ポケットモンスター 天空の誓い    作:轟 水龍

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ようやく更新です。そういえば昨日初めて知ったんですけどブラッキーってリフレクター覚えないんですね。レジロックががんせきほうを覚えるのも怪しい……。

ま、大体の記憶だけで書いているのでこうなるんですが。

始まりまーす。


6話目 ~想い~

「ラン……」

 

病院の中、ランが寝ているベッドの前でヒカリが涙を浮かべている。

 

あの時、レジアイスのでんじほうをまともに受けた後、シロナが病院へ運んでくれた。ヒカリはわりと早く目を覚まし、その日の間にシンも起きたが、三日経った今、ランだけが起きる気配を見せない。

 

「ラン、何でっ……どうしてあんな無茶をしたの……?」

 

ベッドの中の青年は答えない。固く閉じられている瞳からは目を覚ます気配はないことが窺える。ポケモンの10万ボルトでさえ死ぬ人間はいる。でんじほうはそれを大きく上回る電流、電圧が流れている。ランの身体は滅茶苦茶に破壊され、医師からも目を覚ます確証はない、と伝えられた。

 

沈黙に包まれた部屋で、ランの苦しそうな呼吸だけが部屋に響いては消える。それ以外の何もない。

 

傍らではサーナイトが心配そうにランを見つめている。思念波で考えていることを読み取ろうとしていたが、全く読み取れなかったのか、今は断念している。

 

この状態が続くと、ヒカリは自分がどうにかなってしまいそうで不安だった。心配で、胸が張り裂けそうになって、なのに、彼のベッドの傍で泣いていることしかできない。

 

「なんで守られてばっかりなのよ……。私だってたまにはランを助けないといけないのに……」

 

《それはお門違いですよ》

 

「サーナイト……どうして? 現に私は……」

 

サーナイトが思念波をヒカリに送った。だが、意味が分からない。お門違い? ヒカリの言っていることは事実のはずだ。

 

《御主人様は貴女様を守れたことに満足されてますし、貴女様は常に御主人様の心の支えになっておられますので。いろいろな言葉で隠しておられますが、私みたいな者には最終的な思考はだだ漏れなんです。御主人様は、貴女様のことが好きなんですよ》

 

「えっ……。ほ、本当?」

 

かああっ、と顔を赤くしてランを見つめる。だけど、目を合わせられない。それを見たサーナイトがクスリと笑って、

 

《ですがね、宣戦布告です。御主人様は渡しませんから!》

 

ヒカリにビシッと指をさして宣戦布告と言いだした。それにヒカリは仰天し、

 

「なっ……何言ってるのよ! アンタになんて絶対に……」

 

《ふふっ、冗談ですよ……。あながち嘘ではないですがね。まあ、御主人様をこんな目に遭わせたあの男は赦しちゃ……いや、生かしちゃおきませんがね》

 

冗談でよかった。本当によかった。こんなところでライバルが増えるなんてたまったものではない。サターンに対してはぶっ殺す、と怒りに震えてる。あながち嘘ではない……つまり、サーナイトもランのことが好き?

 

「サーナイト、アンタはやっぱりランが好きなの?」

 

《いえいえ、敵わないこと位自覚しておりますし、貴女様の恋路を邪魔するつもりもありませんので。楽しく傍観させていただきます》

 

意地悪。ヒカリはそれだけ言って再び黙りこくった。両手でランの右手を優しく包み込んでいる。

 

「ラン……絶対に生きてよ。死んだら承知しないわよ」

 

ヒカリの小さく、無理矢理に約束させるような声が静かな病室に響いて消える。

 

返事はない。意識は完全に飛んでいて命の危険もある。だが、ヒカリとサーナイトに今できることはランを見守ることだけ。

 

「サーナイト……ちょっと席を外してくれる?」

 

ヒカリが、小さい声でサーナイトに告げる。一瞬迷うのと疑うような仕草を見せたが、それでも部屋を出て行った。

 

病室にはヒカリとランだけが残っている。暫くの間ヒカリはランを見つめ、それからごくりとつばを飲み込んで、覚悟に近いものを決めたように、

 

(ありがとう、ラン。ずっと、好きだよ……)

 

自分の唇をランの唇にそっと、優しく重ねた。数秒間、そのままでいて、それからゆっくりと唇を離した。

 

尤も、それでランの意識が戻るわけではない。だが、おとぎ話のように口づけで意識が戻る、みたいなことを期待していたのも事実かもしれない。

 

「ま、そんないい話は無いか。でも、ラン……。早く起きてね。みんな貴方を待ってるんだから」

 

ランが寝ているベッドに腰掛けて、手を両手で包み込む。その後、どうやら寝てしまったらしい。起きたときには部屋の中にシンもいたしサーナイトもいた。

 

だけど何故か顔は赤くならない。と思う。ランの横で寝ていたのはそれはそれでいいし、キスを見られなかったからいいか。と結論付けて起き上がる。

 

《よく眠れましたか?》

 

「うん。……そうだ、私が寝ちゃってた間に何かあった?」

 

「いや、何もない。……むしろ、なさすぎて怖いくらいだ。なんか、でかい作戦を整えているのかも」

 

壁にもたれて腕組みをしているシンは考えを巡らせているが、いっこうに思いつかない。ヒカリも考えてみるが、参考になるところが動かないので、思いつきようがない。

 

静かな時間が流れていく。無駄な時間とも言う。

 

そのころ、ラン達とは別行動をしているジュピターはマーズと合流してギンガ団の行動を探っていたが、

 

「だめだな」

 

「ああ、手詰まりだ」

 

ジュピター・マーズ組もラン達とほぼ同じ状態になっていた。情報が足りず、下手に動くことができない。

 

ギンガ団員を締め上げて情報を吐かせようかとも考えたが、そのギンガ団員がいない。

 

もしかしたら一網打尽にするための罠が隠されているかもしれない。それに、正体不明の人物、右京も気になる。ランとシンにいきなり襲いかかってきたくらいだ。ギンガ団員の可能性も否定できない。

 

トバリシティの周りはこんなにもざわざわしていていつも通り賑わっているのに、こんなにも孤独に感じることがあるか。

 

やはりビルに乗り込むべきではないだろうかとマーズが提案しようとした時、

 

「元ギンガ団幹部、マーズとジュピターか」

 

この声は……! 二人の背中に冷たい何かが走り抜け、後ろを振り向くと、

 

そこには腰に刀を差した長身の女性、右京がいた。

 

「な、何をしに来たんだよ」

 

「なに、鏡夜ランの居場所を教えてほしいだけさ。要がある」

 

「言うわけにはいかないね。アンタ、殺す気だろ? シンのクソ野郎が言ってたよ」

 

ここまで言って、マーズは突然一歩飛びのいた。その瞬間、地面を抉ってハガネールが飛び出してきた。

 

「ほら、ね! でも、アンタは何者だ……?」

 

余裕ぶったことを言っているが、顔には汗が浮かんでいる。それに、元ギンガ団だからこそ分かったことがある。

 

――――――――――右京はギンガ団員ではない。

 

マーズもジュピターも右京がギンガ団のボスと考えていた。それを崩されるこの気配。

 

「ったく、わざわざ当たらないような位置に飛び出させてるのに」

 

「は!?」

 

はっとしてマーズは抉られた地面を見る。確かに、避けなくても当たらない位置に飛び出ている。

 

賭けてみるか? 危険は大きい。この女は信用できないが……。

 

さまざまなことを頭の中で考えるが、良い考えが出ない。

 

「……アンタは信用できない。アイツの居場所を教えるなら、どうする気だ?」

 

「このファイルを渡したいだけさ。なんならアンタたちに預けてもいい」

 

右京が取り出したのは一つのクリアファイル。マーズが手を伸ばすと、意外にも右京は簡単にそれを渡した。

 

中を簡単に読み進めていく。すると、マーズの顔がいっきに青くなった。

 

「なんだよ、これ……。おい、右京! これはどこで手に入れたんだ!? これは何だよ!」

 

「それはギンガ団から奪ってきたものだ。取り返しに来ないのはこの計画がすでに完遂されていることを表す」

 

そう言って右京はヨルノズクに乗ってどこかへ飛び去ってしまった。残された二人はファイルを見ている。

 

「ふざけんなよ、これが本当なら……!」

 

「ええ、拙いわね」

 

「「ダークライ暴走実験。被験者、鏡夜ラン」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ラン達はシンが情報収集のためにムクホークに乗ってトバリに向かっていた。

 

「ッ!? あれは……!」

 

トバリの方からヨルノズクに乗っている腰に刀を差した長身の女性……右京が向かっていた。

 

「右京! どこへ行くつもりだ!?」

 

「八重春シンか。鏡夜ランの居場所はどこだ?」

 

お互いにある程度の距離を取ってシンが叫ぶ。気にする様子もなく右京はシンに問い返す。

 

「またそれかよ……。お前はランに何の恨みがあるんだ!? なんでランを狙う! おい! 聞いているのか!!」

 

シンが叫ぶ。やはり右京は聞いているのかもわからないような動きをするだけだ。だが、

 

「ふっ……鏡夜ランのガードを任せてくれないか。と言ったら?」

 

「なっ……! ふざけるな! 今ランがどうなってるか知って言ってるのか!?」

 

「意識が無いのだろう? あと数時間の間に鏡夜ランは襲撃され、ヒカリ共々殺される」

 

なっ……! と言ったが、ここで言葉が詰まった。トバリとヨスガの間の上空で二人の会話がなされていて、いきなり止まった。

 

「それは……マジか?」

 

「間違いない」

 

暫くの間、シンは考え込んでいたが、一つの答えを出したように右京の方を向いて、

 

「やっぱりお前は信用できない。だが、情報を教えてくれたことには感謝する。ランはヨスガシティにいる!」

 

くるりとムクホークは向きを変え、ヨスガに向けて飛び去った。残された右京もヨスガの方へヨルノズクに命令する。

 

「まったく、シロナさんも信用のない私を送るなど……何を考えているのやら」

 

だが、現在ヨスガでは、既に大規模な戦闘が始まっていた。

 

ランの病室にもギンガ団員が傾れ込んでくる。ヒカリがランのポケモンも指揮して次々と外へ叩き出しているが、ジリ貧だ。既にピクシーとエンペルトが戦闘不能、アブソルとニドクインもダメージが大きい。

 

「レントラー、“ほうでん”!」

 

「グルルルルルアアアアアア!!」

 

「「「「うおああああああ!!」」」」

 

見た限り、ギンガ団は2種類に分かれているようだ。片方はランを殺す気なのだろう、ピストルを持っている。もう片方はその邪魔を消すためだろうか、ポケモンを使役している。

 

「チルタリス、“りゅうのはどう”!!」

 

「「ぐおおおおお!!」」

 

「イワーク、“じしん”!!」

 

「キャッ……!」

 

イワークの地震でヒカリの身体のバランスが崩れる。その瞬間に銃声が鳴り響いた。

 

「ラン!!」

 

《心配は無用です》

 

ピストルを持たギンガ団員が絶句している。ランの前にはサーナイトが立ち塞がり、リフレクターを張っている。

 

そこまではいい。気になるのはなぜそこまで即行でリフレクターを張れるのか。本来複数で行わない限り、張るまでに数秒の時間を要する。

 

《コツさえつかめればこのくらい楽勝なんですよ》

 

「仕方ないな。やりたくはなかったが病院ごと吹っ飛ばすか」

 

は……? という声も出なかった。その間にギンガ団員は通信機らしき物で命令か何かを送っている。

 

数秒後、意識が飛んだ。

 

空にはギンガ団のヘリが低空で待機していたのだ。それがミサイルを積んでいただけの話。シンと右京は間に合わなかった。右京は爆風から逃れるのが限界でシンは巻き込まれて墜落した。

 

病院が瓦礫の山となり、辺りが静まった。小型のミサイルではあったが、威力はでかい。瓦礫の中にはまだランもヒカリもいる。

 

「うっ……こ、これは……?」

 

「起きたな。なら死んでもらう」

 

はっとして上を向くと、そこにはピストルを持ったギンガ団員がいた。引き金が引かれ、ヒカリの肩を撃ち抜く。

 

「あああああっ!! ……くぅっ……!! うあああっ……く、っ……!!」

 

激痛で立ち上がることもできない。赤黒い血がマフラーやセーターを濡らしていく。そこに2発目、3発目が撃ち込まれ、数秒間痙攣した後、ヒカリの動きが止まった。

 

「鏡夜ランを探せ」

 

瓦礫の中を捜索するギンガ団員。だが、いくら探してもランは見つからなかった。実験があるため、ランには生きてもらわないと困る。まさか直撃して粉々に吹き飛んだとなればそれはそれで大問題だ。

 

上空で右京は汗を拭っていた。疲れたのではない。冷や汗だ。傍らには血まみれのランが倒れている。今も流れ続ける血はヨルノズクの背中を濡らしていく。

 

ランの懐にあるモンスターボールは一つ。中には瀕死のチルタリスが入っている。ランをいち早く見つけ、近くのギンガ団員を斬り伏せて助け出したのだ。

 

さすがにポケモン全てを助け出す余裕は無かった。剣術だけで10人、ポケモンで20人の計30人は一度に相手できるが、うろついているギンガ団員はそれの2倍を超える数だった。しかもピストルを持っている者もいる。

 

右京は剣が得意だが、ピストルを持った相手を一度に何人も相手できるわけではない。

 

とにかく、今は虫の息となっているランを助け出すだけだ。右京は真っ直ぐキッサキシティへと向かう。

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