天災兎は平和な世界でISを造りたいようです   作:ライかぐ推し

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天災兎は取引するようです

「ふ~ん、おおよそ研究内容は予想通りかな、《CODE -R》に神根島の遺跡、いやぁ束さんとしたことが前世の常識に囚われすぎたね、いくら科学主体の世界だからと言ってファンタジー要素がないとは限らないのにね~」

 

 空中投影型ディスプレイを貫通し、彼女は力なく机に倒れ伏す。彼女なりの照れ隠しだろう。

 しかし、すぐに立ち直すと再びそれらを操作し始める。

 

「にしても、今の今まで考えたことなかったけどもしかしなくても日本(ここ)が侵略された理由ってこれ?」

 

 彼女の視線の先にあるのは神根島の遺跡の研究データ。

 

「そも、日本を占領しときながら中華のことをブリタニアが意識してないのが変だよね、いくら強大国だからってテロリストが蔓延してたら防壁の機能を果たさないもの、ましてやサクラダイトが採れる重要地帯をだよ、ふっつうに有り得ないよね~」

 

 統治もダメ、在留戦力もダメ、そもそも総督の人選がダメ。

 いくら日本に戦力を残してしまったと言ってもまともに統治出来ていないのでは何時中華連邦に隙を突かれても不思議じゃない。こんなのでは本当にサクラダイト欲しさに戦争を仕掛けたのかすら怪しく感じるというもの。

 

「その証拠に昨日のあいつが総督暗殺したみたいだし、世間が重要地って言う割にはブリタニア側の関心が無さすぎ」

 

 そう考えてエリア11総督府へのクラッキングを続けるが、期待したデータは手に入らない。

 何かないかと隅から隅まで関係無さそうな物にまで目を通す。

 

「?」

 

 すると、妙なものを見つける。

 隠蔽されてはいるものの、定期的に研究データの一部が外部へ流出した形跡があった。

 不思議に思い束は流出先を調べれば……そこは思いもよらない所だった。

 

「ブリタニア本国首都ペンドラゴンと砂漠の無人地域ねぇ……」

 

 擬装(ダミー)ではない、と束は考える。

 自身の力量に絶対の自信があるのもそうだが、この二つの場所へ流出させられた理由もある程度見当がついていたからだ。

 

「砂漠は恐らく大規模な実験施設、無人ってことにしておけばどんな非道なこともできる、そして、それを知る人物が本国にもいると言うこと、更にその人物はブリタニア皇族の懐に容易に間者を潜り込ませることができて、本国の首都にいてもおかしくない人物、……十中八九皇帝だよね」

 

 今まで得た情報を組み合わせ、その結論に落ち着く。

 

「まだ第一皇子とかの可能性もあるけど、ブリタニアが急速に領土拡大を始めたのは現皇帝になってからのはずだから、ほぼ間違いないと思う、なら突っつくとしたらそっちだよね」

 

 そうと決まれば、と束は早速ブリタニア本国へのクラッキングを開始する。

 世界最高峰のブリタニアであってもこの天災を阻むことはできず、直ぐにセキュリティを突破され、機密という機密を全て曝すこととなった。

 世に出ればブリタニアの支配力を揺るがしかねないそれらを適当に流し読みし、興味のないものには手をつけずそのまま放置、関係ありそうなのだけをリストアップする。

 

「……何これ?」

 

 その中でも特に重要に保護されたデータが目に留まる。

 ブリタニアでも皇族すらまともに閲覧出来るようにはなっておらず、一部の研究者と皇帝しか見ることができないそれを開くと……束は深いため息をついた。

 

「何処のどいつが考えたことか知らないけど、にしても――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても、これは酷いわね……」

 

 ショートヘアの女性、セシル・クルーミーが呟く。

 彼女の視線の先にあるのは彼女たち特派が製作していた試作型第七世代KMFランスロット、それが酷く破損した状態で格納されていた。

 頭部やコックピットこそ無事だが、機体の装甲のあちこちが凹み、右腕は肘から先が切り落とされている。

 自分達の持てる技術をすべて詰め込んだ最高峰とも言える機体が初戦でこの様な姿になってしまったことに言いようもない何かを感じているのだろう。

 

「ほんと、ブレイズ・ルミナスの上から叩き斬るなんてどういう構造なのか興味がつきないねぇ~」

 

 彼女の背後から白髪の男性、ロイド・アスプルンドがやって来る。

 

「ロイドさん! 会議は終わったのですか?」

 

「まあ、会議と言ってもほとんど罵倒と責任の押し付け合いでしかなかったけどね、結局は後任の方がいらっしゃるまで保留、ってことになったよ」

 

 そんなことより、と彼はランスロットに向き直る。

 

「映像から確認した限りだと、恐らく相手も第七世代以上のKMF、だけどランドスピナーやスラッシュハーケンがないことから見るに、そもそもの設計思想が異なるものなんだろうね」

 

「ですが仮に同じ第七世代だとしても、あの機体性能は異常です」

 

 彼女が思い返すのは撃破されたKMFから僅かながらも回収された敵性KMFの映像。

 近接武装一つで戦場を駆け、ものの数分で此方のKMFを十二機も撃破する戦闘力。

 同じことならランスロットでも可能ではある。実際にランスロットに乗った枢木スザクが同様の戦果を叩き出している。

 しかし、それでもランドスピナーを用いた高速移動にブレイズ・ルミナスと呼ばれるエナジーシールドで被弾を防ぐことくらいはしているし、何よりそのランスロットを()()()()()でここまで破壊したのもそのKMFである。

 

「たぶんスザク君並みのデバイサーが乗ってるって言うのもあるけど、この関節部に見えてる人工筋肉がその答えだね」

 

 ロイドは端末を覗きこんで該当箇所を示す。

 

「私も同じ考えですがそのような物であんな動きが可能なのですか?」

 

 セシルも同じようにそこまでは考えていた。

 医療用に人工筋肉を使用することもあるが、それをKMFに組み込むことなど前代未聞だったからだ。

 

「それがねぇ、理論だけなら何年も前に提唱されてたんだなぁ~これが」

 

 そう言って彼が取り出したのは一つの資料。

 論文にしても厚さにしてもそこまでのものはなく、実証データも何もないただの仮説止まりのそれをセシルに手渡す。

 

「マッスルフレーミング?」

 

「そ、合成樹脂と電動シェルの芯をサクラダイト合金繊維で覆った特殊な人工筋肉、それ自体が発電機の役割も併せ持つことによって高出力かつ長時間駆動を可能にするって計画だったんだけどねぇ、後少しで実験開始って時にアッシュフォード家が没落しちゃったもんだから仮説のまま終わっちゃったんだよね~」

 

 ガニメデのことといい運がなかったよね、と彼は付け加える。

 

「僕も一時期ランスロットに組み込めないかなって考えていた時期もあったけど、費用とか時間の関係で後回しにしてたんだよね……」

 

「それは一先ず置いておいて、……ロイドさんはあのKMFはアッシュフォードが製作したものと考えているのですか?」

 

「いや、それはないね」

 

 バッサリと否定する。

 

「提唱していたお抱えの科学者は五年くらい前に死んじゃってるし、何よりあまりにもセオリーを無視しすぎている、まるで素人か子供がKMFを造ったみたいにちぐはぐな感じがするんだよね、これ」

 

 食い入るように画面を注視するロイド。

 その瞳には科学者としての好奇心と、それを先に実現された事に対する僅かながらの悔しさが見て取れる。

 

「ではまさか、あれはテロリストたちが造ったものと言うことですか? それは」

 

「信じられない? 確かに未だにグラスゴーやその改造機を使ってる程度の技術力じゃこれは造れないよね、で・も、それ以外ならどう?」

 

「それ以外、ですか?」

 

「例えば今の今まで潜んでいた秘密組織がテストを兼ねて暴れまわったとか」

 

「ロイドさん……もしかしてからかってます?」

 

 思わず苦笑いを浮かべる彼女。

 それもそうだろう。あまりにも現実的ではない、それどころか何処かの陰謀論者の戯言か、子供向けのテレビ番組くらいでしか見ることのないレベルの仮説なんだから笑うしかない。

 

「いんや~、可能性の話ってだけ」

 

 そうニヤつきながら話す彼に呆れたのか、それとも言い返すだけ無駄だと思ったのか、セシルは話題を切り替える。

 

「ランスロットの修理は予備パーツを用いることで何とかなりそうですが、……スザク君の方はどうなりました?」

 

「先日現れたゼロって男の事もあって釈放されることになりそうかな、だから彼にはこのままデバイサーを続けてもらうことになるね、だからそれまでにこれを取り付けないとね」

 

 そう言ってロイドはとある資料を取り出す。

 

「ロイドさん、これって――」

 

「そ、マッスルフレーミングの実験データ、後回しにしてたとは言え材料とかある程度の目星はついてたからさ、この際完成させちゃおうと思って無理言って実験してもらってたんだ」 

 

 あの鎧のこともあるしこうでもしないとあれに対抗できなさそうだしね、と付け加える。

 

「でも大丈夫なんですか? このデータ通りだと確かに機体性能は向上すると思うのですが、操作が」

 

「そこはほら、初めてであれだけ乗りこなせたんだからこれくらい問題ないと思うよ、……じゃあ早速改良に取りかかろうか、マッスルフレーミングの方も近い内に届くって連絡もあったし、それまでに出来るとこは済ませとこう」

 

 そうして、彼ら特派の一日は過ぎていく。

 彼らの驚異的な技術力と張り切ったロイドの活躍により、次の総督、コーネリア・リ・ブリタニアが着任するまでにはランスロットの改良が終わっていたという。

 その出来映えにロイドは大変満足していたが、その目の下には深い隈が出来ていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 エリア11総督クロヴィス・ラ・ブリタニアの死去、下手人とされた枢木スザクの処刑、そして彼を救った謎の男ゼロの出現。

 エリア11は今混乱の真っ只中にあった。

 その混乱を引き起こした張本人であるゼロことルルーシュ・ランペルージ、本名ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアもまた混乱の最中にあった。

 彼はシンジュク事変の際、謎の女C.C.から目を合わせた相手に一度だけだがどのような命令でも必ず実行させる絶対遵守の力、ギアスを手に入れる。

 その後、彼はギアスと持ち前の知能で死線をくぐり抜け、実の兄であるクロヴィスを暗殺する。

 ここまではまだ良かった。容疑者に彼の親友である枢木スザクが挙げられ、また無実の罪で処刑されそうになる事態が発生するが、これも奇策とギアスで解決したのでまだ良い。

 だが、死んだと思っていた女がいつの間にか最愛の妹ナナリーと接触し、更には余計なことを吹き込もうとしたり、あまつさえ学園内を気ままに徘徊する始末。

 しかし、これもまぁ良い。彼なりにフォローはしたし致命的な事態にはならなかったのだから。

 彼にとって最悪だったのは、予想外の出来事(イレギュラー)がまだ終わらなかったということ、そしてそれこそが今後の彼の予定(プラン)の成否に関わるほどに凶悪な力を持った天災だったということだった。

 

「やぁ」

 

 自室に帰ると謎の女が増えているなんて誰が想像しよう。

 正確に言えば彼のベッドに腰掛け気軽そうにこちらに手を振っている何故かウサミミを身に付けた美少女がそこにいた。

 

「誰だお前は!!」

 

 当然、部屋の主であるルルーシュは彼女を問い詰める。

 無論、騒がれては不味いのは此方も同じなので扉が閉まったのを確認した上で。

 

「あれぇ、ちゃんと言わなかった? 後で話を聞かせてもらうって」

 

 それを聞き、彼は一つだけ該当する出来事を思い出す。

 白いKMFから自分を守った黒い鎧を纏ったKMF。

 確かにあれのパイロットの声は目の前の女のそれと似ている気がする。

 

「貴様、どうやってここを突き止めた」

 

 静かに見守っていたC.C.が問いかける。

 冷静そうに装ってはいるが、彼女もルルーシュに負けず劣らず内心は焦っているのには変わりない。

 

「突き止めるだけなら簡単だったよ」

 

 そう言ってタブレット端末を取り出してとある画像を見せつける。

 

「なに!?」

 

 それは紛れもなくルルーシュやC.C.、更には枢木スザクが写った画像。

 C.C.と初めて出合い、またスザクと再会したあの時の場面そのものであった。

 あの廃墟にそんな物が仕掛けられているとは露にも思わなかった彼は驚愕する。

 

「学生服が特徴的だったからね、後は適当にクラッキングして顔を確かめれば、それでおしまい♪」

 

 端末を持ったまま立ち上がり、彼へ近づく。

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、7年前に本国から日本へ人質として送られるも直ぐに戦争が再開、つまりは実の親から見捨てられた形になり、本国では死亡扱い、そして母親の縁からアッシュフォード家の庇護下に入り、姓をランペルージと偽り妹と共に一般ブリタニア人としてここに暮らしているってことで合ってるよね?」

 

 笑顔で彼へと問いかけるも返答はない。なくてもこれが正解だと確信している彼女にとってはどうでもいいことだが。

 

「で、約束通りあの時のあの場所で何があったか教えてくれるかな?」

 

 ずずいっとルルーシュに顔を近づける彼女。

 まるで全てを見透かすような赤紫色の瞳に怯みそうになるが、これはチャンスでもあった。

 

「そうか、知りたければ教えてやろう」

 

「ほんとに! やったーー!!」

 

 嬉しそうに万歳したり、くるくると回り出す彼女。

 そんな彼女の()()()()()()、ルルーシュはこう言った。

 

「そうだなお前は全てを話して、ここを去りその後に俺たちのことは忘れるがいい」

 

 誰にも把握されず、また証拠も残らないこの力、ギアス。

 いくら情報収集能力に優れていたとしても、生身である以上この力には逆らえない。

 C.C.も特に反対する理由もなく事態を見守る。

 彼女にとっても目の前のウサミミ女は邪魔者であり、ここで消えてくれるのなら止める理由もない。

 こうして謎の女は知りうる全てを話した上でここを去り、全ては解決する…………はずだった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、具体的に言えば好感度が足りないよ」

 

 そう当然のように断る彼女。

 だが、その行為にルルーシュとC.C.は驚きを隠せないでいた。

 

「(馬鹿な、ギアスは確かに掛かったはずだ、なのに何故何の効果も出ていない!?)」

 

 必死に思考を巡らす。

 何があったか、何故こいつにギアスが効かないのか、何か間違いがあったのか。ここ数日で自身で収集したギアスのデータを元に考え、一つの結論に至る。

 

「まさか」

 

「お? 分かっちゃった? 分かっちゃったかなー!」

 

 嬉しそうに懐から取り出したのは小さな円形の入れ物。

 そう、ちょうどコンタクトレンズを入れているような、小型の。

 

「……そう言うことか」

 

 遅れてC.C.も気づく。

 種明かしをすれば簡単なこと。

 ルルーシュのギアスは相手の瞳を直接見なければ発動しない。ガラス越しや鏡などの反射は有効であるが、サングラスや映像越しなどの場合には発動することはない。

 分かっていれば事前に対処できることであり、サングラスをかけるか最悪ルルーシュの目を見なければいい。

 彼女がしたのも同じこと。

 事前に瞳と同じ色の特殊なコンタクトを着用していたというだけ。

 だが、これはルルーシュにとって今が最悪に近い状態と言うことを示していた。

 

「ほんと、テロリストが蔓延してる地域にしてはここは平和ボケしてるよね~、どこを見ても間抜けな顔をした学生やブリタニア人ばっか、花壇の花が一輪増えてたり、廊下の電灯や教室の机がいくつか新しくなってたり、餌を運ばない働き蜂が数匹紛れ込んでたりしても全然気がつかないんだから」

 

 彼女の肩に一匹の蜂が肩に止まる。

 束がそれを摘まむと腹部が縦に割れ、そこからUSBメモリのコネクタ部分が露出する。

 

「(なるほど、こちらの情報は全て筒抜けということか……)」

 

 対策を用意できたのはルルーシュのギアスのことを知っていたからと言うことに他ならない。

 つまり、此方の手の内は全て知られている可能性が高い、いや、あの情報収集能力を考えるなら知らないことはないと考えたほうがいい。

 奇策謀略を得意とするルルーシュにとって、これ以上ないほどに最悪な状況だと言えた。

 

「貴様、何が狙いだ?」

 

「ふふ、さぁ? 当ててみれば?」

 

 C.C.の問いに問いで返す彼女。

 何を考えているのか理解できない。

 その笑みの下で一体何を考えているというのか、ルルーシュは必死に考えを巡らせる。

 

「(どうする、実力行使は得策ではない、ここまで来ておきながら手ぶらとは考えづらい、俺なら何らかの対抗策を用意した上で足を運ぶからな、……最悪爆発物を仕掛けられている可能性もある、考えろ何か策は――)」

 

 打開策を練ろうとして、ふと思った。

 どうしてこの女はルルーシュに接触などしたのか?

 ここまで追い詰めているなら接触するなんてマイナスでしかない。無駄なリスクを増やすだけの行為などする意味がない。

 

「(ここまで調べあげておいて何故何もしてこない? その気になれば待ち伏せなり、薬を盛るなり何でも出来たはずだ。それをしてこないと言うことはする気がない、または意味がないと言うこと、みる限りイレブンだからブリタニアの味方をする意味がないのは理解できないことはないが、それでもゼロ()を捕らえない理由にはならない、ならばこの行動に何の意味がある? こいつの狙いは何だ?)」

 

 解らない。目の前の女の考えが読めない。

 明らかに無意味なこの行為に何の意味がある?

 

「(まさか本当に話を聞きに来ただけ? それにしては手間を掛けすぎている、そもそもギアスのことを調べあげた時点で答えは得たようなものだ、それこそ聞きに来る意味がない、では次に考えられる彼女の狙いは何だ? 俺に接触する必要があり、それで尚且つ俺である必要があるもの、俺が持ちうる手札は何だ? 皇族、知能、ギアス、ゼロ、……いや待てよ)」

 

 ゼロ、と考えた所で何が引っ掛かる。

 そう言えば出会ったときこいつは何と言っていた?

 

「(聞き間違いでなければ()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っていた、ならこいつはブリタニアの敵と言うことになる、今までの言動や俺の現状等を考慮にいれた上で導きだされる答えは――)、成る程、そう言うことか」

 

 考えうる全てを計算し、得られた答えは単純な物だった。

 

「お? 答えが出たようだね、じゃ答え合わせといこうか」

 

 静かに見守っていた束も漸く話し出す。

 

「お前は終始圧倒的有利にいたにも関わらずこちらのアクションを待った、やや回りくどいとは思うが、それらが敵対行為ではなく()()()()()()()と考えれば納得がいく」

 

「ほう……」

 

 C.C.が興味深そうにルルーシュを見つめる。

 

「ギアスのことは取引材料になりえない、皇族の地位は既に意味がない、となれば残るは反ブリタニアとしてのゼロ()しかない」

 

 ルルーシュの答えを何も言わずに見守る束。

 ニコニコと笑みを浮かべているが、相変わらず何を考えているのか読み取ることはできない。

 

「お前の狙いが何かは解らないが、それは現状、特にブリタニア皇国が行っている何かが都合が悪い、それをなくしたいが単独勢力故に手が足りない、だからこそそこらのテロリスト(雑兵)ではなくまずは特異な力を持った俺に声をかけた、……違うか」

 

「ピポピポピポーン! だいせーかーい!!」

 

 パーン、と何処からか取り出したクラッカーを鳴らす彼女。

 

「いや~日本解放戦線も選択肢にはあったんだけどね、でもあそこむさ苦しいし、何より藤堂って人以外は殆んど有象無象の雑魚しかいないんだもの、拍子抜けだよね~」

 

 それに対して、と束は続ける。

 

「君は割といい線いってるよ、個人的な資質も申し分ないし、何より幾ら超自然的な力があるからって大衆や警備のど真ん中に身を曝すなんて真似はそこいらの人間には出来ない、綿密に練られた計画と覚悟があってこそできる芸当だよね、そんな君だからこそ、私は協力を申し出る気になったわけさ」

 

「では、具体的に俺は何に協力し、逆にお前は何を与えることができる?」

 

「束さん的にはもっと詳しいデータが欲しいんだよね、脳波とかバイタルとかそのギアスが人体にどの様な影響を与えるのか長期的にデータ収集するのが目的」

 

「……今まで集めた物では不足と言うことか?」

 

「私自分で集めたデータしか信用しないから、それで私は君に医療なり武力なり科学技術なり、できる限りの協力はするつもりだよ」

 

 医療、と聞いた所でルルーシュの右手人差し指が僅かに動いたのを束は見逃さなかった。

 

「まぁ、詳しい話は追々するとして、……どうする?」

 

 このどうする、とは聞くまでもなく協力関係になるか否かと言うことに他ならない。

 ルルーシュは考える。

 確かにこいつのKMFや情報収集能力は驚異的と言える。がしかし、だからと言ってそう易々と協力を確約して良いものか?

 ナンバーズ制度の崩壊とは、そのままブリタニアの崩壊に直結する。

 ブリタニアは既に属国無しでは存続出来ないほどに膨れ上がっており、それは国民も同じことが言える。

 ナンバーズが居なくなれば、その状態に慣れきってしまったブリタニア国民、特に貴族たちに今まで好き放題していたツケが回ってくるだろう。

 政治や生活が破綻した国は最早国とは呼ばない。

 目的だけ見れば俺の目的とも合致する。

 だが、それ以上にこの女の得体の知れなさはどうだ?

 少し前に一言二言話しただけの女を信用して良いものか? むしろ信用できる要素の方が少ないような気すらする。

 

「(いや、リスクを恐れては何も出来るわけがない)」

 

 ブリタニアの罠の線は既に消えた。

 こいつの言っていることが嘘偽りの可能性は低い。

 何よりこいつがブリタニアの敵と言うことは疑いようはない。

 この程度の不確定要素を御しきれないようでは大国を壊すなんて夢のまた夢。

 

「良いだろう、ブリタニアを倒すまで協力といこうじゃないか」

 

「うん、じゃあ宜しくね☆」

 

 こうして、人知れず二人の盟約は結ばれる。

 これが後の世にどれ程の影響を与えることになるのか、まだ誰も知ることはなかった。




描写外での動きまとめ
・オレンジ事件まではアニメ通り
・ジェレミア、粛正されかけるが強化ランスロット(未調整)に助けられる

次回はおそらくコーネリア戦
なお、プロットはまだアヤフヤな模様

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