ツナと過ごした濃厚な3日間から1週間近く経ったある日、吉常は外の騒がしさで目が覚めた。
寝起きのまま窓の外を覗き込むと、自宅の前を黒服の集団待ち構えていた。
(俺なにかしたっけ)
恐る恐る玄関を開けると視線が集まる。黒服の男達が一瞬で左右に分かれ膝に手を付き頭を下げた。
「あのー。どちら様ですか、近所の人達に迷惑なんでやめてもらいたいんですけど」
「これはこれは大谷さん。失礼致しました」
リーゼント頭の男が吉常に話しかけてきた。
「私は草壁哲矢と申します大谷さん。沢田さんからお話しは伺っています」
(ツナさんから貰った写真の人…本当にリーゼントなんだ)
「あの、これはどういう」
「車を用意してます。話しはそちらで」
初めて乗るリムジンに思わず目を輝かせる吉常。それをよそに草壁は話し始めた。
「改めて過ぎた挨拶をしましてすみませんでした。私は並盛財団副理事の草壁哲矢です」
「並盛財団…」
「この町にお住まいでしたら。ある程度私達の組織についてはご存知かと存じます」
(並盛中のとある年代の人達が結成したと言われている財団法人。金融面を中心にあらゆる分野の会社と業務提携して運営されてて、特に並盛に関わる案件には全て関わり噂では並盛町を裏から支配してる組織だったよな)
「あの…ツナさんとはどういった関係なんです」
「一概には表現出来ません。並盛出身の同志、昔のよしみ、ビジネスパートナー…そういったところですかね」
「ビジネスパートナーですか」
「まあCEDEF(チェデフ)ではなく沢田さん個人との契約になるので表立って表明はしていませんがね」
「それでこれからどうするんですか」
「これから1週間。様々な職場を体験して頂きます。体験先と貴方の学校に根回ししていたのでご挨拶に伺うのが今日になってしまいました」
「学校に根回しって」
「貴方の休学手続きやそれに伴う成績の処遇についてね。この職場体験中の期間は校外学習の扱いとして学校の記録に残り成績に影響は出ません。安心して自分の行く道を探してください」
証券会社に建設現場、農家や漁船、役所、不動産、研究所…様々な職場を一気に体験することになった吉常。
「これで体験を予定していた職場は全て周りました。大谷さん1週間お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
「どうでしたか、何か掴めましたか」
「学ぶことは沢山ありました。でも目指したいと思ったところは…」
「そうですか…」
「すみませんここまでして頂きながら」
「自分の道は人に強制されるものではありません。気にしないでください。これで我々が沢田さんから受けた依頼は終わりです。大谷さんが自分の納得のいく未来を見つけることが出来るのを陰ながら応援しております」
「理事長。今副理事は面会中です」
急に部屋の外が騒がしくなった。
「なに勝手にやってるの」
「いや、理事長にもお話は通しているはずですが」
「知らないね」
勢い良く襖が開き、1人の男が立っていた。
「恭さん」
小鳥が一匹彼の肩に降り立った。