デート・ア・ライブ 雷蒼の物語 『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。更新が遅くて申し訳ない。

どうもやる気が起きなくてずっとサボってました。本当に申し訳ない。
ですが!投稿は続けるので、気長に待っててくれると嬉しいです。
でわどうぞー( ゚д゚)ノー


第5話:白いデート

そう、雷牙の脳か目に異常がなければ、その少女は間違えなく、昨日雷牙が学校で遭遇した精霊だった。

 

「やっと気づいた、このバーカ」

 

背筋が凍るほど美しい貌を不満げな色に染めた少女は、トン、と瓦礫の山を蹴ると、かろうじて原型が残っているアスファルトの上を辿って雷牙の方へと進んできた。

 

「ほい」

 

と、通行の邪魔だったのだろう、白刃が立ち入り禁止の看板を蹴り飛ばし、雷牙の目の前に到着する。

 

「あー、何してんだ?、白刃.....」

 

「.....?何とは何?」

 

「なんで、こんなとこにいるんだって話だろうが....っ!」

 

雷牙は叫びながら後方に視線を放った。立ち話をする奥様方や、犬の散歩をする近所の住人などが見受けられる。誰もシェルターに避難していない。つまり、空間震警報がなっていないのだ。

要するに、精霊現界の際の前震を、〈ラタトスク〉もASTも感知できていないということである。

 

「なんでって言われても....あなた忘れたの?」

 

しかし当の本人はその異常事態をまるで気にしていない様子だった。なぜ雷牙が叫んでいるのかが本当にわからないといった様子で左手を顎に置いた。

 

「ライガから誘ったんでしょ?そう、デートに」

 

「あ......」

 

こともなげにいい放った白刃に、雷牙は頬に汗を垂らした。

 

「そ、そうか覚えてたのか.......?」

 

「なに、私を馬鹿にしているの?」

 

「いや、そういうわけじゃないんだがな....」

 

「――ふーん、まぁいいや。それよりもライガ、早くデートに行こ?早く早く!!」

 

白刃が雷牙の左手を握りながら引っ張ってデートに行こうと催促をする。

 

「ま、待て待てわかった!わかったから頼むから俺の左手を引っ張るのをやめてくれ!」

 

「なんで?.....はっ!?、まさかライガ、私を押し倒そうと企んでるの?」

 

頬を赤く染め、白刃が眉をひそめる。

 

「――ッ!し、しないからな!俺は健全な男子だ!こんな所で非常識な事するやつがいるか!」

 

言ってから、後頭部をかく。雷牙は知らないが人によっては極めて不健全な事態の行動を起こすやつもいるかもしれない。

 

と、雷牙は居心地の悪い視線に身をよじった。

近所の奥様方がニヤニヤしながら、微笑ましいものを見るような目を向けてきているのである。まぁ一部、白刃の奇妙な格好を訝しむような視線が混じっている気もするが。

 

「......ん?」

 

白刃もその視線に気がついたらしい。雷牙の陰に身を隠すようにしながら目を鋭くする。

 

「......ライガ、あの人たちは一体なに。敵?殺す?」

 

「え....えぇ!?」

 

なんの前触れもなく物騒な事を口走った白刃に、雷牙は肩を震わせる。

 

「いやいや待てまて、なんでそうなるんだ。ただのおばあちゃんたちだぞ」

 

「ライガ何を言っているの。あの爛々と輝く目.....まるで猛禽のようで私を狙ってるようにしか思えない。....放置するとあとあと面倒なことになりそうだから。早めに消した方がいいと思う」

 

......まぁ、確かに目を輝かせてはいたけれども。主に新たな話の種を見つけていたんだろう。

 

「安心しろ。言っただろうが、おまえを襲う人間も殺そうとする人間たちなんてそうそういねぇよ」

 

「......うん」

 

白刃は未だに警戒を滲ませながらも、とりあえず今にも飛びかかっていきそうな気勢を収める。

 

「....それで、デートは――」

 

「っ、ち、ちと場所を移そうぜ。な?」

 

恥ずかしげもなく続ける白刃にそう言って、雷牙はそそくさと歩き出した。

 

「ん。ねぇ、ライガ、どこへ行くの?」

 

白刃はすぐさま追ってくる。そして雷牙の隣に並び歩きながら、不満そうな声を上げた。雷牙は白刃を伴って、ひとけのない路地裏に入り込むと、ようやく息を吐いた。

 

「本当におかしい人、一体どうしたの?」

 

白刃が半眼を作り、やれやれといった風情で言ってくる。

 

「確認するが、白刃.....おまえ、昨日あのあとどうした?」

 

いろいろ訊きたいことはあるが、最初に口から出たのはそれだった。白刃は少し憮然とした様子になりながら唇を動かした。

 

「別に、普通通り。通らない剣を振るわれ、当たらない弾を打たれ。――最後は私の身体が自然と消えて終わり」

 

「.....消える?」

 

雷牙は疑問に首をひねりながらある話を思い出す。確か、あのSっ毛司令がそんなことを表現して言っていた気がするが、正直。話を流しながら聞いていたのでよくわからなかった。

 

 

「この世界と違う別の空間に移動するの」

 

「そんなもんがあるんだな、一体どんなところなんだ?」

 

「ごめんわからないの」

 

「わからない?どうゆうことだ」

 

白刃の答えに、雷牙は問いかける。

 

「あっちに移動すると、いつの間に強制的に眠りに入らされるの。」

 

「てことは、目が覚めたらこの世界に現界すると」

 

雷牙がそれを言うと白刃は首を横に振り言葉を発する。

 

「そもそも、私の意思とは関係なく、強制的に起こされる感じ」

 

「......」

 

雷牙は息を詰まらせた。精霊はこの世界に現れようとする際に、空間震が起こるものと認識していたのだ。だから白刃と初めて出会った時にシェルターや空間震警報をしっていたのにもうなずける。

だが、白刃の話が本当だとするなら――精霊はこの世界に現れることすら自分の意思でやっているわけではないということになる。

ならば空間震というのは事故のようなもので――その責任までも白刃に、押し付けるのは、いくらなんでも理不尽過ぎる。

だが、雷牙は今の言葉に少し引っかかり疑問が頭の中で過った。それを確認すべく雷牙は白刃に口を開ける。

 

「なぁいつもってことは、今日は違うのか?」

 

白刃は頬をピクと動かすと、身体を後ろに向けた。

 

「知らない」

 

「そうか、なら詮索しないでおこう」

 

本当は凄く訊きたいがこれ以上問い詰めると、白刃が手から刀を出して俺の胸に刺しそうなので大人しく引き下がった。

そして目的を思い出したのか、白刃は後ろを向いていた全身を雷牙のいた方に振り向き声を発する。

 

「そろそろデート行こ。早くしないと日が暮れる」

 

白刃が急かすように雷牙の左手を引っ張って言ってくる。

 

「それはわかってるがその前に――白刃。今の姿だとまずいぞ」

 

「?」

 

雷牙が言うと、白刃は今の自分の格好に気づいた。

 

「.....確かにこの格好だと目立つしハエ共もわんさか出るし」

 

白刃は腕組みをしながらうーんと考えていた。と、思いついたのか白刃は雷牙にある提案をする。

 

「雷牙なにか画像?てっやつない?人の服装とか」

 

「画像?それなら....」

 

雷牙は制服のポケットから携帯電話を出し。ある画像を白刃に見せる。

 

「――これは?」

 

そこには、来禅高校の制服を着ている。雷牙と折紙が仲良く写っていた。

 

「これは去年の入学式に友達と撮った写真なんだ。すまないが服がある画像はこれしかないんだ許してくれ」

 

そういいながら雷牙は自分の携帯を白刃に渡す。

 

「この格好を真似ればいいの?」

 

白刃はなぜか知らないが、写真に写っている折紙を見ながら半眼を作りそう言った。

 

「あ、ああそうだけど。てかおまえ服作れるの?」

 

「いや、霊装を一度解除して新しく服を返るの。視認情報だけだからデザインは違うかもしらないけど」

 

白刃はそう言うと、指をパチンとならす。瞬間ドレスから来禅高校の制服に一瞬で変わった。

 

「便利だなそれ」

 

皮肉気味に白刃に聞こえないぐらい小さく言葉をこぼす。

 

「それより、もう服は大丈夫でしょそれで、最初はどこに行くの?」

 

「ああ、そうだなひとまず路地裏から出て商店街に行くぞ」

 

白刃はコクンと頷き二人は路地裏から出てそのまま商店街に向かった。

 

歩くこと数分。

 

「....この人間の数は一体....」

 

白刃は初めて商店街を見て人と車の数の量に目を丸くし、驚いていた。

 

「白刃は初めてだよな。これが商店街てっやつだ。人が買い物したり遊んだりする場所だよ」

 

白刃は辺りをキョロキョロしながら物珍しいそうな顔をして人と店を見ていた。

 

と――ある一つの店に白刃は目を釘付けにされた。

 

「――ライガ。これはなに?」

 

気になったのか白刃は指を指しながら、店にあるものについて雷牙に質問をしてきた。

 

「ん?ああ、それはシュークリームだ」

 

「シュウクリィム?」

 

「この柔らかい生地の中にクリームが入っているお菓子だ」

 

そう。白刃が見ていたのは、シュークリーム。よく小さい頃にだれしも食べたことがあるものだった。

イントネーションは少しちがうが、白刃はシュークリームを見た途端。とてもそれを物欲しそうな目をしながらガラス越しにシュークリームを見つめていた。

 

「――白刃。食べてみるか?」

 

雷牙が言うと、白刃は目を輝かせながら首を縦に振った。

 

「わかった。少し待ってろすぐ買ってくる」

 

雷牙はシュークリームが置いてある店の中へ入り。二つ購入した。店から出ると外で待っていた白刃がシュークリームをジィーと見ながら早く食べそうな表情をしていた。

 

「ほら、買ってきたぞ。」

 

雷牙は右手に持ってあるシュークリームを白刃に渡す。

受け取った白刃は最初は匂いを嗅ぎ、その次にシュークリームを自分の口に一口運ぶ。すると白刃は突然目を輝かせシュークリームをガツガツ食べていた。まるで初めて旨いものを見つけたかのように。

 

「おいおい....そんなに早く食ってもシュークリームは逃げはしないって」

 

雷牙は苦笑しながら左手に持ってあるシュークリームを一口食べる。

うん美味しい。

 

「~~♪」

 

白刃はシュークリームを食べた途端さっきよりとても機嫌がよくなったのか、笑顔をしながら歩いていた。

 

「...ライガ」

 

「ん?」

 

白刃が雷牙に話し掛ける。

 

「――またあのシュウクリィム?てっいうの食べたい」

 

「そか、気に入ってくれたよかったよ。いいぜ、また食べよう」

 

白刃は頬を少し染めながらコクンと頷いた。

 

「んじゃ、次はどこに行こうかな?」

 

雷牙は商店街に来て食事をしたのはいいが、肝心のデートプランを全然決めていなかったので何処に行くか迷っていた。こうゆう時に〈フラクシナス〉に連絡するべきだが残念ながら雷牙はインカムを自分の家の寝室に忘れてしまい連絡をとれずにいた。つまり一人で精霊を攻略するしかないということ。この時雷牙は前もって琴里に連絡先を交換しとけばよかったと後悔していた。その事でどうしようかと腕を組みながら考えていると――隣からグイグイと服の袖を白刃が引っ張ってきた。

 

「どした。白刃?」

 

「あそこ行ってみたい」

 

「ん?あそこ?」

 

白刃が指を指す方角を見ると、そこにはゲームセンターがあった。白刃はあそこが非常に気になったのだろう。

雷牙はニヤと笑みを浮かべ声を発す。

 

「OK。予定決まり!ゲームセンターに直行だ!」

 

雷牙はそう言うと白刃の右手首を左手でつかみ。ゲームセンターの所まで走り、中に入って行った。

中に入ると白刃は大きく目を見開き驚いていた。

 

「ライガ。ここはどうゆう場所?――まさかあのハエ(AST)共の隠し拠点?」

 

「違うぞ.....確かに機械はあるが、全部子供も大人も遊ぶ一種の遊び場さ」

 

白刃はそうなのかみたいな顔をしながらゲームセンターにあるゲーム機器を見渡していた。

 

「これを人間が使って遊ぶのね....ん?」

 

白刃は歩きながら回っていたが何かを見つけたのか途中で足を止める。

 

「白刃?どうした?」

 

気になったのか白刃の目線をたどってみると、そこにはゲームセンターには絶対あるクレーンゲームがあった。その中には先ほど商店街で食べたシュークリームに似た抱き枕クッションがあった。

白刃は欲しいのか、ジーとシュークリーム形の抱き枕クッションを見つめていた。

 

「取ってやるよ」

 

「いいの?」

 

白刃はパァとした顔をしながら雷牙に向く。

 

「おうよ。こんなん楽勝だぜ」

 

そういうと雷牙はポケットから財布を出し、100円をコイン口に入れた。100円を入れるとクレーンゲームから音がして雷牙はレバーを動かし、シュークリームの抱き枕の所までクレーンを移動させる。抱き枕の上に来たら、レバーの右隣にあるボタンを押してクレーンを抱き枕につかませる。

 

「うし、後は落ちるかだな。」

 

後は落ちるだけだがそれは簡単には行かなかった。

クレーンは抱き枕を掴むと上に引き上げ、落とし口に運ばせようとするが、クレーンの振動のせいでその抱き枕は落ちた。

 

「あー、すまん白刃やっぱ取れなかった。次のゲーム行こうぜ」

 

と、雷牙は諦めようとしたが、白刃は首を振り口を動かす。

 

「ライガ。私とあなたで取ろう。そしたら行ける気がする」

 

白刃の眼には、まるで火が付いたかのようにしながら雷牙の肩に手を置く。雷牙は口から笑顔を見せ。白刃に声を発す。

 

「わかった。俺がレバーを動かすから白刃はボタンを頼む」

 

「うん。わかった」

 

二人はクレーンゲームに向き直り。100円を入れ、再び再戦した。

100円入れ、雷牙はレバーを抱き枕の所まで移動させる。

 

「白刃俺が指示するまでボタンは押すなこれを逃せばもう取れない」

 

「大丈夫。私はライガがいいまで押さない」

 

雷牙は白刃の言葉に少し笑みを浮かべた。その瞬間――

 

「....!?白刃今だ!」

 

クレーンが抱き枕の上に到着し、雷牙は白刃に指示を出す。

 

「うん!」

 

白刃は思いっきりボタンを押しクレーンが下に降りアームが開く。アームが開きその中に抱き枕が入るとアームは抱き枕を掴み。クレーンを元に戻し落とし口に運ぶ。

 

「よし!上手くいった。今度は絶対落ちるぞ!」

 

雷牙はこの角度は絶対落ちるということを知っているのでそれがわかって余裕で言ってた。だがクレーンが落とし口の所に差し掛かった後。

 

ポトッ

 

「なっ!それはまじかよ.....」

 

後少しの所で抱き枕が落とし口の角に引っ掛かったのだ。さすがにこれではどうすることも出来ないので、雷牙は諦めることにした。

 

「悪い白刃。後少しだったのに....仕方ない他のゲームをしようぜ」

 

雷牙はクレーンゲームを後にしようとしたが、白刃は無言でクレーンゲームにある取り損ねた抱き枕を見ていたが、突然ボタンをガンと叩き、口を開く。

 

「どうして?何で落ちないの。ライガと私で協力したのに....お願い落ちて、落ちてよ」

 

諦めきれないのだろう。願うように白刃は抱き枕を見ながら落ちてと言葉を連呼した。と、次の瞬間。

 

ポットン――

 

「「あ....」」

 

まるで願いが叶ったのか、抱き枕は静かに角から落とし口に落ちたのだ。二人はあまりのことで硬直していたが、抱き枕が落ちた瞬間二人は喜びにあふれ向き合いながらこう言う。

 

「「落ちたぁぁぁ!!」」

 

二人は感動のあまり思いっきり叫んだ。

 

「し、白刃!早く出せ!」

 

「う、うん!」

 

白刃は急いで落とし口からシュークリームの抱き枕クッションを出し、両手で抱える。

 

「ライガ、ライガ。見て、取れた!」

 

白刃は少しぴょんぴょんと、飛び跳ねながら雷牙に見せびらかす。それを雷牙は思わず可愛らしく思った。

 

「ああ。やったな白刃!」

 

雷牙は笑顔で白刃にハイタッチをした。

 

「よし、抱き枕もとれたし次のゲームに行くか!」

 

「うん♪」

 

二人は次のゲームに向かい歩いていった。

たが雷牙はこの後に異変が起こることを知るよしもなかった。

 

 

時刻は18時。

夕日に染まった高台の公園には、士道と十香がいた。つい数時間前に士道は学校の校門前に来ており偶然十香と出会いそのままデートなって〈フラクシナス〉からのサポートもあっていろんな所を回り今に至る。

 

「おお、絶景だな!」

 

十香は落下防止用の柵から身を乗り出しながら、黄昏色の天宮の街並みを眺めていた。

〈フラクシナス〉クルーたちが巧妙に誘導するルートを辿ってきたところ、ちょうどこの素晴らしい公園に辿り着いたのである。

終着点にここを選んだのは、士道の妹にして〈フラクシナス〉の司令官。五河琴里だろう。

 

「シドー!あれはどう変形するのだ!?」

 

十香が遠くを走る電車を指さし、目を輝かせながら言ってくる。

 

「残念ながら電車は変形しない」

 

「何、合体タイプか?」

 

「まぁ、連結くらいはするな」

 

「おお」

 

十香は妙に納得した調子でうなずくと、くるりと身体を回転させ、手すりに体重を預けながら士道に向き直った。

 

「――それにしても」

 

十香が話題を変えるように、んー、と伸びをした。そして、にぃッ、と屈託ない笑みを浮かべてくる。

 

「いいものだな、デェトというのは。実にその、なんだ、楽しい」

 

「.........っ」

 

不意を突かれたのだろう。自分からは見えないけれど、きっと頬は赤く染まっている。

 

「どうした、顔が赤いぞシドー」

 

「......夕日だ」

 

言って顔をうつむかせる。

 

「そうか?」

 

すると十香が士道のもとに寄り、見上げるようにして顔を覗き混んできた。

 

「ぃ――ッ」

 

「やはり赤いではないか。何かの疾患か?」

 

吐息が触れるくれいの距離で、十香が言う。

 

「や....ち、違う、....から」

 

視線をそらしながらも――士道の頭の中には、デート、という言葉が渦巻いていた。漫画や映画で見た知識ではあるけれど。たぶん、恋人たちがデートの終盤でこんな素敵な場所を訪れたなら、やっぱり――

 

「ぬ?」

 

「―――ッ!」

 

自然、士道の目は、十香の柔らかそうな唇に向いていた。別に何も言っていないのだが、自分の邪な思考が見透かされたような気がして、再び目を逸らしながら身体を離す。

 

「なんだ、忙しい奴だな」

 

「う、うるせ.....」

 

士道は額に滲んだ汗を袖で拭いながら、ちらと十香の顔を一瞥した。十日前、そして昨日、十香の顔に浮かんでいた鬱々とした表情は、随分と薄れていた。鼻から細く息を吐き、一歩足を引いて十香に向き直る。

 

「――どうだ?おまえを殺そうとする奴なんていなかっただろ?」

 

「....ん、皆優しかった。正直に言えば、まだ信じられないくらいに」

 

「あ.....?」

 

士道が首をひねると、十香は自嘲気味に苦笑した。

 

「あんなにも多くの人間が、私を拒絶しないなんて。私を否定しないなんて。――あのメカメカ団....ええと、なんといったか。エイ.....?」

 

「ASTのことか?」

 

「そう、それだ。街の人間全てが奴らの手の者で、私を欺こうとしていたと言われた方が真実味がある」

 

「おいおい.....」

 

さすがに発想が飛躍しすぎていたが....士道はそれを笑えなかった。だって十香にとっては、それが普通だったのだ。否定されるのが、され続けるのが、普通。なんて――悲しい。

 

「....それじゃあ、俺もASTの手先ってことになるのか?」

 

士道が言うと、十香はぶんぶんと首を振った。

 

「いや、シドーはあれだ。きっと親兄弟を人質に取られて脅されているのだ」

 

「な、なんだその役柄......」

 

「.....おまえが敵とか、そんなのは考えさせるな」

 

「え?」

 

「なんでもない」

 

問い返すと、今度は十香が顔を背けた。表情を無理矢理変えるように、手で顔をごしごしとやってから、視線を戻してくる。

 

「――でも本当に、今日はそれくらい、有意義な1日だった。世界がこんなに優しいだなんて、こんなに楽しいだなんて、こんな綺麗だなんて.....思いもしなかった」

 

「そう、か――」

 

士道は口元を綻ばせて息を吐いた。だけれど十香は、そんな士道に反するように、眉を八の字に歪めて苦笑を浮かべた。

 

「あいつら――ASTとやらの考えも、少しだけわかったしな」

 

「え......?」

 

十香が少し悲しそうな顔を作りながら言った。でも士道は、その表情は見ているだけで胸が締め付けられてしまいそうな、悲壮感の漂う顔だった。

 

「私は.....いつも現界するたびに、こんなにも素晴らしいものを壊していたんだな」

 

「――――っ」

 

士道は、息を詰まらせた。

 

「で、でも、それはおまえの意思とは関係ないんだろ.....ッ!?」

 

「....ん。現界も、その際の現象も、私にはどうにもならない」

 

「なら――」

 

「だがこの世界の住人たちにしてみれば、破壊という結果は変わらない。ASTが私を殺そうとする道理が、ようやく.....知れた」

 

士道は十香の悲痛な面持ちに胸が引き絞られ、上手く言葉と呼吸が発せなかった。

 

「シドー。やはり私は――いない方がいいな」

 

言って――十香が笑う。

 

「そんなこと.....ない.....ッ」

 

十香の弱々しく、痛々しい笑顔を見た士道は声に力を込めるため、ぐっと拳を握った。

 

「だって....今日は空間震が起きてねぇじゃねぇか!きっといつもと何か違いがあるんだ.....ッ!それさえ突き止めれば.....!」

 

しかし十香は、ゆっくりと首を振った。

 

「たとえその方法が確立したとしても、不定期き存在がこちらに固着するのは止められない。現界の数は減らないだろう」

 

「じゃあ.....ッ!もう向こうに帰らなければいいだろうが!」

 

士道が叫ぶと、十香は顔を上げて目を見開いた。まるでそんな考えをまったく持っていなかったというように。

 

「そんなことが――可能なはずは.....」

 

「試したのか!?一度でも!」

 

「........」

十香が、唇を結んで黙り混む。士道は動悸を抑え込むように胸元を押さえながら、再びのどをを唾液で濡らした。咄嗟に叫んだ言葉だったが――それが可能ならば、空間震は起こらなくなるはずである。確か琴里の説明では、精霊が異空間からこちらの世界に移動する際の余波が空間震となるという話だった。

 

そして、十香が自分の意思とは関係なく不定期にこちらの世界に引っ張られてしまうというのなら、最初からずっとこちらにとどまっていればよいのだ。

 

「で、でも、あれだぞ。私は知らないことが多すぎるぞ?」

 

「そんなもん、俺が全部教えてやる!」

 

十香が発してきた言葉に、即座に返す。

 

「寝床や、食べるものだって必要になる」

 

「それも.....どうにかするッ!」

 

「予想外の事態が起こるかもしれない」

 

「んなもん起きたら考えろッ!」

 

十香は少しの間黙り込んでから、小さく唇を開いてきた。

 

「.....本当に、私は生きていてもいいのか?」

 

「ああ!」

 

「この世界にいてもいいのか?」

 

「そうだ!」

 

「....そんなことを言ってくれるのは、きっとシドーだけだぞ。ASTはもちろん、他の人間たちだって、こんな危険な存在が、自分たちの生活空間にいたら嫌に決まってる」

 

「知ったことかそんなもん.....ッ!!ASTだぁ!?他の人間だぁ!?そいつらが十香!おまえを否定するってんなら!それを越えるくらい俺が!おまえを肯定するッ!」

 

叫んで。

士道は、十香に向かってバッと手を伸ばした。十香の肩が小さく震える。

 

「握れ!今は――それだけでいい....ッ!」

 

十香は顔をうつむかせ、数瞬の間思案するように沈黙したあと、ゆっくりと顔を上げ、そろそろと手を伸ばしてきた。

 

「シドー――」

 

と。

士道と十香の手と手が触れ合おうとした瞬間。

 

「十香!」

 

突然士道は、両手で思い切り十香を突き飛ばした。細身の十香は突然の衝撃に耐えれず、漫画みたいにごろんと後ろに転がった。その刹那。士道の胸と腹の間くらいに、空洞が開き。地面に倒れた。

 

「な――何をする!」

 

砂まみれになった十香が、士道に非難の声を上げるが、それに返すことすら困難。息が、出来ないのだ。意識と姿勢を保っていることすらも、難しい。士道は地面に倒れた瞬間視界が真っ暗となり意識を失った。

 

「――シドー?」

 

十香が、呆然と言ってくる。原因を探ろうと、震える右手を脇腹にやってみた。だが、おかしい。何故ならばそこには何も手ごたえがなかったのだ。

 

「シドー......?」

 

名前を呼ぶが返事はない。それもそうだ。士道の胸には今、十香の手のひらサイズよりも大きな穴が開いている。

 

「シ――、ドー」

 

十香は士道の頭の隣に膝を折ると、その頬をつついた。反応は、ない。

 

「ぅ、ぁ、あ、――」

 

数秒のあと、頭がを理解し始める。

...あたりに立ちこめる焦げ臭さに十香は覚えがあった。いつも十香を殺そうと襲ってくるあの一団――ASTのものだ。研ぎ澄まされた一撃。恐らく――あの女。如何に十香とはいえ、礼装を纏っていない状態であれを受けたなら、無事では済まなかっただろう。ましては何の防護を持たない士道がそんな攻撃を受けてしまったのだ。

 

「―――」

 

十香は途方もない目眩を感じながらも、未だに空を眺める士道の目に手を置き、ゆっくりと瞼を閉じさせてやった。そして、着ていた制服のブレザーを脱ぐと、優しく士道の亡骸にかける。次いで十香はゆらりと立ち上がると、顔を空に向け、口から言葉を発す。

 

「やはり、駄目だった。士道とならこの世界で生きられるかもしれないと思った。士道がいてくれたなら、なんとかなるのかもしれないと思った。すごく大変で難しいだろうけど、できるかもしれないと思った。たが、駄目だった。

この世界は――私を否定した!」

 

それも、考え得る限り、最低最悪の手段を似て。

 

「――〈神威霊装・十番(アドナイ・メレク)〉.....ッ」

 

喉の奥から、その名を絞り出す。霊装。絶対にして最強の、精霊の領地。

瞬間、世界が啼いた。周囲の景色がぐにゃりと歪み、落雷が落ち、十香の身体に絡み付いて、荘厳の形を取る。そして光輝く膜がその内部やスカートを彩り――世界の災厄は、降臨した。十香は地面に踵を突き立てた。瞬間、そこから巨大な剣が収められた玉座が現出する。十香はトン、と地を蹴ると、玉座の肘掛けに足をかけ、背もたれから剣を引き抜いた。そして。

 

「よくも」

 

目が湿る。

 

「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも」

 

十香は剣を握る手に力を込めると、士道を殺した人間の所まで距離を殺した。

 

「な――ッ!?」

 

「―――」

 

瞬きほどの間も置かず、十香は銃弾が飛んできた高台に移動していた。目前には、驚愕に目を見開く女と、無味な表情の少女、折紙がいる。憎いその貌を見ると同時に、十香は吼えた。

 

「〈鏖殺公(サンダルフォン)〉――[最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)]!!」

 

刹那、十香が足を置いていた玉座に亀裂が走り、バラバラに砕け散った。そして玉座の破片が十香の握った剣にまとわりつき、そのシルエットからさらに大きな大剣に変えていく。全長十メートル以上はあろうかという長大過ぎる剣。十香はそれを軽々と振りかぶると、二人の女に向かって振り下ろした。刀身の光が一層強いものになり、一瞬にして太刀筋の延長線上である地面を這っていく。次の瞬間、凄まじい爆発があたりを襲った。

 

「な......ッ!」

 

「―――く」

 

すんでのところで左右に逃れた二人が戦慄に染まった声を上げた。それはそうだろう。たったの一撃で十香は広大な台地を縦に両断したのだから。

 

「嘘――」

 

長身の女が絶望に染まる。だが十香はそんなものには興味を示さず、もう一人の少女に目を向けた。

 

「――嗚呼、嗚呼。貴様、貴様だな」

 

静かに、唇を開く。

 

「我が友を、我が親友を、シドーを殺したのは、貴様だな」

 

十香がそう言うと、本の少し、少女が初めて表情を歪めた。しかしそんなことはどうでもいい。[最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)]を具現させた十香を止められるものなんて、この世界に存在しないのだから。

真っ黒に淀んだ瞳で折紙振り下ろす。を見下ろしながら、冷静に、狂う。

 

(ころ)して(ころ)して(ころ)し尽くす。()んで()んで()に尽くせ」

 

そう言うと十香は最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)を折紙に振り下ろす。

 

『――折紙逃げなさい!!』

 

燎子が声を荒らげる。だが――もう遅かった。折紙の随意領域(テリトリー)に、精霊の剣が触れる。――瞬間。時間にすれば、僅か1.5秒。

 

パリィィィィン

 

随意領域(テリトリー)が。

 

絶対の力を誇るはずの城が。

 

「―――――――」

 

綺麗に打ち砕かれた。その衝撃で折紙の身体は、後方へ吹き飛び地面に強く叩きつけられる。

 

「ぁ―――」

 

『折紙ッ!』

 

燎子の声がどこか遠く感じる。随意領域(テリトリー)が解除されたためか、脳の負担は幾分か和らいたが、その代わりに全身がとてつもなくひどく痛んだ。骨折は一ヶ所や二ヶ所では済むまい。傷口がどこかすらわからない血がワイヤリングスーツの中に溢れ、気持ち悪い感触を作っていた。重力を思い出したかのように急激に重くなった首を、本の少しだけ動かす。霞む視界の中、目の前に立っていた精霊の姿だけがはっきりと見えた。ひどく悲しそうな顔をしながら剣を握る、ひどく小さな少女の姿が。

 

「―――――終われ」

 

精霊が、剣を振り上げ、そこで止めた。精霊の周囲に黒い輝きを放つ光の粒のようなものがいくつも生まれ、剣の刃に吸い寄せられるように収束していく。止めを刺すのだろう。随意領域(テリトリー)が展開されていない今、あれを食らえば間違いなく死んでしまう。どうにかして逃げなければならない。だが、身体が重くて痛くて、まるで動くのを拒否していた。燎子をはじめ他のAST要員が駆け付けても間に合わないだろう。そう、今精霊を止めることができるのは、もう存在しないかった。そして剣が闇色に輝きを帯びるのを待って。精霊が、剣を握る手に力を込め剣振り下ろす。その瞬間折紙は自分の死を覚悟し、目を瞑った。

 

が――いくら待っても、身体から切られた痛みが感じないのだ。折紙はゆっくりと目を開らくと目の前にある人物がいた。

 

「......どうして...あなたが.....」

 

折紙は重い首を動かし。驚きながら、か細く声を発する。そう折紙は知っていた。何故ならば折紙にとっては士道と同じく大切な存在の人だったのだ。そう、そこには――

 

「大丈夫か?折紙」

 

折紙の目の前に立っていたのは白い刀で精霊の長剣を受け止めている雷蒼雷牙の姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか?白刃のデート編だけを書くつもりが十香の暴走シーンまで書いてしまいました。
なんか切りが悪いなと思って書いてしもうた....
まぁそんな話は置いといて(・。・;

次回は最後で雷牙と十香の戦闘です。さぁどちらが強いのか、果たして雷牙が持っていたあの白い刀は一体誰のものなのか気になりますね。
では次回にお会いしましょう皆さんも新型コロナウィルスにかからないようお気をつけください。

次回:正す者

貯め書きして、ある程度たまったら投稿した方がいいか?

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  • しなくてもいいです。
  • どっちでもいい。
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