ダンジョン攻略していたらいつの間にか魔王に雇われていた件 作:とあるスライム好き
今日も今日とてダンジョンは問題なく運営中。
『リムル様!ダンジョンにて問題が発生しました!』
じゃなかったな・・・
俺に「思念伝達」を送ってきたのはベレッタだ。
しっかし問題ってなんだよ?
『おお。ベレッタどうした?何があった?』
『それが、
は?マジか?
何だって、
うーん・・・考えられるのは二十階層に偶々そいつが生まれるに足りる魔素だまりがあったってことぐらいか。
あり得ない話じゃないけど、可能性としてはかなり低いぞ。
だが先ずはダンジョンの運営側としてしなくてはならない事がある。
『よし。ベレッタ、悪いんだが今のうちにそいつを四十階層まで移しといてくれるか?そのまま放置って訳にもいかないからな』
ゲームでもそうだがバグは直ぐに修正しないとそのゲームの人気が下がり、修正がはやければそのゲームはかなり人気が出る。全てのゲームがこれに当てはまるのかと言えば違うけどな。
今回の案件をバグと仮定すればこれを放置することはダンジョンの人気が下がる事につながるのだ。
ならば速攻でバグを消し去るべきだ。
しかしベレッタの反応は俺の予想外だった。
『あっいえ、リムル様。只今一人の冒険者が戦っており見た様子、
また、は?マジか?だよ。
だって二十階層に出たんだろだったらそこにいる冒険者も当然二十階層クラスの強さ、つまりはBランク前後ということ。それに対して
ハッキリ言うがそこまでの実力差がある上にチームでなら兎も角、ソロじゃあ勝ち目はないはずなのだ。何せ開国祭の時点ではの話ではあるがシオン配下の
だが、ベレッタの話では冒険者側が勝ちそうなのだという。
アイツの目は節穴ではない。むしろ覚醒魔王級の相手すら、寄せ付けぬこの世界でも指折りの強者だ。
そんなベレッタが力を図り違えるとは考えにくい。
そう考えた俺はダンジョンの管理室へと転移した。
理由は簡単。その戦いを観戦するためである。
「こちらです。リムル様」
ベレッタに連れられて二十階層のモニターの前まで移動する。
そのモニターには確かに
そこで俺が気になったのはボス部屋に散乱する岩々だ。
見てみると冒険者が投げる小石が岩に変形していっている事が分かる。
「アイツ、ユニーク持ちか?」
この場合のユニーク、というのは勿論ユニークスキルのことだ。
エクストラスキルであんなことができるとは思えないからな。
「はい。恐らくは ユニークスキル「
どこから持ってきたのかベレッタが資料を持ってそう言う。
仕事ができるね。というかラミリスの部下になったからこのくらい出来る様になったのかな。仕事とか押し付けられて・・・
というか名前が「ソーヤ・サトー」?
なんだこいつ異世界人か?なんか妙に日本人っぽい名前だな。「サトー」とかも「佐藤」だろうし。
それにブルムンドで活動していたのか。
じゃあ後でこいつがどんな奴かエレン達に聞いてみるか。
「そうか。ありがとなベレッタ。にしても面白いな、コイツ」
ベレッタに感謝しつつモニターに映る「ソーヤ・サトー」に目を向ける。
なるほどね。これならベレッタがこいつが勝つと言っていた事が少しだが分かったかもしれない。
*
「聞いてね---!!!!」
第一なんで四十階層のボスがここにいんだよ⁉おかしいだろ!
だが、泣き言ばかりも言ってられない。例えどんな理由でここにいるのか知ったところで、ここにいることには変わらないのだから。
戦わなければならないのだ。このダンジョンに来たからには・・・
それにこれは逆にチャンスだ。
ここでコイツの魔石をゲットすればしばらくは金には困らない。冒険者としては、賭けに出るべきだ。何せ、冒険者というものは元来、お宝求めて危険に飛び込む者達を指す言葉なのだから。
それに今の俺は過去最高!また、どっちにしろここで大岩を使わねばならない。
このダンジョンに潜ってからはや五日。途中でいくつか岩を捨てながら何とかここまで持ってきたがそろそろ限界だ。後数時間後には大岩は文字通り、大岩に戻るだろう。
コイツと直接戦った事はないが、攻撃手段とその対処法なら知っている。超強力な「毒霧吐息」と強靭な肉体だ。
酒場で上位陣が話あってたからな。地味なことと思うかもしれないが、弱い奴ほどこういうことにこだわらないと冒険者なんてやってられない。
時として情報というものは、どんな高価な武具にも勝る強力な武器となるのだ。
そしてそんな攻撃に対する対抗手段とは、遠距離攻撃。
こいつの「毒霧吐息」は射程が約七メートル。
つまりは八メートル以降からはそのブレスはとどかないのだ。
だが、逆に言えば七メートル内なら俺の負けは確実というわけ。
それを知らずにここにきていたら絶対に瞬間的に溶かされて死んでた。日頃の地道な努力が実を結んだ瞬間だな。
ということで先ずは障害物を立てて身を隠せるようにしとこう。
腰に下げた袋から縮めた岩を取り出して辺りにばら撒く。
あわよくばこれで
普通に投げてもかわされるよな、そりゃ。伊達にA-ランクの魔物じゃあないってことか。
だが、予定通りだ。幸いにもテンペスト・サーペントとエビルムカデは行動パターンや攻撃に類似点がある。エビルムカデ用の作戦が使える。
あの巨体だ。岩で空間を狭くするというのは移動能力を低下させるという面で非常に効果的なはず。
そこで動きが鈍ったところにこの大岩をぶつける。さしものテンペスト・サーペントもこれを受けて死なないことはないだろう。
しばらく投げて段々と通路が狭くなっていくと、テンペスト・サーペントの顔も心なしか険しくなっている気がする。
蛇の顔なんてわからんけど少し怒っている様に見えるのだ。
このまま慎重にいけば勝てる!俺でも勝てるんだ!
ただ人間、安心した時が一番危ないという事を忘れていた。
爆音と共に俺の左足に激痛が走る。
「ぐァアアァアア!!!」
足を抱えて転げまわる。
一瞬、何が起きたのか理解出来なかった。
勿論七メートルの間合いに入ってもいないし、尻尾で攻撃もされてない。
いや尻尾では間接的に攻撃されたのか?
改めてテンペスト・サーペントを見ると尻尾で周りの岩を砕いていた。
その破片が俺の足に当たったのだ。
この時、テンペスト・サーペントがニヤリと口元をあげたように見えたのは、きっと俺の幻覚ではないのだろう。
油断しているつもりはなかった。いや、無意識のうちに油断していたんだろう。
だから負傷した。途中で倒した魔物からドロップした、
いやそれ以前にこのままじゃせっかくの障害物が無くなり、大岩もよけられてしまう。
もう、残りの岩も少ないのだ。
つまりは今、この状態で奴を倒さなくてはならないということだ。
無茶な事だがやるしかない!
テンペスト・サーペントが近づいてきて「毒霧吐息」をはくがそれを咄嗟に岩を元の大きさに戻してガードする。それだけでこの岩が半面溶けてしまったのだから恐ろしい。
だが、引くことなく、ついでに大岩以外の全ての岩をなげつけ元の大きさに戻す。案の定全てよけられてしまうが動きにくくはなった。
この時ひとつだけ岩を床に落としてしまったがそんな事を気にしている場合ではない。
テンペスト・サーペントがその岩を壊して近づいてきているのだから。
これで決める!
その気持ちと共に今は小石となった大岩をなげつけ、「
ドゴオォォオオオン!!!
凄まじい轟音と爆風。
一瞬、手で耳をふさいでいても本気で鼓膜が破れるかと思ったほどだ。
「やったのか・・・?」
呟くと共に大岩に近づく。
が、それが俺の失敗だった。
シュウゥゥゥウウウ
その音と共に訪れる、右足の激痛。
見てみると足の膝から先が溶けていた。
「ッツーーーー!!!!!????」
あまりの痛さに声も出ない。
さっきとは比べ物にならない痛みが俺を襲う。
それらの事からもう分かるようにテンペスト・サーペントは生きていた。砕けた岩と床の間から顔を出してこちらに「毒霧吐息」を吐いたのだ。
如何やら岩がぶつかる瞬時に「毒霧吐息」をはき自らが入れる窪みをつくっていたのだろう。
ただ、あちらも辛うじて助かった、という感じで全身から出血し骨がむき出しになっているところもあった。いくら生命力の高い蛇の魔物であるとはいえ致命傷だ。
その状況が俺に勇気をくれた。
ここまで来て負けることなんて出来ない!報酬のあるなしじゃあない!
俺はコイツに勝つのだ!
その気持ちだけで動いた。
幸いにも足からは毒によって溶かされただけのため出血はしていない。不幸中の幸いとでもいうべきか、毒で傷口が溶けているためそれが結果的に止血の効果を生んでいるのだ。だが、このままいけばものの数分で死ぬだろう。
しかしここはダンジョン。死んでも蘇ることができる!
それがなけりゃここでまだ戦おうなんて思えなかっただろう。いや、それ以前に戦おうという気すら起きなかったに違いない。
ただ、俺はこの時勝利の希望に向かって片足を無くしながらも進んでいた。先程の攻撃で左足にもダメージがあるため非常に体が痛い。
俺は今ただの一つも、岩のスタックはない。
しかし、思い出したのだ。
俺がテンペスト・サーペントに向かって残りの岩をほとんど投げた時、一個だけ落としてそのままにしていた事を。
テンペスト・サーペントも俺の後を追ってついてくる。がその動きは俺の方が若干だったが上回った。
落ちていた岩をその手に掴む。
後ろを振り向けばテンペスト・サーペントがすぐそこまで迫っていた。
きっと「毒霧吐息」も、もうさっきので、はけないんだろうな・・・と、そう思った。
そして俺はこの岩を投げようと腕を構えた時、本当に当たるのか?当たったとしてこいつがこの大きさの岩で死ぬのか?
という疑問が俺の心に降ってわいた。これを外したらもう俺にはなすすべはない。
そんな時、俺の目には俺を食い殺そうと迫ってくるテンペスト・サーペントの姿が映った。
それで、たった一つこいつに確実に勝つ方法がおもいついた。
恐ろしい方法だがやるしかない。
本能が警鐘を鳴らすがそれを理性で抑える。そして岩を握る拳に力を入れる。
そしてとうとう俺の目の前までテンペスト・サーペントが来た時、俺は言ってやった。
「俺の腕!くれてやるよ!!!」
そこ言葉と共に俺の腕はテンペスト・サーペントに食われた。そして能力を解除する。
そうなれば当然、その手に握られていた岩の大きさが元に戻る。
結果どうなったか?その答えがテンペスト・サーペントは俺の前で爆散した事実だ。俺の予想した通り内部から。今までこんな事はやった事なかったからできるかわからなかったが、俺は賭けに勝ったようだ。
そしてもう一つに、俺は勝ったのだ。
「封印の洞窟の守護者」に
「四十階層のボス」に
「A-ランクの魔物」に
俺は勝ったのだ。
ただし俺の目にも暗幕が降りることとなったのだが・・・