッカリになるまで焼いたバゲットにポテサラを面いっぱいに塗る。じゃがいもはこっちでも手に入るし、マヨネーズは以前狩った鶏系の魔物の卵を材料に僕が自分で作って、アイテムボックスに保存していたのを使う。そこへ斜め切りにしたキュウリを乗せれば、一品目は完成だ。あとは……何かお酒に合いそうなモノと、スイーツ系も作っておくか。まずはつまみ用にチーズといぶりがっこのカナッペを作る。チーズに漬け物?しかもパンに?と思う人も居るだろうけど、これが意外に合うんだ。あとはシンプルに塩レモンダレを絡めたアボカドを乗せてこれで良しと。スイーツはここの人達にも受け入れられそうな餡子(これもこっちで手に入れた小豆で作った)と、亞莎がゴマ好きだっていうから胡麻味噌ダレにしよう。あと、逆に目新しそうなジャムやマーマレードを生クリームなんかと混ぜて出してみるか。
祭
「これはまた酒に合うのう♪
雪蓮
「この緑色の野菜、良い脂の乗り具合ね。それをこのタレがサッパリさせていて……これはお酒が進んじゃうわねぇ♪」あ~あ。もう随分と空の徳利が並んでるよ。流石に呑みすぎじゃないのか?
蓮地
「これ、二人共。あまり呑みすぎるでないぞ」酒飲み2人が盛り上がってる中へ蓮地さんも入っていったが、一緒に呑むというより2人に呑みすぎないよう、諌めるためだったみたいだ。しかし蓮地さんの諫言もこの2人には届かず、遂に蓮華さんの雷が落ちた。
蓮華
「いい加減にしなさい!全く姉様といい祭といい……叔父様も、もっとキツく叱って下さい」蓮華さんも気苦労が絶えなそうだな……もうあの2人は放っとこう。蓮華さんと蓮地さん以外、誰1人として仲裁する気がないらしいし。
穏
「甘味も美味しいですよぉ~。餡子とこのお煎餅っぽいのが良い感じに一体化してますね~」餡子は和洋問わず色んなスィーツに合うしね。
亞莎
「胡麻味噌最高です♥」
明命
「ん~っ♪幸せ~っ♥」明命と亞莎はあまり語らず、結構黙々と食べ続けている。
冥琳
「二人共。前菜で腹を膨らませてどうする?向田も立場がなかろう」冥琳さんが苦笑しながら、呆れたように突っ込みを入れている。
小蓮
「……武力もあって、料理も得意。その上外見も良いなんて……シャオ、絶対諦めないんだから……!」シャオがボソッと怖い事言ってるけど、聞こえない振り、聞こえない振り……(すっとぼけ)そろそろ向田さんも料理を仕上げる頃だな。
~向田視点~
さて、今回のローストチキンは冷凍ピラフじゃなくてもち米を使うぞ。この方が雪蓮達呉のみんなも受け入れやすいだろうからね。という訳で、建業の市場でもち米を大量に買い込んだんだけど、美羽と七乃には思いっきり怪訝な顔された。
美羽
「何じゃ主様、そんなに沢山のもち米を買って。ち巻きでも作るのかや?」
七乃
「せっかくの宴席なのにち巻きを出されても……ショボいですねぇ?」フフン、こいつら分かってないな。このあとで度肝抜かれても知らないぜ。
城に戻って、早速ローストチキンの詰め物から調理を始める。ホントはもち米を水に一晩ぐらい漬けた方が良いみたいだけどそんな時間は正直ないので、フライパンに研いだもち米を入れて水を加えたら、強火でサッと茹でる。昔、元居た世界でクッ○パッ○を見ていたらこういうやり方があるって載ってたんだ。他の具材は適当に玉ねぎと冷凍のミックスベジタブルでいっか。
バターで玉ねぎを炒めてミックスベジタブルを混ぜながら解凍していく。玉ねぎが透き通ってきたら茹でたもち米を足してコンソメスープと水を加えて炊いていく。塩胡椒で味を整え、12,3分ほど経ったら火を止めて蒸らしておく。
七乃
「ご主人様~。ち巻きに使う笹の葉はどうするんですかぁ?」七乃ェ……まだ俺がち巻き作ると思ってるのか。まあ良い。バターライスを蒸らしている間に大ホロ鳥の準備をしよう。解体は予め済ませてあるからそのまま調理出来るぞ。けど大ホロ鳥ってマジでデカいな。コカトリスの倍ぐらいあるんじゃないか。流石ドラちゃん、よく仕留めた。今回は濃いめのバターライスを詰めるから大ホロ鳥は特に下味はつけないでおこう。
向田
「美羽、七乃。手伝ってくれ」俺に呼び出された2人は羽と頭を取り除いた大ホロ鳥を見て腰を抜かす。
美羽
「ギョエ~!!」美羽、驚き過ぎ。
美羽
「ぬ、主様!このデカいのは何じゃ!?」
向田
「何って……大ホロ鳥だよ。今からこいつに米を詰めるんだが?」
美羽
「これ七乃!ち巻きではないではないか!」
七乃
「そ、そんな~。ち巻きだって言い出したのは美羽様じゃ……」ち巻きを作るなんて俺一言も言ってねえよ。全く、勝手な憶測をして勝手に騒ぐなっつーの。性格的な面で少しは成長したかと思ったが……こいつらアホっぷりは相変わらずだな。
向田
「はいはい2人共。ごちゃごちゃ言ってないで作業しなさい」俺はもち米バターライスを大ホロ鳥の腹に詰めるようにと2人へ指示する。
魔導コンロで付け合わせのローリエ、パプリカと一緒に焼きながら時折蓋を開けて落ちた油をかけて、中まで火が通ったのを確認したらコンロから出してレタスを敷いた大皿に乗せつつ、付け合わせを添える。天板に残った油にコンソメスープを加え、そのまま天板でグレイビーソースも作り、チキンへ豪快にかけて完成だ。これを今回は4羽分作った。その内、1羽を呉の王族&重臣たちへ給するように美羽と七乃に命じて、俺は2羽を我らが従魔クィンテットに持っていった。
フェル
『ほう、これは以前コカトリスを使ったのと同じ料理を大ホロ鳥で作ったのか。食い応えがありそうだ』いうが早いか早速かぶり付くフェル。
プリウス
『鳥の肉汁がジューシーっス。ご飯にも味が染みてて美味しいっス!』フェル達と違ってあまり贅沢を言わないプリウスも今日はバクバク食ってるな。てかさっきもカナッペをがっついてなかったか?
ドラちゃん
『中の米はあん時よりネットリしてるけど、これはこれでまた旨ぇな』前に使ったのは冷凍ピラフだからね。今回の方がより凝ってるんだよドラちゃん。
スイ
『ソースが甘くてしょっぱくて、色んな味がする~♪大ホロ鳥さん美味しいねぇ~』みんなダンジョンから帰ってきて間もないせいか、食欲旺盛だな……いつもの事だけど。
ジョージ
『前のご主人様はパン1択だったから、今は色々食べられて幸せだなぁ』ジョージ。君が何を言っているのか、俺には分からんぞ。
プリウス
『ヨーク王国も……(モグモグ)パン文化の国らしいっス。ウチのご主人に譲渡されて、(モグモグ)初めてお米やパスタを食べるようになったみたいっスね』うん。プリウス、わざわざ通訳ありがとう。でも食べながらは行儀悪いぞ。こうして宴席は夜中まで続いて、従魔クィンテットが途中で寝てしまってからは俺達も孫呉のみんなと大いに酒を楽しんだよ。
~城の門前にて~
兵士a(モブ)
「今頃孫策様達は宴席の最中だろうなぁ……」
兵士b(モブ)
「愚痴るなよ……余計に虚しくなっちまう」
兵士a(モブ)
「だって激励会とか何とかいってもさ……結局俺達はお零れすら貰えないんだぜ。愚痴りたくもなるさ」
兵士b(モブ)
「まぁ分かるけどよ。向田様のメシ、旨いしなぁ……」
兵士a(モブ)
「有希様のメシもかなり旨いぜ。あの味を知っちまったら……」
兵士b(モブ)
「ああ……他国へ降ろうなんて気にゃならねえな」
兵士a(モブ)
「全くだ。我が孫呉ほど戦のメシが旨いトコなんて、まずないだろうしな」2人の門番の会話をもう1人の兵士が中断させた。
兵士c(モブ)
「オイお前ら、差し入れだ」彼が押してきた台車には、2枚の大皿にが乗せられている。
兵士a(モブ)
「差し入れ?」
兵士c(モブ)
「向田様と有希様からだ。俺達で食ってくれと、鳥料理と菓子を下さった。宴席の料理と同じ物だそうだ」向田と有希の気遣いに最後は涙声になる。それにつられて、その他兵士一同も感極まって泣き出したまま、料理にかぶり付いていった。
蓮地
「儂はしばらく南陽の古巣に
次回は本編に戻る予定です。