けどそうなった場合、誰が代わりにメス堕ちすると思う?
──作者だ。
作者はオリジナル累計に載った一件で、更新が滞ることに負い目を感じている。
だから他のTS作品が更新されなければ、自分からメス堕ちするだろう。
けど、今の作者じゃ尊い恋愛小説には勝てない。
そうなれば、東都の連中はよってたかって低次元領域を責める。
……お前がメス堕ちするしかないんだよ。
ただ飯というのは好きだ。
あとで恩に着せられるタイプのは別として、大概奢ってくる相手は気を良くしてるから楽しい。こちらは財布を気にすることなく飲み食いが出来る。
青果店などでこれはオマケだと果物を追加してくれればもう一日幸せな自信がある。
「お、お待たせしました。こちらベリーベリーアイスタルトと、チョコバナナアイスタルトでございます」
「ありがとうございます、テオ様はどちらがよろしいですか?」
「えーえっと、バナナの方で……」
だがなー……姫様に奢られるのはわけわかんなさ過ぎて、幸せ数値がどこか旅立っちゃってるよ。
可愛くて抜群のプロポーションの子と、今王都でも大人気のスイーツを食べるとかもはや風俗だよ。
……うん、こんな無礼なこと考えられるだけ余裕は復活したか。
──な、なあなんでこんなところにリバユラ様が……?
──俺が知るかよ、それより今日はやけに護衛が少ないぞ。隣の人は誰だ……?
──な、なんか見覚えある気がすんだが……
テオです。勇者さんの仲間です。
無名の俺ではなく、姫様の御威光に恐れをなして事前にいた行列が退散。
民衆が噂をするのを耳でとらえながらテラス席に座る。
よく考えなくてもクッソ迷惑だな? まぁスイーツ食べる時に戦いたくないから、こうして距離取ってくれるのはありがたいんだが。
「ふわぁ……美味しそうですねぇ。食べるのがもったいないくらい」
「だな……ここまで綺麗な盛り付け、路面店の質じゃないぞ」
対面に座った姫様。皿を眺めてご満悦。
最初どちらがいいかと尋ねた時もそうだが、姫様の視線的に恐らくベリーが食べたかったのだろう。
目を輝かせてスイーツを眺める姫様は、絵にしても十分なほど様になっていた。
──皿に乗った、手のひらサイズのタルト生地のくぼみには丸いアイス。
ふちを埋める様にベリーソース、ベリーの果肉が並べられている。
こちらは同じく窪んだタルト生地にチョコアイス。輪切りになったバナナが並び、端から端まで三往復したチョコソース。
アイスの山の頂上に添えられたミントが全体の彩を締まらせ、昇華している。
……見た目の手の込みようからして値段も相応に高い。
少なくとも一個で瓶の安酒が買えるレベル。
では実食。スプーンでアイスを掬い口に、すかさずチョコソースが乗ったバナナを一口に。
「おー……うま!?」
あっ、冷たい……ひんやりとした喉にバナナの濃厚さとチョコの甘味が雪の様に積もって解けていく。
滅茶苦茶甘いけど、どうしてかクドく感じない。これがプロの技と言うものか。
「うー冷た……おいしい」
「ふふ、とってもいい笑顔ですね? テオちゃん」
「……あっ。そ、そう? いやぁなかなかどうして……甘いものは普段食べなくてつい……」
その美味しさゆえか、姫の前という事も忘れ既に三口。見れば姫様はまだ一口だけ。な
指摘されてこっぱずかしく、頬が熱くなるのを感じた。
「あら、そうなんですか? テオちゃんはフルーツが好きだとお聞きしましたが」
え、そんなこと話したっけ? やっぱ記憶のすれ違いって厄介だ。
こちらの発言に首を傾げる姫様。可愛いかよ。これでレズじゃなければ……。
……いやそれにしても痛いところ突かれた。
確かに、しょっぱい酒のつまみの方が好きだけど……スイーツは嫌いじゃないし、むしろ好きだ。
じゃあ何で食べないの? って聞かれるかそりゃ。
「……村じゃあ甘いものが果物ぐらいだったし、それに……」
「それに?」
しまった。つい続けてしまった。果物ぐらいだったで切ればそれで終わりだったのに。
どうしよう、今更「いやそれだけだったわ」って言いきるの無理がある。多分姫様は「隠し事など……」って粘るし。
……いいか、別に言っても。
「その、あんまり可愛いものは似合わないなーと。ハハハ……」
「──」
酒もタバコも好きで外聞気にせず楽しむ俺だが、どうにもスイーツ=女子。そんなイメージがある所為であまり進んで食べようとはしなかったな。
大体誰かから勧められた時は喜んで食べるけど……。
……そうだ。今なら女子になってるわけだし、多少はスイーツ食べても違和感がないな。これは女子になってよかった数少ない利点。
ヤシドの奴も甘いのは嫌いじゃないし、今度町でよさげなの見つけたら買ってもいいかもな。
モグモグ。
「……あ」
しまった、無意識的に食べていた。もう最後の一口分しか残っていない。
対する姫様は……すんごい勢いで食べてる!? 丼ものじゃねぇんだぞ!
「ひめ──じゃなかった。リ、リバユラちゃん?」
「……あぁ、失礼しました。つい意識を逸らすために……」
「意識を!?」
なんでそんなことする必要があったの!? というかそんな一気にかっ込んで頭痛くなったりしない?
……大丈夫そうだな。恥ずかしいのか頬も赤くなってるし。体温むしろ高くなってる? なんで?
しかしこれで姫様は残り二口分。あれか、気を遣ってくれたのかな。悪いね。
じゃあ適当に話をして完食しよう……うん?
「……そうだ、この手が……!」
「あの、リバユラちゃん?」
なんでこっちをじーっと見てんです? そう見られると食べづらいんだが。
「……あ、あのー」
「──テオちゃん。私、チョコバナナの方はどんな味か気になってしまったのですが……ベリーの方、食べてみたくはありませんか?」
「え?」
「ありませんか?」
いやな予感がした。
口元だけにんまりと笑顔を浮かべる姫様を前に、迂闊な返答は危険だと警鐘が鳴る。
仮に「食べたい」と答えた場合、レズ姫はどうするだろうか。
追加注文……いやありえんか、無し無し。そんな食いしん坊な感じではないだろう。
じゃ、じゃあ……あれだ。そっちの味が気になるよねーでシンプルに皿を交換して食べる。これが一般的、姫はきっと超えてくる。
けどこれ、食べたくないって答えらんないよな。
とんだ無礼だし、後が怖い。
……ええいままよ!
「……た、食べたい……です」
どうか、姫様がお皿を交換したい。
もしくは普段甘い物を食べないと言った俺を気遣って追加注文してくれるとかいう平和路線でありますように!
そう神に、鬼も蛇も出ませんように祈り言い切った。
「そうですよね!」
あっ、あかん。
すっごい邪悪な笑顔したぞ一瞬。四天王でもそこまでな顔はなかなかしてなかったって……。
俺の言葉で導火線に火が付いたのか姫は動く。
椅子をずらし、対面から少し手を伸ばせば届く位置へ。
何をする気だと身構えたが、リバユラ姫はこちらに向かって……ただ、口を開いた。
「それじゃあ……あーん」
なんで?
いやなんて?
「ほらほら、早くしないと顎が疲れてしまいますので」
いや、疲れてしまうってあの。
一国の姫様が無防備にも口をこちらに向かって開いている。綺麗で白い歯と健康的な口内が見えた。
……その、エロいです。グヘヘとかふざけるスケベ心が吹き飛んで、熱かった頬が更に熱くなる。
こ、このまま眺めてるのもいい──いや駄目だ!!
これ以上みていると俺まで変な趣味に目覚めてしまいそうだ!
「……あ、あーん?」
慌てバナナタルトを掬い、視界を塞ぐように姫の口にタルトを入れる。
姫の口が閉じ、スプーンからタルトが絡めとられる感覚。
若干収まりきらず、口元に付いたチョコソースが一瞬、出てきた舌で舐め取られる。お下品だと咎める執事や侍女はいない。
姫様はこちらをじっと見て、笑顔でゆっくり咀嚼。
こちらも目を離せず……ただ、さっきまで見えていた口の中で砕かれただろうアイスタルトが、喉を通り腹に収められていく姿を眺めていた。
……餌やり餌やりこれは餌やり、決して邪な気持ちを抱いてはいけない!
心の中で何かが目覚めようとしている鼓動を必死で押さえつける。
「ふぅ、こちらも美味しかったです、ありがとうございます」
「ど、どういたしまして……!」
だからこそ俺は、姫が第二の矢を番えていることに気が付かなかった。
「それでは……テオちゃん?」
「あ、え……?」
気が付けば、目の前で姫は構えていた。
何を、スプーンを。二口分のベリータルトを。どう考えても口に収まりきらないそれを。
そして……姫は悪魔の言葉を囁いた。
「はい……あーん?」
逃げ場はない。
だから、だから……。
「あ……あーん」
◇
……ひどい目に遭った。
具体的には、当然の如くアイスが収まりきらず口が汚れて、「あらあら大変ですね、今拭きましょう」と姫様が懐から取り出した、滅茶苦茶高そうでいい香りがするハンカチで拭かれた。
更に、至近距離でそんなことをされたもんだから余裕も待たなくなって「や、やめ……やめてぇ……」とくそ情けない声を出したことも恥ずかしい。
「楽しかっ──美味しかったですねあのお店!」
「ソウデゴザイマスネ」
つやつやした姫様とは対照的にこちらはかなりのグロッキー。甘味の回復分を相殺するどころかもう限界です。
もはや手をつながれてどこかへ連れていかれるのも阻止できない。というか力強い、どこから湧いてくるんだこんな力。
これ護衛いる? 勝手に放っても山賊とか蹴散らしてきそうな精神パワーを感じるよ。
──姫様だ
──隣の人は一体……?
テオで……いやテオじゃなくて……まだテオです。
ああ勇者ヤシド様、通りかかってくれ。そして話しかけてくれたらもう、それはそれはおべっか使ってなんとか姫と勇者二人一緒にどっか行かせっから。
ああくそ、なんで人の婚約者に狙われなきゃ……いやこの時点ではまだ婚約してなかったなうん。
姫はグングンと進む。王都の中でも富裕層が多い地域へと入り、街並みも少し豪華になっていく。
……さっきのスイーツ店もそうだったけど革鎧がクッソ浮きますわ!
「そ、それでリバユラちゃん……次は何処へ」
「ふふふ、それは……こちらです!」
歩みが止まる。さてなんじゃらほいと顔を上げればそこには三階建ての建物が。
非常に珍しい、ガラスのショーケースで飾られているのは……ドレス、それも姫様が着ているようないかにも高そうな代物。
つまるところ、服屋さんだな。
「服……なんか欲しいもんが?」
……まぁ姫様も女の子だし、おしゃれは大事だわな。
俺はこんなの全然わかんないからアドバイスとか求められたら大変だけど……さっきのあーんよりはマシか。
「? 何を仰っているのかわかりませんが……」
そう一安心して、
「──テオちゃんに着てもらうのですよ?」
「……はい?」
地獄だと気が付いた時には、後の祭りだった。
メス堕ち度 15%
レズ堕ち度 10%
前書きはオリジナル累計には入れた感謝をこめて書きました。
みなさまのおかげであり、本当に感謝してもしきれません。
それはそうと、TS娘は着飾るイベントがあってしかるべきだよな。それ書くのにかなりかかったのはなんでだろ。
~世界観説明~
・アイスクリーム
最新式、熱を奪い冷やす魔道具を使う事で作り出された。
これが発明される前は寒い地域から氷を切り出して作る必要があったため、とても高価だった。
~オリキャラ紹介~
・リバユラ・メイクーン
目の前の女の子が「甘い物なんて似合わないだろ俺」とか言い出した。
だから似合う様にしてやろうと思った。なんて善人。
──メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のオス精神を除かなければならぬと決意した。メロスにはメスがわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれどもメス堕ちに対しては、人一倍に敏感であった。