TS 盾役従者は勇者に付いて行けるのか?   作:低次元領域

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三白眼で横にでかいタイプの瞳孔、
目は女子並みの大きさはあれど上辺は平たい

そんな奴が好きです


6.酒はまた注がれる

「そんでよ〜起きたら隣にオークの死体が添い寝しててな〜」

「ガハハ! ヤった相手と寝るとか激しい女だ!」

「ちげぇねぇ!」

 

 前略、記憶の中の勇者へ。あれだけ泣いて疲れ果て、眠りについた俺こと盾役従者はまた酒場で飲んだくれています。

 お酒買い宿で一人酒、といった気分だったが……鞘から漏れ出す剣の光で抜刀出来たことが村の人に知れ渡り、また宴会が始まるとコロっと気分が変わった。

 

 何をせずとも美味いツマミと酒がある。最高だ。 

 流石に2日分の豪華な酒はなかったようで、少しランクが落ちはしたがこれでもまだ上等。遠慮なく飲み干す。

 

「しっかしよくやったもんだな嬢ちゃん、オーク相手にそんだけ耐えるたぁ。おらぁ村付きの狩人だが、小隊組まなきゃまずやりたくねぇぜ」

「おめぇさん、初めてオーク目の前にしたときちびってたもんな!」

「ばっきゃろー……ありゃあれだ、ちょいと股間が寒くなったんだよ」

「オークに掘って貰えば体も熱くなったんじゃねぇか? ははは!」

「ガハハ!」

「ちげぇねぇ!」

 

 シモが入り混じった話めっちゃ楽しいし盛り上がる。勢いで言ったがオークに掘られたら死にそうだな。人の2倍近くは余裕であるはずだ。

 ヤシドにはこんなこと言っても呆れてお説教モード間違いない。

 いやそれも楽しいけどな。

 

──おぉこれが聖剣の輝き……素晴らしいですな

──見ているだけで心が暖かくなるような気がします……直に触れてみても?

──え、えぇどうぞ……なんなら少しこの場に置いておきましょうか

──い、いえそこまでは……!

 

 そしてヤシドくんは昨日と変わらず村のお偉いさんに囲まれています。笑う。

 あの位置はご飯も食べられないし。……昨日よりも少しお年寄りが多いか? ありがたやありがたやと拝まれててもはや偶像崇拝に近いな。ヤシド教とか開いたら意外とウケるかも。

 

「どれお嬢ちゃん、こっちも飲んでみるか?」

「おぉ? この梅酒……──あ゛っー! うまい。深いなぁ……」

 

 信者はぁ……姫様がきっと来てくれるから問題ないな。あの姫様のラブラブ具合からして熱心に布教してくれること間違いない。

 そんでヤシドは困っておろおろどうしよテオどうしてくれるテオ、と。ウケる笑う。

 ……ん、なんで笑ってんだおっさん。

 

「へへっ、ずいぶんいい顔で飲んでくれるじゃねーか」

「それこいつが漬けた奴だぜ嬢ちゃん」

 

 それ本当? 高級品に近い味わい深さと飲みやすさで何杯でも行けるからおかわり頂戴。

 おっとっとっと……もうちょい、もうちょい。……うん美味い。

 それにしても今そんないい顔してたか? 鏡見ながら酒飲んだりなんてしねーからな。

 

「もいっぱい」

「おう……おらのは特製で、飲みやすいが度数あっから気をつけな」

「へーきへーき、今日はいくら飲んでもいいって許可でてっからな!」

 

 と言うか、せっかく女になったならもっとバインバインでご機嫌麗しゅう? って言いそうなお嬢様ちっくになりたかったぜ! 姫様みたいなな!

 さて夢にまで見た女性のブツを触ってみよう! とか思ったのにこんなちんちくりんじゃ興奮もクソもねぇっての。もっと食って太りゃマシになるか?

 

「あ、そうだあとで鎧余ってる奴あったら売ってくれねぇか。壊れちまってよ」

「おう任せとけ……と勢いで言っちまったが、女もんの鎧なんてねぇぞ」

「いやいい……ほら、少年用ので問題ねぇからな? 俺」

「ガハハ! ちげぇねぇ!」

「お前一人で言うなよ」

 

 なにコントしてんだ。……胸がないってのはがっかりポイントだが、盾役するには邪魔だよな。そう考えると……うーん。

 あとアレだ、用を足すとき結構飛び散るんだよな。慣れが必要だな。ちゃんと拭かないと臭いし。立ちながらはもうやめたほうがいいかもなー。

 

 ──お、かわい子(田舎平均で言う)ちゃん集団ご来店。今日は少し衣装が……肌面積が少なくなってて薄いし最高だな。ちょい香水が強い気もするが個人的にはこっちのが好きだ。

 

 やぁこんばんは、こっち来てお話ししない? しない、そう。いい匂いだな。 お酒持っていく? 持っていく、そう。

 ……そのまま流れるように勇者様の方へと向かっていったな。

 

──こんばんわ勇者様……今日はオークを一刀で斬り伏せたとお聞きしました

──ぜひともそのことを聞きたくてぇ……

 

 あ、メスの顔しておりますね。これはあれだ、勇者に酒酔わせて一夜の過ちしようと狙ってんなぁ。無理無理。ヤシドは王様が開いた、旅立つ勇者への席でも飲まなかった男だ。

 

 あと香水の匂いが強いのもアウト。アイツ鼻がいいみたいで軽く一回……ほんのりぐらいで、なおかつ揃えたものにしておかないと不快になるだけ。

 料理の時はそんなに気にしてないのは単に食べ物だからかね。

 

──ど、どうも……

 

 ほら、すっげぇ嫌な目してる。ははは、普段隠れて煙草吸ってもすぐバレる相手には悪手だったな。

 気づかないもんかね、かなりわかりやすいと思うんだが。

 

──あ、もしよかったらこれ……先ほどからなにも手につけていないようでしたから

──あ、これはどうも──!?

 

 ……一気に仕留めようと思ったらしい。

 持っていった料理が乗った皿に意識を割かせ、かわい子ちゃんの一人が腕を胸に抱き寄せた。

 羨ましい。嫉妬の炎が点火する。……あ、もちろん胸を合法的に触ってるヤシドに対してだ。

 

──ちょ、ちょっと……!

──あら、でしたらこちらのお飲み物も……知り合いが漬けたもので飲みやすいと評判ですの

──い、いや僕はお酒は

 

 ……ちょっと顔赤らめたな。そうか、柔らかいか。

 

「おー積極的だなアイツら……と、嬢ちゃんどうした。酒進んでねぇぞ」

「……そうか? いや楽しそうなことやってんなぁと……ついな」

 

 ……もう片方もか。両手に花だな。羨ましい。

 酒を一気に煽る。食道を流れ落ちていった後、腹から込み上げる酒気が炎を更に大きくした。

 げふぅ。軽く息を吐き席を立つ。テーブルにあったつまみをいくつかもらい包む。

 酒瓶片手につかんで、楽しいピクニックを思わせる用意をした。

 

 少しフラフラする、机や近くの人の肩を借りながら歩く。

 そして宴の中心、勇者様の下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女性の胸が腕に触れることなんてそうそうないだろう。

 だからうん、それを望んでも手に入らない人にとってはひどくむかつく光景だったんだろうね。

 

「おうおう楽しそうだね勇者様ぁ……」

「て、テオ……?」

 

 眉を釣り上げ怒りを見せているのは幼なじみ。

 見ればわかる。昨日よりも更に顔が赤く目も焦点があっていない。ほろ酔いなんてものじゃない、酩酊だ。

 

 今日泣いていた人物とは思えない。でもテオって切り替え早いからなぁ……。

 村長を押し退け近くにいた女性を引き離し、腕を引っ張られる。

 

「悪いなぁ……勇者さまぁ、明日もオーク穴に潜るんだ……本日はお暇させてもらう……よ」

「えっ、いやテオそんなこと……」

 

 嘘だ。テオの鎧が見つかるまでは穴に入らないと決めたし、明日は聖剣が抜けたことを王都へ報告しに行こうと決めていた。

 大方僕にこれ以上良い思いをさせてたまるかという嫉妬心……だろうか? 少し可愛い。

 

 ……なんにせよ、好都合か。

 

「え、えーとそうだったねテオ。ごめんごめん……すみません村長、祝いの途中ではありますが」

「なんとそうでありましたか……お引き留めして申し訳なく」

 

 理由があれでもここを抜け出せるなら。少しの罪悪感と共に村長に別れを告げる。

 明日になれば予定が変わったと言って旅立てば良いだけか。

 

「そ、それではこれで……」

「──あら、少しお待ちを」

 

 そうして去ろうとする僕の空いている手を誰かが掴む。

 先ほどお酒を飲ませようとしてきた女性だ。テオが僕にだけ聞こえるほど小さな声で唸る。犬みたいだからやめて。

 

「えーと……なにか御用で」

「みたところお連れ様はかなり酔われているご様子。宿まで少しありますし、危険を考えこちらでお休みされては……」

 

 う、反論しにくいな。確かに今のテオはまともに歩けるようには見えない。

 酒場で休んでという選択肢は無いどころかあり得るものだ。

 そう言葉に詰まっている内にテオが動く。

 

 ……あの、なんで酒瓶と包みを渡してくるの?

 

「よぅし、じっとしとけぇ」

 

 あの、なんで背中を登ろうとしてくるの。おぶれってこと? 

 で、そのまま首に手を回して……テオの顔が横にくる。

 頬も赤く染まった顔で「おらいけいけ」と回らない舌で捲し立ててくる。

 

「……ふふ、じゃあこのままテオと帰りますので……ご心配ありがとうございます」

「あっ……」

 

 彼女は意外と頑固な面もある。こうなったらなにを言っても聞かないだろう。

 手を離してもらい、そのまま酒場を出た。

 

 月明かりの下、宿へ向かう。まだ夜は長い。しっかり休息も取れそうだと一安心する。

 背中に乗った小さな体の重さを落とさないよう足を脇でしっかりと挟んだ。

 

「……テオ、ありがとね」

「へっへっへ、かわい子ちゃんから、ひんそーに変わった気分どーよ」

「いや、テオのが……まだいいかな?」

「お世辞言っても……あ、そうだ。包みの中くっていいぞ」

 

 包みの中? 聞き返し、言われた通り開けてみる。

 中にあったのは……サンドイッチ。だいぶ肉肉しいというか、ベーコンやらソーセージやらチーズやらがふんだんに詰め込まれている。野菜が一割程度しか見えない。

 おつまみを適当に挟んだらしい。

 

 ……腹が鳴る

 彼女を離さないよう気をつけつつかぶりついた。塩っけとチーズ、トマトソースやら味の暴力が襲いくる。美味しい。

 

「そーだくえくえ……ねむ、ねる」

「あ、うんおやすみ」

 

 それだけ言い残して、すぐに彼女は寝息を立て始めた。

 見越していたのかそれとも自分のつまみ用だったのか。よくわからないけど、親友にまた感謝をした。

 ……これでお酒臭くなかったら文句なしなんだけど、まあ今日は飲んでもいいって言ったの自分だし仕方がないし……。

 

「……うん」

 

 昼の時に見せた、どこか寂しそうな色も抜けた寝顔を見れば、酒臭さもあまり気にならなくなった。

 

 

 月は、相変わらず綺麗だった。




次回より、
盾役従者は勇者に付いて行けるのか? 危険な2人!勇者は眠れない

が始まったりしなかったりしろ

次回も2日後。良い子のみんな、絶対メス堕ちしてくれよな!

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