天災兎は平和な世界でISを造りたいようです 作:ライかぐ推し
とりあえず、ここまでの話で私が書きたかった目標の一つは達成しました。
あとはこれをどうやってあの方のとこまで進めるのかが難しいですね。
「…………何これ」
赤い髪を尖らせるようなヘアスタイルの少女、表の顔はシュタットフェルト家の御令嬢としてアッシュフォード学園に通うブリタニア人と日本人のハーフ、紅月カレンが見たものは新たに与えられた驚くべきものであった。
つい先日まで少女ながらもテロリストとして活動し続け、KMFの操縦に至ってはチームの中で足元に及ぶものがいないほどに上達するなど並外れた才能を露わにしていた彼女だったが、その活動が実を結ぶことはなくこのまま一テロリストとして無意味に命を落とすのを待つだけかと思われた。しかし彼らに救いの手を差し伸べるものがいた。
それが先日のトウキョウゲットーにて彼らを指揮し、窮地を救った存在ゼロである。
仮面で顔を隠し、怪しげな衣装に身を包む彼を誰もが最初は不審に思ったが、彼と接しているうちに皆徐々にその手腕を認めることとなった。
特に先日のカワグチ湖の件もそうだ。
ブリタニア軍が完全包囲している中正面から堂々と侵入し、人質を全員救出した上に彼らに捕まることなく脱出させた、まさに奇跡としか言えないその結果に皆は納得するしかなかった。
彼ほど先導者としてふさわしい存在はいないと。
その事件から程なくして彼らは再び呼び出されることとなった。
「黒の騎士団専用のKMFが仕上がったから皆に受け取ってもらいたい」要約すればそんな話を彼らはゼロから伝えられた。
KMFは確かに彼らも所有してはいるが、それは時代遅れのKMFを拙い技術で修繕した出来損ないであり、とても兵器と呼べるような代物ではない。
彼らは喜んだが、当然そんな旨い話があるかと疑うものもいた。
半信半疑、言葉で表せばそのような心境で彼らは指定された場所へと向かう。
そこで彼らが目にしたのは、自分達の人数よりも多く用意された新品のKMFの数々であった。
古き日本の武者を彷彿とさせる鎧状の装甲、左腰に備わった日本刀らしき武装、そして右腰と背部に背負った三丁のマシンガン。
誰が見ても新品、それだけではなくブリタニア軍の主力KMFサザーランドにすら引けを取らないように思えた。
「えっと、あれとあれはもう用意したから、次は専用機開発……ん〜? やっぱこれ一機じゃ出力が足りないよね。二機くらい繋げないと厳しいか」
彼らが驚愕する中、奇妙な女が彼らの前を悠然と通り過ぎる。
見た目はカレンと同じ歳くらいの日本人の少女、頭にうさ耳をつけワンピース姿という格好でなければこの日本のどこにでもいそうな少女である。
唐突に右の奥、機体の影から出てきたかと思えばスタスタと彼らの前へ近づいてくる。
迷子か? と誰かが口にするが、彼女がゼロの関係者ではないと言う保証もない。
「お、おいちょっと待て、なんでガキがこんなところにいるんだよ!」
見た目からして迂闊そうな男、玉城真一郎が彼女へ声をかける。
しかし彼女はそれに気づくことなく通り過ぎ、近くにあった机に座り込むと端末に何やら入力し始めた。
「おい、無視すんなよな!」
無視されたのかそれとも気づかなかったのかはわからないが、無視されたと感じた玉城は彼女へ近づきその肩に乱暴に手を乗せようとした。
「あえ?」
その手が触れる直前、彼は奇妙な浮遊感に襲われた。
見れば自身が見ていた光景は椅子に座る少女ではなくこの施設の天井へと移り変わっている。
理解が追いつかず、脳内が疑問で埋め尽くされる玉城。
何が起こったのか、それは玉城を除く彼ら全てが目撃していた。
玉城の気性が荒いのはいつものことだが、見知らぬ少女にまでそう接するのはやりすぎだろうとこの集団のリーダーであった扇が止めようとした時だった。
彼の手が彼女に触れるその瞬間、作業をしていた彼女の左腕が玉城の腕を掴むと、そのまま後ろへ投げ飛ばしたのだ。
完全に腕の力だけで行われたその神技、もしかすれば合気道にも通じる何かがあったのかもしれないが、その心得がない彼らには理解はできない。
大人一人を片手で投げ飛ばす少女、もうすでに彼らの中では彼女は只者ではないと確信していた。
「…………ん? ああごめんごめん、来てたのに気がつかなかったよ。君たちが彼が言っていた組織の構成員たちだね」
作業がひと段落したのか、腕を組んで上に上げ背伸びをした彼女がこちらを見てそう言った。
「えっと、気づいてなかったのですか?」
「うんそうだよ。いやー私って集中すると周りが見えなくなるタイプだしさ。今も新兵器の構想を練ってたから忙しくてね」
「いえ、そっちじゃなくて、あれについてなのですけど」
代表して扇が話しかけるがどこか噛み合わない。
恐る恐る扇は指をさし、地面に転がっている玉城に視線を向けさせる。
「え、何あの人床に転がる趣味でもあるの?」
「いやいやいやいや、俺を投げ飛ばしたのはオメーだろうが!!」
驚き奇怪な目で玉城を見る彼女、ようやく自分が何をされたのか理解できた玉城は納得いかないと叫びながら起き上がる。
「あ〜君私に触れようとしたでしょ。だめだよ許可なく乙女に触れたら。特に集中している時なんかは無意識に投げちゃうし、最悪死ぬかもよ」
ケラケラと笑いながらそう告げる少女。
どうやら本当に投げた自覚がないらしい。
「長話もそこまでにして、いい加減このKMFについて彼らへ説明してくれないか。篠ノ之」
「ゼロ!?」
コツコツと足音を響かせて、基地の奥から怪しい男、ゼロが現れる。
はーいと軽く返事をして、彼女は彼らに向き直る。
「私の名前は篠ノ之束、稀代の
一部ニュアンスがおかしかったりするがそれを気づくものはいない。
「詳しい機体説明はそこにマニュアル作っておいたからそれを十分に読みこんでね。操縦に不安があるのなら格納庫端に設置してあるシミュレーターがあるからそれ使って、最大四人までできるから。以上何か質問は? ない? それじゃ私はこれで」
一人で勝手に喋り、そして勝手に去ろうとする彼女。
流石にそれで納得する人間は居らず、カレンが急ぎ話しかける。
「ちょ、ちょっとまちなさいよ! そんな一気に言われても全然理解でき」
「あ、忘れてた。これあげるね」
カレンの話を聞かずにどこかへ消えようとしていた彼女だったが唐突に何かを思い出すとポケットから赤いUSBメモリに近い構造の物体、特殊な装飾が施されたKMFの始動キーを取り出し、それをカレンへと投げ渡した。
「おっとっと……あの、これは?」
「呉羽じゃ君のスペックを活かせそうにないから専用機を用意しておいたよ。端のところにおいてある紅い機体がそうだから、がんばってね」
言われこの場所を隅々まで見渡すと悠然と並ぶ呉羽の奥に、異なる機体が二機あるのに気がついた。
一騎は呉羽の頭部をカラーチェンジした機体。カラーリングから見るに恐らくはゼロ専用機体だろう。
その対面に直立不動でたたずむ機体、赤と黒のツートンカラーの鎧に両肩についた大盾らしき物体、さらに両腰に設置された大型のスラッシュハーケンが特徴的なそれは、まるで彼女を待っているかのようにそこに佇んでいた。
「あの、あれは……てもういない!?」
視線を彼女に戻すが束の姿はなく、既に去った後のようだ。
「すまないな。彼女は腕は確かなのだが、性格に難があってな……本当にそこを除けば優秀な協力者なのだが」
「!? い、いえ! ゼロが謝ることはありません!」
呆然としているカレンにゼロが声をかける。
その言葉にはどこか同情のようなものが含まれていて、彼もあの少女に苦労をさせられているのだろうと察することができた。
「今日は一日このナイトメアに慣れる訓練にあてる。これをグラスゴーやサザーランドと同じと思うな。スペック上ではグロースターすら上回るじゃじゃ馬だ。地下の演習場で十分に試乗を終えたのならば明日に備えて今日は解散していい。明日からは黒の騎士団としての活動を本格化していく予定だからな」
その宣告に、その場にいたもの全員から歓声が上がる。
悪きブリタニアの者どもに虐げられた自分たちが鉄槌を下せる日が来たのだと喜んでいるのだろう。
その後、去りゆく彼の姿を見送り、彼女は用意された機体の前に立つ。
そこには段ボールの上に丁寧に畳まれた新品のパイロットスーツと【
「紅葉か……まあ、見た目に反して可愛い名前ね」
これもあの女の趣味なのかしら、と呟きつつ、カレンは説明書に目を通す。
所々妙な単語が載ってはいるが、読めないことはない。
読めないことはない、のだが……。
「何、これ…………」
そこにはこの機体に秘められた驚くべき性能がありありと記されていたのだった。
アッシュフォード学園。その校内にて談笑する二人の姿があった。
ただし、一人は楽しげに話すのに対し、もう一人はそれを受けて苦笑するばかりであるが。
「でねールルーシュ! 次の学園祭はもっとこうパーッと派手にいきたいわけよ!!」
「はいはい、会長の思いつきはいつものことですけど、常識的な範囲にとどめてくださいね……」
アッシュフォード学園生徒会長にして理事長の孫娘、ミレイ・アッシュフォードと生徒会副会長ルルーシュ・ランペルージである。
彼らの話題は今度の学園祭のことなのであるが、当のルルーシュの脳内では別のプランが組み立てられていた。
「(ディートハルトからの情報によればナリタ連山にて大規模な掃討作戦が開始されるらしい、詳細は不明だがこれは篠ノ之に情報を集めさせれば解決する。だが、そうなると肝心のナナリーの手術の日程が遅れることになる……いや、そこまであいつを信用しているわけではないが、与えられた情報を冷静に分析すると目はともかく足は治る確率が高い。ただし、それは篠ノ之自身が手術を行なった場合に限る。今までどの医者を頼っても無理だったナナリーの足が治るのは喜ばしいことだが、本当に頼っていいのか? あんな奇人変人をそのまま実体化させたような不審者に? しかし現状打つ手がないのもまた事実。彼女が過去に行なった手術の患者も確認が取れたことから嘘ではないのは確か。だがしかし、それでもアレを信用すると言うのは……)」
今彼の脳内は今後の作戦プランとナナリーの手術のことが大半を占めていた。
今までどの医者を頼っても治らないと宣告され続けた彼女の足が治るという言葉に嘘はないことは彼もわかってはいた。わかってはいたのだが、いかんせんその言動がはちゃめちゃなあの女のことをどこまで信用すればいいのか決めかねていたのだ。
彼女の言動に嘘はない。それは短い付き合いであるが聡い彼にはすぐに理解できた。
ただ茶化すし、ふざけるし、言動はうるさいし、何より気軽に現代科学を超越するような発明品をポンポンと出してくる。
この前渡されたナイトメアもまた彼が頭を悩ませる要因でもあった。
確かに戦力は必要だ。いつまでも旧式のKMFではブリタニアに立ち向かうことなどできはしない。
それを1人愚痴っていたら、三日後にはアレらが用意されていた。
性能はサザーランドどころかグロースターですら問題ない高性能の機体を人数分+予備機までも用意されていたのだ。
それをどこから集めて来たかと問えば、そこらに転がってるスクラップとか原材料を盗んだりした、だそうだ。
あり得ない。言動もそうだがもたらしてくる成果すらも色々な意味であり得ない。
心因性の頭痛に襲われた彼はとりあえずそこまで話したところで他の騎士団員を呼び出した。
早いうちにこの機体に慣れた方がいいと思ったからだ。
だが、これが意外と難しいと言わざるを得なかった。
何せ今までのポンコツナイトメアとも違う本物の高性能KMF。少しレバーを倒しただけでも急加速したり、壁にぶつかったりする者が後を絶たなかった。
初搭乗から三十分でこれらを乗りこなせたのはルルーシュとカレンのみであり、後の者がこれを乗りこなすのにさらに数時間を要したという。
閑話休題。
ともかく、齎される成果は間違いなく本物なのであるが、その行動など諸々が邪魔をして彼は彼女を信じきれずにいるのだ。
「あれ?」
「どうかしましたか会長?」
適当に話を合わせていたルルーシュは、会長の驚いた声に彼女が見つめている先へと視線を動かす。
「あれは……人?」
そこには、この距離でもわかるくらいに美しい銀髪を持った青年が、倒れていたのだった。
2025年12月30日8時03分、誤字修正
・KMF 呉羽
束がスクラップになったナイトメアや軍から盗み出した材料で作り上げた第五世代相当のKMF
武装は三丁実弾が入ったマシンガン、左腰の特殊実体剣、両腕とコックピット付近に設置されたスラッシュハーケン。
この機体は量産機として設計されているため、黒桜と違いランドスピナーやスラッシュハーケンなどの基本機能は搭載されている。
性能で言うならば月下クラス。
また全身の装甲はその軽さとは裏腹に強固なものであり、サザーランドのマシンガンでは傷一つつかないと言う。
・KMF 紅葉
束が一から作ったナイトメア。
両肩の可変式大盾『紅棺』、手に特殊スラッシュハーケン、胸部にスラッシュハーケンを装備。
右腰にマシンガン、左腰に日本刀型武装『紅閻魔』を装備。
鎧の下にはマッスルフレーミングが隠されている。
こちらも同じように他のナイトメアと基本装備は同じ。
性能は紅蓮滑翔式〜神虎クラス。明らかに時代にあってない。登場するのが一年以上早い。
だけど搭乗者に配慮してる分黒桜よりまし。
ちょっと事情があってこちらのハンドルネームは変えられないので、一応URLを置いておいます
https://syosetu.org/user/44773/
たくさんの感謝の言葉、かなり嬉しいものですね。
今後の更新スピードは流石に遅れますが、完結はさせる予定なのでよければ読んでいってください