ポケットモンスター 天空の誓い    作:轟 水龍

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もう……力尽きそうです。


12話目 ~仲間との戦い~

「チルタリス……、いや、ダメだ! よけろ! コロトック、“かげぶんしん”!」

 

チルタリスが、レントラーのほのおのきばをかわし、天井の傍に移動した。一方コロトックは素早く動いて、ヘラクロスの狙いを外している。

 

「マリルリ、“アクアリング”だ!」

 

「ピクシー、“おまじない”!」

 

襲ってきているポケモンは元はランやシンのポケモン。ランやヒカリは当然、ハクも防戦に徹していた。

 

しかし、そんなことではジリ貧だ。いずれはどうにかしなければならない。だが、自分のポケモンを傷つけることはやはり躊躇われる。

 

迷いつつも、ランはひたすらヘラクロスのインファイトをかわし続けているコロトックに目をやり、

 

「コロトック、“みねうち”!」

 

初めて、攻撃をするように命令した。もし、5年前から技が変わっていないならば、みねうちを覚えているはずである。

 

「……? ッ! コロトック!」

 

どうするべきなのか分からなくなってしまったのだろうか、コロトックの動きが止まる。その瞬間、ヘラクロスの拳が顔面にぶち当たり、吹き飛んで倒れた。

 

「仕方ない……ハク! 撤退するぞ!」

 

「本気!? 逃げると言ってもどうするの? ここに来たってことは空を飛べるポケモンが隠れているはずだよ!」

 

「振り切る! 出るぞ……うぐあっ!!」

 

部屋の扉を開けた瞬間、ランの身体が吹き飛んだ。ランを吹き飛ばして部屋に突っ込んできたのはムクホーク。シンのポケモンだ。

 

「ラン君!」

 

おそらくブレイブバード。ランの口から血が吐き出される。チルタリスがランの前に移動し、赤い眼のムクホークをキッ、と睨んでいる。

 

「グルアアアァァァァァ!!」

 

レントラーがランを狙っている。杖が扉側に落ちているので、立つことができない。現状、ヒカリとハクも手一杯で、杖を取る余裕は無い。

 

「うあああああああああああああああああああっ!!」

 

「ラン! レントラー、やめて!」

 

ムクホークに気を取られて、ランの位置ががら空きになった。その瞬間にレントラーの足の爪がランを引き裂く。

 

「ッ!? ぐぅっ!?」

 

レントラーが離れた瞬間、ランの身体が痙攣をおこし、気を失った。離れた場所ではサーナイトがサイコキネシスを放っている。

 

「サーナイト……。ランのことが分からないの!? ねぇ!」

 

ヒカリが呼びかけるも、サーナイトは反応しない。レントラーも、ムクホークも、ヘラクロスも、反応しない。いずれも共通の状態は赤く光る眼。

 

「フハハハハ、良い眺めだ。自分たちのポケモンに裏切られる感覚はどうかね?」

 

「サターン! お前、何でここにいるんだ! このポケモン達に何をした!!」

 

サターンの嘲笑、怒鳴りつけるハク。ヒカリもサターンを睨んでいるが、すぐに視線を外してランの元へ行く。

 

「ラン、大丈夫? スズナやスモモはどこに……?」

 

「ジムリーダー達は……鏡夜ランのポケモンに甚振られているんじゃないか?」

 

「!?」

 

ランとヒカリの表情が驚愕に包まれる。そう言えば、耳を澄ましてみると、下からディアルガの咆哮が聞こえてくる。

 

下では、スモモ、右京、スズナの3人がディアルガと戦っていた。

 

「キノガッサ、“スカイアッパー”です!」

 

「ライボルト、“スパーク”!」

 

「マンムー、“ゆきなだれ”!」

 

「ディアルガ、“ときのほうこう”!」

 

ディアルガの周りに光が集まる。マンムーが雪の塊をぶつけ、ライボルトが雷を纏ってぶち当たり、キノガッサがアッパーカットを決めたが、ダメージにならない。

 

その直後、重力が捻じ曲げられるほどの力が解放され、スズナたちに襲いかかった。

 

悲鳴も出ない。ポケモンは一発で戦闘不能になり、自分自身も吹き飛んで壁にぶち当たり、身体が動かない。

 

力は上にも行った。鉄筋コンクリートがやられたのだろうか、天井が崩れそうになっている。

 

「!? ディアルガ、撤退するぞ!」

 

「待ちなさい! プルート!!」

 

右京が叫ぶ。しかし、行って待ってくれるはずもないが、叫ばないと気が済まない。

 

「……! ウインディ、“しんそく”!」

 

「ディアルガ、“はどうだん”」

 

ウインディが消える。ディアルガの額には波動が固まっているが、狙いが定まらない。

 

「グギャウ!?」

 

ディアルガに一撃を与えた、そう思った瞬間には、既にウインディは右京の傍に倒れていた。圧倒的な速度、右京の目には捕らえられない。瞬きを一回したときには自分の傍でウインディが倒れていた。

 

プルートはディアルガにまたがって、どこかへ飛び去っていってしまった。右京の怒号だけが雪の吹きすさぶ空に響く。

 

一方上階、こっちでもサターンが撤退を始めた。

 

「おい、何するつもりだ……」

 

「貴様のポケモンはもう戦えんだろう。そこの女も、美月ハクも、ぼろぼろになっている。何故、美月ハクが生きているのかは分からんがな」

 

「は……?」

 

「いずれ分かる。……ノモセのギンガ団アジトに来い! そこですべてを終わらせる」

 

「待てよ! おい、どういう意味だ! サターン!!」

 

ぶち破った窓からサターンが出ていく。自分の洗脳されたポケモンは一匹も取り戻せなかった。どうしてもダメージを与えることができなかった。故にチルタリスとコロトック、チャーレムにダメージが蓄積し、ダウン寸前になっている。

 

ヒカリとハクのポケモンへのダメージも大きい。ポケモンセンターは復帰しているので、一日預けた方が良いだろう。

 

「サターンの野郎……何を知っているんだ……? 何故、ハクが生きているのか分からない……? どういうことだ」

 

「ハクは……何か知っているの?」

 

「僕は……ううん、僕は全部知っている……。君のポケモンがどうなっているか、ギンガ団の計画、全部知っている……。この間のギンガ爆弾は旧型だよ。本命はコトブキシティに落とすつもりだ。あれは止められない。……急ごう。明日、朝にノモセシティへ」

 

「わかった。とりあえず今は睡眠を取ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、深夜の2時くらい。美月ハクは偶然にも目を覚ました。明かりが落とされ、暗い病室。幸いにもハクはある程度暗いところでも目が見えるので、何かにぶつからないように移動できる。

外の空気を吸いに部屋を出ようとしたとき、偶然ランが寝ているベッドに目が行った。

 

「……?」

 

視力が落ちたのだろうか。ランの姿が見えない。目を擦ってもう一回よく見てみる。

 

やはりいない。

 

ベッドをつついてみる。

 

返ってきた感触はベッドのもの。

 

背中に冷たい汗が流れ落ち、ゾクッと震える。ヒカリが寝ているベッドに目をやる。

 

「……ラン君? ヒカリちゃん、起きて! ラン君がいない……!」

 

「え……! ウソ、どこ行ったの! 外!?」

 

飛び起きたヒカリとランを探すが、見つからない。杖もないので、自分でどこかに行ったのは間違いない。ハクの脳裏には一つの考えが浮かんでいた。

 

決して、あってはならない答え、

 

「まさか、ギンガ団のアジトに一人で乗り込んでいったの……? ラン君……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ランは一人、ノモセシティにいた。頑丈な扉の前で立っている。その周りにはギンガ団の下っ端だろうか、同じ服を着た怪しい人間が10名ほど倒れている。

 

もし最後までやり遂げられないなら死ぬ覚悟はある。ヒカリとは付き合い始めたばかりだし、ハクと再会したばかりだが、これ以上の人生を運命が拒否するなら抗わない。そう決めて二人には黙って来たのだ。

 

全ての感情を捨て、殺気を放っている。傍で飛んでいるのはチルタリス。チャーレムとコロトックもいる。そして、ランの右手にはピストルがある。その銃口からはわずかに煙が上がっていて、それが何をしたかを教えている。

 

「コロトック、“シザークロス”」

 

コロトックの鎌のような腕が振られる。その数秒後、銃弾も通さない頑丈な扉が切り崩され、倒れた。崩れた扉を踏み越え、階段を降りる。

 

階段をおり終わった瞬間、いきなりギンガ団員がうろついていた。寝ぼけていたのか、気づいた瞬間は訳が分からずに呆然としていた。杖のせいで狙いが外れやすいランにとって、これは千歳一遇のチャンス。

 

ピストルで頭を撃ち抜き、悲鳴も上げさせずに殺す。脳みそがぶちまけられ、血の臭いが漂う。鼻をつんざくような臭いだが、ランは眉一つ動かさずに先へ進む。

ランの右手の人差し指が動く。それとほぼ同時に人間の悲鳴が一瞬だけ聞こえ、ドサッ、という音が聞こえ、血の臭いが鼻に突き刺さってくる。

 

冷たいランの瞳。何か、全てを諦めたような、無慈悲な眼差しを死体に送る。しかし、時間的余裕は無い。ランの体調は今も悪化の一途を辿っているのだ。息は上がっているし、冷たい汗が流れて止まらない。

 

「はぁ……はぁ……くっ……まだだ。まだ、倒れるわけにはいかない……」

 

カッ、カッと杖を突く音が硬い廊下に響く。この階にいる人間は全員殺したのだろうか。ピストルの弾のストックはまだある。

 

階段を見つけたので、迷わず降りる。ハクに聞いた限り、この建物は地下に進んでいて、地下4階まであるらしい。

 

アジとのサイズが小さいのは事務的に物は全部別の場所で行っているからだそうだ。

 

降りた瞬間、いきなり3人のギンガ団員と出くわした。驚きで身体が硬直している。

 

「なっ、鏡夜ラン!?」

 

ランがピストルを発砲する。チルタリスがりゅうのはどうを撃ち、チャーレムがかみなりパンチを顔面にお見舞いして、3人のギンガ団員を全滅させた。

 

「!!?」

 

突然、フロアに警報が鳴り響く。階段から多数の足音が届いてくる。上からも下からも足音が聞こえてくるが、ランの表情はまだ崩れていない。

 

ランの右手にはピストル。このフロアは廊下なので、狭い。一度に通れるのは多くて4人というところだろう。そこをポケモンと銃で仕留めれば問題ない。チルタリスのりゅうのはどうは範囲が広いので、上手くやれば二人倒せる。

 

「そこだな! 鏡夜ラン!」

 

「やれ! 遠慮するな、ぶっ殺せ!!」

 

ランがピストルを撃ち、チルタリスがりゅうのはどうを撃ち、接近してくるギンガ団員をコロトックとチャーレムが薙ぎ払う。

 

「チッ……埒が明かねぇ」

 

銃撃戦と化しているこの状況、チルタリスのれいとうビームによる壁で銃弾を凌いでいる状態だ。ランが取り出した物は手榴弾。すぐさま安全ピンを引き抜いて10~20人が固まっているところへ投げつける。

 

「耳を塞げ!」

 

直後、大きな爆発音がし、衝撃がこっちまで伝わってくる。だが、それだけの反動なだけはある。投げた方向のギンガ団員は全員動かなくなった。

 

ランが投げた方向は進行方向。邪魔がいなくなったので、氷の壁をさらに厚くして先へ進む。

 

おそらくだが、今の場所は地下3階。明らかに違う場所に出た。研究室のような感じだ。その奥には見慣れた顔の奴が二人。それと、ランに薬を渡した医者。その視界の先には緑色の液体が溜まっている水槽があり、その中に入っているポケモンは―――――――!

 

「テメェ! 俺のポケモンに何してやがる!!」

 

ランの怒号、それに対して幹部、サターンの表情は余裕で満ち溢れている。

 

「ここまで来たか、鏡夜ラン。まさか夜襲をかけてくるとはな。想像もしなかった。……さて、最後の戦いを始めようではないか。そして、今日が貴様の命日だ」

 

「せいぜい吠えてろ……。それとも肉片にされるのが望みか?」

 

「フン……肉片と化すのはどちらかな。でてこい、ドラピオン!」

 

「チルタリス、“れいとうビーム”!」

 

チルタリスの口から真っ白のビームが発射される。ドラピオンはこれをかわし、それと同時に一気に接近した。

 

「“クロスポイズン”!」

 

「かわせっ!!」

 

ドラピオンの必殺の一撃も空振りに終わる。次に視界をチルタリスに移した時、チルタリスの口には紫色の波動が放たれていた。

 

かわす余裕などない。りゅうのはどうがドラピオンにぶち当たり、地面に崩れ落ちる。

 

サターンが舌打ちをして、ドラピオンを元に戻した。次に取り出したモンスターボールの中に入っているのは、

 

「覚えているだろう。貴様の行動はさすがに予想外だった。今度はそんな余裕を与えんぞ、スピアー!」

 

無論、覚えている。ダブルニードルからのすてみタックルを瀕死のチルタリスにやられた、それを自分が受けようとしたのだ。忘れるはずがない。

 

「殺せ。“ミサイルばり”!!」

 

「“りゅうのはどう”!」

 

スピアーの両腕から鋭く、巨大な針が次々とチルタリスに向けて放たれる。対するチルタリスはりゅうのはどうでこれを撃ち落としている。

 

優勢なのはチルタリス。ミサイルばりの勢いにりゅうのはどうが勝っている。少しづつではあるが、チルタリスの攻撃がスピア―に迫ってきている。

 

「く……」

 

サターンの手には新たなモンスターボール。すでに交替も視野に入れているようだ。

 

「ドクロッグ! チルタリスを倒せ!! “どくづき”だ!」

 

「ダブルってか? いい度胸してやがるな。……なら、こっちだってやらせてもらうぜ、チャーレム、“ほのおのパンチ”!」

 

ジャンプしてチルタリスに拳を叩き付けようとするドクロッグが撃ち落とされた。その直後に床に下りたのはチャーレム。

 

ドクロッグにジャンプ力で勝ち、顔面にほのおのパンチをお見舞いしたのだ。とくせい、かんそうはだは炎に弱い傾向がある。このドクロッグとて例外ではない。一発で戦闘不能になり、床に崩れ落ちる。

 

さらに、その間にりゅうのはどうがスピア―を襲い、スピアーをも戦闘不能にさせた。だが、サターンの表情はまだわずかに揺らいだ程度。

 

「く、貴様も強くなっているようだな……。出てこい、ドクケイル、アーボック!」

 

「コロトック、“つじぎり”! チャーレム、“ほのおのパンチ”!」

 

「アーボック、“ヘドロばくだん”! ドクケイル、“むしのさざめき”!」

 

アーボックがヘドロの塊を投げるも、コロトックは既にすぐそばまでせまっていて、ドクケイルのむしのさざめきもあまり効いていない。

 

「やれ!!」

 

「アーボック、かみくだ……」

 

サターンが慌てて命令を出すが、その時にはコロトックの鎌のような腕がアーボックを斬り裂いていた。直後、ほのおのパンチがドクケイルをぶっとばしていた。

 

サターンの表情は明らかに狼狽している。自分のポケモンは全滅、相手は3匹。既に差がついていることは明確だった。

 

「フン、サターンも使えんわ。……鏡夜ラン、貴様は自分の仲間に殺され、絶望を味わうだろう……。出てこい、ディアルガ、パルキア! 貴様らも出てこい! 鏡夜ラン、八重春シンの者共!!」

 

プルートがポケモンを呼び出す。出てきたのはディアルガ、パルキア、レントラー、サーナイト、ブラッキー、アブソル、ゴウカザル、ムクホーク、ヘラクロス、カビゴン、フローゼル、ロズレイドの12匹。それに対し、こっちは3匹。しかも、操られているだけの仲間。攻撃などとてもできない。

 

「チャーレムとチルタリスはかわし続けてくれ! コロトック、“かげぶんしん”!」

 

「ほう、守りに入るか。自分のポケモンを傷つけたくない、愚かなものよ。こいつらは貴様のことなど忘れておる。それでも戦えぬか」

 

「当たり前だろ……。テメェが死ねば、それで終わりだ!」

 

ランの右手が動き、ピストルがプルートに突きつけられる。プルートがにやりと笑う。

 

「撃ってみるがいい」

 

ランの人差し指が引き金を引く。それと同時、実際にはその直後だが、ランの感覚ではわからない。

 

「!? 防弾ガラス……」

 

「その程度の準備位しとるわ。貴様が銃を持っていると報告が入ったからだがな。……まぁいい。パルキア、“あくうせつだん”!」

 

空間がねじ曲がり、立っていられなくなる。杖を突いているランにとっては尚更だ。直後、何かが弾け、視界が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

……生きている。それだけも十分儲けものだ。ランは鋼鉄の扉に身体を打ちつけ、ポケモン達はその周りに倒れている。

 

「ほう、生きているか。ふむ、ポケモン共も意識があるのか。頑丈な奴らだ」

 

ランの額から流れているのは赤い鮮血。杖を突くのも苦しそうなほどで、何度か倒れそうになっている。

 

「……ああ、ダメだな。諦めるよ。アイツら(俺達の仲間)には勝てねぇ。だからな、テメェら全員道連れだ」

 

サターンとプルートには分からない。意識が途切れかかっている状態で立っているランは自分の命が長くないことくらい自覚している。

 

息を一つ、大きく吸って言葉を吐き出した。

 

「コロトック、チルタリス。“ほろびのうた”」

 

チルタリスの口から滅びの歌が流れ、コロトックの腕から滅びの戦慄が奏でられる。

 

聴いたものすべてを滅ぼす歌を。

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