「山本。久しぶり調子良さそうだね」
「ハハ。今年も絶好調だぜ」
(山本武…プロ野球チーム『並盛ウォリアーズ』の4番。入団1年目から主力として活躍して今年は三冠王に期待が懸かる日本を代表するプロ野球選手じゃん。この二人知り合いなの)
「こいつがツナが電話で言ってた高校生」
「うん。大谷吉常、ハルの生徒みたいなんだ」
「へぇー三浦の。楽しそうなクラスだな」
「まあ…楽しそうですよ。先生は」
「なんだヨシツネだっけ。お前は学校楽しくないのか」
「…」
「人それぞれだしな、別に責めてる訳じゃないぜ。友達はいるか」
「それなりに」
「かけがえのない大切な友達を1人でも作った方がいいぜ」
「人との繋がりってそんなに大事ですかね」
「そのうちわかるさ」
ヨシツネは気がつくと並盛ウォリアーズのスタジアムのグランドに立っていた。
「えー今日1日私の知り合いの懇願でうちの練習を体験をすることになった並盛高校の生徒さんだ。皆仲良くしてあげてくれ」
「大谷吉常です。よろしくお願いします」
選手達は当たり前のように迎えてくれていた。
「山本。彼のこと責任を持って見ているようにな」
「うす」
「あーそれとこのこと球団に通してないからオフレコでな」
「監督また好き勝手やって大丈夫ですか」
笑い合う人達に吉常はただただ困惑していた。
(大丈夫なのかこのチーム…)
ウォーミングアップはランニング50周に腕立て×1000腹筋×1000の至ってシンプルな出だしだった。
「はぁーはぁー」
「まだウォーミングアップだぜ、大丈夫か」
「大丈夫です」
(これってウォーミングアップなんだよな…)
ウォーミングアップを終えキャッチボールが始まる。
「ヨシツネは部活やってるのか」
「小学生の頃に野球をしてました。今はなにも」
「部活は目標を立てやすいからよ。やるといいぜ」
(隣のペアのミット音響いてるんだけど、キャッチボールだよね…)
その後も練習は続き。本日最後のメニューは紅白戦であった。
「ヨシツネ大丈夫か」
「だい、じょうぶ、です」
「無理はすんなよ」
「はい」
吉常は山本の次でDHとして入った。
(山本選手はやっぱりスゲーな。あんなハードな練習で笑顔を絶やさずに)
バッターボックスに立つ吉常。
(あの投手…凄い気迫だ。でも高校生相手になんでそんな剥きに…)
相手投手の投げたボールは吉常の胸スレスレを通過する。
(あぶねー。デッドボールものだぜあれ)
それからもあっというまに打ち取られてしまった。
日が沈み始めた頃。練習は終わった。
「お疲れ。どうだった」
「…想像以上に過酷だった」
「そっか」
「おう。二人ともお疲れ様」
「山本。今日はありがとう」
「どうだヨシツネ。何を感じた」
「プロの世界って華やかなのかなって思ってたけど、全然違った。高校生の俺相手に皆さん容赦無かった」
「…外から観たらスポーツ選手は皆華やかに見えるかもしれねー。けど俺達はこれで生活していからな、皆1日1日が必死で勝負なのさ。これはどの職に就いてもそうだと思うぜ」
「えっ…」
「形は違えどその仕事でメシを食うって決めた以上少しでも怠ければどんどん追い詰められていく。世の中ってのはそういうもんだ」
「山本さん…」
「頑張って自分の進む道を決めな、時間はあるようで全然ないぜ」
「ありがとうございました」
手を振り山本はスタジアムへと戻っていった。
「今日はもう遅い。気をつけて帰りな」
「あれ、もしかしてツナ兄」
振り返るとクリーム色の長髪の青年が手を振っていた。