今回は記念すべき第1話なので長いです。
ではどうぞ(*´∀`)つ
第1話:四月十日と白い刃
――息を飲む。
それはあまりにも非現実的な光景だった。
消し取られたかのように破壊された街並み。
隕石でも落ちて来たとしか思えない、巨大なクレーター。
空を舞う幾つもの人影。
全てが幻としか思えない。馬鹿げた景色。
だけれど一人の少年は、そんな異常な世界を、朧気にしか見ていなかったのだ。
――そんなものよりも遥かに異常なものが、少年の目の前にあったからだ。
それは、少女だった。奇妙な光の白いドレスを纏った少女が一人、立っていた。
「ぁ―――」
少年の声は嘆息に、微かな声が混じって消え去った。
それぐらいに、少年は少女の存在が圧倒的だったのだ。
金属のような、布のような、不思議なドレスも確かに目を引いた。
そこから広がった光のスカートも写真を撮りたくなるほど綺麗だった。
しかし彼女自身の姿容は、それすらも脇役に霞ませる。
肩から腰に絡みつくような長い白色の髪。
凛と蒼穹を見上げるは、何とも形容しがたい不思議な色を映す双眸。
天使さえ嫉妬を覚えさせるであろう貌を物憂げに歪め、静かに唇を結んでいるその様子は。
視線を、
注意を、
心をも、
一瞬にして、心を奪い去った。
それくらい、
あまりにも、
尋常ではなく、
暴力的なまでに美しい。
「―――お前、は......」
ただ呆然と。
少年は、その彼女に問いかけた。
瀆神としてのどと目を潰されることすら、思考のうちに入れて。
少女がゆっくりと少年に視線を下ろした途端。
悲しい顔でこう答えた。
「....名前、ね」
少年の前で心地のいい調べの如き声音が、空気を震わせた。
しかし。
「そんなものは、ないよ」
その言葉に少年は目を見開いた。
2人の目が交わり――雷蒼雷牙の物語は、始まった。
――――――――――――――――――――――
「あー.....」
寝起きの気分はとても最悪だった。
四月十日、月曜日。
昨日で春休みが終わり、今日から学校という名の始業式の朝。
雷蒼雷牙はしょぼしょぼする目をこすりながら、低くうなるような声を発し。自分の家のキッチンで一人で朝食を作っていた。
そう雷牙は一人暮らしなのだ。
両親は五年前のとある事件で他界してこの家は両親が亡くなった次にもらった。
そんな懐かしい夢の事を考えていく内に朝食が出来た為ご飯をテーブルがあるリビングに朝食を持っていき椅子に座ってテレビをつけた。
テレビをつけたら丁度ニュースがやっていた。その内容は
『――今日未明、天宮市近郊の地域で空間震が発生しました。』
そんな内容だった。
その次に画面には滅茶苦茶に破壊された街の様子が映しだされていた。建造物や道路が崩落し、瓦礫の山と化している。まるで隕石の衝突か空襲でもあったのかと疑いたくなるほどの惨状だった。
「ああ...空間震か」
うんざりと首を振る。
空間の地震と称される、広域震動現象。発生原因不明、発生時期不定期、被害規模不確定の爆発、震動、消失、その他諸々の現象の総称である。
まるで怪獣が気まぐれに現れ、街を破壊していくような理不尽極まりない現象。
心の現象が初めて確認されたのは、およそ三○年前の事である。
ユーラシア大陸のど真ん中――当時のソ連、中国、モンゴルを含む一帯が一夜にしてくりぬかれたように消失したのだ。
雷牙たちの世代になれば学校の教科書の写真で嫌というほど目にしている。
まるで地上にあるものを一切合切削り取ってしまうように、本当に何もなくなっていたのだ。
死傷者、およそ一億五○○○万人。人類史上を見ない最大最悪の災害である。そしてその後約半年間、規模は小さいものの、世界各地で似たような現象が発生した。
雷牙の覚えている限りでは――およそ五○例。
地球上の全大陸、北極、海上、さらには小さな島々でも発生が確認された。無論、日本も例外ではない。
ユーラシア大空災の六ヶ月後、東京都南部から神奈川県北部にかけての一帯が、まるで消しゴムでもかけられたかのように、円状に焦土と化したのである。
そう――ちょうど今雷牙が住んでいる地域だ。
「でも一時は全然起こらなかったが何でまた増え始めたのか不思議なんだよなぁ」
雷牙が一人で小さく独り言を言うと、そのままテレビに視線を戻し時間を確認した。
「あ・・・」
雷牙はテレビにある時間表を見るとそこには、午前八時10分と表示されていたのだ。
時間を見た途端 雷牙はとても焦っていた。
「やべぇぇ!遅刻だ急がねぇと!」
朝食を速やかに食べるとキッチンに皿を置き椅子に掛けてあった制服のブレザーを腕に通し鞄を持ち小走りしながら玄関に向かう。
靴を履き終わりドアを開け外に出てドアに鍵を掛け全速力で学校に向かう。
何でこんな時に遅れるんだよ本当に馬鹿すぎるぞ俺...
全速疾走してる中 心の中で自分の事を責めていた雷牙であった。
――――――――――――――――――――――
午前八時十五分を回った頃だった。廊下に貼り出されたクラス表を適当に確認してから、これから一年間お世話になる教室に入っていく少年がいた。
「二年――四組、か」
特に目立った特技もなさそうな中肉中背で中性的な顔立ちをしている青髪の少年 名は五河士道。
ここ都立来禅高校に通う学生だ。
都立来禅高校 三十年前に空間震が起こったあと、東京都南部から神奈川県――つまりは空間震で更地になった一帯をさまざまな最新技術のテスト都市として再開発が進める為この来禅高校が建てられた。数年前に創立されたばかりのためとても都立校とは思えない充実した設備を誇るうえ、内外装も損傷がほとんどない。もちろん旧被災地の高校らしく、地下シェルターも最新のものが設えられている。
そのためか入試倍率は低くなく、「家が近いから」だけの理由で受験を決めた士道と今全速力で学校にむかっている少年(雷牙)は、少々苦労することになったのだが。
「んー......」
士道は小さくうなり、何とはなしに教室を見回してみる。
まだホームルームまでには少し時間があったが、もう結構な人が揃っていた。同じクラスになれたのを喜びあう者、一人机についてつまらなそうにしている者、反応は様々だったが.......あまり士道の知った顔は見受けられない。と、士道が黒板に書かれた座席表を確認しようと首を動かすと、
「――五河士道」
後方から不意に、静かで抑揚のない声がかけられた。
「ん?」
聞き覚えのない声である。不思議に思い、振り向く。そこには、細身の少女が一人、立っていた。肩に触れるか触れないかくらいの髪に、人形のような顔が特徴的な少女である。この人形のような、という形容に異を唱える人間は、恐らくそういないだろう。まるで正確に測量された人工物のように端正であるのと同時に――彼女の顔には、まったく表情のようなものが窺えなかったのだ。
「え.....」
士道はきょろきょろとあたりを見回してから、首を傾げた。
「.....俺?」
自分以外のシドウさんと言う名前が見あたらないのを確認してから、自分の指をさす。
「そう」
少女はさしたる感慨もなさそうに、まっすぐ士道の方を見ながら小さくうなずいた。
「な、何で俺の名前知ってるんだ.....?」
士道が訊くと、少女は不思議そうに首を傾げた。
「覚えていないの?」
「.....う」
「そう」
士道が言い淀んでいると、少女は特に落胆らしいもの見せず、短く言って窓際の席に歩いていった。そのまま椅子に座ると、机から分厚い技術書のようなものを取り出し、読み始める。
「な.....なんだ、一体」
士道は頬をかき、眉をひそめた。何やら士道のことを知っているふうだったが、どこかで会ったことがあっただろうか士道はまったく覚えていなく少し自分の記憶を思いだすように考え始めたその瞬間。
「とうッ!」
「げふっ」
士道が頭を悩ませていると突如、ぱちーん!と見事な平手打ちが背にたたき込まれた。士道は知っていたこんな事をする人は一人しかいないすぐに分かった士道は背中を擦り後ろをむき犯人の名前を叫んだ。
「ってぇ、何しやがる殿町!」
「おう、元気そうだなセクシャルビースト五河」
犯人は士道の友人・殿町宏人だった。殿町は、同じクラスであった事を喜ぶよりも先に、腕を組軽く身を反らしながら笑っていた。士道はそんなのはどうでもよく、さっき殿町が自分に言った名前について聞いた。
「.....セク......なんだって?」
「セクシャルビーストだ、この淫獣め。ちょいと見ない間に色気付きやがって。いつの間にどうやって鳶一と仲良くなりやがったんだ、ええ?」
そう言って、殿町が士道の首に腕を回し、ニヤニヤしながら訊いてくる。
「鳶一? ....誰だそれ」
士道は誰の名前か分からず殿町に聞いた殿町は少し呆れながら言葉を返した。
「とぼけんじゃねぇよ。今の今まで楽しくお話してたじゃねぇか」
言いながら、殿町が顎をしゃくって窓際の席に指を示す。
そこには、先ほどの少女が分厚い技術書を読んで座っていた。ふと、士道の視線に気づいたのか、少女が目を書面から外し、こちらを向けてくる。
「....っ」
士道は息を詰まらせると、気まずそうに目を背けた。
反して、殿町が馴れ馴れしく笑って手を振る
「..........」
少女は、別段何も反応を示さないまま、手元の本に視線を戻した。
「ほら見ろ、あの調子だ。うちの女子の中でも最高難度、永久凍土とか米ソ冷戦とかマヒャデドスとまで呼ばれてんだぞ。一体どうやって取り入ったんだよ」
そう殿町に言われ士道は困った顔をして話す。
「はぁ.....? な、何の話だよ」
「いや、おまえホントに知らないのかよ」
「....ん、前のクラスにあんな子いたっけか?」
士道が言うと、殿町はまたも信じられないといった具合に両手を広げて驚いたような顔で欧米人のようなリアクションをする。
「鳶一だよ、鳶一折紙。ウチの高校が誇る超天才。聞いたことないのか?」
「いや、初めて聞くけど....すごいのか?」
「すごいなんてモンじゃねぇよ。成績は常に学年首席、この前の模試に至っちゃ全国トップとかいう頭のおかしい数字だ。クラス順位は確実に一個下がることを覚悟しな」
「はぁ?なんでそんな奴が公立校にいるんだよ」
「さぁてね?。家の都合とかじゃねぇの?」
大仰に肩をすくめながら、殿町が話を続ける。
「しかもそれだけじゃなく、体育の成績もダントツ、ついでに美人ときてやがる。去年の『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』でも第3位だぜ?見てなかったのか?」
「やったことすら知らん。ていうかベスト13?何でそんな中途半端な数字なんだ?
「主催者の女子が13位だったんだよ
「.....ああ」
士道は力無く苦笑した。どうしてもランキングに入りたかったらしい。
「ちなみに『恋人にしたい男子ランキング』はベスト358まで発表されたぞ」
「多っ!?下位はワーストランキングに近いじゃねぇか。それも主催者決定なのか?」
「ああ。まったく往生際が悪いよな」
「殿町は何位だったんだ?」
「358位だが」
「主催者お前かよ!」
「選ばれた理由は、『愛が重そう』『毛深そう』『足の親指の爪の間が臭そう』でした」
「やっぱりワーストランキングだそれ!」
「まぁぶっちゃけ、下位ランクには一票も入らない奴らばっかだったからな。マイナスポイントの少なさで勝負だ」
「どんな苦行だよ!やめりゃあいいだろそんなもん!」
「安心しろ五河。お前は匿名希望さんから一票入ったから52位だ」
「反応しづれぇ!」
「まぁ他の理由は『女の子に興味なさそう』ぶっちゃけホモっぽい』だったが」
謂れなき中傷に死の鉄槌を!」
「まぁ落ち着けって。『腐女子が選んだ校内ベストカップル』では、俺とセットでベスト2にランクインしているぞ」
「これっぽっちも嬉しくねぇぇぇぇぇッ!」
たまらず叫ぶ士道だが1位のカップルが少しだけ気になった。
しかし殿町はまったく気にしていない様子。
士道は全然嬉しくないランキングた頭を悩ませた時に廊下から一人の少年生徒が走りながら教室の扉をパシャーンと豪快に開けながら飛び込んできた。
「あっぶねぇぇぇぇぇ!遅刻する所だった...」
その少年は黒髪で目はワインレッドの色をしていて士道と同じく中性的な顔をしていた。
士道はその生徒を知らないので固まって驚ていた顔の殿町に聞いた。
「殿町あいつ誰だ?」
「はぁ?お前は鳶一といいウチの高校が誇る超天才を知らなすぎるんじゃないのか?」
「は?あいつも天才なのか?」
殿町は士道の言葉にため息を吐き今士道が座っている席から右斜めに座って寝ている先ほど教室から入ってきた少年について説明をした。
「彼の名は雷蒼雷牙。ウチの学校が誇るもう一人の超天才。成績優秀、体育も優秀この前の模試に至っちゃ鳶一と互角に張り合える頭のおかしい数字をたたき出してる男だ。」
「はぁ?鳶一といい何でそんな奴がこの高校にいるんだよ」
「俺が知るわけもないだろ」
殿町は話を続ける。
「ちなみに『恋人にしたい男子ランキング』では上位の3位だ」
「何でそんなに高いんだ?」
流石に士道も気になるらしく殿町に聞いてみた。
「選ばれた理由がえーと、『イケメンで悩殺されそう』『その赤い目で調教されたい』『料理を食べてみたい』でした」
「一つしかまともなのねぇぇぇ!」
理由が酷すぎた。最初の一つと二つは完全にMっけの入った女子が入れたのだろう。だがこうもまともなのが一つしかなくてツッコミせざるおえなかった。その後にどこかからジリジリの音が聞こえたその正体はすぐ分かった。
士道の隣で殿町が親指の爪を噛りながら嫉妬をした顔で雷牙を見ていたのだ。
「どうした?殿町?」
「なぁ五河何で世界てっこんなに不平等で理不尽なんだろうな」
殿町は何かに負けたような顔を作りながら小さな声でそんなことを口に出した
士道は殿町が何を言ったのか分からなかった。
「...は?何言って――」
キーンコーンカーンコーン
と、士道が言ったところで、一年生の頃から聞き慣れた予鈴がなった。
「おっと予鈴が始まった。五河とりあえず席に座ろうぜ」
「お、おう....そうだな」
士道は黒板に書かれた席順に従い、窓側から数えて二列目の席に鞄を置いた。そこで気づく。
「.....あ」
何の因果士道の席は鳶一折紙の隣だったのである。
鳶一は予鈴が鳴り終わる前に本を閉じ、机にしまいこんだ。視線は真っ直ぐ前に向け、定規で計ったような美しい姿勢を作る。
「......」
何故か少し気まずくなって、士道は折紙と同じように視線を黒板の方にやった。それに合わせるようにして、教室の扉がガラガラと開けられる。そしてそこから縁の細い眼鏡をかけた小柄な女性が現れ、教卓についた。
あたりから、小さなざわめきのようなものが聞こえてくる。
「タマちゃんだ...」
「ああ、タマちゃんだ」
「マジで、やったー」
――その生徒から好意的なようだった。
「はい、皆さんおはよぉございます。これから一年、皆さんの担任を務めさせていただきます、岡峰珠恵です」
間延びしたような声でそう言って、社会科担当の岡峰珠恵教諭・通称タマちゃんが頭を下げた。
贔屓目に見ても生徒と同年代くらいにしか見えない童顔と小柄な体躯、それにそののんびりとした性格で、生徒から絶大な人気を誇る先生である。
と、
「.....?」
士道は表情を強ばらせた。士道の左隣に座った折紙が、じーっ、と士道の方に視線を送っていたのである。
「....っ」
一瞬、目が合う。士道は慌てて視線を逸らした。一体なぜ士道を見て――いや、別に見てはいけないというわけではないと思うし、もしかしたら士道の先にあるものを見ている可能性だってある、とにかく落ち着かない。
「.......な、なんなんだ一体......」
誰にも聞こえないくらいの声でぼやき、士道は頬に汗を一滴垂らした。
それから、およそ三時間後。
「五河ー、どうせ暇なんだろ、飯いかねー?」
始業式を終え、帰り支度を整えた生徒たちが教室から一斉に出ていく中、鞄を肩がけした殿町が話しかけてきた。
士道はうなずきそうになってから、「あ、」と大切な約束を思いだした。
「悪い。今日は先約があるんだ」
「なぬ?女か」
「あー、まぁ....一応」
「なんと!!」
殿町が両手をV字に掲げて片足を上げた、どこかのランナーみたいなリアクションをとってくる。
「一体春休みに何があったっていうんだ!あの鳶一と仲良くお話するだけじゃ飽きたらず、女と昼飯の約束だと!?
一緒に正義の魔法使いを目指すって誓い合ったじゃねえか!」
「いや、誓い合った覚えはないが....ていうか、女っていっても琴里の方だぞ?」
「んだよ、脅かすんじゃねぇよ」
「お前が勝手に驚いたんだろうが」
「でもま、琴里ちゃんなら問題ねぇだろ。俺も一緒に行っていいか?」
「ん?ああ、別にファミレスだから大丈夫だと思うけど....」
そう学校に行く前に士道は家で妹の琴里と昼飯をファミレスで食べる約束をしていたのだ。
「なぁなぁ、琴里ちゃんって中二だよな。もう彼氏とかいんの?」
殿町は士道の机に肘をのせ、声をひそめるように言ってきた。士道はそれについて理解ができなかった。
「は?」
「いや他意はねぇんだが、琴里ちゃん、三つくらいの年上の男ってどうなのかなと」
「......やっぱ却下だ。おまえ来んな」
殿町はとんでもない爆弾発言を発したためそれを聞いた。士道は少しキレ半眼を作り殿町の頬をぐいと押し返した。
「そんな!お義兄様!」
「お義兄様とか呼ぶな気持ち悪い」
「ははっ冗談だ。ま、俺も兄妹団欒をつっつくほど野暮じゃねぇよ。都条例に引っかかんねでぇ程度に仲良くしてきな」
「おまえはいっつも一言余計だな」
頬をぴくつかせながら言うと、殿町が意外そうな顔をつくる。
「だっておめ、琴里ちゃん超可愛いじゃねぇか。あんな子と一つ屋根の下とか最高だろ」
「実際に妹がいれば、その意見は間違えなく変わると思うがな」
「あー.....それはよく聞くな。妹持ちに妹萌えはいないとか。やっぱ本当なのか?」
「ああ、あれは女じゃない。妹という名の生物だ」
士道がきっぱり断言すると、苦笑した。
「そういうもんかねぇ」
「そういうもんだ。女未満と書いて妹だろうが」
「じゃあ姉は?」
「......女市?」
「すげぇ、女性専用都市かよ!」
言って、殿町が笑う。
その瞬間。
ウゥゥゥゥゥゥゥッゥゥゥゥ―――――
「......ッ!?」
教室の窓ガラスをビリビリと揺らしながら、街中に不快なサイレンが鳴り響いた。
「な......なんだ?」
殿町が窓を開けて外を見る。サイレンに響いたのか鳥が何羽も空に飛んでいた。
教室に残っていた生徒たちも、皆会話を止めて目を丸くしている。
と、サイレンに次いで学校のスピーカーから機械越しの音声が響いてきた。
『―――これは訓練では、ありません。これは訓練では、ありません。前震が、観測されました。空間震の、発生が、予測されます。近隣住民の皆さんは、速やかに、最寄りのシェルターに、避難してください。繰り返します――』
瞬間、静まり返っていた生徒たちが、一斉に息を飲み避難を始めた。
――空間震警報。
皆の予感が、確信に変わる。
「おいおい....マジかよ」
殿町が額に汗を滲ませながら、乾いた声を発する。
たが――士道や殿町を含め、教室の生徒たちは、顔に緊張と不安こそ滲ませるているものの、比較的落ち着いてはいた。
士道たちは幼稚園の頃から、しつこいほどに避難訓練を繰り返しさせられていたのである。加えここは高校。全校生徒が収容できる規模のシェルターが設えられている。
「シェルターはすぐそこだ。落ち着いて避難すればいい。
「お、おう、そうだな」
殿町は士道の言葉にうなずいた。
走らない程度に急ぎ教室から出る。廊下には、もう既に生徒達が溢れ、シェルターに向かって列にを作っていた。
と――士道は眉をひそめた。
一人だけ、列とは逆方向に走って向かう女子生徒がいたからだ。
「鳶一....?」
そうスカートはためかせながら廊下を掛けていたのは、鳶一折紙だった。
「おい!なにしてんだ!そっちにはシェルターなんて――」
「大丈夫」
折紙は一瞬足を止め、それだけ言って、再び廊下を掛け出していった。
「大丈夫って....何が」
士道は怪訝そうに首を捻りながらも、殿町とともに生徒の列に並んだ。
「忘れ物でもしたのか?」
士道は折紙のことは気になったがすぐさま空間震が起こるというわけでもないためすぐ戻ってくれば間に合うだろうと士道は思った。
「お、落ち着いてくださぁーい!だ、大丈夫ですから、ゆっくりぃー!おかしですよ、おーかーしー!おさない・かけない・しゃれこうべーっ!」
と、そこに生徒を誘導している珠恵の声が響いてきた。
同時に、生徒たちの小さい笑い声が漏れ聞こえてくる。
「....自分より焦ってる人を見るとなぜか落ち着くよな」
「あー、それなんとなくわかる気がする。」
実際、なんとも頼りないタマちゃん教諭の様子に、生徒たちは不安を感じるより緊張をほぐされているように感じた。
と、士道はあることを思い起こし、ポケットから携帯電話を取り出した。
「ん、どうしたよ五河」
「いや、ちょっとな」
適当に言葉を返しながら、携帯の着信履歴から『五河琴里』の名を選んで電話をかける。
が――繋がらない。士道は何度か試すが、結果は一緒だった。
「.....駄目か。ちゃんと避難してるだろうなあいつ」
士道は脳裏に、朝琴里が言っていた言葉がエコーで渦巻く
「ま、まぁ空間震が起きても絶対約束とは言ってたけど....さすがにそこまで馬鹿では....っと、そうだ、あれがあった」
確か琴里の携帯には、GPS昨日を用いた位置確認サービスに対応していたはずである。
携帯を操作して確認すると、画面に上から見た街の地図と、赤いアイコンが表情された。
「―――ッ」
それを見て士道は息を詰まらせた。
琴里の位置を示すアイコンは、約束していたファミレスの真ん前で停止していたのだ。
「あんの、馬鹿.....ッ!」
携帯の画面を消さず携帯を閉じて、士道は生徒の列から抜け出した。そこに気づいた殿町が声をかける。
「お、おいッ、どこにいくんだ五河!」
「悪い!忘れ物だ!先行っててくれ!」
殿町の声を背に受けながら、列を逆走して昇降口に出る。そのまま速やかに靴を履き替えると、士道は転びそうなくらいに前のめりになって外へと駆け出していった。
校門を抜け、学校前の坂道を転がるように駆け下る。
「....っ、こんなんなったら、普通避難するだろうが!」
士道は、足を最速で動かしながら叫びを上げた。
――――――――――――――――――――――
雷牙side
「.....zzz」
誰もいない教室で雷牙はのんびりと昼寝をしていた。
たが、その眠りを妨げる音が雷牙を起こす。
「ふあ~たく、うるせぇサイレンだな」
そう言うと雷牙は席を立ち目を擦りながら窓を見た。
「....やっぱ来るのか頼むから家から遠いところでわくことを祈るわ」
その時雷牙の携帯から電話が掛かってきた。
「....?誰からだ?」
着信相手を確認してみるとそこには『鳶一折紙』のアイコンが映されていた。
雷牙は着信に出る。
「はーい、もしもし?」
『雷牙今どこ?』
「来禅高校の二年四組のクラス」
『何故まだそこにいるの?早くシェルターに避難して」
折紙の声は相変わらず落ち着いた声で雷牙に避難の声をかける。それついて雷牙は笑みを浮かび折紙に言葉を返す。
「...大丈夫だよ折紙俺の事は気にせず今はお前の仕事を優先的にやれいいな?」
そう言うと雷牙は最後折紙に「じゃあな」と言い残し電話を折紙の言葉を区切るように切った。
『待って、話はまだ終わって――』
雷牙はふぅー と、ため息を吐き。視界を窓に戻そうとした外に一人の少年が走りながら学校を出たのが見えた。
「あれは五河士道?何してんだあいつ?」
空間震警報が鳴っているのに何故シェルターに避難しないのか非常に気になって雷牙は窓のガラスを開けて外に飛び降り、ただの好奇心で士道を追いかけた。
「アイツに着いて行けば、何か起こりそうだな。」
そう予想した雷牙だった。だが――
「アレェ?五河士道は何処に行ったんだ?」
どうやら見失ってしまった。雷牙はどうしようかと歩きながら考え右側の道を通る次の瞬間。
ドォォォォォン
と、突然目の前にまばゆい光が包まれた。ついで、耳が痛くなるほどの爆音と、凄まじい衝撃波が雷牙を襲った。
「ッ!?やべ!」
雷牙は衝撃に吹き飛ばされ、壁に背中から激突した。
「――痛ッ ....一体なにが....!?」
目を開けるとそこには地上を消ゴムで抉られたに無くなった地面。その中心に....
少女がいたのだ。
「....あれが、精...霊」
雷牙はか細い声でそう呟いた。
朧気にしか見えないが、長い白髪と不思議な輝きを放つスカートだけは見て取ることができた。
女の子であることは間違いないだろう。
と、少女が怠そうに首を回し、ふと雷牙がいる方に顔を向けた。
「ん....?」
少女は雷牙に気づいた。少女は雷牙に気づくと腰に掛けてある武器を引き抜きそして――
「おい.....マジかよ!?」
少女が雷牙に向かって縦に武器を引き抜きその斬撃が雷牙に飛んで来たのだ。
雷牙はギリギリで回避し、崩れた瓦礫の壁にぶつかり寄りかかる。
「あぶねぇ....もう少しで死ぬところだった....!?」
一瞬だったのか、視線を外したとたんいつの間にか少女は雷牙の前にいて刀を雷牙の首に向けていた。
「い、いつの間に....っ!」
雷牙は少しでも遠くに逃げるために頭の中で逃げる策を考えた――だが。
「――貴様も.....か」
「....っ!?」
ひどく疲れたような声が、頭の上から聞こえた。
「あ――」
無意識に声が漏れる。
歳は雷牙と同じか少し下くらいだろう。
太ももまであろうかという白髪に愛らしさと凛々しさを兼ね備えた貌。
その中心には赤い水晶に様々な色を多方向から当てているかのような、不思議な輝きを放つ双眸が鎮座している。
装いは、奇妙なものだった。布なのか金属なのかよくわからない素材が、騎士のドレスのようなフォルムを形作っている。さらにその継ぎ目やインナー部分、スカートなどにいたっては、物質ですらない不思議な光の膜で構成はれていた。
そしてその手には、少女の身長より少し長い刀が握られている。
状況の異常さ。
風貌の奇異さ。
存在の特異さ。
どれも、目を引くには十分過ぎた。だけれど。嗚呼、だけど、雷牙が目を奪われた理由に、そんな不純物は含まれていなかったのだ。
「――、――」
一瞬の間。
恐怖も、呼吸すらも忘れ、少女の存在に目を釘づけられる。
それくらい。
少女は暴力的なまでに――美しかったのだ。
「――お前、は....?」
呆然と無意識に雷牙は声を発していた。
その声に少女は視線をゆっくりと下ろしてくる。
「.....名前、ね」
心地いい声音が空気を震わせた。
しかし。
「――そんなものは、ないよ」
悲しげに少女は言った。
そのとき。雷牙と少女の目が初めて交わった気がした。
ハイ、いかがでしたか?ここでオリ精霊が出ましたね。
ちょっと調子に乗りすぎて長めに作ってしまいました。次回は短めにしよう思っています。まだまだ新米ですが、これからも頑張りますのでまた読んでくれたら嬉しいです。
次回の更新は未定ですが、なるべく早く更新するつもりです。
そろそろ、貯め書きしないと....では、また次回お会いしましょう。
次回: スカウト
ヒロインもっと増えるかもで誰がいいか
-
七罪
-
夕弦
-
耶倶矢