☆
錬金術のアトリエ 24
夜のまま、ソフィーとコルちゃんはアトリエに戻る。
ぷにちゃんの中で深く眠りに落とされると、気持ち悪かったモヤモヤも、スッキリしたりする。
……単純なものだ。
ソフィーは我ながらそう思う。
「ごめん!プラフタ師匠!……なんかイライラモヤモヤして……」
コルちゃんが帰り、ソフィーが勢い良く謝る。
「まあ……気分が良くなったのであれば、それでいいです……さすがに私も、ソフィーがイライラモヤモヤしてしまう気持ちも、分かりますし……」
プラフタは、なんだかんだでいつものソフィーに戻って、安堵する。
ソフィーは8時間程、ゆっくりと過ごして休まったのだけど、プラフタからするとものの5分程だ。
「……さて、錬金術しますか……」
ソフィーは錬金釜へと向かう。
「時間の掛かる物は、朝になってしまう時間ですよ?」
「時間との折り合いもつけないとだね」
巡礼街道行きへの時間は迫る。
「プラフタ~♪行って来るね♪」
ソフィーはやけに明るくアトリエを出る。
巡礼街道行きの朝。
「行ってらっしゃい、ソフィー」
プラフタはそんなソフィーを見送る。
そしてカフェから始まる旅立ちの日。
いつも通り依頼を受けて……って、巡礼街道行きの依頼は無かった。
「最近は冒険者の方や、自警団の方、騎士の方等に片付けられてしまいまして……でもソフィーが旅立つようになって、新しい荷車の貸し出しも好調ですよ」
ホルストさんは笑う。
そんな訳で今回は依頼を受けてないけれど、モーニングはサービスだった。
武器を作るにも手持ちが無さすぎるので、錬金術品の依頼を受ける。
……研究ではなく、お金の為に錬金釜をぐるこんするのは……
ちょっと気が引けるのだけど……
そして巡礼街道へ。
曇り……雷が鳴り出した。
「そういえば、ここのカーエン石って……あるときはポコポコ落ちてるけど、無い時は無いんだよねぇ……」
ソフィーが呟く。
コバルト草、魔法の草ばかりが採れる……
そして青プニの群れが転がって来た。
「おおお……なんかやる気に溢れてるです!?」
コルちゃんもびっくり、青プニ10体。
戦闘に危なげこそないものの、やたら時間を使わされる。
ヌルヌル魚が釣れて、オスカーとモニカが調理する中、ソフィー達はカーエン石を探す……
食事はうまうまニコニコなんだけど……
カーエン石は芳しくないうちに、夜になってしまった。
「あったぞ、ソフィー」
星空の眩しい巡礼街道……
オスカーがまとめて見つける。
「デカイ塊があったぞ、ソフィー」
そろそろ朝日が空を照らす時間……オスカーがまたも見つける。
「オスカーばっかり見つけてズルいよ!」
ソフィーはコバルト草を握りしめて言う。
「いや、そんな事言われてもな……そろそろ足りる量じゃないか?」
そして朝ごはんを食べて、ヌルヌル魚の為のかまどを片付けて、切り上げる事にした。
そしてお昼前に、ソフィー達はキルヘンベルに帰る。
……果実の日。
「はああぁぁぁ……今回はオスカーにいいところみ~んな持ってかれたぁぁぁ……」
ソフィーはキルヘンベルのカフェに向かって、伸びをしながらそう呟く。
「そうだね。彼は色々と見つけるのが得意なようだからね」
ジュリオさんは笑いながら荷車を引いて、言う。
「今回はあまり汚れてもいないし、早速ハロルさんに渡しておいでよ。今回はヌルヌル魚が旨かった……まるでピクニックみたいな癒される旅だったな」
オスカーに言われて、ソフィーは時計屋に寄る事にする。
「じゃあ、アトリエ前でお昼……準備しておくです」
コルちゃんとモニカ、オスカーとジュリオさんは、先にアトリエでお昼の支度なので、先にアトリエへと行く。
「ハロルさ~ん」
「ただいま~……巡礼街道がカーエン石の産地って聞いたけど、あんまり無いのねぇ……」
ソフィーはレオンさんと一緒に、時計屋へと入る。ハロルさんは銃とナイフを眺めていた。
……お客さんは居ない。
「……ソフィーも一緒とは珍しいな……カーエン石は揃ったのか?」
ハロルさんは銃を置いて、カウンター越しにソフィーに近寄る。
「アタシは裏で、身体洗って来るわね」
レオンさんは、時計の並ぶ店内の奥、裏口に消えて行った。
「へへ~……数はバッチリ揃ったよ?」
ソフィーはカーエン石を、ごろごろとカウンターに並べる。
「……なんだこれは!?」
ハロルさんは、カウンターに置かれたカーエン石を手にすると、目を見開いた。
「え……アトリエの山のカーエン石よりは、いいやつだと思うけど……」
ハロルさんの気難しい顔に、ソフィーは怯む。
「こんなに良質なものなのか?最近は巡礼街道に行く冒険者も居てな……そいつらからも受け取っているのだが……まるで違うぞ……」
ハロルさんはそう言って、手にしたカーエン石を眺める。
「えへへ……見つけたのはオスカーだったりするんだけどね……」
「あの倅か……まあ、これだけの物だ。報酬も弾んでやらないとな。それと、良ければまた、仕事を頼む事になりそうだな」
ハロルさんはそう言うと、報酬に1000コールもくれた。
「こんなに?いいの?」
1000コールも入った金貨袋。
……なんか一気にお金持ちになった。
「驚きの品質だからな。贔屓なしで、その値段だ。またよろしくな」
ハロルさんは、どこか機嫌良さそうに言う。
「ところでハロルさん、そろそろお昼だし、アトリエでお昼しない?レオンさんは来る予定なんだよ。巡礼街道産、巨大長いも大親分を食べるんだ」
今回、荷車の1階にずっと鎮座していた、川沿いで掘れた巨大長いも大親分が、昼食だ。
これもヌルヌル魚やカワナマズを釣ろうとしていた、オスカーが見つけた。
「カーエン石がこの品質……その芋も、さては未知の品質の予感がするな。……呼ばれておくか。確かに昼時だからな」
ハロルさんはそう言って頷いた。
「そうこなくっちゃ!」
ソフィーはガッツポーズする。
そしてレオンさんとハロルさん……
ソフィーと3人でアトリエに帰る。
……お腹減ったし。
「ハロルさん、貰った人形、飾ってないの?」
ふと気になって、ソフィーは尋ねる。
フリッツさんが配った、クオリティーの低い人形。
……皆の前で、イヤそうな顔で人形を引き上げたら、人形もイヤそうな顔をしていて、かなりの笑いを取ったやつ。
「店の入り口に飾ってあるぞ。オマエは背が低いからな……気付かなかっただけだろう」
ハロルさんは、そう言って歩く。
少し油断すると、すいすいと先に行く。
歩幅が大きくて歩くのが早い。
「捨てそうになってるのを、アタシが止めたのよ?まあ……気づき辛いトコに飾ってるんだけどね」
「人形見たさに店に来るやつが居てな……おかげで、その分だけ、商売繁盛してる事になるな」
そう話しながら歩き、アトリエ前に着く。
「な……!?」
デカイ木の棒に長いも大親分が縦に通され、横倒しで丸焼きになっているアトリエ前。
プラフタもパタパタと飛んでる。ウメさんも微笑みながら傍らに座っていた。
ハロルさんもレオンさんも、ソフィーもびっくりの光景だった。
「途中でヤーペッツさんに会ってな。こういうのはインパクトある調理がいいらしいんだよ」
オスカーが言う。
……度々、いにしえの厨に籠ってた食通商人、ヤーペッツさんも居た。
「これはドキドキしますな!」
いもの棒をくるくる回しながら、ヤーペッツさんは笑顔で言う。
……すごい楽しそうだ。
「この……飛んでる本は何だ!?」
ハロルさんは、プラフタを見て驚く。
「いつだったかしら?教会のお祈りに来た事あるわよね?その時に見なかったのかしら?」
レオンさんはプラフタを眺めて微笑む。
「あたしの錬金術の師匠、プラフタだよ~」
「つい先日、銃弾の火薬について色々と話をしていましたが……その時は気付かなかったみたいですね。紹介が遅れましたが、プラフタと申します」
そういえばそうだ。
「うむむ……?そうだったか?……まあ、俺はハロルだ。詳しい事はソフィーから聞くのがいいだろう」
ハロルさんはそう自己紹介する。
そしてヤーペッツさんの焼き上げた芋を皆で食べる。
「なるほど……いつも食べる芋と勢いと匂いが全然違うな……昔、1度だけだが、こんなのを食べた事があるな」
ハロルさんは大親分を食べて、そう感想を言う。
「年寄りでデカいやつってのは、そこそこ見かけてさ、もう食べられないやつなんだけど、若い株でこのサイズってのはオイラもびっくりだよ」
ヤーペッツさんとオスカーで、皆のお代わりに対応しながら、オスカーが話す。
「なんか、行く先々で食事がびっくりなのよ。ヌルヌル魚も身がプリップリだったのよ?」
レオンさんもご機嫌でそう話す。
オスカーのおかげで、色々と美味しい物に出会えているし。
「なるほど……俺も銃の完成を急ぎたくなるな」
ハロルさんは、そう呟きながらお代わりしてた。
皆で食べ過ぎるくらい食べたし、楽しく話しながらの素敵な時間を過ごす。
楽しい昼食を終えて、解散する。
ジュリオさんの引く錬金荷車2号に乗せて、ヤーペッツさんと焼き台、調理器具……
ハロルさんにレオンさん、オスカーとウメさんが帰って行く。
「……錬金荷車3号とか作ってさ……キルヘンベルの中をくるくるするのも、名物になりそうだよね」
その姿を見送るソフィーは呟く。
「ソフィーさん……それは素敵な思いつきです!3号さえ作ってしまえば、実現出来そうです!」
コルちゃんが賛同した。
「錬金荷車3号がくるくるしたとして……アトリエはコースに入らないわね。きっと」
モニカが呟く。
……確かにちょっと人里離れた山の上だし……
コースに入らないだろう。
そして3人とプラフタは、アトリエに帰る。
「さて、身体を清めてから錬金術を……」
ソフィーはアトリエに入ると、錬金釜を見る。
「ソフィーさん……燃えていますね」
そんなソフィーに、コルちゃんが話す。
「そりゃあ、依頼品をこれから作らなきゃだし、錬金荷車3号も……作りたいし、時間を超える必殺調合もいよいよだし……」
ソフィーはガッツポーズをする。
依頼品はともかく、妖精の道標のレシピ構築……
完成が近い。
「錬金荷車3号も作るの!?」
モニカは驚く。
ソフィーのやる気が溢れまくってる。
「錬金荷車は皆で作らなきゃだから、下準備ぐらいしか出来ないけどね。……先に必殺調合かなぁ」
ソフィーはそう言いながら、地下の扉を開ける。
ぷにちゃんの部屋で、身体を清めるのが先だし。
「まぁ……あまり張り切り過ぎも良くないから、ちょっと寝て、落ち着くのがいいと思うわ」
モニカとコルちゃんも、地下の扉へと入って行く。
「よく来た……時間はあと21時間……ある……」
ぷにちゃんの部屋……
ぷにちゃんは口を開ける。
「今日もよろしくね。エロエロしなくていいと思うと、なんか贅沢だね」
ハダカ族のソフィーは、そう言ってぷにちゃんの中に入る。
「なんか夕食が楽しすぎて疲れちゃったわ。明日は種の日だから……お祈りと……あとまた時計を調整しなきゃ……」
ハダカ族のモニカも続く。
「眠いです……なんかやたらと眠いです……」
ハダカ族のコルちゃんも続く。
なんか温泉みたいな感じでもある。
「モニカ……時計を棚に預けると……棚のあるあの場所は……時間が曖昧な場所だ……時計は狂う事に……なる……」
ぷにちゃんはそう言うと、モニカは慌てて時計をコンテナから出すべく、アトリエに戻る。
……そして帰って来た。
「まあ、どうせ狂っちゃったから調整はしなきゃなんだけどね……」
時間を止めて、3人は眠る。
そしてコルちゃんとモニカは帰って行く。
「さて!遂に妖精の道標用、スプルースを!」
ソフィーは錬金釜へと向かう。
プラフタも本と軍手を置くと、パタパタと錬金釜へと寄る。
スプルースの素材の準備をして……
「まあ……浸け置き時間で暇になっちゃう訳ですが」
ソフィーは素材のゆらめく錬金釜を見て、離れる。
「私の錬金術も……そうして浸け置いていたのでしょうか……まあ……混ぜ続けていたとは考えづらいのですが……」
プラフタは、ソフィーの側でパタパタと浮かびながら、そう呟く。
「プラフタの場合は、一瞬でババーン!と出来上がったりしたとか……誰でも時間掛かるものなのかな?」
ソフィーはそう尋ねる。
錬金術は人それぞれ……
ならば、使う時間も人それぞれ……かも。
「記憶が無いというのは歯痒いですね。あいにく思い出せません」
プラフタはそう言うと、暖炉の方へとパタパタ飛ぶ。
プラフタと色々と話しながら、スプルースを決めると……
もう朝になる。
種の日……
プラフタのお気に入りの万能促進剤をソフィーは眺める。
依頼品がこれ3つなんだけど、不良品品質のコレも提出する所だった。
……もう1個、作らないとだ……
「じゃ、お祈り行って来るね!そのまま旅立つかも!」
ソフィーはアトリエを出る。
エリーゼお姉ちゃんが来てもいいように、ちょこっと調合のお菓子なんかを暖炉の側テーブルに用意した。
「行ってらっしゃい、ソフィー」
プラフタは見送る。
朝の教会前、噴水広場……
今日も人形劇をしていて、思わず見てしまい、演じてしまい……
午前中が吹っ飛ぶ。
旅に行かない日となってしまった。
そしてエリーゼお姉ちゃんとモニカ、コルちゃんとお昼を食べにレストランへと行く。
「ああぁぁぁ……働かなくて良かったのかなぁ……」
ソフィーは頭を抱える。
人形劇……恐るべし。
種の日の教会にお祈りに行くと、人形劇とセットみたいだから、毎回……
これからも毎回……
「種の日は休日だから……それもいいんじゃないかしら?」
モニカは微笑む。
レストランでゆっくりと食事をする。
その中でエリーゼお姉ちゃんから「大地の傷痕」という場所の話を聞いた。
そしてアトリエに帰る。
妖精の道標と、ホルストさんに提出する用の万能促進剤を作らないと……
そして妖精の道標を仕込む。
なんと浸け置き12時間……
なので噴水広場に行って、人形劇を堪能しているエリーゼお姉ちゃんの隣に戻る。
「やっぱり人形劇……いいわぁ……」
夕方の閉演まで楽しんでしまった……
エリーゼお姉ちゃんは、ため息をつきながら、しみじみと呟く。
「エリーゼお姉ちゃん、人形劇大好きだもんね?あたしも好きだけど、エリーゼお姉ちゃん、目の輝きがダントツでキラキラしてるんだもん」
前回見たのと同じ演目だけど、フリッツさんの演劇は凄く夢中にさせる。
さすがに初日に比べると人は減ったのだけども。
「そ、そ、そ、そ、そうかしら?」
エリーゼお姉ちゃんはソフィーから顔を逸らして、少し慌てて言うと、ストリートへと歩き出す。
「そうだよぉ」
ソフィーは、そんなエリーゼお姉ちゃんの後をついてく。
「まあ、夕食はカフェにしましょう。ホルストさん人形を、また見たいのよ」
エリーゼお姉ちゃんは微笑む。
人形劇後で、やたらゴキゲンだ。
「へへ~……そのお金すら無くて……あ、あった」
ソフィーは財布を見る。
残金44コールかと思いきや、なんか1737コールもあった。
テスさんの引換券も33枚ある。
「散財の噂は本当なのね?まあ、そこはお姉ちゃんにお任せでいいのよ♪」
やたら足取りの軽いエリーゼお姉ちゃんに、ソフィーもついていく。
「なんか、1737コールもあったよ!」
「いいのよ。お姉ちゃんにお任せで♪ソフィーのそのお金は、またどこかで散財しないといけないでしょ?」
なんか、有頂天だった。
人形劇……凄すぎる。
「やっほー☆」
カフェはテスさんの日。
夕食の時間も落ち着いた感じの店内。
「夕食と、引換券貯まったんで……」
ソフィーはテスさんと一緒にカフェの奥、ヒミツの引換券ショップへと行く。
そして竜のウロコを30枚で引き換えて、エリーゼお姉ちゃんのテーブルへと戻る。
「な、な、な、なにこれ!?」
ソフィーの顔よりもでかい1枚の青いウロコ。
エリーゼお姉ちゃんは驚く。
「へへ~……テスさんの引換券ショップで買っちゃいました!」
「竜鱗の守り」という防御40上昇の、本格的チート特性を持つ、ステキアイテム。
ソフィーはご機嫌で竜のウロコをテーブルに置く。
「……散財……なるほどだわ……」
感心するエリーゼお姉ちゃんと、夕食を食べる。
エリーゼお姉ちゃんの食事の傍らに、金色の泡の液体……
お酒なんだけど、カフェの照明を受けてキラキラ輝いてる。
「エリーゼお姉ちゃんも、お酒飲むの?」
ソフィーは金色に輝く、小さなグラスを見つめる。
カフェの夕食、ソフィーにもホットミルクにハチミツ、と飲み物がセットで来てるけど……
「嗜む程度だけどね」
エリーゼお姉ちゃんは、グラスを傾ける。
エリーゼお姉ちゃんの唇に、金色の液体が吸われて行き……
ちょっとだけ減ってグラスを戻す。
「ちょこっと味見させて!」
ソフィーは足をパタパタさせながら言う。
「ここではダメよ……ホルストさんもテスさんも見てる前じゃない」
あっさり断られる。
でも言われてみればそうだ。
「うう~……早く大人になりたいなぁ……」
ソフィーはホットミルクを飲む。
甘い……美味しい……
「ちなみに、苦いのよ?」
エリーゼお姉ちゃんはぽそっ、と言う。
「え!?苦いの!?薬なの!?」
ソフィーは驚いて身を乗り出した。
……金色だから、ハチミツ的な甘さを想像していたけど……
苦いのは好きじゃない。
「薬とは違う、大人の苦さだから、今のソフィーが口にしても、うへえぇぇ~っ、てなるだけよ?」
そんな話をしながら、カフェの夕食を食べた。
……成人って16だから、ソフィーはもう大人なんだけど……
エリーゼお姉ちゃんは伏せておいた。
そしてソフィーがアトリエに帰る頃は、すっかり夜になっていた。
妖精の道標の仕上げは、夜中1時。まだ時間がある。
「じゃじゃ~ん!」
ソフィーは竜のウロコで顔を隠して、謎のポーズでアトリエに入る。
プラフタがパタパタとやって来た。
「竜のウロコなど……どこで手に入れたのですか?しかしまた立派な……竜のウロコですね」
プラフタは感心しながら、竜のウロコ族となっているソフィーの回りを飛ぶ。
「テスさんの引換券ショップで交換したんだ。防具に竜鱗の守り、変異物質と付けたら……完璧だよね!やること増えちゃったぁ~」
ソフィーは竜のウロコをコンテナに入れる。
そしてすぐアトリエに戻り、錬金釜を見る。
「武器がまた、遠のきますね」
プラフタは、ソフィーの近くを、またパタパタと飛ぶ。
「そうなんだよねぇ~……」
ソフィーは呟き、朝まで錬金術生活を始める。
朝7時……
1時から始めた万能促進剤を仕上げて、決まる。
つまりカフェ遅刻の時間……
「よし、行って来るね!プラフタ」
ソフィーはアトリエを出る。
今日が1週間の始まり、双葉の日だし、どこかしら行かないと!
「行ってらっしゃい、ソフィー……」
プラフタはソフィーを見送る。
今日もいい天気……
最近はずっといい天気続きだ。
ソフィーのアトリエからカフェまで、1時間半の道……
急いでカフェに向かうと、カフェの入り口、八百屋さんでオスカーとジュリオさん、レオンさんが忙しそうにしていた。
「あれ!?マルグリットさんは?」
ソフィーは足を止める。
今日も繁盛の八百屋さんに、何故かマルグリットさんが居ない。
「今、コル助が呼びに行ったんだけど、母ちゃん教会で、朝のお祈りから戻って来てないんだよ。あ、ラーメル麦ね、まいど」
オスカーが、お客さんを捌きながら言う。
教会の子供たちも働いてるんだけど、マルグリットさんが居ないと、てんやわんやみたいだ。
「よ~し、あたしも教会に行ってみよっと」
ソフィーは広場に向かおうとすると、コルちゃんとマルグリットさんが慌てて来た。
「ごめんねぇ、つい長話しちまって」
マルグリットさんが戻り、ソフィーたちはホッと胸を撫で下ろしてカフェへと入る。
「アトリエで錬金釜仕上げ7時だったから、完全遅刻だったんだけど、マルグリットさんのおかげで助かったよぉ……」
ソフィーは自白しながらカフェへ入る。
「必殺の調合とやらは、完成したのかい?」
オスカーが尋ねる。
「妖精の道標、バッチリ装備でございます。ふふふ……これで帰り道はアトリエまで瞬間移動だよ!」
ソフィーは皆に妖精の道標を見せる。
木の矢印に、妖精カップルが座る、そんな見た目の魔法の道具。
「フリッツさんの作った人形みたいに、クオリティーの低い、雑だけど可愛い人形なのね」
レオンさんとモニカで、その妖精カップルを見つめる。
「フリッツさんの影響を受けてますので。可愛いでしょ?」
そんな話をしながら、カフェでの朝食。
「さて、今日はどこに行くのですか?ソフィー達は……」
ホルストさんが尋ねる。
「実は今回はノープランなんだよね……何か需要に合わせて目的地を決めるのはどうだい?」
ジュリオさんが言う。
「それ、いいね!今回から遠くても、帰り道はあっという間だよ!強気でどこでも行けるよぉ~」
魔物が強くなる事を失念して、ソフィーが能天気に言う。
「需要ですか。最近ははじけるベリーと、獣の骨の需要が多いですねぇ……それに原っぱ遺跡の巨大水たまりの水が……美容にいい、なんてよく分からない伝説が流行りでして……」
ホルストさんは答える。
「原っぱ遺跡?」
ソフィーは首を傾げる。
なんか、すごく近くにありそうな名前だけど……
「悟りの岩山の先になりますから、かなり遠いのですけれどね。報酬はこんなもんです」
報酬は18000コール程度……!
6人で割ると……
1人3000コールくらい……遠いだけに高い!
なんでか伝説の水がやたら高い。
「……そんなに原っぱ遺跡の水って、美容にいいのかしら?」
レオンさんが尋ねる。
「それが……謎なのですよ。ですが、ソフィーのパーティーならば、ただの水だとしても、原っぱ遺跡の水を持って来るでしょう?信用のおけるパーティーにしか紹介できない仕事なのです」
……川の水だとしても井戸水だとしても、分からない……
という事をホルストさんは話す。
「それなら任せて下さい!モニカとジュリオさんの目が黒い限り、インチキは出来ません!」
ソフィーは胸を張る。
「僕の瞳は水色だけどね。モニカも輝かしい琥珀色だし。ですが……伝説がインチキ臭い分、僕らは正直に、原っぱ遺跡の水を汲まないといけない訳ですね」
今回の行き先は、原っぱ遺跡に決まった。
「さて!原っぱ遺跡……どこ?」
キルヘンベルを出て、ソフィーは尋ねる。
「ホルストさんのメモに寄ると……岩こぶ山麓から西、温泉で残念な思いをした材木小屋……そこからさらに先が、悟りの岩山だね。その岩山から更に西に行くと……原っぱ遺跡だよ。山の街道、森の街道がほとんどだから、険しい道でもあるね」
ジュリオさんは、ちゃんとホルストさんと打ち合わせをしていて、メモを出した。
「色んな植物に出会えそうだな!」
オスカーはにんまりする。
「泉のたくさんある森だから、楽しくなりそうね」
レオンさんも目を閉じて思いを馳せる。
ともかく、キルヘンベルを10時に出発。
それから岩こぶ山麓を13時に通過、炭酸水の泉に14時に通過するも、この時……
雨が降っていた。
「しゅわしゅわしたかったです」
コルちゃんが呟き、レオンさんを見る。
「ちょこっと寒いから帰り……って、今回から帰り道が無いんだっけ?」
「材木小屋のカボチャサラダ用調味料があるから、材木小屋で遅いお昼にしようよ。へへ……」
オスカーがヤーペッツさん印の調味料を見せる。
「さすがおデブちゃん、やる気出るわね!」
錬金荷車2号とソフィーのパーティーは、歩を進める。
材木小屋に16時。
雨は止んで、温泉跡地のぼろぼろ小屋を眺めながら、硬いカボチャを蒸したサラダを食べる。
「魚ね!魚の味がすっごいするわ!」
ヤーペッツさん印の調味料、う
ま
すぎる!
「これは……もう何もかもこれで食べられる、まであります!……ヤーペッツさん恐るべし……」
やたら沢山食べれた。
そして悟りの岩山に23時~逸れて原っぱ遺跡到着!……
夜中の2時だった。
「下調べが出来なかったからな。雨も降ったり止んだりだし……今回の遅い夕食は……銀いも、土いもと……コイツだ!」
オスカーが用意したお弁当は、銀いもの皮に包まれたでかい塊……
豚ネズミの肉だ。
あまりによく使う、普段使いのお弁当。
「もう……銀いもの皮が繰り返し焼かれてまくって真っ黒ですね……」
コルちゃんが火の用意をしながら、炭化した銀いも皮の塊を眺める。
「そろそろ新しいのにしないと、かな?」
オスカーが軍手をして、銀いも皮の塊を扱う。
「しっかり食べて……採取生活しないとだね」
「そうだなぁ……次の食事は現地調達だからなぁ……頑張らないとな」
またも、ヤーペッツさん印の調味料が活躍した食事をして、いざ原っぱ遺跡へと乗り込む。
お肉も別物くらいに美味しくなって、びっくりだ。
最初にお出迎えするのは、強敵ミニデーモン……
銀いも回復を凌ぐ攻撃力を持っていないので、危なげなく倒せる。
倒すと、ミニデーモンは地面に落ちて、どこかへと帰って行く。
飛んでるミニデーモンはやる気満々だけど、地上をうろうろしてるのは可愛いだけだったり。
「気まぐれいちごが沢山採れるのねぇ……」
レオンさんが、気まぐれいちごを荷車に乗せる。
この原っぱ、気まぐれいちごだらけだ。
「ピカピカの骨も、やたら見つかるです……」
コルちゃんは、やたらと獣の骨を見つける。
なんかやたらと状態の良い、丈夫な骨が見つかる。
「もう朝焼けが見えるわ……なんか緑が綺麗よねぇ……」
モニカは地平線に見とれていた。
そして一際でかい鳥、セイバークロウが襲って来る。
カイゼルピジョンもお供についてる。
「これは……!くうぅっ……」
このセイバークロウの一撃が強い。
レオンさんのHPバリアを一撃で8割削る、急降下貫通アタックが脅威だ。
「新兵器、万物の写本………」
ソフィーが万物の写本を取り出す。
ふわっ、と真上に飛び上がる万物の写本が……開く!
セイバークロウのHPバリアを吸収し、更に防御やら攻撃やら、弱体化させる。そして本が閉じると、ソフィーの頭にぽとっ、と落ちる。
「痛い……」
そして鳥のくせに、やたら低空を飛んでる為、ソフィーの杖、ジュリオさんの剣、モニカのレイピア……
攻撃が当たる当たる。
「ソフィー必殺!ソフィー落とし!」
ツープラトンアタック!
ソフィーが杖を振りかざし、プニを召喚!
ぼとぼと落としてダメージを与える。
そんな手数で戦う、ぽかすかの末に、倒す頃には銀いもパワーでHPが立て直されている。
攻撃で相手を怯ませる都合でそうなる、攻撃の陣形。
ジュリオさんのテンションも上がる。
朝……原っぱ遺跡の真ん中、崩れた神殿みたいな場所に、確かにでかい水たまりを見つける。
「これが……美容にいい水なのかしら?」
レオンさんが水に触れる。
「……普通に水だけどなぁ……魚とかも居ないみたいだし、水たまり……だなぁ……」
オスカーも調べて、そう呟く。
「まあ……でもこの水が伝説……と言う事らしいからね……井戸水の桶に入れてしまうと、井戸水にしか見えないけれど……」
ジュリオさんも不思議な顔をして呟く。
「崩れた神殿の破片を入れておくと、それっぽくなるです……この石……じっくり見ると綺麗です……」
コルちゃんが閃く。
というか、水的な材料と紛れると分からなくなる恐れもある。
ソフィーたちは神殿の破片を拾い、水を汲む。
もはや依頼人の思い込みの力を信じるしか……
採取生活は続く。
ミニデーモンを倒しつつ、セイバークロウを倒しつつ……
はじけるベリーが、ちょこちょこ見つかる。
「こんな遠くまで来て……はじけるベリーがたまに見つかる程度……結構貴重品だったのねぇ……」
レオンさんは、ようやく見つけたはじけるベリーを眺める。
……気まぐれいちごは沢山採れたんだけど……
「ん?」
そんなソフィーたちが、何かに気づく。
「あそこに……なんか黒い、円環があるわね」
モニカが指差し、行ってみる事にする。
小さい黒い塊が5つ、何かを囲んでるような……
「これ……アレじゃないかしら……」
レオンさんが気づいた頃には、小さい黒い塊は、にょ~んと伸びて、上下に揺れ始める。
「ぎゅいんぎゅいんぎゅいん……」
「黒プニだぁぁぁ!!」
強敵、黒プニとの戦いになる。
しかも5匹……
先制黒プニプレス!
黒プニ強化!
黒プニ強化!
黒プニ強化!
黒プニ強化!
と、黒プニ側は高まっている!
万物の写本、ジュリオさんのHPバリア強化、モニカの攻撃強化、レオンさんのレベル強化ダンス、とこちらも高まりつつ、銀いもパワーで黒プニプレスのダメージを回復する。
そして怯ませにかかる攻撃の陣形。
ツープラトンアタック!
モニカのチョッピングレフト!
ジュリオさんの剣圧アタックと、黒プニ1匹を集中攻撃して、1匹倒す。
そこからが……
恐怖の黒プニプレス!
黒プニプレス!
黒プニプレス!
黒プニ強化!
……3連打が襲いかかり、ソフィーが倒れた。
「きゅううぅ……」
「アイツを集中攻撃だ!」
ジュリオさんの指示で、そこからも攻撃の陣形を続行。
皆揃ってHPバリア9割削られているのだけど、突撃は続く。
「こういう時、引いたら負けるわ!上手く引けばいいかもだけど、ソフィーが倒れたんじゃそうも行かないし、ね!」
レオンさんもモニカもノリノリで突撃を続ける。
銀いもパワーでHPを立て直しながら、黒プニを怯ませ、倒して行く。
結局、ソフィーが倒れてからは、黒プニ側が引いた為に、銀いもパワーの回復で立て直しつつ、全部倒した。
「これは……アツい戦いだったね!」
ジュリオさんが額の汗を拭う。
「オイラも荷車お守り役じゃなかったらなぁ……いいとこ持ってかれたよ」
オスカーが黒プニを拾う。
朝ごはん、コイツだ……
「私も……いや、ソフィーさんより打たれ弱いので何とも……」
コルちゃんは倒れたソフィーに、山師の薬を使う。
コルちゃんのHPバリアは、誰よりも薄い。
ソフィーよりも薄いのだ。
「はあぁ……でも閃いたよぉ……」
ソフィーはメモを走らせる。
転んでもただでは起きない。
勝者のお守り、新緑の羽飾り、と閃いた。
「美味しいでふ……」
茹でた黒プニを食べながら、コルちゃんは上機嫌だ。
「強かった分、甘さ控え目な気がするな。青葉の丘の黒プニとは、ちょっと違う味だよな」
オスカーも食べる。
黒プニ汚れの激しいソフィー達も、なんかさわやかな甘さの黒プニ君を食べる。
「……上品な甘さをしてる気がする」
ソフィーが呟く。
……これほど遠くに来ると、戦闘も危険度が上がる。
今回の黒プニ君みたいに、3連打とかされると、全滅の恐れも出てくる。
……今回は危なかった訳だし……
「強い魔物は強いのねぇ……しっかし、あたしには甘々で……」
レオンさんは黒プニ君の甘さが苦手のようだ。
でも塩をかけると、更に甘くなるから不思議だ。
……なんか遠くに死神君がうろついてるのが見える。
「じゃあ……水も汲んだし、帰ろうか!」
ソフィーはジュリオさんを見る。
「そうだね。少し背伸びし過ぎたかも知れないし、帰ってまた、準備しないといけないかな」
ジュリオさんの許可が出たし、ソフィーは妖精の道標を取り出す。
「さて!初めて使うからどうなる事やら……ほいっ!」
妖精の道標を高く掲げる。
掲げた矢印はくるくる回り、東に向いて止まった。
皆で東を見る。
……原っぱに、なんとなく道っぽい跡が見える。
……獣道?
「……これを行くと帰れるのかい?」
オスカーがソフィーに尋ねる。
「きっと、そうなんじゃないかな?」
ソフィーが答えて、皆で東へ歩く……
……山を上る道が出てきた。
……ソフィーのアトリエへの道……!?
「嘘……!?これって?」
モニカが口許に手をやり、驚く。
「ソフィーのアトリエの道じゃないか?」
オスカーは振り返る。
振り返ると、キルヘンベルの市街地へと向かう道が見えた。
「成功だね!やったー!」
ソフィーは喜んで駆け出す。
ソフィーのアトリエが見えて来た。
……そんな朝の3時。
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[ヌルヌル魚]
うなぎ的な魚。煮ても焼いても美味しい。
[かまど]
即席で作る、石を重ねたやつ。
[巨大長いも大親分]
実は土いも。
[カワナマズ]
あまり釣れない。レアな魚。
[ヤーペッツさん]
食べる事に命を懸けるオジサン。オスカーもびっくりの料理上手。商人のハズなのに、貧乏らしい。
[エロエロ]
ハダカで絡み合う事。……ってことはあのプニプニ君は……もしや……って場面はそこそこ見かける。
[ハダカ族]
服を着ていない状態の人が、複数居る状態。植物達も動物達も魔物も、ハダカ族だったりする。
[ちょこっと調合]
図鑑調合とは違う感じの調合。大抵5分で出来上がり!
[人形劇]
誰よりもエリーゼお姉ちゃんがハマっていたりする。
[ホルストさん人形]
愛嬌たっぷり?お澄まし顔らしいホルストさんの人形。クオリティーの低さが絶妙。
[金色の泡の液体]
ビール的なお酒。エリーゼお姉ちゃんは飲んでもいいみたい。
[謎のポーズ]
竜のウロコ族の踊り。ふんはっ!ふんはっ!ふんはっ!ふんはっ!
[原っぱ遺跡の水]
美容にいいらしい?
[炭酸水の泉]
なんか、余計に冷たい泉でもある。
[ヤーペッツさん印の調味料]
東方に伝わる製法で作られたという調味料。
[普段使いのお弁当]
何かの食事にプラスされると嬉しい、豚ネズミのお肉。銀いもパワーで長持ちするよ!
[銀いもの皮]
分厚い皮の銀いもは珍しいみたいで、選ばれし銀いもの皮。
[炭化した銀いも皮の塊]
歴戦のアイツ。オスカー曰く、繰り返し使うといいことあるみたい。
[ソフィー落とし]
高く飛び、召喚したプニプニをぼとぼと落とす。真下に落ちる為、目標の真上をソフィーが飛ばないといけない。
[さわやかな甘さの黒プニ君]
甘さの強いスイカ的な味わい。