「あれ、その制服って並高だよね」
飛び降りて来た男は、ツンツン頭でどこか頼りなさそうな印象だった。
「えっ、はい。まぁ」
「ハルのヤツ元気かい」
「ハルって…もしかして、三浦ハルですか」
「そう。あいつ俺の知り合いなんだ」
(この男が三浦の…どこがいいんだろう)
「あいつ大変だろ、色々と」
「そうですね…」
「三浦先生に会いたいならら並盛高校に行った方が早いのでは」
「いや…別にハルに会いに来たとかじゃないし」
「そうなんですね。なんか三浦先生『久しぶりに彼氏に会える』って大はしゃぎでしたよ」
「いや、俺ハルとは中学からの長い付き合いだけど、彼氏ではないし」
(三浦妄想癖強そうだもんな~あいつの勘違いか)
「今、何してるんですか」
「少し、仕事抜け出して思い出に浸ってたんだ」
「思い出…」
「ここは、今の『俺』を作ってくれた大切な場所だから」
(並中が…)
「俺が中学の頃雇ってた家庭教師が超スパルタでさ、何度死んだか」
(いやどんな家庭教師だよ)
「えっ、死んだって今貴方ここにいるじゃないですか」
「あぁ、ちょっと色々あってね何度も死んでるんだ」
(頭大丈夫かこの人)
「ここで出会った人達とは未だに遊んだりしてさ、本当に懐かしいよ…」
(フェンス越しに遠く眺めてるけど、見た目のせいかなあんまカッコよくない)
「ところで、君はなんでここに。並高も授業中だろ」
「えっと、まぁサボりです」
「そっか」
「…叱らないんですか」
「俺も学生の頃よくサボったりしてたから、あまり人に強く言えなくて」
(…三浦どんなとこに惚れてるんだろう)
「おい、沢田そろそろいいか」
さっきの先生が男を呼びに来た。
「そこの並高生。担任が迎えに来たぞ」
「わざわざ、迎えに来るなんて元気な先生だな」
「その…俺の担任…」
校門に近づくと
「大谷くん。なにをやってるんですか全くもう…ってツナさん」
「よお、ハル久しぶりだな」
「お元気そうでよかったです~ちゃんとご飯食べてますか、苛められたりしてませんか」
「お前は俺の保護者か」
「ハル心配で心配で」
「京子ちゃんいるし、心配ないよ」
「それもそうですね。京子ちゃんも元気そうで良かったです」
「会ったのか」
「はい。スイーツ巡り久しぶりにしてきました」
「昨日京子ちゃんの食欲が無かったのはそのせいか」
「それは私は知りませんが。ところでツナさんいつまで日本に」
「明日にはあっちに帰るよ」
「そうなんですか…」
「あれ、お兄さん今海外に住んでるの」
「はひ、大谷くん当たり前ですよ、彼の名前は『沢田綱吉』総合複合企業『CEDEF(チェデフ)』のCEOです。本社はイタリアにあるのでイタリアに住んでらっしゃるんですよ」
俺は暫く頭がその事実に追い付かなかった。
総合複合企業『CEDEF(チェデフ)』はあらゆる分野で常に業界上位に入る世界トップクラスの大企業だ。
イタリアで誕生し、100年近く続いているなんて都市伝説もある。
その会社のトップが日本人なのにも驚いたが、その日本人が目の前にいるこの頼りなさそうな男というところに俺は驚いた。
「おい、ハルそろそろいいのか学校に戻らなくて」
「はひ、大変です。大谷くん戻りますよ…あーーー」
突然大声を出す三浦。
「なんだよハル、突然」
「ツナさん、お願いです。この大谷吉常くんの家庭教師になって下さい」
「はぁー」
俺達は三浦の提案に唖然となった。