とんでもスキルで真・恋姫無双   作:越後屋大輔

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メシ話までいけなかった……次回こそ。


第五席雪蓮、袁術に利用されるのこと

 合流した雪蓮はいつもより、目がギラついていた。その迫力はフェルにもひけをとらない。イヤ、個人的にはフェルを見慣れている分、雪蓮の方が怖く感じる。

雪蓮

「いよいよ戦乱の幕開けね……ふふっ、ゾクゾクしてくるわ」そんな楽しそうに言わんでも……

向田

「……危ない発言だなぁ」

雪蓮

「あらどうして?待ちに待った大陸の混乱なのよ?……この乱に乗じる事こそ、私達の独立に向けての第一歩なんだし、ゾクゾクしちゃうのも仕方ないでしょ?」

冥琳

「気持ちは分かるが……初陣の相手が黄巾党というのは物足りないにもホドがあるな」

「まぁ勘を取り戻すには丁度良いとも言えるがの」

「兵の練度を維持する為に、調練だけは欠かさずにしてましたけどね~。やっぱり実戦を経験しない事には調練の仕上げも出来ませんし~……」

雪蓮

「そういう事♪この闘いで私達の強さを喧伝出来れば、これからの闘いが楽になるでしょ。ここは最高の勝ち方をしないとね~♪」

冥琳

「ええ……向田。雪蓮の言葉の意味が分かるか?」

向田

「えっ?」

冥琳

「呉、独立を目指す為に、雪蓮が初陣でしなければならない最高の勝ち方とは何だ?」

向田

「……圧倒的な勝利、かな?」ここにフェルが口を挟んできた。

フェル

『なんだ?そんな事で良いのか。ならば我らだけで充分だな』

ドラちゃん

『応よ!相手はたった8000だろ?ハッキリ言って俺達の敵じゃねえよ』

スイ

『スイも、いーっぱい敵をやっつけるよ~♪』あ、うちのトリオも戦闘準備万端だな。こりゃ止めても聞かないぞ。止める気もないけどさ。

雪蓮

「殺る気があるのは結構だけど……そんな事よりさっさと黄巾党を皆殺しにするわよ」

「まぁ待て、策殿よ。向田の言う通り、我らに大切なのは圧倒的勝利じゃ。ならばそれなりの策を用意した方が良いじゃろう」

フェル

『策なぞ要らん。いつも通りに攻め押すまでだ』いやいやフェルさんや、ムチャを言いなさんな。

冥琳

「圧倒的勝利とは、敵に与える損害が大きな事。そして人の記憶に残る程の痛快さが必要なの。たかが盗賊だからこそ、最も大きく損害を与え、最も痛快な勝ち方をしなくてはならないわ」

雪蓮

「ふーん……で?」

冥琳

「そうね……向田。確かその小さい龍は火を吹けるって言ってたな?」

向田

「ドラちゃんに焼き殺させるの!?」俺が冥琳に言葉を返すと、ドラちゃんはイヤッホーッと空中を旋回する。

冥琳

「ええ。勿論」

雪蓮

「……良いわね、それ。真っ赤な炎って好きよ」

「では決定じゃな」

向田

「ちょっ……火なんて使ったら、結構ヤバい事になるんじゃないの?」

雪蓮

「何?何か懸念でもある?」

向田

「懸念っていうか……2次被害は考えてないの?こっちに貰い火が来るとか……」

フェル

『心配は要らんだろう?貰い火はスイに消させれば良い。それに我の風魔法でも火を消す事は出来る』分かってるよ。一応、確認をしたかっただけでね。ただ人を焼き殺すんだよなぁ。だからこそ呉の名を上げるには、うってつけなんだろうけど。それに黄巾党はもっと酷い事を、抵抗も出来ない人達にやってきたんだ。これも天罰と思えば良い。デミウルゴス様も止めろとは言ってこないしね。

冥琳

「闘う力もなく、いいように盗賊に虐げられていた庶人の代わりに天罰を下す……それが人気に繋がるのだ」

向田

「でもさ、1人ぐらいは生かしておいた方が良くない?」

雪蓮

「剛。そんな甘ったるい理想なんて、とっとと捨てちゃいなさい」

向田

「イヤ、理想じゃなくてさ。さっきも喧伝するって言ってたけど、もし黄巾党を皆殺しにした場合、誰が喧伝する訳?」

雪蓮

「えっ?」

「ん?」

「ほぇ~」

冥琳

「……ふむ」俺がそう言うと、冥琳以外の3人がポカーンとしている。

冥琳

「なるほど。こちらが何もせずとも、一人生き延びた奴が勝手に喧伝してくれる……という事か」

向田

「そういう事。ああいった連中は大抵の場合、1人じゃ何も出来ないから2度と悪さはしないだろうし。あ、別にムリならそれで良いよ」俺が元居た世界は情報化社会なんて言われてたけど、どんな時代や世界においても情報は武器になる。この際、生き延びた敵兵は上手く利用してやれば良い。死なずに済めば、だけど。

フェル

『……しかし、何だな……』

向田

「どうかしたか?フェル」

フェル

『お主、随分と残酷な発言をするようになったな……』おかげさんで。誰かさんに鍛えられたモンでね。

「盗賊達は弱い人から全て奪いますから。お金、服は言うに及ばず、尊厳を奪い、命を奪う……飢えた獣と思わないと」

雪蓮

「奴らは人間じゃない……いいえ、人間だったかもしれないけど、人としての誇りをなくし、賊に成り下がった事で獣に落ちたも同然……躾のなってない獣は殺すしかないのよ」淡々と話す雪蓮の唇が微かに歪んでいる。その唇を見れば……何も言えなくなる。元居た世界で、平和に、幸せに暮らしていてあっちの大陸でもさほど命の心配もしていなかった俺がこれ以上、何か言う必要はないな。この大陸にはこの大陸のルールがある……そういう事だ。

兵士(モブ)

「孫策様!前方一里(約4Km)のところに黄巾党とおぼしき部隊の陣地を発見しました!」

雪蓮

「ありがと……さって久々の実戦ね。派手に決めましょ♪」

冥琳

「了解した。黄蓋殿。先鋒は伯符に取らせるので、その補佐をお願いします」

「心得た」

冥琳

「向田は従魔達と中軍を頼む」

向田

「オッケー……じゃないや、了解。フェル、スイ、ドラちゃん。任せるよ」

フェル

『フッ、まぁ良かろう』

ドラちゃん

『ヨッシャ!目一杯暴れてやっぜ!』

スイ

『任せてね。あるじ~』

冥琳

「私と伯言は左右両翼を率い、時機を見て矢を放ちます」

「ふむ。では公謹の合図と共に軍を退けば良いのじゃな?」

冥琳

「ええ」

「了解した……策殿。くれぐれも暴走せんようにしてくれよ?」

雪蓮

「んー……分かんない」

「やれやれ……まぁ策殿のお守りは儂がしよう。公謹と伯言は時機に見失わんようにせい」

「了解してますからご安心を♪」

「頼むぞ……では策殿。出陣の号令を」

雪蓮

「了解♪」雪蓮は剣の先を敵のいる方角へ向けると、兵に号令をかける。

雪蓮

「勇敢なる孫家の兵達( つわもの )よ!いよいよ我らの闘いを始める時が来た!新しい呉の為にっ!先王、孫文台の悲願を叶える為にっ!天に向かって高らかに歌い上げようではないか!誇り高き我らの勇と武を!敵は無法無体に暴れる黄巾党!獣じみた賊共に、孫呉の力をみせつけよ剣を( つるぎ )振るえっ!矢を放てっ!正義は我ら孫呉にあり!」この言葉に兵達の士気が一気に上がる。

兵達

「「「「うおおおぉぉぉーっ!」」」」

「全軍抜刀せい!」

雪蓮

「全軍、突撃せよ!」

 

 黄巾党の兵はこちらが約5000に対し約8000と、数でこそ勝ってはいたが、やはりうちの無敵トリオには敵うハズがなく、全軍尻尾を巻いて逃げていく。

向田

「あ……敵が陣地に戻っていく……っ!」

フェル

『つまらん相手だったな』

スイ

『みんな弱いね~』

ドラちゃん

『準備運動にもなりゃしねえ』

向田

「まあとにかくフェルとスイは退くよ。ドラちゃんは冥琳の指示に従って火魔法をよろしく」

ドラちゃん

『火を吹くのは良いけどさ、あのキツそうな姉ちゃんの言う事聞かされるのはなぁ……』

向田

「そう言うなって。終わったら旨いメシ作るからさ。あっ、合図だ!」

ドラちゃん

『しゃーねぇなぁ。行くぜ悪党共!』

 

~その頃両翼では~

 

冥琳

「ふむ。頃合だ……穏、向田に合図を!」

「はぁ~い♪」ドラちゃんが火魔法を仕掛けると、間を開けずして兵達が穏の指揮で油を染み込ませた鏑矢を構える。

 

~黄巾党陣地内にて~

 

盗賊(モブ)

「ひっ!?火だ!火が飛んできたぞ!」

盗賊(モブ)

「誰か!誰か消火しろ!」

盗賊(モブ)

「ダメだ!全然消えねえ!このままじゃ……!」

 

~呉軍両翼に戻る~

 

「おー。命中命中~。良い感じに火が燃え広がってくれてますね~。賊さん達の慌てふためく様子がよーく見えますよぉ♪」

冥琳

「よし。前線の孫策に伝令を出せ!機は熟した!今こそ総攻撃の──」

兵士(モブ)

「前線部隊、突撃を開始しました!」

冥琳

「……はぁ。相変わらず独断専行するんだから」

「まぁまぁ。孫策様は天性の戦上手ですから。私達の指示よりも早く、勝機に気付いたんでしょう」

冥琳

「……時々、あの娘の軍師をしている自分にくびを傾げてしまうわ」

「ううっ、それはありますねぇ~……」

 

 それから──。

 前線部隊、冥琳、穏と合流した俺達は、袁術の居る荊州の本城に向かい、意気揚々と引き上げた。

 本城では袁術が待ち構えていたんだが、これが……どう見ても幼女だ。多分俺のカレーリナの屋敷で働くセリヤちゃん(9才)と変わらない年齢(とし)だぞ。

雪蓮

「あなたのお望み通り、黄巾党の本隊を殲滅してあげたわよ……これで満足かしら?」

袁術

「うむうむ。ご苦労なのじゃ」

雪蓮

「それだけ?労いの言葉じゃなくて、私が欲しいのは約束の履行なんだけど?」

袁術

「約束?何の事じゃ?」

雪蓮

「……反故にしようと言うの?……時機がくれば呉の再建の為に兵を貸すという約束を」

袁術

「おおー。そういえばそんな約束もしておったのぉ……しかしじゃな、孫策よ。妾は( わらわ )まだ時機が来たようには思えんのじゃが?」

??

「そうですよねぇ~。それに今は黄巾党が暴れ回ってて、そんな余裕もありませんしぃ~」お付きの人だろうか?袁術にくっついている女性が同調する。

袁術

「張勲の( ちょうくん )言う通りじゃ……ま、約束については追々考えて進ぜよう。それで良いじゃろ?」

雪蓮

「……まぁ良いわ。荊州に侵攻していた黄巾党の本隊は殲滅した。分隊の方はあなた達で何とかしなさいな」

袁術

「言われんでもすぐに殲滅してみせるのじゃ」

張勲

「そうだそうだぁ~」やる気あるのかこの人?

雪蓮

「あっそ。じゃお手並み拝見と行くわ」

袁術

「うむ……ご苦労孫策。下がって良いぞ」

雪蓮

「……」悔しげに顔をしかめる雪蓮だったが、何も言い返さずに背中を怒りに震わせてみんなの元へ戻っていく。袁術と張勲のせせら笑いに見送られて俺もその後を追う。

張勲

「おおー。孫策さんの背中が怒りに燃えてますねぇ~……でもお嬢様ぁ。孫策さんは今後、どう扱っていくんです?」

袁術

「どうもこうもないのじゃ。約束などは出来る限り引き延ばして、妾の為に働かせれば良い」

張勲

「うんうん。それが一番ですねぇ~……けど、孫策さん怒りますよ?」

袁術

「ふんっ。反抗すれば妾の軍団で返り討ちにしてやるのじゃ。良いな、七乃」

張勲

「当然ですよー。美羽様の為に、最近、新しい武器を発明して、現在大量生産中ですから♪」

袁術

「ふむ。ならば妾の軍団は無敵じゃな」

張勲

「無敵ですよ無敵!後は孫策さんを悪どい方法で貶めれば完璧ですっ♪よっ、この生まれながらの悪謀家!」

袁術

「うははー、もっと妾を褒めるのじゃー♪」

張勲

「いよっ、この可愛いイジメっ子!大陸一の嫌がらせの天才!鬼め悪魔め美羽様め!」

袁術

「うむうむ。妾は気分が良いのじゃ。蜂蜜水を持ってくるのじゃー♪」大分離れたけど、聞こえてるからね君達。ステータス上がってUPした俺の聴力、舐めてもらっちゃあ困る。帰ったら今回は、雪蓮達にも何か旨いメシを作ってご馳走しよう。俺に出来るのは、精々それくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作との違い
・一刀は黄巾党を殺すに躊躇いを隠せない→向田は何の罪悪感も見せない。
・冥琳が黄巾党に火矢を射つ→油を染み込ませた鏑矢を射ち、ドラちゃんに火を付けさせる。
・戦の終了後、一刀は嘔吐してそのまま気絶→向田は平気。
次回はこの続きから始まります。
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