デート・ア・ライブ 雷蒼の物語 『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。今回も長めに作ってしまった....
なかなか切りがいい所がないので結構書いちゃうんですよね。

ではどうぞ( ゚∀゚)つ


第2話:スカウト

士道は妹を探すべく街を探索していたが突然進行方向の街並みが跡形もなく消し飛びその中心に玉座に足を掛けている少女がいた。少女は士道に玉座にある剣を引き抜きその剣を横薙ぎにブン、と振り抜いてきた。士道は回避をするが、腰が抜けてしまい壁に寄りかかる。士道は少しでも早く、少しでも遠くに逃げる考えをしていたのだが、

 

 

「――おまえもか....」

 

「....っ!?」

 

ひどく疲れたような声が、士道の頭の上から響いてきた。視覚が、一泊遅れて思考に追いつく。目の前に、さっきまで遠くにいた少女がたっていたのである。

その少女は歳は士道と同じか少し下くらいだろうか。膝まであろうかという黒髪に、愛らしさと凛々しさを兼ね備えた貌。

 

「――君は、は?....」

 

士道は少女に声を発していた。

少女はその声に反応するとゆっくりと視線を下ろしてくる。

 

「....名、か」

 

心地のいい調べの如き声音が、空気を震わせた。

しかし。

 

「――そんなものは、ない」

 

どこか悲しげに、少女は言った。

「―――っ」

 

その時士道と少女の目が初めて交わった気がした。それを同時に、名無しの少女がひどく憂鬱そうな――まるで、今にも泣き出してしまいそうな表情を作りながら、カチャリという音を鳴らして剣を握り直す。

 

「ちょっ......、待った待った!」

 

その小さな音に、士道は必死に声を上げた。

少女はそんな士道を見て不思議そうな目を向けてくる

 

「....なんだ?」

 

「な、何しようとしてるんだよ.....っ!」

 

「それはもちろん――早めに殺しておこうと」

 

さも当然かのこどく言った少女に、士道は顔を青くする。

 

「な、なんでだよ...っ!」

 

「なんで.....?当然ではないか」

 

「は――?」

 

予想外の答えに士道はポカンと口を開けた。

 

「....っそんなわけ、ないだろ」

 

「―――何?」

 

そう言った士道に、少女は驚きと猜疑と困惑の入り交じったような目を向けてきた。

だが、すぐ眉をひそめると、士道から視線を外し、空に顔を向けた。つられるように士道も目を上方にやり――

 

「んな...ッ!?」

 

これ以上にないほどの目を開き、息を詰まらせた。何しろ空には奇妙な格好をした人間数名飛んでいたのだ。

手にはミサイルを持っており、そのミサイルを士道と少女がいる方にいくつも発射してきたのだから。

 

「ぅ、わあぁぁぁぁぁぁぁッ――!?」

 

士道は思わず、叫びを上げる。

 

たが――数秒経っても、士道の意識ははっきりとしたままだった。

 

「え....?」

 

呆然と、声を漏らす。空から放たれたミサイルが少女の数メートル上空で、見えない手にでもつかまれたかのように静止していた。

少女は気怠げに息を吐く。

 

「....こんなものは無駄だと何故学習をしない」

 

言って少女が、剣を握っていない方の手を上にやり、グッと握る。

すると何発もミサイルが圧縮されるようにへしゃげ、その場で爆発した。それでも攻撃が止まることはない次々とミサイルの雨が撃ち降ってきた。

 

「――ふん」

 

少女は小さく息を吐くと、まるで泣き出してしまいそうな顔を作った。先ほど士道に剣を向けようとしたときと、同じ顔。

 

「―――っ」

 

その表情に士道は大きく心臓が跳ねるのを感じた。

奇妙な光景だった。少女が何者なのかわからない。上空にいる人間たちが何者なのかもまた、わからない。

だけれどこの少女が、上空を飛ぶ人間たちよりも強大な力を有していることだけは、なんとなく理解した。

けど、その力を有する最強者が。

――なんで、そんな悲しい顔をするのだろう。

 

「...消えろ、消えろ。一切、合切....消えてしまえ.....っ!」

 

そう言いながら。

瞬間――風が嘶いた。

 

「......っ、うわ......ッ!」

 

凄まじい衝撃波があたりを襲い吹き飛ばす。太刀筋の延長戦上の空に、斬撃が飛んでいく。上空を飛行していた人間たちは慌ててそれを回避し、その場から離脱していった。だが次の瞬間、別の方向から、少女めがけて凄まじい出力の光線が放たれた。

 

「....っ!」

 

思わず目を覆う

 

その光線はやはり少女の上空で見えない壁にでも当たったかのように書き消された。そしてその光線に続くように、士道の後方に何者かが舞い降りた。

 

「な、なんなんだよ次から次へと....ッ!」

 

もうさっきから意味が分からない。

 

まるで悪質な夢を見ている気分だった。だが――そこに降り立った人影を見て、士道は身体を硬直させた。

機械を着ている、とでも言うのだろうか。背には大きなスラスターがついており、手にはゴルフバッグのような形状の武器を携えていた。

士道は身を凍らせた理由は単純だった。少女の顔に、目覚えがあったのである。

 

「鳶一 ――折紙.....?」

 

今朝、殿町から教えてもらった名を呟く。そう、そのやたらメカニックな格好をした少女は、クラスメートの鳶一折紙だった。

折紙がちらと士道を一瞥する。

 

「五河士道......?」

 

ピクリとも表情を変えず。しかしほんの少しだけ、怪訝そうな色を声にのせて。

 

 

雷牙side

 

雷牙の前に立つ白髪少女は刀を雷牙の首もとに向ける

 

「ちょっ.....、待て待て待て!」

 

雷牙は必死に声を上げた。

 

たが白髪少女は、不思議そうな目を向けてくる。

 

「.....何?」

 

「...何をしようとしているのかな...っ!」

 

「それはもちろん敵だから――早めに殺そうと」

 

「な、何故ですか....っ!」

 

「何故って.....?当然じゃない」

 

「だって貴方も敵だから殺しにきたのでしょ?(・・・・・・・・・・・・・)

 

「え―――?」

 

予想外の答えに雷牙は驚いた顔で口を開ける。

 

「....俺が敵なわけ、ないだろ」

 

「―――?」

 

そう言った雷牙に少女は驚き質問をした。

 

「――質問をする。貴方は私の敵?味方?」

 

雷牙はその質問に戸惑ったが慌ててすぐに返した。

 

「.....少なくとも俺はお前の味方だ!お前に危害を加えるつもりなど毛頭ない!」

 

「...そう....」

 

雷牙が味方だと言うと少女は刀を腰にある鞘にしまう。少女は雷牙の事を味方と判断した。

雷牙はふぅーと、息を吐き地面に尻餅をついた。

 

「――ねぇ」

 

少女が雷牙に声を掛ける。

 

「ん?」

 

「どうして貴方はこの人気の無い街に一人でいるの?」

 

少女は不思議と思ったのだ。本来は空間震警報がなっている時、住民はシェルターに避難をするが雷牙だけシェルターに避難をしていなかったのだ。

 

「...んーちょっと人を追いかけてたんだけどいつの間にか見失ったんだよねぇ~」

 

雷牙はつい先ほどまで高校から出ていく士道を見かけ面白そうだから後をつけたのだが、道中道がいりくんでいたため見失ったのだ。

 

「ふーん、そう」

 

少女は声は素っ気ないが目は真剣に聞いていた。

 

「....貴方は避難しなくていいの?」

 

少女はシェルターを知っているような口振りで尋ねてきたのだ。

 

「?お前シェルターの事知ってるのか」

 

少女はコクンと、頷く。

 

「――だって私が現界すると警報がなって人が地下に避難するんでしょ?」

 

「...そうだけど何でそんなこと知ってるんだ?」

 

それは――と少女が言うとした瞬間。

近くから爆発音の音が聞こえた。

 

「――うぉ!派手にかましてますねぇ..」

 

雷牙はこの爆発音の正体が分かっていた。彼もまた関係者でもある。

 

「...呼んでる(・・・・)

 

「――は?」

 

突然白髪少女が爆発音がした方向を見つめ、言葉を発していた。少女はその方向に向かおうとするが、何かを思い出したのか再び少年に方に身体を向ける。

 

「...ねぇ貴方、名前は?」

 

少女が名前を聞いてきたのだ。雷牙はいきなりだったので口をポカンと開けたがすぐに自分の名前を言う。

 

「――雷牙だ」

 

「....雷牙、ね...」

 

少女はさっきまで悲しい顔をしていたが雷牙の名前を聞くと何故か嬉しそうな表情をつくった。

 

「また、会えたらいいね。」

 

少女は笑顔で雷牙に再開の約束をしたのだ。雷牙は目を見開いたが、彼も少女に笑顔で言葉を返す。

 

「ああ、また会おうぜ!」

 

その言葉の最後に少女は空を飛び爆発音がした方向に向かった。

少女が去ると、ピーリリリリリという音が雷牙の携帯から聞こえてきた。雷牙は携帯をポケットからだし相手を見ると雷牙は怠そうな顔し電話に出る。

 

「....はいもしもし?あー...はい分かりましたそれでは」

 

ピッ!と、電話を切ると雷牙は背伸びをした。

 

「――やっぱ俺にも仕事(・・)がありますよねぇ...まぁいっか仕事頑張りゃ給料が上がるしな!」

 

雷牙は自分が走ってきた進行方向とは逆に進み電話があった目的地(・・・)に歩みを始めた。

 

また、会えるといいな

歩きながらそう心の中で雷牙はそう思った。

 

 

「.....は?な、なんだその格好――」

 

士道は間抜けな質問と自覚しながらも、そんな声を発する。

一気にいろんなことが起こりすぎていて、何から気にすればいいのかわからなかった。だが、折紙はすぐに士道から目を外し、ドレスの少女に向き直った。

それはそうだろう、何しろ、

 

「――ふん」

 

少女は先ほどと同じように、手にした剣を折紙に振り抜いたのだから。折紙は即座に地面を蹴ると、剣の太刀筋の延長線上から身をかわし、そのまま素晴らしい速さで少女に肉薄した。

いつの間にやら折紙の手にした武器先端には、光で構成された刃が出現している。

 

「――ぬ」

 

少女が微かに眉根を寄せ、手にしていた剣でその一撃を受け止める。

 

――瞬間。

 

少女と折紙の攻撃が交わった一点から、凄まじい衝撃波が発せられた。

それが合図だった。

 

「ちょ.....ッ、う、わあぁぁぁぁぁぁぁッ――!?」

 

その圧倒的な風圧に、士道は情けなく転がされ、塀にぶつかって昏倒した。

 

 

「――状況は?」

 

真紅の軍服をシャツの上から肩掛けにした少女は、艦橋に入るなりそう言った。

 

「司令」

 

館長席の隣に控えていた男が、軍の教本にでも書いてあるかのような綺麗な敬礼をする。

司令と呼ばれた少女はそれを一瞥だけして、男のすねを爪先で蹴った。

 

「おうっ!」

 

「挨拶はいいから、状況を説明なさい」

 

苦悶、というよりは恍惚とした表情を浮かべる男に言いながら、館長席に腰を掛ける。男は、即座に姿勢を正した。

 

「はっ。精霊出現と同時に攻撃がされました」

 

「AST?」

 

「そのようですね」

 

AST。対精霊部隊精霊を狩り精霊を捕らえ精霊を殺すために機械の鎧を纏った、人間以上怪物未満の現代魔術師たち。

とはいえ――超人レベルでは、精霊に太刀打ちできないのが実状だった。それくらい精霊の力は、桁が違う。

 

「――確認されているのは十名。現在一名が追撃、交戦しています」

 

「映像だして」

 

司令が言うと、艦橋の大モニターに、リアルタイム映像が映し出される。繁華街から通りを二つくらい

隔てた広めの道路上で、二人の少女が巨大な武器を握りながら交戦しているのが確認出来た。

武器を打ち合うたびに光が走り、地面が割れ、建造物が倒壊する。およそ現実とは思えない光景である。

 

「やるわね。――でも、ま、精霊相手じゃどうしようもないでしょ」

 

「確かにそのとおりですが、我々が何もできていないのもまた、事実です」

 

司令は足を上げると、ブーツの踵で男の足を踏み潰した。

 

「ぐぎっ!」

 

男が、この上なく幸せそうな顔を作るのを無視し、司令は小さく嘆息した。

 

「言われなくてもわかっているわ。――見ているだけというのにも飽きてきたところよ」

 

「と、いうことは」

 

「ええ。ようやく円卓会議から許可が下りたわ。――作戦を始めるわよ」

 

その言葉に、艦橋にいたクルーたちが息を呑むのが聞こえる。

 

「神無月」

 

司令は軽く背もたれに身体を預けるようにすると、小さく右手を上げ、人差し指と中指をピンと立てた。まるで、煙草でも要求するように。

 

「はっ」

 

男は素早く懐に手をやると、棒付きの小さなキャンディを取り出した。速やかに、しかし丁寧に包装を剥がしていく。そして司令の隣に跪き「どうぞ」と、司令の指の間にキャンディを挟み込んだ。

司令がそれを口に放り込み、棒をピコピコ動かす。

 

「....ああ、そういえば肝心の秘密兵器は?さっき電話に出なかったのだけれど。ちゃんと避難しているんでしょうね?」

 

「調べて見ましょう――と、ん?」

 

男が怪訝そうに首をひねる。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、あれを」

 

男が画面を指さす。司令はそちらに目をやり――「あ」と短い声を発した。

精霊とAST要員が武器を打ち合っている横で、制服の少年が伸びていたのである。

 

「....ちょうどいいわ。回収しちゃって」

 

「了解しました」

 

男は、またも折りめ正しく礼をした。

 

だが、男はもうひとつの画面に目を向け気づくと司令に報告する。

 

「司令一つ報告することが...」

 

「何かしら?言ってみなさい」

 

「はっ、まずこれを」

 

男は艦橋のモニターにあるもの(・・・・)を映した。

司令は少し驚くが男に命令を出す。

 

「神無月貴方に任務をあたえるわこの男の住所を割り出して此処に連れて来なさい。」

 

「司令!彼はASTですよ!?もしも何かがあったりでもしたら――ぎゃふん!」

 

「あら?私の言うことにケチをつける気?いいからさっさと連れて来なさい。」

 

「ぐぉ....了解しました。」

 

男はそう言うと艦橋の自動ドアから廊下に向かった。

 

「...ふーん、まさかAST要員が〈ホワイト〉と対話....ね、皮肉な話だわ」

 

司令は少し笑みを作りとあるモニターを見ながらそんなことを言った。

 

――――――――――――――――――――――

雷牙side

 

「ふぅー良かったぁ家は無事で」

 

雷牙は先ほど電話があった目的地に行く前に自分の家が空間震で倒壊してないか気になって確認をしていたのだ。

 

「この家がなきゃお金はあるけどホームレス生活なるからいやなんだよなぁ」

 

そんな呑気な事を考え家の中を確認すべくドアを開けようとした時、

 

「雷蒼雷牙さんですね?」

 

後ろから声が聞こえゆっくり後ろを振り向くと横に二人の黒いボディガードがいて真ん中に軍服を纏っている長身の青年がいた。

 

「誰だあんた?」

 

雷牙は低く威嚇するような声で言う

男は動揺もせず話しをする。

 

「――これは失礼私は〈ラタトスク機関〉、〈空中艦フラクシナス〉の副司令官を勤めさせていただいている神無月恭平と申します。以後お見知り置きを」

 

「〈ラタトスク機関〉?〈フラクシナス〉?まぁどっちでもいいか、そんな組織が民間人の俺に何の様だ?」

 

雷牙は軽い口調で問う。

 

「――はい実は司令が貴方に興味を持ち、貴方をフラクシナスに連れて来るよう任務をあたえられここにきました。私たちと動向願いますか?」

 

「因みに聞くが拒否権は?」

 

「無いと言っても良いでしょう。大人しくしていただければこちらも何もしないので御安心を」

 

「...一つ条件がある。それを了承してくれれば行くよ」

 

「はい我々が出来る範囲なら」

 

雷牙は「それじゃ」と、条件を神無月に説目をした。

 

「そのフラクシナス?に行く前に天宮駐屯地に行かせてくれないか?さっきそこから出頭電話が掛かってきたからなその用事が終わってからならもちろん動向する。なに、逃げるわけじゃないからそこだけは安心してくれ」

 

「分かりました。ではこの〈インカム〉を持っていてください。用事が終わりましたらインカムを耳に装着して二回小突いていただくと我々がフラクシナスで回収する合図なのでお忘れなく。司令には後で伝えておきますので、ではまた後程。」

 

「...ああ、またな」

 

その後神無月と名乗る男は雷牙の前から消えた。

どうやら無駄に逃げても追いかけて来そうなので雷牙は折れたようにため息をしながら条件付きで渋々了承をしたのだ。再びドアの前に振り向き家の中に入った。

 

はぁ今日は何かと散々な目にあうな......

雷牙は心の中で密かに呟くのだった。

 

 

――久しぶり。

 

頭の中に、どこかで聞いたことのある声が響く。

 

――やっと、やっと会えたね、○○○。

 

懐かしむように、慈しむように。

 

――嬉しいよ。でも、もう少し、もう少し待って。

 

一体誰だ、と問いかけるも、答えない。

 

――もう、絶対離さない。もう、絶対間違わない。だから、

 

不思議な声はそこで、途切れた。

 

 

 

 

「...........はっ!」

 

士道は目を覚まし、

 

「うわッ!」

 

とすぐさま叫びを上げた。それはそうだ。何しろ見知らぬ女性が指で士道の瞼を開き、小さなペンライトのようなもので光を当てていたのである。

 

「.....ん?目覚めたね」

 

妙に眠たげな顔をした女は、その顔に違わぬぼうっとした声でそう言った。気絶した士道の眼球運動を見ていたらしく、妙に顔が近い。

 

「だ、だだだだダレデスカ」

 

「......ん、ああ」

 

女はぼうっとした様子のまま身体を起こすと、垂れていた前髪を鬱陶しげにかき上げた。

一定の距離が空いたことで、女の全貌が見取れるようになる。軍服らしき服を纏った、二十歳くらいの女である。無造作に纏められた髪に、分厚い隈に飾られた目、あとは何故か軍服のポケットから顔を除かせている傷だらけのクマのぬいぐるみが特徴的だった。

 

「......ここで解析官をやっている、村雨令音だ。あいにく医務官が席をはずしていてね。....まぁ安心してくれ。免許こそ持っていないが、簡単な看護くらいならできる」

 

「.........」

 

まるで安心できない。だって明らかに、士道よりも令音という女性の方が不健康そうに見えるのである。実際先ほどから、頭で小さく円を描くように身体をふらふらさせている。と、上体を起こした士道は、今の令音の言葉に引っかかりを覚えた。

 

「――ここ?」

 

言って、周囲を見回す。

士道は簡素なパイプベッドの上に寝かされていた。そしてその周りを取り囲むように、白いカーテンが仕切り作っている。まるで学校の保健室のような空間だった。ただ少し異なるのは天井だった。何やら無骨な配管や配線が剥き出しになっている。

 

「ど、どこですか、ここ....」

 

「.....ああ、〈フラクシナス〉の医務室だ。気絶していたので勝手に運ばせてもらったよ」

 

「〈フラクシナス〉.....?ていうか気絶って....、あ――」

 

そうだ、士道は謎の少女と折紙の戦闘に巻き込まれ、気を失っていたのだった。

 

「....え、えぇと、質問いいですか。ちょっとよくわからないことが多すぎて――」

 

頭をくしゃくしゃとやりながら声を発する。

しかし令音は応じず、無言で士道に背を向けた。

 

「あ――ちょっと....」

 

「.....ついてきたまえ。君に紹介したい人がいる。....気になることはいろいろあるだろうが、どうも私は説明下手でね。詳しい話はその人から聞くといい」

 

そう言って、カーテン を開ける。カーテンの外には少し広い空間になっていた。ベッドが六つほど並び、部屋の奥には見慣れない医療器具のようなものが置かれている。

令音は部屋の出入口と思わしき方向に向かい、ふらふらと歩みを進めていった。

が、すぐに足をもつれさせると、ガン!と音を立てて頭を壁に打ちつけた。

 

「!だ、大丈夫ですか!」

 

「.....むう」

 

一応倒れはしなかったらしい。令音が壁にもたれかかるようにしながらうめく。

 

「.....ああ、すまんね。最近少し寝不足なんだ」

 

「ど、どれくらい寝てないんですか」

 

士道が問うと、令音は考えを巡らせる仕草を見せてから、指を三本立ててきた。

 

「.....三日。そりゃ眠いですよ」

 

「.....三十年、かな?」

 

「ケタが違ぇ!」

 

明らか的に、彼女の外見年齢を越えているのだ。

 

「.....まぁ、最後に睡眠をとった日が思い出せないのは本当だ。どうも不眠症気味でね」

 

「そ、そうですか.....」

 

「.....と。ああ、失礼、薬の時間だ」

 

と、令音は、突然懐を探ると、錠剤が入ったピルケースを取り出した。そしてピルケースを開けると、錠剤をラッパ飲みの要領で一気に口の中に放り込んだ。

 

「っておいッ!」

 

思わずツッコミを入れる。

 

「....なんだね騒々しい」

 

「いや、なんて量を飲んでるんですか!ていうか何の薬ですか!?」

 

「.....全部睡眠導入剤だが」

 

「それ死ぬッ!さすがに洒落になれねぇ!」

 

「....でもいまひとつ効きが悪くてね」

 

「どんな身体してるんですか!」

 

「....まぁでも甘くて美味しいからいいんだがね」

 

「それラムネじゃねぇの?!?」

 

ひとしきり叫んでから、士道は「はぁ」とため息を吐いた。

 

「.....とにかく、こっちだ。ついてきたまえ」

 

空っぽになったピルケースを懐に戻してから令音はまたも危なっかしい足取りで歩みを進め医務室の扉を開ける

 

「――っとと」

 

士道は慌てて靴を履くと、そのあとを追って部屋の外に出た。

 

「....ここだ」

 

機械的な通路の突き当たり、横に小さな電子パネルが付いた扉の前で足を止め、令音が言った。

次の瞬間、電子パネルが軽快な音を鳴らし、滑らかに扉がスライドする。

 

「......さ、入りたまえ」

 

令音が中に入っていく。士道はそのあとに続いた。

 

「......っ、こりゃあ.....」

 

そして、扉の向こうに広がっていた光景に、目を見開く。一言で言うと、船の艦橋のような場所だった。士道がくぐった扉から、半楕円の形に床が広がり、その中心に艦長席と思しき椅子が設えられている。さらに左右両側になだらかな階段が延びており、そこから下りた下段には、複雑そうなコンソールを操作するクルーたちが見受けられた。全体に薄暗く、あちこちに設えられたモニターの光が、いやに存在感を主張している。

 

「.....連れてきたよ」

 

令音が、ふらふらと頭を揺らしながら言う。

 

「ご苦労様です」

 

艦長席の横に立った長身の男が、執事のような調子で軽く礼をする。ウェーブのかかった髪に、日本人離れした鼻梁。耽美小説にでも出てきそうな風貌の青年だった。

 

「初めまして。私はこの副司令、神無月恭平と申します。以後お見知り置きを」

 

「は、はぁ....」

 

頬をかきながら、小さく頭を下げる。

士道は一瞬、令音がこの男に話しかけたのだと思った。

 

だが――違う。

 

「司令、村雨解析官が戻りました」

 

神無月が声をかけると、こちらに背を向けていた艦長席が、低いうなりを上げながらゆっくりと回転した。

そして。

 

「――歓迎するわ。ようこそ、〈ラタトスク〉へ」

 

『司令』なんて呼ばれるには少々可愛すぎる声を響かせながら、真紅の軍服を肩掛けにした少女の姿が明らかになった。

大きな黒いリボンで二つに括られた髪。小柄な体躯。どんぐりみたいな丸っこい目。そして口にくわえていたチュッパチャプス。

士道は眉をひそめた。だって、それはどう見ても――

 

「......琴里?」

 

そう、格好、口調それに全身から発する雰囲気など、違いは数あれど、その少女は間違いなくつい先ほどまで探していた士道の可愛い妹・五河琴里だった。

 

 

「――五河、士道」

 

小さな、誰にも聞こえないくらいの声を発し、折紙は頭の中に彼の顔を思い浮かべた。間違えなく、あの時の(・・・・)少年だった。折紙の記憶が、間違えるはずがない。少し残念ではあったけれど――会ったのはあれ一回きりだったし、向こうが折紙のことを覚えていないのは仕方ない。高校に入学したときからあれこれと接触を試みていたが、全て失敗に終わっていたし。

今折紙はそれ以上に、気になることがあった。

 

「なぜ、あんなところに」

 

空間震警報の鳴り響く街に、なぜ彼が出ていたのかがわからなかった。

それに――彼は間違えなく目にしていた。特殊兵装を纏った折紙の姿と――精霊を。

 

「鳶一 一曹(いっそう)、準備整いました!」

 

「――――」

 

突然響いた整備士の声に、折紙はふっとうつむかせていた顔を上げた。そしてすぐさま、頭の中に浮遊の指令を発現をさせる。

するとその指令は折紙が身に纏っていた着用型接続装置(ワイヤリングスーツ)を通して、背に装着されたスラスターパーツに伝わり、内臓された顕現装置(リアライザ)を発動させた。およそ飛行には向きそうもないフォルムの装備を纏った折紙の身体が、鈍重そうな武器ごと軽やかに宙に浮く。

陸上自衛隊・天宮駐屯地(てんぐうちゅうとんち)

その一角に位置する格納庫で、折紙は整備士の誘導に従いながら、自分の専用ドックに腰掛けるように着地し、武器を定位置に納めると、ようやく息を吐いて全ての顕現装置(リアライザ)を解除した。

それと同時に、今まで欠片(かけら)も感じていなかった装備の重量や蓄積した疲労が、一気に折紙の身体を押さえつけた。後方から機械音がして、背に装備していたスラスターの接続が解除される。だがその後三分ほど、折紙はその場から立ち上がることができなかった。

CR-ユニットを使用したあとは毎回(・・)こうである。超人から一般に戻ると、それだけで身体が異様に重く感じてしまう。

戦術顕現装置搭載(コンバット・リアライザ)ユニット。通称CR-ユニット。

三十年前の大空災の折、人類が手にした奇跡の技術・顕現装置(リアライザ)を、戦術的に運用するための装備の総称である。

コンピューター上の演算結果を、物理法則を歪めて現実世界に再現する。要は、制限付きではあるものの、想像を現実にする技術である。科学的な手段を(もっ)ていわゆる『魔法』を再現するシステムと言うこともできた。

そして同時に――人間が精霊に、

唯一対抗できる手段(・・・・・・・・・)でもある。

 

「―――」

 

折紙は、細く息を吐くと同時、少し上にやった。

今日の戦闘を思い起こす。

――世界を殺す災厄・精霊超人たる折紙たちが幾人束になろうとも、傷一つつけることが叶わない異常。どこからともなく現れ、気まぐれに破壊を撒いていく、天災的怪物。

 

「.........」

 

結局今日の戦闘も、精霊の消失(ロスト)により巻く引きとなった。消失(ロスト)、といっても、精霊は死んだわけではない。要は、空間を越えて逃げられただけだ。書類上はASTの動きによって精霊を撃退した、ということになるのだろうが――折紙含め現場で直接戦っている隊員たちは皆、理解していた。精霊がこちらを驚異とも思っておらず、消失(ロスト)するのも、精霊の気まぐれに過ぎないのだということを。

 

「........っ」

 

表情はぴくりと動かさず。けれど、折紙は奥歯を強く噛み締めた。

 

「折紙」

 

と、そこで格納庫の奥から響いたきた声に、折紙は思考を中断させられた。

 

「.........」

 

無言で、そちらを向く。まだ身体が慣れていないのか、首がずっしりと重かった。ワイヤリングスーツに搭載されている基礎顕現装置(ベーシック・リアライザ)は、発動すると同時に自分の周囲数メートルに随意領域(テリトリー)を展開する。

この領域がCR-ユニットの要だ。随意領域(テリトリー)。文字通り、使用者の思い通りになる空間のことである。どんな外部衝撃をも緩和し、また、内部の重力さえも自在に設定することができる。この領域を展開している限り、折紙たちAST要員は超人となり得るのだ。

だから逆に、CR-ユニット使用後は少しの間、身体が思うように動かせなくなるのである。

 

「ご苦労さん」

 

そこには、折紙と同じくワイヤリングスーツを着込んだ、二十代半ばくらいの女とを来禅高校の制服を着ている男が腰に手を当てて立っていた。日下部燎子 一尉(くさかべりょうこ いちい)。折紙の所属するASTの隊長だ。

それと横にいるもう一人は折紙と同い年で黒髪、赤目の中性的の少年折紙唯一つの幼馴染である雷蒼雷牙(らいそうらいが)だった。

 

「よく一人で二体の精霊(・・・・・)を撃退してくれたわね。......友原(ともはら)加賀谷(かがや)にはきつく言っとくわ。折紙一人に精霊任せて離脱するなんて」

 

「『撃退なんて、してない』って思ってんだろ折紙?」

 

雷牙が折紙の心を読み取ると、折紙は肩をピクッと震わせた。どうやらあたっていたらしい。雷牙そう言うと、燎子は肩をすくめた。

 

「上への報告はそうしとかなきゃなんないのよ。ちゃんと成果出てますってことにしとかなきゃ予算が下りないの」

 

「.......」

 

「そう怖い顔をすんじゃないの。雷牙だってあんたのことを褒めてるんだから。エースが席を空けている状況で、よく頑張ってくれてるわ。あんたがいなきゃ死んでた人間も、もう一人や二人じゃ済まないでしょうよ」

 

燎子はそう言って、ふうと息を吐く。

 

「ただねぇ」

 

燎子は視線を尖らせると、折紙の頭を掴んで自分に向けさせた。これを見た雷牙は、やれやれと腕を曲げる。

 

「あんたは少し無茶しすぎ。――そんなに死にたいの?」

 

「........」

 

燎子は折紙に鋭い視線を向けたまま言葉を続けた。

 

 

「あんた、自分がどんな怪物相手にしているか本当にわかって戦ってるの?あれは化物よ。知能を持ったハリケーンよ。――いい?できるだけ被害を最小限に抑えて、できるだけ早く消失(ロスト)させる。それが私たちの仕事よ。無駄な危険は冒さないようにしなさい」

 

「――違う」

 

折紙は燎子の目をまっすぐ見つめ返すと、小さく唇を開いた。

 

「精霊を倒すのが、ASTの役目」

 

「.........」

 

「――私は、精霊を、倒す」

 

「..........」

 

燎子は息を()くと、折紙の頭から手を離した。

 

「.....別に、個人の考えに口を出すつもりはないわ。好きに思ってなさい。――でも、戦場で命令に背くようなら、部隊から外すわよ」

 

「了解」

 

折紙は短く答えると、ようやく馴染んだ身体を起こし、歩いていった。

 

 

雷牙side

 

「あんなこと言っていいんすか?隊長」

 

折紙が歩いている後ろ姿を見ながら燎子に言う。

 

「いいのよそんぐらい。今の内に釘を刺しとかないと後々扱うのが難しくなるからね」

 

雷牙は興味なしに「ふーん」返す。

 

「因みにあんたにも言えるからね?」

 

「はて?何の事やら」

 

「誤魔化しても駄目よ。折紙から聞いたわ、あんた、空間震警報鳴ってても学校のシェルターに避難しなかったんですって?」

 

雷牙は少し頬に汗を少し垂らす。

 

燎子は小さくはぁとため息を吐く。

 

「まぁ無事だったから良かったけど、もし怪我をして病院送りになったら折紙が黙ってないわよ?そこんとこだけ考慮しなさい。あんたと折紙は唯一の幼馴染(・・・・・・)何でしょ?」

 

「.......」

 

雷牙は何も言わずコクンと、頷く。

 

「分かったのならいいわ。こっちもあんたがいなくなるとCR-ユニットの作業効率が悪くなるからそこだけ忘れないで」

 

「善処します。」

 

雷牙はそう言うと、何処かに行こうとする。

 

「どこ行くの?」

 

「家に帰るんすよどうせ俺がいなくてもそこまで状況が悪いようじゃなさそうですし」

 

「そう...気をつけて帰りなさい。」

 

雷牙はそれを聞くと「では」と手を降り駐屯地から外にでた。

外に出て近くにある路地裏に入ると制服のポケットからインカムを取り出し左耳に装着して、二回インカム小突く。

その瞬間。

 

雷牙の身体がいきなり浮遊感に包まれ、目を開けると、さっきの路地裏ではなくテレポーターみたいな所にいた。

その前に自動ドアあったため中に入ると、そこにはまるで宇宙戦艦みたいな艦橋があった。その艦長席に小柄な少女が座っていたのだ。

 

「ようこそ、〈フラクシナス〉へ歓迎するわ雷蒼雷牙」

 

 

 

数分前

 

「――で、これが、精霊って呼ばれてる怪物で、こっちがAST。陸自の対精霊部隊よ。厄介なものに巻き込まれてくれたわね。私たちが回収してなかったら、今頃二、三回くらい死んでたかも知れないわよ?で、次に行くけど――」

 

「ちょ、ちょっと待った!」

 

ペラペラと説明を始めた琴里を制するように、士道は声を上げた。

 

「何どうしたのよ。せっかく司令官直々に説明してあげているっていうのに。もっと光栄に咽び泣いてみせなさいよ。今なら特別に、足の裏くらい舐めさせてあげるわよ?」

 

軽くあごを上に向け、士道を見下すような視線を作りながら、琴里らしからぬ暴言を吐いてくる。

 

「ほ....ッ、本当ですか!?」

喜び勇んで声を上げたのは、琴里の横に立った神無月だった。琴里が即座に、「あんたじゃない」と鳩尾に肘鉄を放つ。

 

「ぎゃぉふッ....あ、ありがとうございます.....」

 

そんなやりとりを眺めてから、士道は呆然と口を開いた。

 

「....こ、琴里....だよな?無事だったのか?」

 

「あら、妹の顔を忘れたの、士道?物覚えが悪いとは思っていたけど、さすがにそこまで予想外だったわね。今から老人ホームを予約しておいた方がいいかしら」

 

士道は頬に汗をひとすじ垂らした。ついでにほっぺをつねってみると、痛かった。

 

「.....なんかもう、意味がわからなすぎて頭の中がワニワニパニックだ。おまえ、何してんだ?ていうかここ、ドコだ?この人たち、何だ?それに――」

 

「落ち着きなさい。まずこっちから理解してもらわないと、説明のしょうがないのよ」

 

そう言って琴里が、艦橋のスクリーンを指さす。

 

そこには、先刻士道が遭遇した黒髪の少女と機械の鎧を纏った人間たちが映しだされていた。

 

「ええと......精霊.......って言ったっけ?」

 

「そ。彼女は本来この世界には存在しないモノであり――この世界に出現するだけで、己の意思とは関係なく、あたり一帯を吹き飛ばしちゃうの」

 

琴里が両手をドーン!と広げ爆発を表現する。

士道は頬に手をあてて渋面を作った。

 

「.....悪い、ちょっと壮大すぎてよくわかんね」

 

すると、琴里が「ここまで言ってもわからない?」と肩をすくめながら吐息した。

 

「空間震、って呼ばれてる現象は、彼女みたいな精霊が、この世界に現れるときの余波だって言ってるのよ」

 

「な――」

 

士道は思わず眉根を寄せた。空間の地震。空間震。

人類を、世界を蝕む理不尽極まる現象。

その原因が、あの少女だというのか――?

 

「ま.......規模はまちまちだけどね。小さければ数メートル程度、大きければ――それこそ、大陸に大穴が開くくらい」

琴里が、両手で大きな輪を作る。

三十年前確認された最初の空間震――ユーラシア大空災のことを言っているのだろう。

 

「運がいいわよ士道。もし今回の爆発規模がもっと大きかったら、あなた一緒に吹っ飛ばされてたかも知れないんだから」

 

「.....っ」

 

「だいたい、なんで警報発令中に外出てたの?馬鹿なの?死ぬの?」

 

「いや....だっておまえ、これ」

 

士道はポケットから携帯電話を取り出すと、琴里の位置情報を表示させた。やはり、琴里のアイコンはファミレスの前で停止している。

 

「ん?ああ、それ」

 

しかし琴里は、懐から携帯電話を取り出して見せた。

 

「あ.....?なんでおまえ、それ」

 

「簡単よ。ここがファミレスの前だから」

 

「は.....?」

 

「ちょうどいいわ。見せた方が早いでしょ。――一回フィルター切って」

 

琴里が言うと、薄暗かった艦橋が一気に明るくなった。

事実――あたりには青空が広がっていた。

 

「な、なんだこりゃ....ッ」

 

「騒がないでちょうだい。外の景色がそのまま見えてるだけよ」

 

「外の景色って....これ」

 

「ええ。ここは天宮市上空一万500メートル。――位置的にはちょうど、待ち合わせしてたファミレスのあたりになるかしらね」

 

「ここ、って....」

 

そう。この〈フラクシナス〉は、空中艦よ」

 

琴里は腕組みし、ふふんと鼻を鳴らす。

 

「く、空中艦ん....っ?なんだよそりゃ。なんでおまえがそんなのに――」

 

「だから順を追って説明するって言ってるでしょう?鶏だって三歩歩くまでは覚えてるでしょうに」

 

「む....」

 

「.....でも、ケータイの位置確認で調べられちゃうなんて盲点だったわね。顕現装置(リアライザ)不可視迷彩(インビジブル)自動回避(アヴォイド)かけてたから油断してたわ。あとで対策打っておかないと」

 

琴里が、よくわからない単語を呟きながらあごに手を置く。

 

「な、何を言ってるんだ?」

 

「ああ、気にしないで。そこまで士道に期待していないから。グラム当たりの値段でいったら毛蟹に負けるくらいの脳だものね」

 

「.......」

 

「司令。蟹味噌は脳ではなく中腸線です。」

 

士道が頬に汗を垂らしていると、神無月が穏やかな声でそう言った。

 

「.......」

 

琴里はちょいちょい、と手招きをすると、神無月に腰を折らせた。そしてその目に向けて、プッ、と舐め終わったキャンディの棒を吹き出す。

 

「ぬぁォうッ!」

 

目元を押さえ、神無月が後方へ転がった。

 

 

「だ――大丈夫ですかッ!」

 

すがに洒落にならない。士道は声を上げた。しかしその場に駆け寄ろうとしたところで足を止める。床に転がった神無月が恍惚とした表情で懐からハンカチを取り出し、今し方琴里が放ったキャンディの棒を丁寧に包み込んでいた。

 

「おっと、心配させてしまいましたか?大丈夫、我々の業界ではご褒美です!」

 

言って、神無月がピョンと立ち上がり、完璧な直立姿勢を作る。どんな業界だろうか。あまり深くは知りたくなかった。

 

「神無月」

 

「はっ」

 

琴里が指を二本立てると、神無月が代わりの飴を取り出し、手渡した。

 

「それと、次はこっちね。AST。精霊専門の部隊よ」

 

言って、琴里がスクリーンに映しだされていた一団を示す。

 

「.....精霊専門の部隊って――具体的には何をしているんだよ」

 

士道が問うと、琴里は当然と言うように眉を上げた。

 

「簡単よ。精霊が出現したら、その場に飛んでいって処理するの」

 

「処理.......?」

 

「それは()が来てから説明しましょう。」

 

「...彼?」

 

そう士道が言うと後ろの自動扉がスライドする。

琴里は「来たわね」と言い艦長席を後ろを向く。

士道もそれに釣られて後ろを見ると士道は目を大きくめ開くそう、そこには―――

 

「ようこそ、〈フラクシナス〉へ歓迎するわ雷蒼雷牙」

 

ここにはいるはずのない士道のクラスメート雷蒼雷牙がいたのだ。

 

「...な、何で雷蒼がここにいるんだよ!」

 

士道は驚いた声で琴里に問う。

 

「それは私が直々にスカウトしたのよ。」

 

「....スカウト?」

 

「ええ。ま、まだ彼に了承貰ってないから今言うんだけどね」

 

琴里はコホンと、話を戻した。

 

「んじゃ、初めまして、私はここ〈フラクシナス〉の司令官をしている。五河琴里よさっそくで悪いのだけど」

 

琴里は言葉を区切って真剣な眼差しで雷牙を見て言う。

 

「単刀直入に言うわ雷蒼雷牙私たち、〈ラタトスク機関〉に入ってもらえないかしら?」

 

それを聞くと雷牙は、一瞬にして体が凍ったような感じがした。

 

 




ハイ如何でしたか?雷牙君遂にオリ精霊とラタトスクに接触しましたね。

次回は本当に短くにするつもりなので、宜しくお願いします。
ではまた次回にお会いしましょう。

次回:訓練

ヒロインもっと増えるかもで誰がいいか

  • 七罪
  • 夕弦
  • 耶倶矢
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