とんでもスキルで真・恋姫無双   作:越後屋大輔

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原作に沿っているとメシ話に入るきっかけが、中々掴めない……


第九席フェル、孫権を脅すのこと

 孫権が気絶すると、お付きの武官らしき女性がいきなり俺を短剣で切りつけようとした。しかし俺には神様ズからの【絶対防御】の加護がある為、傷つく事はない。それでも尚、憎々しげに俺を睨み付ける女性を、今度は祭さんが止めてくれた。

「止めんか興覇(こうは)。こやつに手を出せば従魔共が黙っとらんぞ」

フェル

『大陸ごと消すと言ったハズだぞ。生まれて4ヶ月のスイでもそれぐらい分かりそうなものだがな』フェルに嫌みを言われて更に悔しそうな女性だったけど、雪蓮が宥めてようやく怒りを収めてくれた。

 その後孫権が目を覚まして、改めて自己紹介し合う俺達。あっ、勿論フェルの暴言については最初に謝ったよ。まだ孫権は俺を疑わしい目で見ているけど、そこは冥琳がフォローしてくれた。

冥琳

「孫権様。確かにこやつの素性は知れませんが、今まで行動していて怪しい点などはまるでなく、またその知識は広く、我らでは考えも及ばない事を知っております。貴種*1として孫策様が拾ったのもあながち間違いではないかと。また、こやつは孫策様が片腕とするに充分な実力があるかと。そして何より……こやつの作る料理は絶品で、兵達も皆、虜になっております」

孫権

「料理の事はともかく……公謹がそういうのならばそうなのでしょうね。だけど私は……」孫権は一瞬フェルをチラ見して続ける。

孫権

「……私はまだ認めないわ」言いたい事だけ言うと、孫権は俺に背を向けて立ち去っていった。

向田

「俺……メッチャ嫌われているんじゃない?」

「嫌ってる訳ではないじゃろ。儂にはとてもそうは思えなんだが」

向田

「ええっ!?祭さんの目、ちょっと洗った方が良いような……」

「なんじゃとぉ?」

向田

「だって今の態度だよ?はなっから胡散臭い奴って決めつけてるじゃんか。そりゃ……胡散臭いってのは自分でも分かってるけどさぁ……」

冥琳

「まぁあまり気にする必要はあるまい」

「うむ。権様は高貴な者の心得を、ただ実践なさっとるだけだ」

向田

「高貴な者の心得って?」

「素性の知れない者を近づけない。甘言を弄する人間を近づけない。金玉に( きんぎょく )執着しない。の三点ですね」

冥琳

「国が滅ぶ原因の多くはその三つに絞られる……だからこそ孫権様はその心得を実践しているのだよ」

フェル

『……全く。人の世とは面倒なモノだな』

向田

「しょうがないだろ。それが人間社会ってモノなんだから」しかし、正直言って落ち込むよなぁ……

「心配せんでも、貴様の心根が分かれば、きつい言葉はなくなるじゃろうて」

向田

「逆を言うと、心根が分からない間は、きっつい言葉を掛けられるって事か……」

「あははっ、そういう事ですね~♪」だから穏。何で君は楽しそうに語るの?こっちの身にもなってよ。

向田

「うはぁ……ちょっと憂鬱だ……」

冥琳

「心配するな。あの方は暗愚な方ではない。信用できると判断したならば、普通に接してくれるだろう。今はただ、孫家の血族として、王者たらんとして、無理をされているだけだ」

「そういう事じゃな……ただ、お主自身も自分を知ってもらう為の努力はせんとな。努力せんで理解してもらおうなどと言うのは、手前勝手というモノだ」

向田

「肝に命じておきます……」

フェル

『いっそ創造神様の事を話したらどうだ?』フェルが念話で俺に提案してきたが

向田

『ムリじゃないか?そもそもこの大陸の人達はデミウルゴス様やニンリル様達自体を知らないんだから』俺も念話で返す。

フェル

『フンッ。神々を知らないとは、何とも情けない……』──と、みんなで話していたところへ、立ち去ったハズの孫権とさっきのお付きの武官、それとナゼか忍者みたいな格好をした、孫権よりも年下そうな、女の子が、雪蓮に連れられてやってきた。

向田

「あれ?どうしたんだ、雪蓮?」何気なく言った一言に、

孫権

「貴様、ナゼ姉様の真名を口にするっ!」孫権の非難が浴びせられた。いや、ホント。やっぱり嫌われてるって俺。

雪蓮

「良いの。剛には真名を呼ぶ事、許してるもの……私だけじゃなく、冥琳と祭、それに穏もね」

孫権

「なっ……!」

甘寧

「……それほどの人物なのですか?……私には胡散臭い男にしか見えませんが」

??

「胡散臭いとかじゃないですが……公謹様達が真名をお許しになった事に、少し違和感があります……どういう事でしょう?」忍者風の娘が、他の2人よりは俺に好意的な意見を言ってくれた。

冥琳

「ふむ。まぁそうだろう。だが……こやつはお前達の夫になるかもしれん人物だ」

孫権・甘寧・??

「「「ええっ!?」」」そりゃ驚くよね。俺だって未だに信じられないし。

??

「あ、あの……どういう事でしょう?」

雪蓮

「んー。剛は管輅の占いに出てきた天の遣いなの。そんな貴種の血を孫呉に入れる事が出来たら、大きな力になるでしょ?」

冥琳

「少なくとも、孫呉に天の遣いの血を引く人間が居る……という評判に繋がるだろうな」

雪蓮

「そういう事。だから剛を保護する時に契約したのよ。子作りしろってね♪」

孫権

「な……何たる浅慮!お姉様は私達の意志を無視するおつもりですか!」

雪蓮

「無視するわよ。特に蓮華。孫家の人間である貴女の意志はね」

孫権

「……っ!」

雪蓮

「孫呉が強国にのし上がり、天下を目指す為には、兵が要る。資金が要る……それを得る為に必要なモノは、庶人の口から放たれる風評の矢。母様の夢、孫呉の宿願……呉を独立させ、天下統一に乗り出す為にも、剛の力が必要なの」

孫権

「……ずるい。ずるいですよ、お姉様……母様の事を言われたら、私は何も言えなくなるではありませんか……」

雪蓮

「知ってる。だから母様の名前を出したの……だけど安心しなさい。強制ではあるけれど、本気で嫌がるのならば無理はさせない。それは剛にも言ってる……まずはお互いを知り合いなさい。それが第一よ」

孫権

「……」

冥琳

「興覇、幼平(ようへい)。二人共良いな?」

甘寧

「……は」

??

「は、はいっ!」

「まぁ見た目は胡散臭いかもしれんが、中々どうして骨のある奴じゃから、皆、安心せい」

「うんうん。こう見えて結構頭も良いですし、優しさもありますし……ちょっとお調子者さんですけど、良い人ですよ、剛さんは」と、みんなが寄ってたかってフォローしてくれたが、(フォローになってない気もするけど)肝心の孫権はと云えば、

孫権

「……ふんっ」ギロッと俺を睨んだ後、心中の不満を隠そうともせずにそっぽを向いていた。そんな孫権にスイがピョンピョン跳ねながら近づいていった。

スイ

『あるじにヒドイ事言っちゃダメ~。スイ怒っちゃうよ!』ああ……スイは主想いのエエ子やなぁ。

雪蓮

「……とにかく。三人は剛に真名を預けなさい」

周泰

「は、はい!あの……姓は周、( しゅう )名は(たい)字は幼平、真名は明命(みんめい)!剛様、よろしくお願いします!」

向田

「こちらこそよろしくお願いします。向田剛……ってのが俺の名前です」そう言って、真名を明命と名乗った女の子に手を差し出した。

向田

「握手だよ……ダメかな?」

明命

「いえ!で、では僭越ながら……」 鯱張っ( しゃちほこば )*2言葉を使いながら、明命は恐る恐るといった感じで俺の手を握った。

向田

「まだまだ未熟者だけど、これからよろしく」

明命

「はいっ!」元気いっぱいに笑顔で返事をしてくれる明命に、緊張していた身体からスッと力が抜けていく。うう……この娘、良い娘だなぁ……

甘寧

「……我が名は甘寧。字は興覇……王の命令により真名を教えよう。思春(ししゅん)と言う」

向田

「よろしくお願いします」

思春

「よろしくするかどうかは孫権様次第だな……」そう言うと、握手の為に俺が差し出した手を一瞥した思春は、孫権の後ろに退いた……どうやら思春は、忠義一徹って感じの武将らしい。

向田

「了解……なら孫権さん」

孫権

「なんだ」

向田

「俺が気に入らないのなら別に良いよ。君の立場から見れば、俺が胡散臭いってのは充分頷けるし」

フェル

『我は不満だが……こやつがそう言うなら特別に生かしておいてやる』フェルの脅しに毅然としている孫権だけど、良く見ると足がブルブル震えている。

向田

「フェルはちょっと黙ってて。そんな男に真名って大切な物を預けるのは嫌だって気持ちも良く分かる。だからまずは俺の事を見て欲しい。今は胡散臭い奴っていう先入観があるから、俺の言動、存在全てに嫌悪が先立ってると思うけど。でもしばらく観察してくれていれば、胡散臭さもちょっとはマシになると思うから。その後で、真名を教えても良いのかどうか、君自身が判断してくれれば良い。だから今は──」俺はそこで言葉を句切り、孫権の前に手を差し出す。

向田

「仲間……なんて事はまだまだ言える段階じゃないかもしれないけど。それでも雪蓮達を支えたいって俺の気持ちだけは認めて欲しいかな」

孫権

「……」

向田

「ダメ……かな?」

孫権

「……会ったばかりの人間の気持ちなど、見透かす事は出来ない。だけど冥琳達が私に嘘を付くハズはない。だから……間接的には認めてやろう」

スイ

『ん~?スイ良く分かんな~い』

ドラちゃん

『いちいち言い方がまどろっこしい奴だな』スイとドラちゃんがブーブー文句を言ってるがここは無視しよう……俺が差し出した手をチラチラと見ながら、孫権は言葉を続ける。

孫権

「握手はしない。その……そういう事には慣れてないから……」そう言った孫権は、俺が差し出した手を取らず、スッと後ろに下がっていった。差し出した手のやり場に困ったけど……これはこれで良いのかもしれないな。(デミウルゴス様の依頼の為ではあるけど)とりあえずは雪蓮を支えたいって言う俺の気持ちを認めてくれたんだ。今はそれで良い。

雪蓮

「さて……と。自己紹介はこれでおしまい。部隊の再編成をした後、すぐに出発しましょうか」

冥琳

「そうしよう……興覇、幼平。お前達二人は黄蓋殿の下につけ」

思春

「はっ」

明命

「はいっ!」

「では二人には部隊の再編成を行ってもらおうか……真ん中は儂の部隊じゃ。二人は儂の両翼につけ」

思春

「了解しました。後曲はどのように配置します?」

冥琳

「後曲中央に雪蓮の部隊を。右は私の部隊が取る。左は穏が取れ」

孫権

「待て。では私の部隊はどうするんだ」

冥琳

「蓮華様は後曲の後ろ、輜重隊を護衛すると共に、遊軍として待機しておいて下さい」

孫権

「……分かった」

雪蓮

「剛は私の横に居てね」

向田

「了解」

孫権

「……」

冥琳

「では部署割りが決まったところで、再編成に移る。一刻後には出発するぞ」

「応」

思春

「はっ」

明命

「はいっ!」

「はーい♪」さて、これから黄巾党本隊が籠もる城に向かう訳だけど……これから先はどうなる事やら。

 

 

*1
現在の地位と関係なく、元々は高貴な身分や家柄に所属していた人間を指す

*2
いかめしく構える、緊張して体が固くなるの意




孫権は中盤から良い娘になっていきます。ファンの皆さん、しばらくお待ち下さい。
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