とんでもスキルで真・恋姫無双   作:越後屋大輔

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長いこと更新なくてスミマセン


第五十四席曹操、邪馬台国へ発つのこと

~視点なし~

 

 さて、悟空にこっぴどくやられた于吉は命からがら。やっとの思いで戦場を放れて、左慈と待ち合わせていた場所へ二逃げ延びた。

于吉

「……ハァハァ……ただいま帰りましたよ、左慈」

左慈

「随分ヒドい有り様だな……首尾は……と聞きたいところだが、その様子じゃ良くはないらしいな」

于吉

「ええ。悟空が奴らに手を貸してるようです。大方、デミウルゴスの命を受けたのでしょう」

左慈

「ケッ……どこまでも忌々しいクソジジいが!」

于吉

「しかし荀彧はこちらの手の内にあります。曹操が戦意を削がれた以上、あいつにとってもこの国は最早無用の長物……せいぜい蜀呉と事を構えてもらいましょう」

左慈

「それでこの世界も終盤……という訳だ」

于吉

「しかし、真に厄介なのは向田とその一味。先に奴らを片付けておけば……」

左慈

「今更言っても仕方がない。あとは奴らが互いに潰し合ってくれれば良い。それこそが本懐なんだからな」

于吉

「では私は最後の策を仕上げましょう」そう告げると、再び視界から消える于吉。1人残された左慈は君の悪い笑みを浮かべ呟いた。

左慈

「とにかくこの国、そしてあの世界から来た奴らは……皆殺しだ!」

 

~向田視点~

 

 あれから曹操は夏侯姉妹を始めとした幾人かの側近だけを連れて海を渡ったらしい。どうしてそんなことを、と皆は訝しがっていたようだけど、俺には何となく曹操の取った行動の意味が分かるような気がした。きっと……自らの抵抗によって、無駄な闘いが長引くのを避けたかったんだろう。闘いが長引くほど、真っ先に被害が及ぶのは一般市民だ。彼らを無駄死にさせるくらいなら、いっそ国を蜀呉に任せて、自身は退場した方が良い……そう考えたのかもな。それより曹操の向かった先が邪馬台国ではないか、という噂に驚いたよ。確かに三国時代の中国的な大陸があるんだから、古代日本たる邪馬台国があってもおかしくはないけどさ。これには俺だけじゃなくていつもクールな有希君も唖然としてたよ。しかしそれは一先ず置いといて……

 

 劉備と再び同盟を結んだ俺達。しかし問題はこれからである。

冥琳

「次に件の白装束共との闘いだが……こちらから提案がある」俺と冥琳は劉備の本拠地にて最終的な打ち合わせに来ていた。

諸葛亮

「聞きましょう」

冥琳

「現在の状況を考えるに、あの場所で決戦するのはこちら側には不利となる」

諸葛亮

「広い荒野では大軍の方が有利ですからね……あの人達は魔物も操れますし」

冥琳

「そうだ。そこで劉備陣営はすぐさま兵をまとめ、赤壁近くの我が城に結集してほしいのだ」

諸葛亮

「赤壁……長江に面した土地ですね。なるほど……長江を使って白装束達の行動を抑制するんですね」

冥琳

「そういうことだ。我らも一度建業に戻り、兵を引き連れて赤壁へと赴く……劉備と孫策という英雄二人が餌になれば、白装束を束ねる奴、あるいは奴らは必ずや赤壁に来るだろう。そこで決戦だ」ここまで冥琳が説明したところで関羽が尋ねてきた。

関羽

「決戦は良いが……どう闘うつもりだ?」そういや空を飛ぶ魔物への対策不足は否めないな。

竜馬

「空は俺達に任せな!」

冥琳

「さっきの鉄の鳥みたいな物か……まあ、他に当てもあるまいな」親指をサムズアップしてドヤ顔を決める竜馬。ところでガソリンもないこの世界でどうやって動かしているんだろうか?

ドラちゃん

「オイオイ、俺も忘れんなよ!」うんうん。ドラちゃんも加われば、空対策は万全かな?

冥琳

「大軍相手に効果のある策は一つしかあるまい?」

諸葛亮

「……ですね」

冥琳

「ならばその策を最も効果的に使えるように、周辺の環境を整える……そのためにも、決戦は赤壁で行わなければならんのだよ」

諸葛亮

「なるほど……了解しました」

冥琳

「……さすが諸葛孔明。我が策を悟ったか」

諸葛亮

「はい」

冥琳

「ならば後は孔明に任せよう……両軍の知、両軍の武。この二つを奴らに思い知らせてやろう」

諸葛亮

「はい!ふふっ、楽しみですね」えっと……孔明ちゃん?笑顔で何物騒なこと言ってんの?

冥琳

「ああ。では一週間後、赤壁の地で再会しよう……さらばだ。行くぞ向田」

向田

「あ、ああ……じゃそういうことでよろしく」

竜馬

「オウ!」

隼人

「……フッ」

慶子

「ええ」冥琳は諸葛孔明に、俺は現代人トリオに別れを告げて自分達の陣地に帰った。

 

~劉備陣営(視点なし)~

 

関羽

「本当にこれで良いのですか……?」

劉備

「うん……周瑜さんの言葉を全部信用したワケじゃないけど。でも朱里ちゃんの言葉を聞けば、こうするしかないって私は判断する……ダメだったかな?」

関羽

「いいえ……我らは桃香様のご判断に従います。それが臣下であり、友であり、盟友である我ら全ての想い……」

張飛

「白装束達に目にもの見せてやるのだ!」

馬超

「おお!派手にやってやろうぜ!」

趙雲

「ふっ……我らが猪武者共は、お気楽極楽なものだな」

馬超

「って言いながら、自分だって早く闘いたくてウズウズしているくせに」

趙雲

「当然!このような大戦、滅多にあるものではないからな……存分に暴れさせてもらうさ」

張飛

「どっちが猪なんだか良く分かんないのだ」

劉備

「あははっ♪とにかく全力尽くして、白装束の人達をやっつけよう!みんな、力を貸してね」

関羽・張飛・趙雲・馬超

「「「応っ!」」」

 

~向田視点~

 

 陣地に帰ると雪蓮と蓮華が俺達を待っていた。冥琳が劉備とのやり取りを報告する。

蓮華

「……そうか。劉備は承諾したか」

冥琳

「相手が相手なだけに、一人で立ち向かうほど愚かではない……といったところでしょう」

向田

「だけどこれで勝ち目が出てきたな」

雪蓮

「そうね……蓮華。私達はすぐに建業に戻り、体勢を整えたあと、赤壁に向かうわよ」

蓮華

「しかし……奴らが建業を攻めてきたらどうします?」

雪蓮・冥琳・向田・有希

「「「うーん……」」」俺達が首を捻っていると、プリウスが妙なことを言い出した。

プリウス

「それはないっスね……あいつらプライドだけは無駄に高いっス。だから一個撃破より両軍が集まったところを一気に始末しようと考えるハズっス」語りだしたプリウスに冥琳が怪訝な目を向ける。そういやあいつらはデミウルゴス様の元部下だったな。ならプリウスと面識があってもおかしくない。しかし……この状況でそれを言ったらマズくないか?

冥琳

「お前……やけに奴らについて詳しいな」

プリウス

「貂蝉さん情報っス」……誤魔化した!貂蝉に全部押し付けた!意外に強かだな!

蓮華

「……分かった。で、奴らとの闘い、猶予はどれだけありそう?」

冥琳

「これまでの傾向から考えるに、およそ一週間……それまでに体勢を整えなくてはなりません」

雪蓮

「よし。ならばすぐに建業に早馬を出し、兵を揃えさせよう。出征している兵達は建業に到着後、一日休息を取る……その後に出陣だ」

冥琳

「御意」指示を出す蓮華とそれに応える冥琳。そんな2人を見て、ナゼかニコニコしている雪蓮。

向田

「こんな時に笑うなんて不謹慎だぞ、雪蓮」

雪蓮

「そうね。分かってるんだけど……蓮華の成長振りが嬉しくて、つい顔が綻んじゃうのよ。これならいつ隠居しても大丈夫そうね」あーそうですか……

雪蓮

「その後は剛と一緒に、冒険者とかいうのをやってみようかしら?」え?

向田

本気(マジ)!?」

雪蓮

「アラ、私はいつだって、マジメよ」

向田

「どこがだよ!?まあ、それもあいつらに勝ってからだけどな」

雪蓮

「勿論よ」そう呟くと雪蓮は急に黙った。何か考え込んでいるみたいだけど……

雪蓮

(いよいよ最後の決戦……母様。見ていてね)

 

 いよいよ残る最後の敵、左慈と于吉、荀彧との決着に備えて建業へと戻って来ていた。

 敵は神界に謀反を起こした、本来は世界の管理者を務めるハズの左慈と于吉。それに曹操を裏切った荀彧。奴らの軍勢は、噂では50万とも60万と言われている。その大軍勢に対抗するため、雪蓮と蓮華は呉全土に総動員令を掛けた。

 

 こうして、かき集められるだけの兵をかき集めるのに3日を費やし、更に1日休息を取って万全の態勢を整える。

 これが最後の闘いになるのか……それはまだ分からない。ただ1つ分かっていることは、俺達はこの闘いに勝ち残らなければならないってこと。

 

 先代呉王孫堅さん、そして雪蓮と蓮華の夢を実現させるため──

 

 城内の玉座の間には隠居予定の雪蓮に代わりに、蓮華が腰を下ろしている。その蓮華にはもう立派な一国の王としての風格が漂っていた。

亞莎

「蓮華様。全ての準備が整いました……もはや出陣の時かと」

蓮華

「……ああ」恭しく進み出た亞莎の言葉に頷きを返し、蓮華は玉座からゆっくりと立ち上がる。

蓮華

「皆、揃っているな」

「はっ。将は全て御前に控えております」

「兵の皆さんは城門にて、蓮華様のお言葉が掛かるのを待っておりますよ」

思春

「蓮華様。出陣の号令を」

蓮華

「……分かった」

向田

「1人で大丈夫か……?」

蓮華

「大丈夫……しっかりやってみせるわ。母様に褒められるぐらい、しっかりとした号令をね」

雪蓮

「あの母様が誰かを褒めるなんて、なさそうだけど……蓮華、しっかりね」

蓮華

「……はい」小さく──しかし力強く頷いた蓮華は、ゆっくりとした足取りで城壁へと向かっていった。

 

 城門の下──孫呉の精鋭達が整列し、静かに出陣の合図を待っていた。城壁の目に進み出た蓮華の姿に、整列していた兵士達が一斉に歓声を上げる。その歓声を、ただじっと受け止めていた蓮華は、やがてゆっくりとした所作で片手を上げると、兵士達の歓声を抑制した。

蓮華

「孫呉の勇者諸君!」良く通る、澄み切った声が天に木霊する。

蓮華

「これより我が軍は赤壁へと進発する。目的は……憎むべき敵、左慈と于吉の打倒である!先代孫伯符を卑怯なる手で暗殺しようとした奴らを……国を乱し!平和を乱し!罪のない者達の命を奪い!今、天下を滅せんとする輩共を!私は断じて許しはしない!であろう、孫呉の勇者諸君よ!」

兵士達(モブ)

「「「応っ!」」」

蓮華

「今、我らは立ち上がり……我らのこの手で奴らを討ち果たすのだ!孫呉の勇者達よ!勇ましき我が兄弟達よ!この孫仲謀に( そんちゅうぼう )力を貸してくれ!国のために!平和のために!天下のために!……孫呉三代の夢の実現のために!」

兵士達(モブ)

「「「応ぉーっ!」」」蓮華の言葉を受けて、兵士達1人1人が天に向かって腕を突き上げ、咆哮にも似た雄叫びをあげる。まるで俺達も同じだと言わんばかりの声。その声は、城壁に立っている俺達の腹中を貫き、蒼天を衝いた。ところで……この声、デミウルゴス様を始め、神様ズにも届いているのかな?それはさておき、蓮華の号令によっておおいに士気を高めた俺達は、建業を出発し、劉備達と合流するため、赤壁へと向かった──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前回無印ベースになると言ったのに、結局真・呉編ベースになってしまった……

本編が終了したあと、追加話を書くかもですが「こんな話が見たい」なのはありますか?候補は次の通り

  • 月と詠に再会した呂布と陳宮の話
  • ゴン爺に出会う雪蓮の話
  • 呉vsルバノフ聖王国の話
  • 有希の三体目の従魔の話

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