「返してよ! 僕のポケモン、返してよ!」
「うるさい! ギンガ団の壮大なる目的のためだ!!」
「――――――――――――――――――――――――――――――!!」
「引き揚げろ! ポケモンはすべて奪ったぞ! もう用はない!」
5年前、それは一瞬の出来事のようだった。
故郷のフタバタウンに突然として謎の集団、「ギンガ団」が現れ、それまでの平和な暮らしは消え去った。
ポケモンを奪われ、酷いところでは家に火をつけられたところもあった。
少年、鏡夜ランはその事件ですべてを失った。元々孤児だった彼はフタバタウンで拾われ、そこを故郷だと思っていた。
この事件で行方不明となった義父に貰ったポケモン、コロトックとルクシオを奪われた。
呆然と立ち尽くし、何もしたくなくなった。ギンガ団に家を燃やされ、思い出ごとすべてをギンガ団に奪われた彼は虚無の如き三年間を送った。
しかし、彼は既に相棒のコロトックとルクシオはいない。
代わりに、彼の肩にはチルタリスが乗っている。
その話は一週間ほど前、深夜の空気を吸っていると、横から声が聞こえてきた。振り向くと、そこには幽霊のようにぼやけた少年が佇んでいた。
「君に……このポケモンを、貰ってほしいんだ。僕は……もう死んでいるから。ポケモンを貰ってくれないかな……?」
そう言って差し出してきたのは一つのモンスターボール。中にいるのはチルタリスだ。ランはこの幽霊の少年にポケモン以外にも何かを貰ったようで、それまでの暗い顔から決意を決めた表情へと変わり、力強くそのモンスターボールを受け取った。
「ありがとう……約束だよ、大事にしてね……」
「ああ、必ず、大事にするから、ありがとう」
力強く握手をした次の瞬間、幽霊の少年は姿を消した。確かにあった手の感覚も消え、ランの手にはモンスターボールが握られていた。
「……チルタリス、僕と来てくれるかな?」
小さく呟いてモンスターボールからチルタリスを出した。逃げるようなことはなく、少し羽を伸ばした後ランの差し出した腕にゆっくりととまった。
「よろしく、チルタリス」
軽く頭を撫でて少しフタバタウンをうろついた後、家の焼け跡を見て、シンジ湖を見て、故郷の景色を目に焼き付けていた。
次の日、支度を整えてフタバタウンを出ようとすると、八重春に呼ばれた。
この青年、八重春シンもギンガ団に大切なポケモンを奪われた被害者の一人。しかし、彼は一匹だけポケモンを奪われずに済んだ。
それが彼の相棒、ゴウカザル。
「俺も行く! 道は別々だけどよ、目的は一緒だからさ、旅ってのは一人でするもんだぜ?」
「……シン」
「なに?」
呼んだのはランだが、言葉が詰まったように出てこない。首をかしげるシンにようやく言葉を返せた。
「……悪い、助けてもらったようだな」
「気にすんなよ? さあ、行こうぜ!」
「ああ! 俺たちの目的は、一つ!」
「絶対に取り返してやるからな! 待ってろ、コロトック、ルクシオ!」
幼馴染の彼らは二人同時に未知の世界へと入り込み、戦いに身を投じることになる。
だが、現実はある程度以上に優しくはなかった。
ランの方ではルクシオを取り返したが、ギンガ団が壊滅しても尚コロトックは戻ってこない。少々荒っぽい手段を用いてもコロトックの居場所は全く掴めなかった。
シンの方も、二匹奪われたポケモンの内の一匹のカビゴンは取り返したが、もう一体、チャーレムはギンガ団の中にいるということすらわからなかった。
ギンガ団を壊滅させ、ボスであるアカギが失踪したので、これ以上は不可能と思った彼らは、未練が残るもののランもシンもポケモンの捜索を断念した。
その後二年間、二人はフタバタウンで過ごした。
だが、二人は奇妙な噂を耳にする。
「ギンガ団が復活した」
真相を確かめるべく彼らは再び闘いの日々に身を投じる―――――。