EP1 出会い
俺の名前は「大谷 吉常(おおたに よしつね)」。
並盛高校3年。受験を控えたどこにでもいる高校生だった。
あの人と出会うまでは…
それは夏休みが明けて間もない頃だった。といってもクラスは受験モードまっしぐら、常にピリッとした空気が流れていた。
「大谷、先生が呼んでたぞ、今度は何やったんだ」
「石田 鈴(いしだ すず)」やたら俺に絡んでくるクラスの女子だ。
「なんもしてねーよ、ったくあの先生細かいんだよなー」
「早く行ってきなよ」
「へいへい」
職員室へ向かうとその先生が職員室の前で立っていた。
「大谷くん。進路希望調査票が白紙じゃないいですか。どういうことですか」
三浦 ハル。俺のクラスの担任で『夢』だの『将来』だの『夢見る少女』感の抜けない残念な先生。
「特に将来なりたいものとかないですし、進学するつもりもないです」
「デンジャラス。それじゃあ先生大谷くんの応援が出来ないじゃないですか」
「別に先生に応援してもらう必要ないんですけど」
「がビーン。先生ショックです…とにかく今日中に書いて提出してくださいね」
気がつけば他の生徒は誰も居なくなっていた。
(もうこんな時間かよ…ったく三浦のヤツ書いたんだから、さっさと開放しろよな)
日が落ちはじめた頃、学校を出ると三浦が誰かと校門前で話していた。
「久しぶりですね。いつ日本に」
「ちょうどお昼頃かな」
「どのくらい日本にいるんですか」
「彼は3日間って言ってたよ」
「おー。じゃあ普段会えない分沢山甘えちゃいますよ」
「もう。ハルちゃんったら」
「彼はどこに」
「今日は、仕事だから多分会えないんじゃないかな」
「そうですか…。では久しぶりにスイーツ巡りしますか」
「大丈夫。お仕事今、終わったんでしょ」
「大丈夫です。行きましょ」
「ふふ、相変わらず元気だなハルちゃんは」
(綺麗な人だな…あんな美人で賢そうな友達三浦にいたんだ。それに【彼】って三浦がよく豪語してた【凄い彼氏】ってその人のことか…)
翌日の昼休み。俺は三浦を探した。
(三浦のことだ…きっと電話での話し声もデカイはず…)
「はい…そうですか今【並中】に…ありがとうございます。仕事終わり次第直ぐに向かうです」
(並中…って並盛中学のことだよな…なんでだ)
俺は学校を早退し、並中へ向かう。
(この道を抜ければ並中に一直線)
「きゃあ」
「うお」
出会い頭に人とぶつかってしまった。
「すみません。大丈夫ですか」
「こちらこそ。すみません。大丈夫です」
(昨日。三浦と話してた美人さん近くで見たらスゲー可愛いいじゃん)
「あの…なにか」
「えっ、いや…あの、急いでるんで失礼します」
並中に到着するも当然ここも授業中…
(まさか…もう中にいるのかその人)
「おい、お前そこで何してる」
並中の先生に見つかり焦る
「見たところ並高の生徒だな」
俺は捕まり、並中の先生が連絡を取っている間生徒指導室に軟禁された。
(見たところ普通に授業中…仮にその人がOBだとしても行けるスペースは限られてるよな)
俺はこっそり抜け出し、階段をかけ上がる。
(俺の予想が当たっていれば…)
勢いよく最上階の扉を開ける。
辺り一面に広がる空とフェンス
(誰も…いない)
戻ろうとすると
「君…誰だい」
上から人が飛び降りて来た。それが俺とあの人の出会いであった。