「何にも見えねぇなぁ…」
エースは船首の方に立ち、ぼやく。
「そりゃあまだ島を出て数時間だからな…そんな近くに島はねぇだろう」
俺の言葉にエースは「それもそうだ」と呟き座り込む。
「一応…この海図を見た感じだと…明日には目的の島に到着するらしいけど…」
船を買った時に一緒に買った近海の地図によればそういう事になっている。
「そうか……明日か…」
「だから今日は特にする事もないな。もう少しで小さな無地島が見える筈だからそこで1泊しよう」
「そうだな………でも……」
エースは突然立ち上がり体を動かす。
「航海ってこんな感じなのか?すっげぇ退屈だな」
「言うと思ったけど……言うのが早いな…」
エースは元よりじっとしてられないタイプの人間だ。
「じゃあ俺の代わりに海図見るか?」
「いや、それは……」
慌ててエースは口籠る。
「まぁお前にそんな事出来るなんて思ってないけどな…」
俺は溜息を吐き再度地図を見る。
「そうだ!なぁサボ!」
エースは何か閃いたのか俺に話しかけてくる。
「なんだ?面白い事でもあったか?」
地図から目を離さずに返事をする。
「いや、そうじゃなくて……サボはどんな仲間が欲しいんだ?」
「仲間?」
俺は視線をエースに向ける。
「そうさ!やっぱり仲間は多い方がいいだろ?サボはこんな奴連れて行きたいとかあるだろ?」
仲間か……確かにこれから色んな奴を船に乗せるだろうし……
「そうだな………」
少し真面目に考えてみよう…
できればエースみたいなアホは避けたい。
アホはエース1人で十分だからな。
「………常識人?」
「何言ってんだ?お前?」
エースにアホを見るかの様な視線で見られてしまった。
「まともな奴が海賊になんかなるかよ。ほら、例えば音楽家とかよ…」
まさかエースに正論を言われる日が来ようとは…
「というか何で最初のチョイスが音楽なんだよ…」
正論の後にそんな事言うなよ。
「何言ってんだ?サボ…海賊は歌うんだぞ?」
「別に歌わねぇだろ…お前、赤髪の宴会に影響受け過ぎじゃないか?」
「そうか?海賊ってそんなもんだろ?」
どうやらエースの中の海賊はかなりのひょうきん者らしい。
「…じゃあ音楽家は一旦置いといて…真面目に考えると航海士かコックだな」
「えぇ~~?それ全部サボが出来るじゃねぇか」
何故かエースは俺の言葉に嫌そうにする。
「全部俺にさせる気かよ!一応俺副船長だぞ!」
「そうだった。わりぃな」
エースの屈託の無い笑顔に思わず呆れてしまう。
「はぁ…まぁそんな感じだから…取り合えずエース、頭に入れとけよ」
俺がそう言うとエースは「おう!」と返事をした。
返事だけは良いんだよなぁ。
「お、島だ」
エースが声を上げて俺に伝える。
確かに小さな島影が見えて来た。
「今日はあそこで野宿だな」
俺は進路をあの島に向けた。
……………………………………………………
………………………………
砂浜に船を乗り上げさせ、俺達は上陸を果たす。
「…見てわかるくらいに無人島だな」
「…だな!冒険しようぜ!」
エースは居ても経っても居られないのか上陸してからずっとソワソワしている。
「俺は飯の支度するから行って来て良いぞ」
俺がそう伝えるとエースは目を輝かせた。
「ついでに何か食べれそうなヤツも獲ってきてくれ」
「わかった!」
そう言うや否やエースは森の中に消えて行った。
「……そんなに退屈だったのか」
何だかんだエースも野生児だからな。
森の中を駆け回っている方が性に合ってるんだろう。
「何でアイツ海賊になるなんて言ったんだ?」
山賊の方がよっぽど向いてる気がする。
「まぁいいか…さて、何か作るか」
俺は船から食材を幾つか下し、料理の準備を始める。
と言っても適当に何かしらを焼いて適当にスープを作るだけだ。
「料理の出来る航海士…仲間にしてぇな…」
それだけで俺の負担がだいぶ減る。
というかこんな料理ばっかりだと気が滅入る。
「こんな事ならマキノさんに料理習っとけば良かったな…」
航海の勉強だけで精一杯だったわ。
エースをマキノさんの所に放り込むのもアリだったな。
…いや、エースに料理なんか不可能だ。
詰まらん事を考えてしまった。今の無し。
その後、30分程度でエースは戻って来た。
その顔色を見る限り物足りなかったのだろう渋い表情だった。
だから小さな無人島と言ったのに…
だが、数羽の鳥を捕まえて来た辺りは流石と言わざる負えない。
他にもいくつか果実をとって来ていた。
食後のデザートもバッチリの様だ。
その鳥を始め、持ってきた食材を適当に焼いて飯にした。
食後のデザートにエースがとってきた果実を齧りながら今後の予定を色々話し合っていた時だった。
「エース、お前が食ってるその果実…見た事無いな」
エースは見た事も無い果実を持っていた。
「いいだろ?反対側の海岸で見つけたんだ。美味そうだろ?」
エースは得意気に言うが俺にはとてもじゃないが美味しそうには見えない。
というか落ちてるモノを拾ったのかよ。
意地汚ねぇな…コイツ…
「じゃあいただきます!」
エースは大きな口を開いてその果実に齧りついた。
俺は気になってその様子を見守る。
「どうだ?美味いか?」
俺は尋ねる。
だが、エースの表情は徐々に険しくなる。
「うげぇ…マジィ……」
「おぇ~…」といった感じにエースは言った。
「なぁ、サボ…」
「いらん」
エースの言葉に先回りして答える。
どうせ交換してくれとかだ。
そんなマズそうな顔しといてそれはない。
「ケチめ……まぁ…いいか」
文句を言うもきちんと最後までその果実を食うあたりエースらしいというか…
何はともあれ腹も膨れた俺達は今後の予定を少し話し、眠りについた。
翌日、早朝から船を出す予定だったがその際にちょっとした事件が起きた。
船を出航させる為にエースに船を砂浜側から押してもらおうとした時だった。
最初は問題なく船を押していたのだが船が砂浜を離れた時に急にエースが倒れた。
始めはふざけてるのか?なんて思ったがエースは無反応だった。
慌ててエースに駆け寄るとエースは何やらダレていた。
「ち、力が抜ける……」
「はぁ?」
取り合えず力なく項垂れるエースを背負って船に乗せる。
すると5分もしない内にあっという間に元気になった。
不思議に思ったが、ともかく体調も良くなった様なのでこのまま出航する事にした。
「さっきのは何だったんだ?」
出航してしばらくしてからエースに尋ねてみる。
「さぁな?でも急に力が抜けたんだよ。俺にも訳わかんねぇよ」
エースも心当たりは無いのか首を傾げている。
「こりゃあ…医者も早めに見つけないとな…」
必要な人材が増えてしまった。
料理と医者の心得がある航海士が欲しいと切実に思ってしまった。
…………………………………………
……………………
「ほれ、今度は急に倒れんなよ?」
お昼が過ぎた頃、ようやく目的地である島に着いた。
この島にはそれなりに町もあるのでここで色々仲間に馴れそうな人を探そうと思っている。
「だからもう大丈夫だって!…サボは心配しすぎなんだよ。」
エースはもう大丈夫と体を動かして見せるがこっちとしてはまたいつ倒れるかもわからないから不安でしょうがない。
「それなら良いけどよ……体の調子がおかしいって思ったら早めに言えよ?
旅立って即効で船長が倒れるとかありえねぇぞ?」
「わかってるって!それよりもサボ見ろよ!あれ!」
エースは俺の気を反らす様に指を指す。
「あぁ?……おい、あれって……」
何時だかフーシャ村で見た事のある様な船がそこにはあった
「あれって海賊だよな?」
「だな。何だ?何かするのか?」
嬉しそうに笑うエースに尋ねる。
「折角だし、見てみねぇか?」
「はぁ?」
思わず変な声が出る。
「見てどうすんだよ。船でも奪うか?」
それはそれで面白そうだけど……
「う~ん。でも船がダセェな…」
「それはあるな。じゃあやめとくか?」
「いや、どんな奴らか気になるから行こう!」
という事で海賊が溜まってそうなそうな場所を探す事にした。
「ついでに財宝でも奪うか?」
「お?いいな。海賊っぽい!」
という事で俺達はまだ見ぬ海賊の覗くついでに財宝とか持っていたら奪う事にした。
その前に町で色々買うものがある。
そのついでに海賊を見かけたら色々しよう。となった。
その後しばらく町を散策するが、海賊は町の方にはいなかった。
恐らく船にいるのだろう。
仕方ないので一度船の方に戻ろうとしていたら海賊の仲間なのかだろうか。
船乗り風の2人のチンピラが1人の女性に言い寄っていた。
これは……
「おい、エース」
「わかってる」
エースは俺が言い終わる前にそのチンピラの元に走って行った。
…あ、蹴った。
海賊らしき集団はいきなり現れたエースに驚いている。
だがエースはお構いなしに海賊共を蹴っ飛ばした。
…あ、逃げて行った。
エースの強さに驚いたのか敵わないと察したのか2人して船の方へ戻っていった。
やっぱり海賊だったか…
これは船長が出てくるかな?
俺はのんびり歩きながらエースの元へ辿り着く。
「おう、サボ、もう終わったぞ?」
エースは笑顔で俺に言った。
「見てたから知ってる。それで?この人は?」
先程まで海賊に絡まれていた女の人を見る。
「おっと…そうだった。ねえちゃん、怪我はねぇか?」
「は、はい……」
女の人は未だ理解が追い付かないのか呆然としている。
「何か絡まれてたみたいだけど…大丈夫か?」
エースは気にせず話しかける。
「だ、大丈夫ですけど……あ、あなた達は?」
「俺達か?俺達は海賊だ」
エースは得意気に胸を張る。
「か、海賊?」
エースの言葉に女の人の表情が変わる。
そりゃそうだ。助けて貰ったのが海賊なら不安が増すよな。
「海賊つっても旗揚げしたばかりで船員も俺達2人だけだ。それにアンタに何かしようなんて思ってねぇよ」
ここで俺が口を挟む。
俺の言葉に女の人は少し安心したのか表情が緩む。
「アンタは何で絡まれてたんだ?」
「実は……」
話を聞いて呆然とした。
何とこの女の人、先程の海賊団のメンバーらしい。
これを聞いた時俺は頭を抱えた。
完全に要らん事をしたと……
だが、詳しく話を聞くと彼女はその海賊団で無理矢理に雑用をやらされていたらしい。
何でも乗る船を間違えたんだとか……
「アンタ、バカだなぁ!」
エースは大きな口を開けて笑った。
「うっ!……」
痛い所を突かれたのかバツの悪そうな顔をした。
「なんで船を間違えたんだ?」
取り合えず船を間違えた理由を聞いてみる。
「実は…医者になりたくて取り合えず大きな町の病院を目指してたんですけど…」
女の人は決まずそうに呟く。
だがそれを聞いて目を光らせた人物がいた。
「なぁ、アンタ…アンタ俺達と海賊やんねぇか?」
エースである。
「え?え?」
案の定、女性は戸惑っている。
「おい、エースいきなり過ぎだろ」
俺はエースに制止をかける。
「だってよぉ~…それにサボも船医が欲しいって言ってただろ?」
「言ってたけど、だ!無理矢理乗せようなんて考えてねぇぞ?」
「まぁまぁサボ、それはコイツ次第だ!なぁどうだ?海賊興味ねぇか?楽しいぞ?」
エースは気にせず勧誘を続ける。
「でも…海賊って町を襲ったりするんじゃぁ……」
彼女は申し訳なさそうな表情をする。
「何言ってんだ?海賊は冒険をするんだよ」
エースはコイツ何言ってんだ?みたいな表情で言う。
それを聞いて女性は一瞬呆気にとられた様な表情をする。
「わ、私戦えませんよ?」
「大丈夫、俺とサボがどうにかする」
「それに医者を目指しているだけなので正確には医者じゃないですよ?」
「それも問題ねぇ!それに医者が1人で良いだなんて事は無いしな」
「うぅ……じゃ、じゃあ私は今アルビダ様の船に乗ってます!急に乗る船を変えるだなんて…
あなた達アルビダ様に殺されてしまいます!」
「アルビダ?」
エースは首を傾げる。
「あそこに停まっている海賊船の船長ですよ!」
女性の指差した方向には俺達が先程ダサいダサいと言った船が停まっていた。
「あぁ……アンタはあの船に乗ってたんだな」
エースはポツリと呟く。
「よし!じゃあそのアルビダ?だっけ?そいつぶっ飛ばそう!」
エースは決断する。
「え?えぇ!?」
女性はエースの言葉を聞いて戸惑っている。
「副船長、問題は?」
コイツ…こんな時だけ……
はぁ…仕方ねぇか。
「いいぞ?船長」
そう言うしかなくなる。
女性は未だ困惑してるのかずっとアワアワしてる。
「…そういやアンタ名前は?」
「ミュ、ミュレです」
女性は戸惑いながらも自分の名を名乗った。
その瞬間だった。
エースはそのミュレを抱きしめ横に大きく飛ぶ。
俺も同じ様にその場から飛び退く。
ズガーーーーン!!!
大きな音をたて煙が上がる。
どうやら何かが飛んできた様だった。
「いてて…大丈夫か?ミュレ」
エースは抱きかかえたミュレに尋ねる。
「は、はい…」
いきなりの事でミュレ状況をよく理解していない様だ。
だが、顔が少し赤いのが気になる。
「ミュレ…少し下がってろ」
そう言ってミュレを下がらせる。
「は、はい!……」
ミュレはエースに言われるがまま後ろに下がる。
やがて煙が晴れるとその飛来物に気が付いた。
「これは…金棒か?」
地面に思いっきり金棒がめり込んでいる。
「アンタ達だね?ウチのクルーを可愛がってくれたのは…」
いきなり人が現れ俺達に尋ねる。
そして地面に刺さった金棒を拾い上げた。
「しかも人の船の雑用を口説くなんて…アンタ達、アタシにぶっ殺されたいみたいだねぇ!!!」
現れたのはかなり…巨漢な女だった。
「お前………」
エースが一歩前に出る。
「ガキ共が…アタシが金棒のアルビダと知っての狼藉かい?」
「知らねぇ。誰だこのいかついおばさん」
その言葉にアルビダを始め、ミュレ、そして一緒に出て来た子分共まで驚いている。
「いかついおばさん~~?…小僧…誰に向かって口を利いてるんだい!?」
どうやらかなり怒っている様だ。
まぁわからんでもない。今のはエースが悪い。
「まぁお前が何処の誰かなんてどうでもいいけどよ…
ミュレは貰ってくぜ?」
エースはアルビダにそう言ってのけた。
「バカ言うんじゃあないよ。ミュレ!アンタまさかこのガキ共に絆されたかい?
まさかじゃないが恩を仇で返すつもりじゃあないだろうね?」
アルビダはミュレに尋ねる。
ミュレはすっかり臆したのかガタガタと震えていた。
「ミュレ!」
エースがミュレに声をかける。
「好きな様に答えろ!それに言ったろ?戦闘は俺とサボでどうにかするって」
エースは笑顔でミュレに言ってのけた。
「…わ、私は……」
ミュレはやがて決意したのか握り拳を作る。
「アルビダ!私はアンタの船を降りるわ!エースの船に乗る!」
意を決しアルビダにそう言ったミュレの足はガタガタと震えていた。
「ほう……そうかい?…じゃあもうアンタは用済みだ」
アルビダは一歩下がると手下どもが前に出た。
それに合わせ俺もエースの隣に立つ。
「たった2人でどこまで持つか……アンタ達やっておしまい!!」
アルビダの言葉に手下どもが一斉に飛び掛る。
「おらぁ!!」
先ずはエースが一発ぶん殴る。
「ぐぇ!!」
殴られた手下はアルビダの横を通り過ぎ壁に激突した。
「初めての海賊との戦闘だな!よっしゃ!かかって来い!」
エースは手招きをした。
これに火がつき約30対2の戦闘が始まった。
………………………………………
………………………
とは言ったもの多勢に無勢の戦いどちらが勝つか…それは誰の目にも見えていた。
…筈だった。
「何だ?もう終わりか?」
「こんなもんなんじゃねえの?」
退屈そうに呟くエースとサボの姿があった。
「バ、バカな!アタシの部下がたった2人にやられるなんて……」
まるで信じられないという様にアルビダは呟く。
「す、凄い…」
後ろでそれを見ていたミュレも思わず呟いていた。
今、目の前で起こった事がとても現実のものとは思えなかったからだ。
「さぁ、後はアンタだけだぜ?」
エースはアルビダを手招きする。
「こ、このガキっ…調子に乗りやがって…」
アルビダは金棒を担ぎ、エースの前まで歩いてくる。
「…お?船長同士の一騎打ちか?」
「あぁ…だからサボ…」
「わかってる。大人しくしてる」
俺はミュレの元まで下がる事にした。
「ね、ねぇいいの?彼1人にやらせて……アルビダは船長よ?懸賞金500万ベリーの海賊なのよ」
「あぁ、大丈夫。あの程度の奴にやられるほど軟な鍛え方はしてないからな」
それに俺から見てもアルビダには覇気がない。
これではどうあがいてもエースには勝てない。
「くたばれ!ガキ!!」
アルビダが金棒を振り下ろした瞬間だった。
「お前がな!!」
カウンターの要領でエースが拳を振るった瞬間だった。
ドガァーーーン!!!
と大きな炎と共にアルビダは遠く向こうまで飛んで行った。
「は?」
「え?」
ミュレはともかく俺も驚いている。
何?エース…いつの間に炎をとばせる様になったの?
覇気ってそんな事出来たっけ?
辺りを微かに燃やしながら1人立つエースを見て呆然とする。
「な、な………」
エースは自身の両手を見る。
その手は疎か体中が微かに燃え上がっていた。
「なんじゃあぁーーこりゃぁああーーーーー!!」
ボコボコにされ倒れているアルビダ海賊団の中心でエースが叫んだ。
誤字脱字のヤツがすいません。出たがりなもんで…
ミュレって誰だ?オリキャラ?って思った人へ
ベラミー海賊団の主に右側にいる黄色の服を着た人です。
美人よね
こうやって本来の麦わらの一味にプラスしていきたいなぁと妄想してます