天災兎は平和な世界でISを造りたいようです 作:ライかぐ推し
C.C.って思ったより難しい
あと、わかり辛かったので名乗りはありませんがルビにキャラ名を振ってあります。
《ピピピピピピ! キケン! キケン! 危ないよー!》
「んん?」
束の研究室に緊張感のない危険を告げるアラームが鳴り響く。
束は作業を止め、近くにあった大型のタブレット端末を手に取る。
「あれー、もしかしてバレた? 絶対に証拠残すようなヘマしてないはずなんだけど」
写し出されたのはシンジュクゲットーの全体図、並びにあちこちに設置された束専用の監視カメラの映像。
見ればシンジュクを取り囲むようにブリタニア軍が配置されていて、既に何機ものKMFが侵入している映像が映し出されていた。
「……あ、違う違う私じゃないや」
隅々まで目を通し、普段は見かけない異物を見つけた。
それはろくに整備もされてない廃墟に突っ込み、走行不能になったトラックの映像。
「はは~ん、なるほどなるほどこのトラックを追って来たわけ……ん?」
トラックの中から出てきたのは
「
少し興味が出てきたので束は今までミュートにしていた盗聴器からの音量を上げる。
次いでにここも危ないかもしれないので端末片手にさっきまでやっていた作業を中断、片付けに入る。
そうして盗み見すること少し、事態は急変する。
「あ、撃たれた」
トラックを追っていたブリタニア軍の歩兵部隊が彼らに追い付いたのだ。
彼らはその場にいた方の軍人、いや束が聞いたところによると名誉ブリタニア人のスザクに学生と女を殺すように命令するがこれを拒否、スザクが背後を向いた瞬間に彼らが発砲したという所だった。
「ま、武器も持てない軍人とお荷物二人じゃこうなるよね」
こういう生活をしていると似たような場面はいくらでも見たことはある。
人と言うものは強い立場になると弱者に力を振るわずにはいられないのか、ブリタニア人が日本人を虐げるなんて
酷いものだと薬物や殺人などもあったりするが、基本的に束は助けない。
一々助けていたら研究する時間がなくなるし、そもそも他人にあまり興味が無い。
彼女の元となったオリジナルもそうなのだが、彼女も他人に興味を持つどころか見分けることもままならない。
辛うじて家族は見分けられるのだが、同じ日本人でも興味がわかなければ次ぎ会った時には存在を忘れたり、外国人となるともうほとんど同じ顔に見えて見分けられなくなってしまう。
それほどに彼女は他人に興味が無い。
きっとこのまま殺されるであろう二人も明日になれば彼女の記憶から消え、またいつも通りの研究漬けの日々に戻る、かに思われた。
「あ」
絶体絶命かに思われたその時、突如トラックが爆発した。辺り一面に煙が舞い、一気に視界が悪くなる。
衝撃でカメラにひびが入り、盗聴器が拾う音も雑音が多く故障したように思われる。
しかし、それでもブリタニア軍人たちの戸惑いや怒声が聞こえ、煙が晴れた時には彼ら二人がいなくなっていたことからあの隙を突いて逃げ出せたと考えるのはごく自然なことだった。
「他に誰かいて自爆した? それはいいけど、……これはちょーっと不味いねぇ」
兵士たちがどこかへと連絡を取った直後からシンジュク周辺に配置されていたブリタニア軍の動きが急に慌ただしくなり、先の比じゃないほどのKMFや兵士をここへと出撃させ始めているではないか。
これが意味することは一つ。
「シンジュクの住民ごと皆殺しってことだよね~」
超短絡的、と彼女は付け加える。
「んー、流石にこれは何かしたほうがいい?」
幾ら隠蔽してあるとはいえ、この隠れ家が見つかる可能性はゼロではない。ならば私は何をするべきか、と彼女は考える。
「あれは何時でも出せるけど、なんか時期尚早な気がする、総督を殺ってもまた別の人が来るだけだし、……いや、そもそも何で皆殺しって結論になったのかな?」
ふと、束は思った。
確かに毒ガスなどの危険物がテロリストに奪われたなら住民ごと抹殺も有り得なくもないが、少女一人に対する反応としては過剰過ぎる。
つまりはあの緑色はブリタニアにとってとても重要で、尚且つ絶対に外に漏れては不味いものと言うことになる。
「ちょっと気になるなー、……えっと、どんな顔だったっけ……ああうん、こんなんだった」
既に忘れかけていた顔を記録されていた動画を見返して思い出す。
ついでに忘れないようにそこだけ切り抜いて保存する。
「えっとあの辺りから予想される逃走ルートは地下で、そこに仕掛けたカメラはこれとこれとこれと、……よし見つけた流石私!」
配置してあった監視カメラの映像を順に廻っていき、その一つに彼らが走っていく映像が記録されていた。
そこから逃走先を割り出し、USBメモリに似た漆黒のKMFの起動キーとどこかの漫画で出てきそうな単眼式
「動作確認良し、マップ確認、ターゲットの画像入力完了、よしよしオールオッケー! じゃあ行きますか!!」
HMDに逃走予測ルートが表示されたのを確認すると、束はすぐさまに秘密基地を飛び出した。
「えっと確かここのはずなんだけど……何これ?」
HMDに表示された座標通りに彼らがたどり着いたであろう廃墟へやって来た束だったが、そこにあるのはほぼほぼ死体のみであった。
額を撃たれた
「日本人とそこの緑女の死体は良いとして、いや私的には良くないけどそれは置いといて、何で死んでるのこいつら?」
服装からして彼らはあの学生を追いかけていた奴等で間違いない。日本人と緑色を殺したのもこいつらだろう、と束は推理する。
しかし、それだと解せない点が一つ。彼らが明らかに自殺していると言うこと。
「笑顔で死んだのだから多分発狂したわけではないよね、けどそんなことする理由なんてあるわけない、例えば皇族からの命令でも喜んでやるほどブリタニア人が狂ってるって聞いたことないし、となれば……催眠や
不可能ではない、しかしその可能性はかなり低いと言わざるを得えない。
「けど、そんなのあるなら最初から使うはずだし、何より緑色とあの兵士が死なずにすむよね、う~ん?」
悩むが答えはでない。
そもそも推理するには材料が足りなすぎる。
「ヒントがあるとするなら、さっき出てったサザーランド? パイロットっぽい人がここにいるってことは奪われちゃった?」
そう言って視線を下に向ける。
具体的には彼女の足元で気絶している
どうして彼女がこのような場所で気絶しているかというと、ただ運がなかったという一点に尽きる。
気を取り戻した彼女が最初に見たのはKMFを失った自分自身と、地下から床のコンクリートを破壊して現れたウサミミを着けた怪しい少女。ひゃっはーー!!と無駄に叫んでいたのはご愛敬。
一瞬思考が停止しそうになるが、相手がイレブンと認識した彼女は素早い動きで拳銃を抜き、発砲した。
放たれた弾丸は一直線に彼女の側頭部へと迫り、直前で彼女が手に持っていた螺旋状の突起物、つまりはドリルに弾き落とされた。
驚愕するも二発目を放とうするが、その前に人間離れした速度で接近した束の両足が彼女の頭部を挟み込み、そのままバク宙の要領で後方に回転、下半身の力のみで彼女を持ち上げ――そのまま固い地面へと叩きつけた。通称、《フランケンシュタイナー》と呼ばれるプロレス技の一種である。
激しく後頭部を打ち付けた彼女はそのまま気絶、おそらくは一、二時間程度では起きることはないだろう。
「ここの外にはカメラつけてたけど、中までやんなかったのは失敗だったかな? ま、そもそも想定外のことしてるから反省しても意味無いけど」
それよりも、と呟き彼女は半回転して歩き始める。
近場で転がっている死体を器用に避け、緑髪の女へと近づく。
「にしてもまさか殺されるとは予想外、生死問わずだったのかそれとも元から殺す予定だったのか……いや、多分部下の独断な気がするなー勘だけど」
とりあえず死体だけでも回収しておこうかなとか、何で捕まってたのか検査しようかなとか、ただそれだけの軽い理由だった。
「………………?」
すぐ傍まで来ると束は何か言い表せぬ違和感を覚え、そのまま彼女は上からジッと覗き込んで――気づく。
「あれ? なんで生きてるの?」
額を撃たれて生きている人間など一部の例外を除いていない。
彼女の場合は額のど真ん中を撃ち抜かれていたので生きている可能性はあったが、明らかに致死量以上の出血をしていたことから一目で束は死んだものと判断した。
しかし、今まで何度か見てきた死体と何か違うと束の理性が告げていたし、よくよく観察すると僅かに胸が上下に動いているのが見てとれた。
「――ほう、よくわかったな」
死体だったはずの女が口を開く。
ゆっくりと上体をあげ、立ち上がる。
その際に前髪の間から額を見ることができた束だったが、――そこに銃創など初めから無かったかのように綺麗な肌が覗かせていた。
「束さんは特別だからね! 近づかなくてもその程度のことならお茶の子さいさいさ」
(高速治癒……じゃない、流出した血液の補充や脳関係の損傷まで治すならそれはもう治癒じゃなくて不死って言った方が近い、そして緑が驚いてないってことは多分死に慣れてる、一度や二度じゃない、ならブリタニアが隠そうとしたのは不死の実験? ならこいつはそれの成功例? …違う、一から造り出すタイプの実験なら尚更こんな危険なところじゃしない、本国の最重要施設か人がほとんど来ない僻地の二択、となればこれは偶発的に発生したもので量産体制は整ってないということ? ……これ以上先は考えるだけ無駄、後で
束は器用に別の事を考えながら話す。
「で? あなたはどうするの? このままだと捕まるのも時間の問題じゃない?」
「さあな、お前には関係ないことだ」
そう無愛想に返す彼女。
「ふ~ん、まっいっか、謎は増えたけど知りたいことは分かったし次はやっぱりあいつかな」
「あいつ?」
「さっきの学生」
詳しくは不明だが、KMFを奪い、人を自殺させる謎の力、幻想に思えた不死が目の前にあるのだから恐らくこちらも超常的な何かである可能性がある。
常識では計り知れない未知なる現状を前に彼女が興味を引かれないはずがなかった。
それを知らない彼女は訝しげに束に尋ねる。
「……何故あいつに会いたがる?」
「これやったのは多分そいつでしょ、どうやったらできるのか、ちょっと興味が出てきたからね」
たとえ違ったとしても何か手がかりにはなるかもしれない。目の前の無愛想女は話すタイプじゃないし聞くだけ無駄と判断した束は学生の方から調べることにした。
「監視カメラと空中ラボの超々高性能カメラでこっから出てったKMFを追跡すれば~、はい!見つけた流石私!」
HMDを操作して、ものの数秒で目標を発見。
早速、彼の所へ向かおうとした束だった――が、それを制止するように背後から一発の銃弾がそのすぐ傍に着弾する。
「ん~、別に私が何処に行っても関係ないと思うけど?」
アゴを上げ挑発的に見下ろすように彼女へと視線を向ける束。
「ああ関係ないな、だが流石に今ちょっかいを出されては私が困る」
何時の間にか軍人の死体から奪った拳銃を束へ向ける。
「なに、暫く大人しくしていればいい、余計な事をしなければ命までは取らないさ」
そう言って彼女は束をこの場に留めようとする。
束が一瞬で女軍人を倒したのは目撃していたし、自身では敵わないだろうということも薄々分かっていた。
だからと言って何もしない訳にはいかない、彼女にできるのはできるだけ時間を稼ぎ、少しでも彼が脱出する可能性を上げることのみだった。
「ふ~ん…………ねえ」
しかし、その思惑は束の思わぬ行動によって破綻する。
「
「……正気かお前?」
思わず聞き返してしまう。
無理もないだろう、今まさに銃口を向けている相手にかけるような言葉ではない。
少年少女が友達に声をかけるような気軽さで、一歩間違えば自身の命を奪いかねない相手を誘うなど正気の人間がするような行動ではない。
「正気も正気! その程度で殺られる束さんじゃないし、何よりあなたも気になるんでしょ?」
「……でどうやってあいつを追うつもりだ? まさか走って追うわけじゃないだろう?」
話しても無駄と感じた彼女は拳銃を下ろす。ここで効果がない脅しをするよりも束に近づいて隙を窺った方が良いと考えたからだ。
「勿論、こうやって☆」
束は懐から取り出したKMFの始動キー、そこの先端付近に設置されたボタンを押す。
「――な!?」
少しの静寂の後、激しい衝撃と土煙が彼女を襲う。
反射的に片腕で顔を庇う。
何が起きたのか、それを説明するのはとても簡単なこと。
少しずつ煙が晴れ、降ってきた何かの正体が明らかになる。
それはKMFだった。正し現存するどの国のKMFとも当てはまらない異質な機体。
おおよそ人間に近いフォルムなのは共通してはいるが、逆に言えばそこしか共通点がない。
全身を漆黒に染め、関節を中心に機体のあらゆる部位を樹脂でできた筋肉のような物体が覆い、サザーランドと比べると細い印象を受けながらもまるで日本武者を思わせるような力強さを感じさせる体格、両腕に盾のような物が付いてはいるがそれは機体全てを覆い隠せる程ではなく、武装と言えば左腰に提げている大型の日本刀に似た何かしかない。
一般のKMFに付けられているはずの
「さあさあご覧あれ! 現行する全てのKMFを凌駕する、
シンジュク地下秘密基地
束が秘密裏に開発した隠れ家の一つ。
冷暖房完備、自家発電並びにKMF用の開発施設付き。