また1年が経った。
俺とエースも11才になった。
1年前に俺が修行しようと提案し、まずはこの森の頂点を目指そうと決めたまでは良かった。
森に生息する大型の獣も半分くらいは倒した。
順調に強くなってると思う。
だが想定外の化け物が現れた。
「貴様等ぁーーーー!!!まだ海賊になるなどとほざいとるのかぁーー!!」
そう、エースの祖父ちゃんだ。
2人で強くなる為に特訓をしていたら急に現れたのだ。
エースがうっかり海賊になる為に鍛えていると言ったのが運の尽き。
「立派な海軍に鍛え直してやる!!」と時折こうして急に現れてはボコボコにされる不定期開催の謎イベントが始まった。
そして更に驚かされたのが何とこのジジイ、海軍の英雄と言われたガープ中将なんだとか。
海軍の事なんてよく知らないけどエース曰く化け物らしい。
前々からエースからはうっすらと聞いてはいたけど言葉通りに化け物だった。
「何だよこのジジイ……化け物かよ…」
ガープにボコボコにされた際、思わずぼやいた。
エースも既にノックアウトされていた。
ボロ雑巾の様に地面に倒れていた。
「小僧…口の利き方がなっちょらん様じゃな…」
指をポキポキ鳴らしながら俺を見下ろすガープことジジイ。
…あ、聞こえてたのね…
「このジジイ…ぶっ飛ばしてやる…」
精一杯の虚勢でガープを睨みつける。
「まだそんな目をする元気がある様じゃな!ならもう少し扱いても問題無いじゃろ!」
「え?」
「行くぞぉ!!」
あ”~~~~~~~~~~…………
この後、俺は文字通りガープに扱かれた。
「がっはははは…じゃあまた今度続きをするぞ。それまで死ぬんじゃないぞ!」
ガープは一頻りやり終えて満足したのか上機嫌で去って行った。
「…あのジジイ…」
「海賊になったら真っ先にあのジジイを倒そうぜ?」
見たまんまボロ雑巾にされた俺とエースは固く誓った。
………………………………………
………………………
何度目かのガープ襲来から数日、俺は1人で森を出て山を下った。
今日はエースにも特訓は休みにしようと伝えている。
いつだかガープに聞いた事があったのだが俺の住んでる森の近くに村があるらしい。
今までエースやガープ以外の人と接していなかった俺は無性に気になってその村に行ってみる事にした。
いつもは行かない方向に足を進める。
グレイターミナルとは反対方向だから来た事は無かった。
山を下り木々が少なくなってくると海が見えた。
「あそこか?」
その海と島の境目に小さな村が見えた。
遠目に見えたその村は如何にも閑静な漁村という印象だった。
何と言うか穏やかな感じだ。
グレイターミナルとは雲泥の差だった。
…将来あんな穏やかな村に住みたいなぁと思ってしまう。
「さて……どこに行こうか……」
村に到着したは良いが、来たかった割には特に目的は無かった。
どうしようかと辺りをキョロキョロ見渡していると気が付いた
「あれって……もしかして海賊船か?」
小さな漁村に似合わない大きな船…海賊旗が揺らめいていた。
「…いるのか?この村に?」
まさかこの村に海賊がいるらしい。
これは丁度いい。海賊になると決めたは良いが肝心の海賊を一度も見た事が無い。
後学の為にも一度拝見させてもらおう。
そうと決まれば海賊探しだ。
俺は村の中をウロウロと徘徊しだした。
やがて1軒の酒場を見つけた。店先からでも中の賑わいが聞こえてきた。
恐らくここだろう…と思い窓から店内を覗く。
店内にはガラの悪い連中が一杯いた。
「こいつらが海賊か?」
海賊なのだろうか…山賊じゃないよな?
見た感じグレイターミナルにいるチンピラと変らなそうな感じだけど…
「何か海賊らしい事してくんねぇかな…」
海賊らしい事とは何かわからんが、これだけでは只のチンピラと変らない。
俺は窓を覗くのに必死で後ろから近づいて来る男に気が付かなかった。
「なんだ?坊主。俺達に何か用か?」
ビクッと肩が跳ねた。
恐る恐る振り返るとそこにはライフルを腰に差した黒髪の男が俺を見下ろしていた。
「あ、あ………」
「ん?どうした?坊主?」
「な、なぁ、アンタ達って…海賊なのか?」
俺の言葉に男は『あぁ』と頷く。
「そうだが……何だ坊主…海賊に興味あんのか?」
「お、おぅ…俺もいつか海に出て海賊になるからさ…海賊がどんなものか気になったんだ」
「ははっ!そうか!お前も海賊になるのか!」
あはは!とその男は笑い出した。
「何だよ。何か可笑しな事言ったか?」
何故か笑い出した男に俺は首を傾げる。
「わりぃわりぃ…そうか!海賊か!」
謝ってはいるが未だに笑っているのが何だか気に食わない。
「…なんだよ?喧嘩売ってんのか?」
買うぞ?その喧嘩。
「おっとっと…そんなつもりは無かったんだ。
只々海賊になりたいなんていう奴がこの村にいるなんて思わなくてな」
未だに笑いながら俺の頭をガシガシと撫でる。
「やめろよ…撫でんな…」
子供扱いされているみたいで気が悪い。
いや、実際、子供なんだけど…バカにされてるみたいでムカつく。
「ははは!そうか、それは悪かったな。じゃあお詫びに一杯奢ってやるよ」
「え?いいの?」
それは有り難い。
「ぷっ!……子供だな」
男は俺の言葉に噴き出した。
「…あ」
しまった。今のは完全に子供だった。
「坊主、遠慮すんな。ほら、入れよ」
「うぉっと!」
俺は男に背中を押され、酒場に押し込まれた。
「………………………………」
店中の海賊が俺を見ている。
いきなり現れた得体の知れない子供を怪訝そうに見ている。
「あら?いらっしゃい。副船長さん」
店主さんらしき女の人が俺を店に入れた男に声をかける。
ん?副船長?
思わず振り返りその男を見た。
「マキノさん。このガキにジュースを一杯出してやってくんねぇか?後、俺にも酒を一杯くれないか?」
店主らしきお姉さんに声をかけ俺を連れてカウンターに座った。
「はい、オレンジジュース。副船長さんもどうぞ」
店主さんは俺の前にジュースの入ったグラスを置いた。
「あ、ありがとう…」
俺はグラスを傾ける。
「あ、美味い」
俺はグビグビと一気に飲み干した。
「ジュースって美味いんだな。初めて飲んだ」
俺の言葉に男も店主さんも『は?』と言った感じに俺を見た。
「坊主…お前ジュースも飲んだ事無いのか?」
「え?うん。酒は一度飲んだ事あったけど、マズかった。俺はこっちの方が好きだな」
何時だかエースがグレイターミナルで酒を盗んで来たから2人で飲んだがめちゃクソマズかった。
あれ以来、俺もエースも酒は飲んでいない。
「…お前どんな所で育ったんだ?」
男は怪訝そうに俺に尋ねた。
「森の中」
「は?」
俺の返事が意外だったのか男は呆然とする。
「最初はグレイターミナルっていう町に住んでたんだけど…今は森の中に住んでる」
俺としては何でも無い事だったのだけど、どうやら違う様だ。
俺以外の人は皆驚いている。
「…そうか。お前あそこに住んでたのか」
「うん」
「そりゃあ森の中で住む方が楽だな」
「知ってんのか?あの町の事…えっと……」
「そういや名乗ってなかったな。俺はベン・ベックマン。この海賊団の副船長をしている」
「ベン…ベックマン……それじゃあベックマン。どうしてあの町の事を知ってるんだ?」
黒髪の男…ベン・ベックマンにグレイターミナルの事を尋ねる。
「この辺を航海をしているんだ。この周辺の町の事くらい知ってるさ」
「…そうか。でも奇遇だな。俺も副船長なんだ!」
「お前が?」
ベックマンは眉を顰める。
「あぁ!船長は俺の友達だからな」
「ほ~~ん」
ベックマンは煙草に火を点けながら返事をする。
「なんだ…子供のごっこ遊びか…」
小さな声で呟いたつもりだったのだろうがしっかりと俺の耳に届いていた。
「遊びじゃねぇよ!真剣だ!いつか海に出てワンピースを見つけんだよ!!」
椅子の上に立ちベックマンを睨みつける。
俺とエースは遊びで海に出る訳じゃない。
俺はバカにされたと感じベックマンを睨みつける。
「ふっ……」
俺の剣幕に何かを感じ取ったのかベックマンはうっすらと笑みを浮かべた。
「なんだよ」
それがまたバカにされたみたいでムカついた。
「悪かったな。怒らせたのなら謝る」
「…ん。じゃあいいけど…」
俺は大人しく椅子に座り直す。
ジュースも奢って貰ったしな。俺は物分かりの良い男だ。
「マキノさんこいつにまたジュースを出してやってくれ」
「わかりました」
店主さんは笑顔で答えた。
「あ、出来たら今度は違うジュースがいいな」
「うふふ、わかったわ」
今度はどんな味のジュースが出てくるんだろうか。
非常に楽しみだ。
「そういえば坊主…名前聞いてなかったな」
「ん?あぁ、俺の名前はサボ。よろしくな」
「そうか。サボっていうのか…よろしくな」
「はい、サボ君。今度は違う味のジュースよ」
「お、ありがとう。店主さん!」
「マキノでいいわよ」
「ありがとうマキノさん」
「どういたしまして」
ジュースを飲む俺をマキノさんは笑顔で眺めていた。
「ん?ベックマン。なんだそのガキ」
いきなり背後から声をかけられた。
振り返るとそこには麦わら帽子を被った赤髪の男がいた。
「あぁ、船長…こいつは店の前でこの店を覗いてたんだ。将来海賊になるらしい」
「海賊ぅ?こんなガキがか?」
「なんだよ…文句あんのか?」
「はっはっは!ガキにゃあ無理だ!」
船長と呼ばれた男は俺の見て大笑いした。
「なるさ!無理だとかお前が決めんな!」
「威勢だけは一人前だな…すまんマキノさん。酒を一杯くれないか」
「はい。船長さん」
船長は俺の隣に座り、マキノさんに酒を注文した。
「何で隣に座るんだよ…」
俺は船長を睨みつける。
「いいじゃないか?そんな怖い顔するな」
「けっ!…」
俺はソッポを向きジュースを飲む。
「なんだ?ジュースを飲んでるのか?」
また揶揄おうとでも思っているのか俺の飲んでるジュースに気が付いた。
「いいだろ。俺が飲むものにケチつけんなよ」
なんでこんな奴が船長なのか…
ベックマンの方がよっぽどマシだ。
「船長。こいつはジュースを飲んだ事がないらしい」
ベックマンが俺を指差しながら言った。
「はぁ?お前どんな生活してきたんだ?」
ベックマンに聞かされ顔を顰め俺を見る。
「グレイターミナルの出だ…」
俺の代わりにベックマンが答える。
「……そうか…」
それで何かを察したのかそう返事をするとそれ以上何も追及しなかった。
この後、お互いに名乗り合った。
船長の名はシャンクスというらしい。
そしてなんやかんやで仲良くなった。
他のクルーも気の良い連中ばっかりだった。
海賊になる予定だけど海賊の事を知らない俺にシャンクスや他のクルー達は色々教えてくれた。
曰く、海賊は冒険をして宝を探したり、敵と戦ったり、宴をするらしい。
「何だか楽しそうだ!」
それを聞いて俺が海賊に抱いた感想がそれだった。
楽しそうに語る海賊たちを見て俄然やる気が出た。
これなら不定期ガープも乗り切れそうな気がする。
その後も色々教えてもらい、それなりに時間が経った。
やがて日が傾き始め俺も帰らなければならない時間になる。
森へ帰る為、村を出ようとする俺を見送る為か、海賊団の連中や店主のマキノさんも態々村の入口まで来てくれた。
俺は全員にお礼を言って森へ戻った。
………………………………
「サボのヤツ…本当に森に棲んでるんだな」
サボが山道を登り姿が見えなくなった辺りでベックマンが呟く。
「そうみたいだな…気になるのか?」
シャンクスはベックマンに尋ねる。
「まぁ…同じ副船長同士ですからね」
「ははは…それもそうだ」
軽く言葉を交わし海賊達もマキノさんも村の中へと戻っていった。
………………………………………………
………………………………
「お前……昨日フーシャ村に行ったらしいな…」
翌日、出会い頭にエースが尋ねて来た。
「え?、あぁ……そうだけど…何で知ってるんだよ」
「あぁ…ちょっとな…」
エースは言葉を濁した。
「それより!」
「うぉ!」
エースは大声で俺に迫りくる。
その表情は険しく明らかに怒っていた。
何だってこんなに不機嫌なのか…
「俺に黙って村に行くなんてズリぃぞ!今度は俺も行く!!」
あぁ、行きたかったのか…
まさかここまで怒るとは思わなかった。
今度からはエースと一緒に行こうと心に誓った。
そろそろ原作からズレ始めそうです