「何だと!シャンクス!」
「おぅ!やんのか!?エース!」
フーシャ村に初めて来た日から半年余り、最近ではこの酒場においてこの光景が日常になって来ている。
「おぉー!いけぇ!エース!」
「やっちまえ!エース!」
エースとシャンクスの日課と言っても良いこの喧嘩は他のクルーには今では丁度良い暇つぶしになっていた。
そして他のクルーはそれを煽ったり賭け事にしたりとそれなりに楽しんでいた。
「あいつらも懲りないな」
「全くだ」
俺とベックマンはそんな2人をアホを見る様な目で見ながらグラスを傾ける。
意外と…なのかはわからないがエースとシャンクスは随分ウマが合う様に見える。
頻繁に言い争ってはいるが基本的には仲良くお喋りをしている。
対する俺はベックマンとお互いの船長の愚痴を言ったりと仲良くやっていたりする。
そのついでに海賊の事について色々教えて貰ったりしていた。
「そういやベックマン。いつまでここに滞在するんだ?」
実は前々から気になっていた事だ。
シャンクス達の海賊団は約1年前にこのフーシャ村を拠点に活動をしていたそうだが、それが何故かはわからない。
只、元々はどこか違う所から来たらしいからその内元の場所に帰るのだろうか…
「何だ…シャンクスから聞いてないのか?」
ベックマンは意外そうな顔で俺を見る。
「来週にはもうここを発つぞ?」
「は?聞いてないんだけど…」
俺は思わずシャンクスを見る。
話を聞いてたのかさっきまで言い争っていたエースもシャンクスを見ている。
「あ、言ってなかった…」
シャンクスは『いっけね!』といった感じの仕草をする。
「この!……バッカやろーーーー!!!」
エースはシャンクスにブチぎれた。
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………………………………
「…悪かったな…エース。いい加減機嫌を直せ」
1週間が経ちシャンクス達の出航の日、俺とエースも見送りに来た。
だがエースの機嫌は未だに直らずにシャンクスも困っていた。
「別に……さっさと行けよ…」
エースはソッポを向きながらシャンクスに答える。
これにはシャンクスも困っていた。
エースも何だかんだでシャンクスに懐いていたから、寂しいのだろう。
…言ったら殴られるから言わないけど。
「エース…これで最後だぞ?言っておく事があるんだろ?」
俺はエースに声をかけた。
シャンクス達が今日出航すると知った時に最後に言っておきたい事があると俺に言っていたのだ。
「あ、あぁ…そうだったな」
エースは返事をするとシャンクスの目をじっと見つめた。
「シャンクス!」
「お、おう…どうした?」
急に大声で名前を呼ばれシャンクスは少し驚く。
「俺達はいずれ海に出る!そしていつかお前等に会いに来る!
その時はお前等に負けないくらいの仲間を集めてお前等より強くなって現れるからな!」
エースは少しだが涙ぐんでいた。
半年とはいえ仲良くなったもんな…
「俺達はお前達を乗り越えてワンピースを手に入れる!…
だから……だから!覚悟しとけ!赤髪海賊団!!」
エースはシャンクスを前にして宣戦布告をしてみせた。
シャンクスは最初は驚いていたがやがて何を思ったのか、笑みを浮かべた。
「そうか…俺達を超えるか……」
「おぅ!いつか超える!」
エースの迷いの無い言葉にシャンクスは被っていた麦わら帽子を脱ぐ。
そしてその麦わら帽子をエースに被せた。
「じゃあこの帽子をお前に預ける。俺の宝物だ」
「…え?」
帽子を被せられたエースは呆然としている。
「いずれ俺達の元へ現れるんだろう?だったら約束だ。この帽子を俺に返しに来い」
シャンクスは真っすぐエースを見つめる。
「お、おう!行くさ!必ず会いに来る!海賊として!」
「そうか……じゃあ待ってるぞ」
シャンクスはそう言うと俺達に背を向け船に乗り込んだ。
俺もエースも次々と船に乗り込んで行く海賊団を見つめていた。
「あだ!」
いきなり頭を鷲掴みにされた。
「…何だ。ベックマンか……」
誰かと思ったら……
「何だ?って…お前は寂しくないのか?」
「…常に冷静でいろって言ったのはベックマンだろ?」
俺はいつだったかベックマンに『副船長でいるなら常に冷静でいろ』と教えて貰った事がある。
だからこの別れも決して涙は見せない。
寂しい気持ちはあるけど、二度と会えない訳でもないからな。
「全く…早速実行してんのか?可愛げがある様な無い様な…複雑だぜ…」
ベックマンは煙草に火を点け呟いた。
「ほれ」
ベックマンは俺にオイルライターを投げ渡した。
「は?」
「餞別だ。貰っとけ」
「どうして…ライター?」
「他に何も無かったんだよ。お前がエースの被ってる帽子を羨ましそうに見ていたからな。
お前も何か欲しかったんだろ?」
「は?べ、別に羨ましがってねぇし!」
どうしてバレたし!
「はいはい…そういう事にしといてやるよ」
「ぐっ………」
すっかり見透かされてる。
それが何だか凄く悔しい。
「じゃあな。サボにエース。今度会う時は海賊としてだ」
「おう!」
「じゃあな!」
最後にベックマンも船に乗り、赤髪海賊団はフーシャ村を発った。
俺達は船が見えなくなるまで港から動かず船を見送った。
「…じゃあ帰ろうぜ」
「…だな」
船が見えなくなったのを機に俺達はその場を離れた。
そしてそのまま俺達は森の中へ帰る。
帰りはお互い無口だったけど、その表情はほんの少しの決意の様なものが見え隠れしていた。
その日から一層修行に明け暮れた。
来る日も来る日も森で野生動物と戦ったり、アポなし訪問してきたガープにボコボコにされたり…
時折村に折りてはマキノさんにご飯を食べさせてもらったり…
そういえばシャンクスから貰った麦わら帽子はすっかりエースのトレードマークになった。
という俺もベックマンに貰ったオイルライターを大事に懐にしまっている。
あっと言う間に時間が過ぎた。
後、悲しい出来事があった。
グレイターミナルで大規模な火災があったらしい。
俺もエースも最近ではグレイターミナルにあまり足を運ばなくなっていたが、大勢が犠牲になったらしい。
騒ぎが収まった頃、一度コッソリとグレイターミナルに足を運んだが以前に増して酷くなっていた。
『この世の地獄とはこの事か!』と2人して呆然とした。
しばらく散策したが、どこもかしこも焼け跡だらけでとてもじゃないがここにいてられなかった。
「悪いな……リベンジ出来なくなっちまった…」
「……別にいいさ」
そう、いつだかのブルージェムだ。
アイツの姿はおろか手下すら見つけだせなかった。
というか人の気配が全然しなかった。
エースもまさかこんな事になるとは思っていなかったのか、それ以上俺に何も言わなかった。
この日を境にグレイターミナルへ行く事は無くなった。
それから暫くしてからだが、最近この辺りに天竜人が来ていたらしい。
らしいというのは俺はその天竜人という存在をよく知らなかったからだ。
その騒ぎが収まった後にマキノさんから聞いた。
俺達は森の中でずっと修行していた。
折角なので天竜人の事を聞いたら何でも偉い人達らしい。
色々言っていたが要約するとこんな感じだった。
それとこれが1番だが1つ良い事があった。
それは定期災害ガープ襲来の時の出来事だった。
「ぐぅ!!………」
「………………」
「………………」
俺達は肩肘を地面につけ腹を摩るガープを見ていた。
「「うぉおお!!やったぁ!!」」
俺とエースは同時に雄叫びを上げた。
ハイタッチを交わしついにあの化け物に一撃与えた事に歓喜する。
俺が囮になり、エースが不意を突く。中々の連携だった。
「ぐぬぬ……こらぁ~!!まだ終わったとらんぞぉ!!」
この後、大人気無くムキになったガープに2人揃ってボコボコにされた。
だが一撃入れた喜びか俺達は終始ニヤニヤと笑みが零れていた。
更に月は流れたある日の事だった。
「どうした!?こんなこんか!?」
もう何度目だろうか…
相変わらずのガープとの緊急戦闘が行われていた。
現在、俺はガープに良い様にボコられていた。
エースは石の上に座りその様子を見ている。
正確には先にボコボコにされたので休憩中だ。
今まで2対1だった緊急ガープ戦は1対1になった。
というのも俺達の体が大きくなったという事もある。
…というか正確には俺達がどっちが先にガープにタイマンで一撃入れるかで競っているだけだ。
2対1では何とか一発入れる事が出来た。
じゃあ次はタイマンだ!となっただけだ。
勿論ガープが手加減しているのは承知だ。
ならば海に出るまでにこの手加減をしたガープに勝ちたいと思い始めた。
ちなみにそう言って3年程経つが未だに誰も一撃を入れていない。
今日までは……
「おらぁっ!!!」
俺の拳がガープのガードを破ったのだ。
そして俺はそのまま追撃の一発をガープの腹に叩き込む。
「ぬぅ!!」
ガープは顔を顰めながら少し後ろに後退した。
「…お、おぉ……」
まさかの出来事に俺は変な声を出す。
観戦していたエースも驚きの表情でこちらを見ていた。
「ぐぬぅ……サボ…お前…」
少し痛みはあるのかもしれないが割かし平気そうな顔で俺を見る。
「サボ…お前そこでそれを身につけた?」
「は?」
何を言っているのかさっぱりわからない。
ボケたか?ジジイ…
「おい!サボ!やったな!」
エースがこちらに駆け寄って来た。
「…あ、あぁ、俺の勝ちだな」
そういうとエースは悔しそうな顔をしていた。
「…ってどうした?」
俺があまり喜んでいないのを見てエースは不振に思い尋ねて来た。
「あぁ、ジジイが何か変な事言って来て…」
俺はそう言ってガープを見る。
「こらっ!変な事とはなんじゃ!真面目に聞いとるんじゃぞ!」
「それはこっちが聞きてぇよ。俺が何かしたのか?」
普通に殴っただけだと思ったんだが…
「なんじゃ。無意識か…まぁ、えぇ。説明してやろう」
「サボ…何かしたのか?」
「さぁ?わからん」
「話を聞かんか。サボ…お前、今覇気を使ったな」
「はき?」
「はき…ってなんだ?」
俺に聞かれても…
ガープ曰く『覇気』とは誰にでもある才能で、限られたごく一部の者しか扱えない『意思の力』らしい。
ざっくりとした説明だったが、俺はその『覇気』を一瞬ではあるが何故か扱えたらしい。
「覇気……まぁ、よくわかんねぇけど強くなったって事か?」
「そうじゃな。だがきちんと扱える様にならなければ意味は無いぞ?」
「サボ!何だよそれ!ずりぃ!」
「わっはっは!エースもこのままでは置いて行かれるかもしれんのう?」
「なんだと?」
エースはカチンと来たのか「今度は俺がやる!」とガープと戦い始めた。
「覇気か……」
確かにガープのガードを吹き飛ばした時、今まで感じた事の無い感触があった。
あの感じが覇気なのだろうか…
「…今度から森の動物で試してみるか」
エースとガープの戦いを見ながらふと呟いた。
…あ、エースがぶっ飛んだ。
結局、この日エースはガープに一撃入れる事は無くガープは帰って行った。
この日を境に俺達の修業は更に激しさを増した。
俺は偶々出来た覇気を自在に扱えると様になる為、森の猛獣達を殴り倒す日々が続いた。
エースも俺に遅れながらもそれに倣った。
ただエースは一味違った。
一度たくさんの猛獣に囲まれた際に、その猛獣共を全て気絶させた事があった。
しかも何も使わず睨んだだけで…である。
それ以来出来た事は無いがエースがタダ者じゃない気配を漂わせた瞬間であった。
更に月は流れ17才になった。
いよいよ出航の時が来た。
「おい、サボ荷物は全部積んだか?」
「おう。もう何も積むものも無いからいつでも行けるぞ?」
かつてグレイターミナルで強奪した金品、合計するとおよそ800万ベリー。
その内、500万ベリーを費やし安い小舟を買った。
「…しっかし随分ショボい船しか買えなかったな」
エースの言う通り、俺達の今の貯金で買えたのは人が2,3人寝れる程度の小さな部屋が付いているだけの帆船だ。
「それを言うな。航海が始まればそれなりに愛着は湧くだろうよ」
小さな船だがこれはこれで案外良い感じだ。
「それもそうだな…でもよ…」
エースは船についてる唯一の帆を見上げながら呟くと俺を見た。
「仲間が増えて、名も上げて行く先々でお宝を探して何時かシャックス達の様なデカい船に乗ろうぜ!」
「な?」とエースが俺に笑いかけると俺も思わず笑みが零れる。
「あぁ…そうだな!」
「じゃあいよいよ出航だ!」という時に村の方から誰かが走って来た。
「お?マキノじゃねぇか」
一早く気づいたエースがそう言うと俺も向こうの方からマキノさんが走ってくるのが見えた。
「エース!サボ!もう行くの?」
肩で息を切らしながら俺達に尋ねる。
「あぁ、行くよ………世話になったな。マキノ」
「そうだな。今までありがとう。マキノさん…」
この村において俺達は完全に余所者だった。
それをマキノさんだけはいつも歓迎してくれた。
「いいのよ。気にしないで……」
マキノさんは少し寂しそうな表情をしている。
「そういえばマキノ……俺達がマキノの店で食わせてもらってた店の代金だけどよ…」
エースが唐突に話始める。
初めてシャンクス達と会った日からマキノさんには時折ご飯を食わせてもらったりしていた。
「あれ…宝払いでいいか?」
「……宝払い?」
エースは少し恥ずかしそうに頬をポリポリとかいている。
そんなエースを見てマキノさんはきょとんとしていた。
「そう、いつか俺達はワンピースを見つける。そん時に今まで食わせてもらった分纏めて払うよ」
「…ふふふ、わかった。楽しみにしてる」
マキノさんは笑顔で頷いた。
「そっか。へへへ!」
それに対しエースは嬉しそうに笑った。
「あ、そうだ!」
マキノさんは何か思い出したのか俺達に大きめの箱を2つ出しだした。
「はい。弁当。体に気を付けてね?」
重箱程度の大きさの弁当箱を2つ受け取った。
「ありがとう。マキノさん。有難く食わせてもらうよ」
「ありがとな。マキノ」
俺達のお礼の言葉にを合図にマキノさんはその場から一歩さがった。
エースは首から下げた麦わら帽子を被り直し、俺は煙草を取り出し、ライターで火を点ける。
俺は船の帆を下した。
「それじゃあ出航だ!!」
風を受け船はゆっくりと走り出した。
「じゃあね~~!」
手を振り見送るマキノさんに俺達も手を振り返した。
俺達はこの日、島を飛び出した。
麦わらのエース爆誕!というのがやりたかった…
展開が遅いのか早いのかわかりません