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錬金術のアトリエ 14
……朝は暗いうちに起きた。
オスカーが先に起きて、身体を起こすと、半分だけ上に乗ってたソフィーも起きる。
「おはよ~……」
乱れきった肌襦袢に毛布、片袖だけ通してるソフィーが寝ぼけまなこでオスカーにしがみつく。
「ははっ、今日も可愛いなぁソフィー」
オスカーは、そんなソフィーの頭を撫でる。
「夕べも可愛かったでしょ?めっちゃハジケちゃったもんね」
ソフィーは立ち上がり、肌襦袢を着ける。
「まあ、またぷにちゃんを頼っておいでよ。オイラ外に出てるからさ」
オスカーも暖炉前で身体を拭いて服を着ると、そう言って外に出ていく。
……お互いに普段着に着替えて……
オスカーは朝食を作り、ソフィーは調合を始める。
3時間掛かるクロースの作成。
これがスプルースの材料なので、銀いもパワーを宿らせて作る。
「フリッツさんの作業台、スプルース2つじゃ足りないくらいぼろぼろだし、コルちゃんの量産にも需要ありそうだし……喜ばれる木材……作るよ!」
「……それはいいけど、木材の呪いは大丈夫か?」
オスカーが食材を切りながら尋ねる。
「それは平気だよ~。引き継がなければ、いいだけだからね!」
ソフィーは即答する。
「まあよく分からないけど、ソフィーが言うならそうなんだろうな」
オスカーは料理を進める。
……朝食を食べて、オスカーはアトリエを出る。
ソフィーは、そのまま錬金術生活。
スプルース量産を始める。
「しかし、昨日もまた大きな声でしたね……」
漬け置きの時間、プラフタはソフィーと錬金釜の回りをふわふわと飛ぶ。
「えへへ~……女の子って楽しいよね?」
ソフィーはプラフタを見る。
「そ、そんな事……私には分かりませんっ!」
かくっ、と少し落下してから、プラフタはふらふらと飛び、ソフィーから距離を置く。
「あ!プラフタ動揺してる?動揺してるでしょ~!?」
そんなプラフタをソフィーは追いかける。
「全く!あなたって人は!能天気なんですから!」
そんなじゃれあいをしつつ、錬金術談義をして過ごす。
ちょこっと調合の幅が広がったりする、錬金術の理論の勉強なんかもする。
……お昼にコルちゃんがやって来て、せっかくなので一緒に、ぷにちゃんの部屋に。
時間が止まる分、気軽に行ける。
ロジーさん嫌いレベルが上がっていて、なんか近くに来るだけで、ぞわぞわしてる日々。
もう別れそうな感じで、今や悩みと言うと、住む所みたいだった。
少し時間を膨らませて、ソフィーとコルちゃんで眠る。
ソフィーとしてはそんな眠れなくて、ぷにちゃんとお喋りして過ごす。
……明日も旅はお休み、と伝えてコルちゃんが帰り、錬金術生活を続ける。
あっという間に夜になり、朝になる。
ぷにちゃん部屋で眠るから時間があるけど、追加フラム大先輩と、スプルース量産で朝になってしまった。
窓を見るといい天気。
「よし!キルヘンベル巡りしよっと。プラフタも行く?エリーゼお姉ちゃんの本屋に遊びに行ったら、エリーゼお姉ちゃんも喜ぶよ~……」
ソフィーがそう言うと、本を読んでいたプラフタはふわふわと飛ぶ。
「昨日ずっと錬金術談義でしたからね。中和剤(緑)しか幅は広がりませんでしたが……エリーゼの本屋なら……」
そしてプラフタはふわふわとソフィーに寄る。
……乗り気みたいだ……
「うんうん、マイスターミトンは持ってってあげる」
ソフィーとプラフタはエリーゼの本屋へと向かう。
「……もしや、今日はオスカーが……?」
アトリエの山を降りる道……
ソフィーの近くを、ふわふわと飛ぶプラフタはソフィーに聞いてみる。
「え?……今日は来ないんじゃないかなぁ……昨日の今日だもんね。プラフタ居なかったら寂しいから……でもエリーゼお姉ちゃんも、プラフタが側に居るといい夢見れるって言ってたなぁ……人気者だね」
ソフィーはそう答える。
そして噴水広場を通った時に、ジュリオさんとモニカが凄い早さで近くの森へと走っていく姿を見かけた。
「……なんだろ?よし!あたしもダーッシュ!」
ソフィーも駆け出す。かなり早い。
「もう!子供なんですから!」
プラフタも遅れながら、パタパタと追いかける。
旧市街を抜けて、近くの森へ。
エリーゼお姉ちゃんが木陰で本を読んでいて、その側でジュリオさんとモニカが立ち止まってた。
「とおーっ!」
ソフィーもジャンプして着地する。
「おお、ソフィーも走り込みかい?」
ジュリオさんが、さわやか笑顔で言う。
「え?走り込みだったの?」
ソフィーは、そんなジュリオさんとモニカを見る。
エリーゼお姉ちゃんは顔を上げて、3人とプラフタを見る。
「あら……!?プラフタまで居るの?」
少し遅れてプラフタが飛んで来た。
「あらま……なんか、集合しちゃったわね。くすっ」
モニカは笑う。
「何か事件かと思っちゃったよ。走り込みだったんだね。あたしはプラフタをエリーゼお姉ちゃんの本屋に案内して、街をふらふらしようと思ったんだけどね」
ジュリオさんとモニカは、走り込みの途中らしく、また走って行った。
ソフィーは、エリーゼお姉ちゃんとプラフタと、本屋へと行く。
本屋のカウンターにオスカーが座っていて、本を読んでた。
「……お?ソフィーじゃないか」
店に入ると、オスカーは顔を上げて立ち上がる。
「今日はプラフタも本が好きだし、ページを捲る事が出来るようになったから、来てみたんだ」
エリーゼお姉ちゃんがカウンターに戻り、オスカーは本棚を見る。
相変わらず勉強熱心だ。きっと植物関係だろう。
「なるほどねぇ……」
オスカーは気のない返事をする。
ソフィーは邪魔しないように、プラフタとマイスターミトンを置いて、本屋を出る。
カフェへと向かう。
明日は採取の旅に行かないと……
依頼も結構あるだろうし……
「ソフィーさん、ソフィーさん……」
コルちゃん露店を通り、コルちゃんを見ると、なんか嬉しそうに手招きをする。
「お!なんか嬉しそうだね、コルちゃん?何かあったの?」
「今日は掘り出し物があるです。ソフィーさんなら飛び付くかも……知れません」
1500コールとお高い値札……
伝説の逸品アカツキの毛皮!
……「肉体を強化する」「お日様のにおい」………
「な、なんじゃこりゃあぁぁ~!買うし!こんなの、買うに決まってるし!」
ソフィーは手持ちもあるし、そのアカツキの毛皮を買った。
あと地味にクロース素材であり、あまり手に入らないケモノの毛皮も、45コールとお手頃価格で売られていた。
「まいどです。こんなに買って貰ったのでは何かオマケでもしないと……これをどうぞ」
コルちゃん露店特製、コルちゃんクッキー☆を貰った。
「あ……素朴な優しい味がするね……」
なんか、ソフィーにはあまり美味しくないクッキーだった。
……なんかヘンに魚の匂いがするし……
「お酒に合うクッキーが、求められていたりしますので」
コルちゃんはネコ目で笑う。
常連の職人さん向けのクッキーなんだそうだ。
そして八百屋に行き、キルヘンミルクをコルちゃん露店のツケで飲んでいい……らしいので飲む。
「キルヘンミルクが、やたら売れるようになってねぇ……あの子、意外と商売上手みたいなんだよねぇ……」
マルグリットさんが、コルちゃんに感心してた。
八百屋の脇にミルク用のテーブル……代わりのたるが置かれていた。
「たる!」
……ソフィーはキルヘンミルクとクッキーを堪能して、カフェへと行く。
「やっほー☆」
今日はテスさんの日だった。
「あ!テスさんこの引換券……テスさんが描いたんですか?」
ソフィーは12枚の引換券を取り出す。
絵心がない絵の入った引換券は統一性もなく、描いてある絵も様々なのだ。
……自由を感じる。
「弟たちが描いてるんだよ。でもニセモノはあたしが姉としてバッチリ見分けるからね。セキュリティも万全なのさ」
テスさんは笑う。
そして引換券の商品棚……カフェの奥を見せてくれた。
「うわぁぁ……何これ何これ……凄い品物ばっかりじゃないですか~!」
……一体どこから手に入れているのか……錬金術の幅が広がりそうな品物に、錬金術で作られた装飾品まである。
「この!ピュアウォーター下さい!」
引換券10枚の水を選ぶ。
品質底上げ「出来がいい」が付き、キラキラオーラが強い。
その上で「薬を強化」とか付いてるチート品だ。
これをコルちゃんが増やせたら……
やばい、キルヘンベル全体がキラキラしてしまう。
「ほい。こんなんでいいの?」
テスさんはピュアウォーターを引き換えてくれた。
早速コルちゃん露店に登録を企んでみる。
「これを登録しますか……ふむ……1つ58コールで売りますね。それほど増やしづらい……的な物でもないので」
コルちゃんは、これを増やせるみたいだ。
しかもお安い。
キルヘンベルが、キラキラする予感がする。
「これをばんばん増やせるなんて……コルちゃん凄いね」
ソフィーは感心する。
「まあ……そういう錬金術ですので。それに、他の国にも、こうした量販店をする錬金術士……というより……私のような商人と……ソフィーさんのような、新しい物を作り出す錬金術士が居たりするそうです」
コルちゃんは例によって、口許を隠してそう話す。
「ほほ~う……商人の人から聞いたの?」
ソフィーは聞いてみる。
伝聞っぽいし。
「フリッツさんに聞きました。あまりあこぎにお金儲けして、国王に仕えていた錬金術士と量販店が、滅ぼされた話がいくつか、あるそうです。なので怖い話ですけれど……」
コルちゃんは伏し目がちにそう話す。
「えええ~っ!?」
ソフィーが驚くとコルちゃんもびくっ、と構える。
「……まあ……詳しくはフリッツさんに聞くといいです。それに……そうした物語が本になってたりもするらしいので、本屋さんにもあるかもです」
コルちゃんはそう言ってソフィーを見上げる。
「わ、私達もやばい!?」
ソフィーは両手を口に当てる仕草をしながら、ふと不安に思う。
「とりあえず……私もソフィーさんもお金持ちではありませんので……大丈夫かと思いますが……」
そんな話を聞いて、ソフィーはアトリエに帰る。
アトリエ前にはフリッツさんが居た。
「あれ……?フリッツさん?」
外テーブルに座っていたフリッツさんは、ソフィーを見て立ち上がる。
「ああ、スプルースを使いきってしまってな。しかも修復は終わっていないのだ。それでまた用意して貰えたら……と来たのだ」
1日で使い果たしてしまってる辺り、かなり御執心のようだ。
それに見事にぼろぼろな作業台だったから、なるほど足りない訳だし、もう作っておいたし。
「あ。じゃあ昨日作ったので良ければ……それと、コルちゃんにした話、あたしも聞きたかったんですよ。お茶も淹れますね」
ソフィーはアトリエにフリッツさんを招き入れる。
「ほお。既に出来ている、というのは非常に助かる。コルネリアにした話だな。聞いて損はなかろう」
フリッツさんもアトリエに入り、お茶とお菓子を前に、フリッツさんは話し出す。
「……さて、錬金術士の力と言うのは、マナの柱の力によるものが大きい。錬金術に限った事ではないのだが、あまりに急に人が力を持つのだ。……これは力を得ていない者にとっては……ずるい……と思う物だな……当然本人の努力もあるだろうが、不公平だと言えると思う。……世界なんて元々が不公平で当たり前なのだが……」
確かに、ソフィーの生活も激変。
痩せていたのも治ったし、錬金術が使えるようになって毎日がワクワクキラキラだ。
「……確かにそうですね」
世界が元々不公平、ってのはよく分からなかったけど……まあそうなんだろうかな……とだけ思いつつ、ソフィーは頷く。
ソフィー自身については、とんでもない幸運が舞い込んで来たようなものだし。
「そのような者が、力を得ていない者を弾圧する……そういう錬金術士も多く居たのだ。何せマナの柱は、来る者を拒まぬからな。ここのマナの柱も、悪人だと思ったら力を与えないのか、聞いてみるといい……そう話したらコルネリアが聞いたそうだ。答えは……善悪の判断を、マナの柱はしていない。そうだ」
フリッツさんは、静かな落ち着いた声で続ける。
「でも……なんか分かります。ぷにちゃんならそう言いそうだし、あたしの時もあたしが望めば……って言ってました」
ソフィーは思う。確かにぷにちゃんは誰であれ力を与えそうだ。
「ぷにちゃん?」
フリッツさんは不思議そうな顔をする。
「あ……マナの柱がプニプニみたいなんで、そう呼んでるんですけれど」
ソフィーは気付いて説明する。
「そうか……まあそうした物だと聞いた事はある。私も、マナの柱の力を得た者の1人だからな。オリジナルは1200程、イミテーションは5000程作られた、とされている」
フリッツさんは少しお茶を口にして、そう話す。
「そ、そんなに作られてるんですか!?」
ぷにちゃんは世界に1つ……なんて思っていたソフィーは驚く。
……しかも作られた……なのか……
「ああ、だが殆どは、焼き払われてしまっているようだ。また、どこかへ消えたオリジナルも多くあるだろうと言われている。イミテーションは消えたり出来ないらしいがな」
フリッツさんは続ける。
マナの柱1000年程の歴史は、争いの原因となって焼き払われているのが多いらしい。
「そ、それは滅ぼされた……と言う事ですか?」
ソフィーは身を乗り出す。
「そういう事だ。ソフィーもコルネリアも、この国では重宝されるだろうが……他国からすれば脅威でしかないからな。そうした争いが繰り返されて来たのだ」
フリッツさんはそう話して、窓を眺める。
この土地は穏やかなものだ。
「……ひどい話ですね?」
ソフィーもお茶に口をつける。
「……まあ、そうだが……力を持たぬ者からすれば、どうしようも出来ない存在が隣に現れる訳だ。それをどうにかしよう……と、思うのはその者が、その者なりに真剣に生きている証だろう。それに人の世は殺し合い、争い合いの連続だからな」
そんなキナ臭い話をしてアトリエで過ごすなんて、ソフィーとしては初めてだ。
「こ、ここは平和ですけれど……」
プラフタも居ればなあ……とソフィーは、いつもプラフタがパタパタしてる場所を見る。
今日はエリーゼお姉ちゃんの本屋さんで、お泊まり予定。
「滅ぼされたマナの柱は、魔物を産み出す。君も多く見ているだろう。強力な魔物が、ほぼ無限に現れて来る原因……それが滅ぼされたマナの柱だとされている。この地はそんな滅ぼされたマナの柱に囲まれていて、人の行き来が容易ではないのだ」
フリッツさんはソフィーを見つめる。
まっすぐな瞳……ソフィーとしては尚更怖くなる。
今日……モニカの所に泊まろうかな……
「フリッツさん……凄く詳しいですね……」
そんな不安に思いながら、ソフィーはフリッツさんに言う。
ジュリオさんも詳しいみたいだけど……
「……ここまで話すと勘づいても良さそうな物だが……」
フリッツさんは笑う。
どこか自信ありげな、でも優しい笑顔をするのだ。
この髭のおじさんは……
「え?何を勘づくんです?」
ソフィーは不思議に思う。
……勘づく……?
「私は傭兵だ。この国から依頼を受けて来ている。ここのマナの柱が産み出す錬金術士を、他国の手練れから守るようにな。それと、その錬金術士の動向によっては始末するようにな。……とはいえ、ソフィーとコルネリア、ロジーに……レオンか……それとハロルにオスカー、ジュリオと……特に始末せねばならん、と言う事もなさそうなのでな」
フリッツさんはお茶を飲み、どうやら空になった。
「え……えええ!?」
ソフィーは驚く。
始末!?
……その必要はないみたいだけど……
「この国に仇なす事を、企んではいないだろう?」
フリッツさんはそう話して天井を見上げる。
「それはそうですけど……国がよく分からないのもあるけど……」
ソフィーがそう言うと、フリッツさんは立ち上がる。
「それでいい。だが、力を得た所で結局生きる苦労は変わらぬ、と言う事だな。出来る事をせねばならん。私は……そんな思いを断ち切る望みを、人形に見ているのかも知れないな」
そして木の板、的なジェスチャーをして見せた。
……そうそうスプルースを取りに来たんだった……
とソフィーも思い出す。
「あ。スプルース、持って来ますけど……コンテナ開かないんだった」
ソフィーは少し浮き足立ってコンテナに向かう。
出来上がった調合品もコンテナに戻るし……そしてコンテナは開かない。
「外で待とう、非常に助かる。お茶も良い香りだった。得難い時間を過ごせた。感謝している」
フリッツさんはアトリエを出て、ドアを閉める。
するとコンテナは開き、ソフィーはスプルースを取り出す。
アトリエ前で待つフリッツさんに、スプルースを渡す。
「このような穏やかな土地で、穏やかに暮らすのは悪くないな……」
フリッツさんはスプルースを受け取り、小さな袋をソフィーに手渡し、スプルースを大事そうに抱えて帰って行く。
ウメさんに挨拶をして……コルちゃんとすれ違ってた。
「あ!コルちゃん、怖い話だったよぉ~!」
ソフィーはコルちゃんに抱きつく。
「おお……よしよし……あれ、早速フリッツさんに話したのです?」
コルちゃんは、抱きつくソフィーの頭を撫でる。
「なんかスプルースを取りに来てたんだ。ぼろぼろの作業台の修復には足りないかもだけど……」
アトリエの外で、ソフィーに抱きつかれてコルちゃんは動けなくなった。
……でもこんな風にソフィーさんをなでなでするのも……いいかもです……
そんな事を思いながら、コルちゃんはソフィーの頭を撫で続ける。
「……まあ、そんなこんなを話すのも、ソフィーさんも私も……モニカさんジュリオさんレオンさんと
……ハロルさんに……
………………ロジーさんは、大丈夫だと感じたからだそうです。キルヘンベルの村に、良からぬ者が現れたら対処するのが……お仕事だから、安心していいみたいでしたが……」
……ハロルさん………………ロジーさんには間が長いなぁ……とソフィーは思う。
ハスキー眠くなるボイスでゆっくりなのに、更に間が入ると疑問に思う。
「コルちゃんは、ハロルさんとロジーさんには何か思う所がありそうだね?」
「そそそそそそんな事は……ないです!」
コルちゃんはイタズラっぽい笑顔を見せる。
ソフィーが少し落ち着いて、2人でアトリエに戻る。
お昼を過ぎていて、ソフィーはお腹が減ってお腹に手を当てる。
「なんか……お腹減った……」
ため息とともに、そう呟く。
「私はお昼に壺屋で食べましたので……紅いもスープだったのですけど……美味しかったですよ」
コルちゃんは、そう言うとコンテナへと向かう。
ソフィーは錬金釜に向かう。
ちょこっと調合で食事まで作る……
錬金術士の鑑……
とはいえ、オスカーが作る方が美味しいのは課題だ……
1人錬金術生活……鳥小屋オブジェのダイヤルを回す。
……おばあちゃんも、これで漬け置きして錬金術をしていたのだろうか……いや、してたからあるんだろうけれど。
「ポコポッポー!ポコポッポー!」
鳥小屋オブジェが鳴り出して……仕上げの時間。スプルースを決める。
「……次は何を仕込もうかなぁ……クロース行くかぁ……」
そう呟いた夕方ちょっと前。
オスカーがやって来た。
「オスカー!どうしたの?今日は」
ソフィーは思わず笑顔で迎える。
独りは寂しかったし。
「コル助からさ、1人寝るのは寂しいとか聞いて来たんだよ。プラフタがお泊まりなんだって?」
「へへ~……モニカの所に押し掛けようかと思っていたんだよね。フリッツさんから怖い話を聞いてね……」
夜……ソフィーはフリッツさんから聞いた話を、オスカーに聞かせる。
その物語は、オスカーは読んだりしてるそうで、ソフィーよりも、オスカーの方が詳しい話だった。
「あたしも、今日はコルちゃんみたいに、大事にされて寝たいかな……」
そしてオスカーとベッドに入る。
「ん?……ああ、明日早いからな……」
オスカーはそんなギンギンでもムラムラでもなかった。
「……頭撫でて?」
ソフィーはベッドの中で、オスカーに甘える。
「ああ……」
夜は更けて行く。
オスカーが朝は暗いうちに起き出して、ソフィーも起きる。
「おはよ……」
起き出すオスカーに掴まるも、するっ、と逃げられる。
「朝ご飯もカフェで食べるだろ?先に行ってるな。オイラ準備があるからさ」
ソフィーを安心させる、おとぼけボイスでオスカーはそう話す。
「へへ……オスカー忘れ物」
ソフィーはベッドの上で身を乗り出し、口をとがらせる。
「今日も可愛いなぁ……ソフィー」
キスをして、オスカーはアトリエを出る。
ソフィーはスプルースを抱えて本屋へ。
プラフタを迎えに行かないと……
種の日。
まずは教会でお祈り。
いつものように教会の外で、教会に向かってお祈りをする。
聖歌も少し遠く聞こえる場所。
「あ、エリーゼお姉ちゃん」
お祈りが終わり、職人さんや商人のおじさんに混ざってる、エリーゼお姉ちゃんをソフィーは見つける。
「あまりお祈りには来ないんだけど……今日はプラフタを、アトリエに返さないといけないじゃない?」
エリーゼお姉ちゃんはそう言うと、4枚花のワンポイントの紫の布に包まれたプラフタをソフィーに渡す。
「うおぉ……オシャレな布……!」
しかも手触りも凄く滑らか……
ソフィーはそんな布に包まれたプラフタを受け取り、中腰ガニ股で驚く。
「……しかし君は本当に天真爛漫だな……」
そんなソフィーに、フリッツさんが声を掛けた。
ハロルさんもレオンさんも、ホルストさんもマルグリットさんもお祈りに来ていた。
そんな訳で、モニカもパメラも合流して、噴水広場で立ち話をする。
いつもの噴水端会議だ。
フリッツさんに、作ってあるスプルースの話をすると、凄く喜んでいた。
やっぱり足らなかったみたいだった。
そしてカフェでモーニング。
カリカリトーストにホットミルクで優雅に朝食。
コルちゃんは冷たいミルク派のようだった。
まだ見ぬ新しい土地、境界の裾野へ行こうと決まる。
恵みの森から更に西の土地だ。
砂地と草原で綺麗に別れている場所のようだけど……
「そんな所まで行くのですか。では依頼も変わって来ますねぇ……ソフィーも頼もしくなったものです」
ホルストさんはニコニコして、境界の裾野用の依頼を調べる。
夜水晶、繊維鉱石ファーデンライト、妖精の毒草と採れるそうだ。
それと砂ヘビ、砂ヘビイチゴが主な依頼だった。
「砂ヘビかぁ……懐かしいなぁ……砂ヘビ皮の小物は、かなりの高級品なんだよな……キルヘンミルクスネークよりも丈夫なんだよ」
そんなオスカーの話に、レオンさんが目を輝かせる。
なんだかんだでカフェに長居してしまい、朝10時くらいの出発となった。
テスさんも、お昼ラッシュ前の休憩みたいで、村の入り口まで見送ってくれるそうだ。
「なんか最近お洒落なレストランが出来てさぁ……1人じゃ行きづらいんだけど……友達が忙しいらしくてねぇ……」
テスさんが、そんな話をしてた。
「今度ソフィーと私、テスさんで3人で行きましょうよ」
モニカがそう言って、テスさんに見送られて村を出る。
境界の裾野までは10時間程……それなりの道だ。
恵みの森を抜けた先の森の道を行く……
「なんか涼しいねぇ……」
荷車を引くモニカにソフィーが話す。
なんか太ったとか言って、コルちゃんとオスカーを乗せて荷車を引いている。
「私は暑いけれどね……ソフィーも太りすぎとかないの?」
「いや、ジュリオさんも言ってるけど……モニカ太ってないって。痩せたい場合も、ぷにちゃんに言ったら、余分を食べてくれるって言ってたよ?」
「そうなんだけど……なんかもっと頑張らないと的な気分なのよ……」
なんか複雑な気持ちの問題があるようだ。
「でもモニカ、食べるもんはしっかり食べないとダメだぜ?強くなるんだったらな!」
オスカーはそう話し、荷車に揺られながらお昼ご飯用に採った芋を剥いてる。
器用だ……器用過ぎる。
境界の裾野付近に差し掛かる頃には、オスカーは植物達に挨拶回り。
そんなオスカーが荷車の所へとやって来た。
「この先の街道外れ、泉があるぞソフィー!」
水の匂いとか植物達からの話とか……
またオスカーが泉を見つけて来たみたいだ。
「やった~♪」
水浴び出来て、煮物の水にもなるし、泉は本当にありがたい。
ソフィーは杖を高々と上げて喜ぶ。
ジュリオさんとレオンさん、モニカも明るい顔になる。
「おデブちゃん、本当に旅向きねぇ……あまりお水とか用意しない旅なのも、納得だわ……」
レオンさんも感心する。
そして槍と剣で草地を薙ぎ払って進む。
「……ここ、以前は道だったんじゃないかしら?なんかそんな感じがするわね……」
レオンさんが呟く。
そんな草刈りの先には、石に囲まれた泉があり、しかも崩れかけている石の高い所から、湧き水が泉に流れていた。
「これはまた立派な泉だね……」
ジュリオさんも驚く。
少し離れた場所に、幾つもの長い石が、木々に紛れて鎮座している。
「昔は、人で賑わっていた場所だったそうなんだけどね……また、エルポレ族の住処でもあった……って古い木々に聞いたよ」
オスカーがそう話す。
そんな話をしながら、星明かりと焚き火の野営。
夕食のスープを口に運ぶ。
「なんか神秘的だねぇ……大昔の人もエルポレ族も、こうやってスープを食べてたのかな?」
ソフィーが泉を眺めて呟く。
「エルポレ族は、歌と踊りを言葉として使っていたそうよ?だからもっと賑やかだったんじゃないかしら」
ヴァルム教会には、エルポレ族の逸話なんかが残っているらしく、モニカが詳しいみたいだ。
「スープが美味しかったです!」
コルちゃんは両手を頬に当てて、左右に揺れる。
そういう踊りみたいだ。
「あたしもあたしも!」
コルちゃんの踊りに、ソフィーも隣で左右に揺れる踊りを見せる。
「はははっ……旅がこんなに楽しいものだなんて、僕も思いもしなかったな……」
そんな2人を眺めて、ジュリオさんが微笑む。
エルポレ族の鎮魂の踊りや、これからの幸せの踊りを創作して、泉の側でみんなで踊った。
特にレオンさんがノリノリだった。
そんな野営を過ごし、更にソフィー達は進む。
境界の裾野には夜に到着。
赤プニがぷにぷにしてる。
特に襲って来ない性格のようで、やり過ごしやすい。
「何これ……ケーキみたい」
繊維鉱石ファーデンライトを手に、ソフィーが呟く。
「なんか上品な宝石になりそうね。これ」
モニカとレオンさんが夜水晶を見つめる。
プラフタが思い出した場所なのだから、プラフタもここに来たって事なのだろう。
「赤プニがこっちに気づいたです!」
「鈍感だっただけなのか!」
やたら近くに居た赤プニ達は、こちらに興味が無いのかと思いきや、普通に敵だった。
そしてそんな赤プニがガチで強い……銀いもパワーの防御力無かったらどうなるんだこれ……
「だ、大丈夫!?コルちゃん!?」
「え?まあ平気ですけれど……」
赤プニプレスを受けたコルちゃんが、ショッキングな見た目になっている。
「ははっ、コルネリアは頭が血だらけに見えるね。ピンクの髪に赤いプニプニの体液が付いたからね」
ジュリオさんがそう言って笑う。
……ジュリオさんは、戦闘になると生き生きする感じがある。
夜の間、採取と戦闘をして……
朝6時に境界の裾野を出て、キルヘンベルへと向かう。
赤プニ汚れの一行は途中の道、また古代の遺跡の泉に寄って服とか洗う事にした。
「なんかやたらと泉が湧いてるよね……」
服をざばざば洗うソフィーが、隣で靴を洗い出したオスカーにそう呟く。
「奥地に行くと温泉もあるとか本にもあったけど……まあキルヘンベルからは北なんだよな」
それを聞いたレオンさんは目を輝かせて、オスカーを捕まえる。
「ちょっと!なんでそれを知ってるのに西に!?しかもちょっと南だし!」
レオンさんも服を洗ってるので、半裸なんだけどお構い無しにオスカーを揺らす。
「え……?いや、レオンさん温泉好きなのか?」
靴を洗ってるオスカーが揺らされながらも、いつものトーンで話す。動じない男だ。
「好きに決まってるじゃない!温泉が嫌いなんて人、居ないわよ!」
そう言ってレオンさんは、オスカーのすぐ隣で服を洗う作業に戻る。
「あ!ここちょうどいい深さだよ~!」
ざぼざぼと入ったソフィーが、皆に手を振る。
「そう言えばこの泉……少し温いです。ならこれも温泉なのでは……」
服のまま泉に入ってるコルちゃんが言う。
「確かにそうだね。でも温泉と言うには物足りない温度だけどね……」
ジュリオさんも泉に入り、鎧を磨きながら言う。
「ふわふわゼッテルが再生したらいいんですけど……」
イマイチ誤魔化しきれなかった汚れを見つめて、コルちゃんが呟く。
「あ!ふわふわクロースを作ればいいんだよ!帰ったら作ろう!」
ソフィーが閃く。
……でも何回も繰り返し使えるようになるのだろうか……とも疑問に思う。
「行きは涼しい道だったけど……水浴びするには寒かったかしら……」
レオンさんが寒そうにしてる。
「荷車、変わりましょうか?」
荷車引いて、いい汗かいてるモニカが微笑みかける。
「いや、それはなんか……やりましょうか!レオンさんの実力見せてあげるわ!」
それからはレオンさんが、荷物とコルちゃんを乗せた荷車を引いて、キルヘンベルへと帰り着く。
もう夕方だった。
「最後まで僕は……」
荷車引く係、取られっぱなしのジュリオさんが呟いた。
ともかく解散して、モニカとコルちゃん、ソフィーのお決まりの3人でアトリエに帰る。
「あらおかえりなさい、ソフィー。お邪魔してるわよ」
エリーゼお姉ちゃんとプラフタが居て、エリーゼお姉ちゃんはお茶してた。
「エリーゼお姉ちゃん!エリーゼお姉ちゃんが居たらプラフタも寂しくないね」
ソフィーはそんな2人を見て喜ぶ。
「そうね。エリーゼが通ってくれたら、アトリエの留守も安心ね」
モニカも微笑んだ。
プニ汚れの残る3人もお茶会に合流する。
さすがに外テーブルを使う事にした。
「エリーゼとの会話、それに持って来て頂いた本から、ソフィーの新しい錬金術レシピの構築も出来そうですよ。フリッツに貰ったヒントもありますし」
シュタルメタル、マナフェザー、モノクログラスのレシピ構築が出来るようになっているみたいで、ふわふわクロースの、ちょこっと調合レシピ構築もしたい。
ソフィーのこれからは、大忙しになりそうだった。
そして更にプラフタが採取地を思い出したそうで。
女の錬金術士だった事をぼんやりと思い出し、その事を話してくれた。
「プラフタが人間に戻ったら……色々遊びに行けて楽しめるのになぁ……」
ソフィーはそんな事を口にする。
「それは楽しみです。プラフタさんと朝のミルクをするです」
コルちゃんも乗っかった。
プラフタが人間に戻れたら……
そんな話で夕方のお茶会は盛り上がる。
暗くなる頃にエリーゼお姉ちゃんは帰って行った。
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[肌襦袢]
コルちゃんのお家に伝わる寝る時の衣装。パタパタできて、ゆったりしてる。
フラム[大先輩]赤い爆弾。
[コルちゃんクッキー☆]
お酒のおつまみとして人気。コルちゃん好みの味じゃないので、コルちゃんも食べられないみたい。お酒を飲むおじさんが好きな味。ふんわりと生臭い。
[引換券]
1枚1枚に描かれた絵に、自由を感じる。
[国王に仕えてた錬金術士と量販店の話]
調子に乗ると、報復されるお話。
[オリジナル1200]
魔力の源、マナの柱は世界中に沢山あるらしい。
[イミテーション5000]
魔力の源、マナの柱は世界中に沢山あるらしい。キルヘンベル付近にも、滅びたマナの柱ならば4つ程ある。それがオリジナルだったのか、イミテーションだったのかは分からないけれど。
[そうした争い]
魔力の源の所有権、主導権を巡る戦争の歴史。どの生き物でも弱い者が淘汰されゆく歴史。
[滅ぼされたマナの柱]
ぷにちゃんもアトリエを焼き払えば、いともあっさり滅びて消えてしまう。らしい。その後で、溢れる魔力が発生して、その魔力に色々な生き物が影響され、魔物となる。
[ウメさん]
アトリエ前の井戸の番人。ここの井戸の水が特別好きなんだとか。本当かな?
[壺屋の紅いもスープ]
紅いもが流通され出したので、早速作ってる。大人気だけど、紅いも派と土いも派が居て、壺屋さんでは土いも派が多いんだって。
[鳥小屋オブジェ]
調合の浸け置き、終わった事をお知らせする物。ポコポッポー!ポコポッポー!って鳴く。
[4枚花のワンポイント、紫の布]
どこかの商人が、本の代金として置いてったらしい。プラフタを包む布として、今回選ばれたオシャレ布。
[カリカリトースト]
今日もカリカリ。
[砂ヘビ]
砂の国に住むという、なんか立派な見た目のヘビ。猛毒を持っていて、噛まれたら凄い毒で死ぬらしい。でも、基本的に人を見たら逃げて行くんだとか。今回の依頼の砂ヘビは、砂地で地中生活してる少し硬い鱗を持つヘビ。境界の裾野には、立派な毒ヘビは居ないらしい。
[砂ヘビイチゴ]
境界の裾野の砂ヘビが好む、とされている赤いトゲトゲの実。トゲトゲが凄く柔らかい。
[砂ヘビ皮の小物]
灰色の皮の小物。水に強く、そして硬い。冒険者の装備品として人気なんだとか。
[境界の裾野付近の泉]
古代の泉遺跡。石造りの泉。
[エルポレ族]
大昔にキルヘンベル付近に居たとされる原住民。歌と踊りが得意で、色々と高度な建設技術を持っていたらしい。
[ふわふわゼッテル]
使い捨て汚れ取り紙。
[ふわふわクロース]
洗って繰り返し使える汚れ取り布。