仲間を増やす話は次回に持ち越しとなりました。越後屋の次回予告は変更になる場合もありますのでご了承下さい。
~向田視点に戻る~
と、いう訳で帰ってきた雪蓮はメッチャ不機嫌そうにしている。大方、今回も袁術に散々ムチャ振りされたみたいだな。
穏
「あっ……孫策様が帰ってきましたよ。お帰りなさ~い♪」この娘は相変わらず気の抜ける口調だな。よく言えば癒し系なんだろうけど、悪く言えばやる気がなさそうにも見えるよね……。
雪蓮
「ただいま……」眉間に皺を寄せている雪蓮。あのバカっ娘が相手じゃ仕方ないか。
冥琳
「お帰り……その様子だと、今回もまた何か無茶を言われたようね」冥琳も溜め息吐いてるよ。
雪蓮
「黄巾党の本隊を叩けだって……無茶言ってくれるわよ、ホント」
祭
「本隊をじゃと?……話にならんぞ。大賢良師が率いる本隊は、噂では二十万とも三十万とも聞く……敵う訳がない」3人が愚痴っているとフェルが口を挟む。
フェル
「何も無茶ではあるまい。たかが盗賊の集まり、我らなら一捻りだぞ」
雪蓮
「それはそうなんだけど……出来れば呉が独立を果たすまで、私達はあなた達の力を借りずに闘うつもりなの」
向田
「えっ?」
冥琳
「考えてもみろ向田。お前の従魔が黄巾党を殲滅したとして、名が残るのは誰だ?」そっか。こいつらの力で勝っても、それが呉の強さとは世論が認めない訳だ。むしろ【虎の威を借りた狐】っぽく云われて、呉が舐められる事もありうる。
祭
「そういう事じゃ。だから策殿も悩んでおるんじゃよ。お主ら抜きで大軍を相手にするでのぉ」
雪蓮
「普通なら無茶だと考えるんだけどね……袁術と張勲のバカ二人はそんな事考えてないみたい」
穏
「あ~……あの二人って正真正銘のお馬鹿さんですもんねぇ」穏まで呆れてるよ。
スイ
『あるじ~。そのおバカさん、スイが攻撃しちゃっても良い~?』
ドラちゃん
『よし!今すぐそいつのトコ、乗り込もうぜ』スイもドラちゃんも何気にスゴい発言するなぁ。それ、個人的には大歓迎なんだけど。
向田
「2人共、今すぐは止めよっか。それを決めるのは雪蓮だからね」
スイ
『分かった~♪』
ドラちゃん
『何だよ、つまんねーな』
祭
「いずれにしても迷惑な話じゃな……それで?策殿はどうするつもりじゃ?」
雪蓮
「とりあえずみんなを呼び寄せてから考えるわ」
冥琳
「みんな?という事は……旧臣を集める事に対して、袁術が許可を出したのか」ん?それって後々袁術に不利じゃね?
雪蓮
「ええ……バカよね、ホント」
冥琳
「その馬鹿さ加減は有り難い……これで軍が増強出来るというモノだ」まぁバカというより浅慮なんだろう。何だかんだいってもまだ子供だしな。
祭
「ふむ……先を見据えて動くか……時機が来るとお考えかな?」
雪蓮
「漢王朝の統治能力は最早ないも同然。そして都合良く起こった黄巾の乱……その先に割拠の時代が来るのは明白でしょ?」
冥琳
「同意だ。ではすぐに使者を出し、各地に散っている旧臣達を呼び寄せよう」
穏
「興覇ちゃんに周泰ちゃん。孫権様に尚香様にも連絡をしないといけませんね~」
雪蓮
「尚香はダメよ。まだ連絡しないで……これから先は賭けになるからね」
祭
「尚香様さえ残っていれば、孫家の血が絶える事もない、か。儂は賛成じゃな」
冥琳
「ふむ……では尚香様には今しばらく待機してもらおう」
雪蓮
「うん、お願い」えっと……孫権は史実だと孫策の弟だったな。という事は、こっちでは妹か?孫尚香は妹だったから、こっちでは弟になるのかもな。何だかややこしいな。
冥琳
「出陣はいつにする?」
雪蓮
「全ての準備が整うまでは出陣しないわ……袁術にも伝えてあるから、しばらくは何も言ってこないでしょう」
穏
「それは有り難いですねぇ~。では私は使者の選定と兵站の準備に取りかかりますね」
祭
「では軍編成に関しては儂がやろう。策殿と公謹には軍略の決定を頼もうかの」
雪蓮
「了解。部隊の合流は行軍の途中で行うから、そのつもりで居なさい」
冥琳
「分かったわ。ならば軍の編成が終わり次第、出陣しましょう」
雪蓮
「ええ……いよいよ独立に向けて動き出せる。皆……私に力を貸してちょうだい」
冥琳
「当然だ」
祭
「うむ」
穏
「はい♪」
──それから。雪蓮が袁術に呼ばれてから十日が経過した──
出陣準備に勤しむみんなをよそに、俺は冥琳に呼ばれて特別授業を受けていた。冥琳曰く、軍師としての勉強だそうだ。授業なんて大学を卒業して以来、一度も受けた事ないんだけどさ。でも……以前言われたように自分が口にした事に対して、俺は責任を取らなくちゃいけないんだよな。口に出した結果がどうなったのか。自分が提案した事が、どれほど多くの人の運命を変える事になったのかを。人の死には何度か直面したけど、未だ慣れない。多分一生慣れないだろうと思う。だけど……歯を食い縛り、目を逸らさずに見つめなければならない。デミウルゴス様に頼まれたとはいえ、ここに来るのを選んだのは俺自身なんだから。俺は俺の言葉が招いた全ての結果を受け止めようと心に決めていた──。
スイ
『あるじ~。お勉強するの~?スイもする~』スイにとっては勉強も【面白い事】の内に入るみたいだ。
フェル
『戦に参戦しないのなら、我らは狩りに行くぞ』フェルとドラちゃんにはマジックバッグを持たせて見送った。
ドラちゃん
『旨い肉獲ってくるぜ。帰ったらメシな』それは冥琳次第だと思うぞ。しっかしうちのトリオはホントに空気読まないね。俺が珍しく、真面目モードに入ってたのに……何となく気が削がれたな。
冥琳
「よそ見をするな、向田!」冥琳から激が飛ぶ。おお怖い、ちゃんと授業を受けないと……あ、スイは授業が開始して10分ほどで寝ちゃってたよ。
淡々と流れる時間の中で、着々と出陣準備は進行し──やがて出陣の時を迎える。目指すは冀州。黄巾党主力部隊との決戦である。俺も同行するように言われたから、馬の代わりにフェルに跨がって雪蓮達と戦場予定地にやってきた。
雪蓮
「穏。蓮華達はいつ合流するって?」
穏
「兵を集めてから合流するらしく、少し時間が掛かるとの事でした~」
雪蓮
「そう……ならば初戦は私達だけね」
祭
「連れてきた兵は多くない……いきなり敵本隊と闘う事は出来んのぉ」
冥琳
「敵本拠地の周辺では、諸侯の軍も動いています。まずは出城に籠っている黄巾党を処理しましょう」
穏
「その後、諸侯の軍と足並み揃えて本拠地に迫れば、この兵数でも何とか出来ると思いますよ」
雪蓮
「ふむ。なら方針はそれでいきましょ」
冥琳
「了解した」
祭
「ではそろそろ軍を止めて昼にしようかの」
穏
「わ~い、お昼お昼~♪」ん?という事は……
雪蓮
「それじゃ宜しくね。剛♪」ってまた俺かよ!?まぁ良いけどさ、どうせ食いしん坊トリオからもせっつかれるだろうし。
さて昼飯は何にするか、どうせなら手軽で、且つ腹持ちの良いモノが望ましいな。そうなると普通はサンドイッチだけど、兵のみんなに食べ慣れてない食パンを出すのはヤッパ気が引ける。よし、おにぎりにしてみよう。それと、ドラちゃんが獲ってきた
コカトリスの肉と玉ねぎを炒めたら、ケチャップと混ぜる。味付けをちょっと濃いめにするのがポイントだぞ。そこに炊いておいた大量の米を投入、いわゆるチキンライスを作る。ある程度チキンライスが出来たら、こっちは料理アシをしてくれている兵士さんに任せて、俺は薄焼き卵を焼いていく。勿論、サイズはうちの従魔トリオ用と人間用では随分違うけど。ここでネットスーパーを開いて、おにぎりの型枠を50組ほど買った。流石に兵士さんの人数分、一個一個握ってる間はないからね。で、オムライスおにぎりが完成した。うちのトリオには手軽も何も関係ないので、普通のオムライスをいつもの如く深皿にタップリ盛って出したよ。
兵士(モブ)
「変わった握り飯だけど、これメッチャ旨いな」
兵士(モブ)
「うっ……こんな贅沢に肉入りの飯が食えるなんて(泣)」感動しながら食ってる兵士さんまで居た。そんなコメント聞くと何だか申し訳なくなる。すみません、うちは普段から肉三昧なモンでねぇ……心の中で謝っておく。 うちのトリオもムシャムシャ食ってはお代わりを繰り返す。
祭
「これ、この前のびいるとかいう酒にも合いそうじゃな」イヤイヤ、今から戦って時に何言ってんの?この人。
冥琳
「一見すると炒飯のようだが、別物だな。味付けは酢か?程よい酸味と卵が良く合う」
穏
「色からして、もっと辛いのかと思いましたけど~、そうでもないですねぇ。これも美味しいです~」
全員に食事が行き渡ったのを確認して、俺が魔導コンロと調理器具の後片付けをしていると、雪蓮が背中にベッタリとくっつきながら、声をかけてきた……うう、な、何だこの柔らかいモノは?
雪蓮
「つーよし♪今日のご飯も美味しかった」
向田
「そ、それは良かった。それで何の用?」
雪蓮
「分かる?」
向田
「雪蓮には珍しく、当たり障りのない話題から会話が始まったからさ。何かあるんだろうなって……で、どうかしたの?」
雪蓮
「ん……あのね……剛を連れてきた時に約束したでしょ?呉の武将を口説けって」あ~、確かに言われてたなぁ。
向田
「うん……まぁぼちぼちと俺なりに頑張らせてもらってるけど」しかし、これが中々厳しいんだよな。俺自身、女慣れしてないってのもあるけど、フェル達が常に一緒に居るからねぇ。
雪蓮
「それでね……もう少しすればさ、私の妹が合流するんだけど」
向田
「妹?孫権さんだっけ?」
雪蓮
「そ……あれ?説明したっけ?」
向田
「ホラ、この前袁術のトコから帰ってきた時にみんなで話したじゃないか?その時名前が上がってたからさ」
雪蓮
「んー……ま、いいや。それでね。妹の事なんだけど……ちょっと真面目過ぎだし、カタブツっぽいところもあるけど、とっても良い娘よ。可愛いし、胸も大きいし、お尻の形も最高だし」
向田
「は、はぁ……」
雪蓮
「で、私の後継者は孫権。だから剛はどうにかして孫権との間に子を設ける事……約束よ?」
向田
「ちょ、いきなりそんな事言われても!……何だって、そんな事言うんだよ?」
雪蓮
「これからの呉の為に決まってるでしょ♪じゃ、頑張ってね。期待してるわよ、剛♪」それだけ言うと、雪蓮はどこかへ走り去ってしまった……ったく。どうしたんだ、いきなり……
祭
「なんじゃ?どうした向田。アホ面を晒して」雪蓮と入れ替わるように、今度は祭さんが俺の目の前に現れた。
向田
「アホ面って酷いなぁ……いや、そんな事はどうでもいいか。祭さん、雪蓮になにかあったの?」
祭
「ん?」首を捻る祭さんに雪蓮との会話を伝える。
祭
「なるほど。これからの呉の為、か」
向田
「言いたい事は分かるんだけど。でも……俺、孫権さんに会った事さえないんだよ?いきなりあんな事言われても」
祭
「そこはほれ、お前さんの実力で何とかせい」
向田
「な、何とかっすか……」
祭
「それが策殿と交わした約束じゃろうが?……約束を守らん男に価値はないぞ?」約束と言えば……そもそもここに来たのもデミウルゴス様に戦を終わらせると約束したからだよな。う~ん、雪蓮にはああは言ったけど、あの時はこんな事になるなんて想像もしてなかったなぁ。今更どうしようもないけどさ。
向田
「……分かった。俺は俺なりに頑張ってみます。でも、向こうの大陸では俺、全然モテなかったんだから頑張ってもムリって場合もあるよ?」
祭
「なあに。モテるモテないなど関係ありゃせん。心根のしっかりしたお前さんは、ただ感じた事、思った事を真っ正直に口にすりゃ良いんだ。そうすれば自然と女はついてくる……儂が保証してやろう」
向田
「はは……有り難いこってす」
祭
「うむ。しっかり口説いて女心を掴めよ……役得と考えろ、役得と。うははっ!」豪快に笑いながら、祭さんは俺の肩をビシバシと叩いてくる。
向田
「痛っ、痛いっすよ、祭さん!」
祭
「何を言っとる。気合いを注入してやっとるんだ。有り難く思え」アント○オ○木かっ!
向田
「ううっ……有り難く受け止めます」乱暴だけど暖かみの籠もった祭さんの励ましが、肩にじんわりと染み込んでいく。それは祭さんの信頼の証だろう。その証に答えてみたくはあるんだけど……答える為に必要な事が、女の子を口説いて子供をって事なんだよなぁ。
向田
「孫権と俺の子供……ううっ、怖っ」頭の中に浮かぶのは、この前購入した本に載っていた孫権(男)の肖像画。やらないか、ってレベルじゃねーぞ……男ばかりの三國志はこの際、記憶から全消去しちまおう。精神衛生上、それが一番だ──。そんな事を考えながら、俺は魔導コンロと調理器具の後片付けに戻った。
その後、食事を終えた俺達は、再び行軍を開始した。
作中に登場する魔物の名前は作者オリジナルで、本来の中国語とは違います。
次回、(拙作にて)蜀で大活躍した彼らがゲスト出演?