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錬金術のアトリエ 25
新鮮な黒プニ汚れの酷い4人、オスカーとコルちゃんでアトリエに帰って来た。
錬金荷車2号も、無事に帰れた。
妖精の道標……
なんという便利道具なんだ……
ただ、使用回数は2回。
今使ったから、あと1回だ。
「ソフィー……あなた……凄い人なのね!?」
レオンさんが目を輝かせる。
「いやぁ……あたしが凄いんじゃなくて……ぷにちゃんとプラフタが……あとおばあちゃんの作ったこの、アトリエがですね……」
黒プニ汚れの酷いソフィーは頬を掻く。
「そうだったわね。でも、あたしは色々と秘密があるから……ちょっと、ここのぷにちゃんにお世話になれないのよね……」
レオンさんは寂しそうな顔をする。
……ぷにちゃんを使うと、思った事やら過去やらだだもれになるから……
レオンさんは使えない……
一緒の旅の道で、そんな話をした。
そしてレオンさんは、黒プニ君が口に合わない都合でお腹減ったし、1人帰る事にする。
するとオスカーも、黒プニ汚れの酷いレオンさんが1人で帰るのもナンだから……
と、錬金荷車2号に乗せて帰る事になった。
「依頼品も渡しておくな」
オスカーは、そう言って帰って行った。
……もうそろそろ……朝になる時間。
ソフィーとモニカ、コルちゃんが、まずはアトリエに帰る、いつものパターンになる。
「プラフタ~♪妖精の道標、バッチリ成功したよ!帰り道あっという間だった!」
ソフィーの取り分の採取品と、3人は帰る。
「やはりソフィー、あなたの錬金術は確かなものの様ですね……しかし、凄い汚れですね……」
黒プニアタックの雨の跡が凄い、ソフィーとモニカを見て、プラフタは言う。
「HPバリアは銀いもパワーで立て直すんだけど……汚れの方はねぇ……」
ソフィーは苦笑いする。
そして3人は採取品と共にコンテナへと入る。
「これはこれはまた……じゅるり」
番人ぷにちゃん達が、採取品と、ソフィー達の服、靴なんかに群がる。
「なんか凄く嬉しそうね?」
下着を棚に乗せながらモニカが話す。
今回も番人ぷにちゃん達がわっしょいしてる。
「やっぱり吸収する物が来るといいよねぇ……その土地の色々な事が流れ込んで来るから……退屈しないんだよね……」
番人ぷにちゃん達が、わっしょいしながら答える。
「喜んで貰えると、嬉しいよ」
ハダカ族のソフィーが、番人ぷにちゃん隊長をつんつんしながら言う。
……そして3人はぷにちゃんの部屋へと入る。
「さて、時間のストックはあと12時間あるよ。ゆっくりしていってね」
ぷにちゃんは口を開ける。
「なんだか……いつもご機嫌なんだけど、いつもよりご機嫌?」
モニカが尋ねる。
「それはそうよ。もうコルちゃんの方は、赤ちゃんを取り出せるからね。私がどんな進化を見せるのかワクワクしてるよ。今回寝て、起きたら……また次の卵の番になるよ」
ぷにちゃんは答える。
「なんと……なんか早いですね……でも決めた事ですし、旅先も危険ですので……それでお願いするです」
コルちゃんは、その思いを伝える。
少し迷いがあって……
それがブレる感じがする。
「大丈夫。私が大事にするから……ともかく眠りましょうか。皆疲れてるみたいだもんね」
3人はぷにちゃんの中で眠る。
「ふあぁ……むむ?」
コルちゃんが始めに起きる。
「おはよう♪」
ぷにちゃんが反応する。
「おはようです……もう、赤ちゃんは?」
コルちゃんは、そう聞いてみる。
……さすがぷにちゃんの中。
身体の調子はすこぶるいい。気分もいい。
「貰ったよ。また出会うといいね」
ぷにちゃんは答える。
「それは……なんとなく複雑です……男の子だったら死んじゃいますし……」
コルちゃんはそう思う。
「あら。出会わなかったら、生理というカタチで死んでいくじゃない。生き物ってね、死ぬ事の連続だよ。死んでアタリマエ。その中に、コルちゃんやソフィー、私もそうだけど……例外が居るってだけよ?」
ぷにちゃんはそう伝える。
「……確かに……長生きできるのは例外、と言われればそうですね……」
蟻も猫も人も……植物、産まれなかった卵、出会えなかった花粉とかまで……
「同じ命、在り方が違うだけ」
……というぷにちゃんの感覚が伝わる。
花粉の一粒、葉っぱの1枚……
とんでもなく細かい所まで「命」という感覚のようだった。
「コルちゃんの次の卵が長生きできるのは……女の子だった時だけ、私の中で……かもね。だから、胸を張ってロジー君とエロエロしちゃいなさいな」
ぷにちゃんはコルちゃんを追い出す。
ふわっ、と浮いて地面に着地するような感じで、コルちゃんは部屋を出る。
……しかし、子供が出来た自覚もなければ、取り出された感じもない……
コルちゃんが服を着る時に、モニカが出て来て、最後にソフィーが出てきた。
「スッキリシャッキリです!」
コルちゃんは、スッキリシャッキリのポーズを取る。
「あはは、あたしも、スッキリシャッキリ!」
ソフィーも同じポーズを取る。
「な、なにそれ!?」
モニカはそんな2人を見て、苦笑いする。
ともかく、キルヘンベルはこれから朝。
開花の日。コルちゃんとモニカはアトリエを出る。
ソフィーは錬金釜へと向かう。
「さて、便利アイテム妖精の道標、だけどあと1回で終わっちゃうからね。使用回数+の妖精の道標を作るよ!」
ソフィーは錬金釜へと向かう。
「ほほう。なかなか頼もしいですね。それに更に錬金術にも馴染んで来ています……そういう空気は、何か言い知れぬ心地好さがありますね」
プラフタも、ぱたぱたと近寄って来る。
錬金生活を始めるも、使用回数+の特性を持たせたゼッテルを仕込む事により、6時間のヒマヒマタイムとなる。
「遊びに来たわよ~」
そんな午前中、エリーゼお姉ちゃんが遊びに来た。
「いらっしゃい、エリーゼ」
「いらっしゃい、エリーゼお姉ちゃん」
ソフィーとプラフタで顔を出す。
「あら。今日はソフィーも居るのね?なんか旅しているかと思っていたわ」
また新しい本を持って来たエリーゼお姉ちゃんを迎えて、お茶の準備をする。
プラフタも軍手をふわふわさせて、窓際の机に乗せる。
……ゼッテルが出来上がる12時まで、エリーゼお姉ちゃんと、お茶タイムをして過ごす。
……と、思いきや……
なんかエリーゼお姉ちゃんは疲れていて、アトリエのベッドで寝てしまった。
「……プラフタ、エリーゼお姉ちゃんって……実は寝に来てる?」
ソフィーはプラフタに聞いてみる。
「それはありますね。何でもエリーゼの寝室は書斎と化していて、何となく休まらないとか。1時間、2時間程度休む事が多いですね」
プラフタは答える。
「……なるほど……でも、新しい本も読めるしプラフタも退屈じゃないし……寝に来てる、でも歓迎なんだけど……なんか疲れてるような……」
ソフィーは、エリーゼお姉ちゃんの顔を思い浮かべる。
……とはいえ、こんな山の中のアトリエに来た事で、疲れたのかも知れないけれど。
「夜に眠れていないのかも知れませんね」
お昼ごはんの準備をしながら12時を待つけど、なんとなく暇をもて余して……寝ているエリーゼお姉ちゃんに、ソフィーは忍び寄る。
「!!」
そしてかさかさと錬金釜へと戻る。
「どうしましたか?」
「ヤバい!寝てるエリーゼお姉ちゃん……めちゃくちゃ美人!」
ソフィーはプラフタに囁く。
「眠っていても、エリーゼはエリーゼでしょうに……」
そう言いながら、プラフタもエリーゼお姉ちゃんの眠るベッドの方へと行く。
……今まで寝顔覗いたりしなかったのかな……
とソフィーは不思議に思う。
「……なるほど確かに……メガネを取っているからでしょうか……」
プラフタは戻り、そう感想を述べる。
あの黒縁メガネが無いと、かなりの美人な上に、長い黒髪から覗く眠る顔が……
品がある。
「よし、ゼッテル仕上げだね!」
ソフィーがゼッテルを取り出す頃に、エリーゼお姉ちゃんが起きて来た。
「はぁ……ソフィーのこの家は広くて明るくて……いいわねぇ」
黒縁メガネをかけて、いつもの感じのエリーゼお姉ちゃんが、ため息をつきながら出てきた。
「おはよう♪エリーゼお姉ちゃん……昼食も出来てるよ。ちょっと錬金釜に束ねた金糸を仕込んだら、一緒に食べようよ」
ソフィーは微笑んで迎える。
「なんか……そこまでしてもらうのも悪いわ……」
エリーゼお姉ちゃんは、少し戸惑うような顔をした。
「そんな事ないよ!色んな本が読めて……ね!」
ソフィーはプラフタを見る。
「そうです。エリーゼが来てくれるようになって、感謝してもし足りないくらいですから……昼食は私が作った訳ではありませんが……」
プラフタも、パタパタと飛びながら言う。
「……このゼッテル……ソフィーが作ったの?」
エリーゼお姉ちゃんは驚きながら、今出来たばかりのゼッテルを手にする。
4枚出来て……
そのうちの1枚が、釜の中で燃料として、束ねた金糸の素材となる。
「へへ~……まあ、ね」
ソフィーは頬を掻く。
「出来がいい」「増殖」
と特性を付けた最高級品質のゼッテル。
錬金術もさくさくと品質を上げられるようになった。
「錬金術って凄いのね……こんなゼッテル見た事ないわ……」
エリーゼお姉ちゃんがゼッテルに見とれてる間に、束ねた金糸を仕込み終える。
「じゃ、食べようよ?」
2人でお昼をアトリエで食べる。
「最近、プラフタの記憶が戻らないみたいなんだよね……」
お昼ごはんを終えて、ソフィーは呟く。
……なんだかプラフタが何かを思い出す、という話が無くなったような感じがして、プラフタとも話していた事。
「そうなの?つい最近に、プラフタが光り輝いて眩しいって言ってたように思うけど……」
エリーゼお姉ちゃんはプラフタを見る。
「つい最近……とはいえ、何となく記憶が甦りそうな感覚というか……細かく思い出したりしていたのですが……シルヴァリアのレシピ構築辺りから、さっぱりなのです」
プラフタもそう話す。
……思い出す事が出来ない感覚もあるらしい……
「それは難題ねぇ……」
エリーゼお姉ちゃんはそう言って窓を眺める。
エリーゼお姉ちゃんが本を読み出して、ソフィーとプラフタは勝者のお守りのレシピ構築をする。
束ねた金糸が仕上がり、勝者のお守りを仕込む。
こちらも3時間。
そんなお昼過ぎ、コルちゃんがやって来た。
「いらっしゃい♪」
ソフィーとプラフタ、エリーゼお姉ちゃんがお出迎えだ。
「エリーゼさんが居ましたか……来週くらいにはエリーゼさんの待っている商人のおじさん、来るかも知れないって話が出てました」
コルちゃんはそう話して、コンテナに入って行く。
「待ってる商人のおじさん?」
ソフィーは、エリーゼお姉ちゃんに尋ねる。
……何か新しい物とか来るのだろうか?
「本の仕入れね。あと絵を描く為の……蝋絵の具を仕入れてくれるそうで、待ってるのよ」
エリーゼお姉ちゃんは、そう話す。
フリッツさんがよく知る商人のおじさんで、蝋絵の具も、フリッツさんの注文のようだ。
そしてコルネリア露店で量産される予定……
と話した。
色々とコルちゃんが活躍しそうな……
「エリーゼお姉ちゃん、絵を描くの?」
ソフィーは尋ねる。
「傷んだ本の補修とか出来るといいわよね。黒の蝋絵の具が使われてる本も多かったりするわ」
エリーゼお姉ちゃんは、そう言って微笑んだ。
……夕方が近付いた頃に、オスカーがやって来た。
しかも緑のシャツ黒のオーバーオールを着て……
「ソフィー、カレーの材料持って来たぞ?お?エリーゼさんも居たのか。じゃあエリーゼさんもカレー、食べて行きなよ」
食通商人、ヤーペッツさんが広めてる煮物、最近オスカーもソフィーもハマッてるカレー……
「豪華夕ごはんだね!」
ソフィーは喜んで窓を開け、調理の準備をする。
「もうこんな時間だったのね……本屋の方はどうだったか知ってるかしら?」
エリーゼお姉ちゃんはオスカーに尋ねる。
オスカーは、今日も本屋は静かだった話をする。
それと、新しい服の話。エリーゼお姉ちゃんも、なんか新しい服とか注文しようかとか考えているけど、派手になりそうで躊躇っているそうで。
「まあともかく、エリーゼさんもカレー食べて行きなよ。旨いんだよコレが」
そんなこんなで、夕食もエリーゼお姉ちゃんと一緒に食べる。
ヤーペッツさんが、カレーのスパイス研究に余念がないらしく、前回とはまた違う新作だとか。
「へぇ~……凄い香りなのねカレーって……それに本で読んだ限りでは辛いみたいなのに、これは甘いのね」
エリーゼお姉ちゃんも気に入ったみたいだった。
パンに凄く合うから、ついつい食べすぎるメニュー。
「キルヘンベルだと、辛い物って無いからさ、ヤーペッツさんも、辛くならないスパイス研究らしいんだよ。土地土地で味の好みってあるらしいからさ」
しかも煮物にスパイスを入れたらカレーになるそうで、具はなんでもいいらしい。
「本当は辛いの?あたし、辛いのはちょっと苦手かな~……」
ソフィーも夢中で食べる。
「じゃあ、プラフタも預って行くわね」
夕食も終わり、エリーゼお姉ちゃんはプラフタを抱えて本屋へと帰る。
ソフィーは次の調合、妖精の道標を仕込む。
これが使用回数+の妖精の道標となる。
浸け置き12時間だ。
「なんか、妖精の人形とか作ってるのかと思ったけど、そうじゃないんだな」
オスカーは仕込み終えた錬金釜を見て、言う。
「うん。あとは釜を沸かした時にね、あたしのイメージ通りに妖精になる感じなんだよね。フリッツさんの人形のイメージがどうしてもあるから、それっぽくなるけど」
ソフィーは錬金コートを脱ぐ。
2人の夜はこれからだ。
………
「カレーは美味しいし、ソフィーのアトリエはなんか……何でも出来る所、みたいになってきたわね」
ソフィーのアトリエからの帰り道、エリーゼは抱えている本……プラフタに話し掛ける。
「錬金術とはそういう物ですが……ソフィーは特に才能に恵まれていたようです」
プラフタはエリーゼに答える。
「羨ましいけれど……私は錬金術の力があった所で、錬金術の勉強をする気にはなれそうもないわね」
ソフィーのアトリエのある山を降りて、街はずれ……
そこから教会、噴水広場……
旧市街へとエリーゼは帰る。
2時間程かかる道のり……
本屋に帰り、プラフタは閉まっている本屋の中、本を物色する。
操っている軍手では取り出し辛いのだけど、本を少し吸い寄せる事が出来るので、問題ない。
エリーゼは本屋の裏、柵囲いの井戸で水浴びをして、ふわふわクロースで身体を洗う。
……もうそれが日課だ。
最近は旧市街も人が増えてきたらしいから、この柵も壁にしないと……
そう思うけれど、柵のままだ。
「うぅ……すご~……」
すぐ近くでフリッツの声といびき……
エリーゼは辺りを見る。
……エリーゼの場所から井戸を挟んで裏側に、フリッツが寝ていた。
「!!………」
寝てる訳だし……とエリーゼは身体を拭く。ゆっくりするつもりが、ゆっくり出来なくなった。
……このオジサン、何をしているのか。
髪を拭いて身体を拭いて……
服を着たエリーゼはフリッツを起こす。
「フリッツさん、フリッツさん……」
揺すっても起きない。
……どうやら、かなり飲んだみたいな……
つまりは酔っぱらいのオジサンだ。
……ざばあぁぁぁ……
……ざばあぁぁぁ……
……ざばあぁぁぁ……
「うおっ!……雨か……?」
3回水を掛けると、フリッツは起き上がり、眩しい星空を見上げる。
「……どれだけ飲んだんですか?」
エリーゼは、そう言って呆れた顔をする。
フリッツはエリーゼを見る。
「……はははっ……懐かしい料理に懐かしい酒があってな……ついついあの頃に戻ってしまった……ここは……そうか井戸で力尽きたのか……」
ずぶ濡れのフリッツは立ち上がり、そう説明する。
エリーゼからすると、人形、人形劇の台本……
それに素晴らしい絵も描ける、尊敬できるオジサンだけに、今回の井戸で酔いつぶれている姿は、見たくなかった。
……しかも、井戸まで来て力尽きた……
のではなく、この場所で独り、酒盛りをしていたようなのだ。
酒の残る瓶に、食事の器があった……
「ちょくちょくここで飲んでいるんですか?」
フリッツにジト目を向けて、エリーゼは尋ねる。
「ふぅ……今回が初めてだ。この酒と出会う事は、そうそうないからな……戦友の好きな酒でな……幾度も倒れるまで飲んだものだが……それももう昔の事だ」
フリッツは少し寂しい笑顔を見せると、食事の器と酒の残る瓶を拾い、帰って行った。
……フリッツさんの使う井戸も……そういえばここだったわね……
エリーゼは身体を洗う用に、小屋の増設を心に決めて、本屋に帰った。
「何かあったのですか?」
閉まっている本屋のカウンター。
プラフタが本を読んでいて、エリーゼが来ると尋ねる。
「フリッツさんがね、酔っぱらって寝ていたのよ。水浴びしている時に見つけたから、驚いたわ」
エリーゼはそう話す。
……そう話す相手が居る、という事に自然と笑みが浮かぶ。
「フリッツはエリーゼがここで水浴びをするのを知っていて……それで?」
ページを捲る軍手を止めて、プラフタはそう話す。フリッツの家は、本屋からほど近い。
「……そんな感じではなかったわ。完全に意識が無いみたいだったから。でも水浴びをする場所くらい、増設しないといけないのかしらね?」
エリーゼは伏し目がちに言うと、書斎と化した寝室へと入る。
プラフタもそれについていく。
「今日も絵を描くのですか?」
机に向かうなり、エリーゼはペンで絵を描く。
「子供みたいでしょ?でもね、なんか描きたいのよね……なんでかしらね」
蝋絵の具が待ち遠しい……そんなエリーゼの夜は更けて行く……
………
「えへへ、おはよ♪」
ソフィーのアトリエでは、朝の3時……
まだ暗いうちから2人とも起き出した。
夜に寝るのが早かったので、そうなった。
「今日は出掛けるんだろ?オイラはまた弁当でも準備するかな……」
ハダカ族2人で毛布とか纏めてから、オスカーの身体を洗う。
ソフィーの分はぷにちゃんが居るので、暖炉で洗うのはオスカーだけだ。
「あたし、妖精の道標の仕上げが6時だから……そこからカフェに行くよ♪」
服を着るオスカーに、ハダカ族のままのソフィーが言う。
「アレ、本当に便利だよな……帰り道がないなら……って無茶しそうだけどなぁ」
オスカーは緑のシャツに、黒いオーバーオールを着る。
「えへへ、それやっぱり格好いいよね。よそ行きって感じするもん」
ソフィーは微笑む。
「まあ、大事に着たいから、旅は母ちゃんの奴にするけどな。それじゃ、カフェでな」
オスカーはアトリエを出る。
コンテナが開かない都合で、さっさと出ないとソフィーの身体は洗えない。
ソフィーは不思議毛布なんかの洗濯物も持って、コンテナに入る。
ポコポッポー!ポコポッポー!
ぷにちゃんに綺麗にしてもらって、毛布とか整えてアトリエ掃除……
6時が待ち遠しい感じだったけど、ようやく6時になり、ソフィーは妖精の道標の仕上げに入る。
仕上げはものの5分。
……使用回数5回、妖精の道標が完成した。
そしてソフィーはアトリエを出る。
そんな果実の日。休日だけど旅立ちの朝。
朝のカフェに神父さんが居て、ハロルさんも居た。
なんか賑やかな朝のカフェ。
「遂に!遂にこの人、来る気になったのよ!」
ソフィーが来るなり、レオンさんがそう言って笑う。
「本当ですか!?やったぁ!」
更にパーティーメンバーが増える事になる。
「そんなに喜ばれるとはな……まあ、錬金荷車で移動はラクだし、帰り道はテレポートするとか聞いてな。それに銃の準備も整ったからな……ひとつ頼む事にした訳だ……」
ハロルさんはそう言って、ホットミルクを飲む。
レオンさんのマナの柱の力を受けているから、即戦力……
なのかも知れない。
「ところで今回はどこへ行くんだい?」
ジュリオさんが尋ねる。
ソフィーはカリカリトーストを口にしたところだった。
「ホルストさんの噂とか聞かないと……依頼とか……」
ソフィーには特にプランが無かった。
そして食べ終えて……
依頼の物色する。
蛇の草需要に、砕け散った星が降ってきた話が出てきた。
「太陽と月の原野だね……」
ソフィーは呟く。
お墓が並ぶ場所で、ソフィーとしてはあまり行きたくない場所だ。
「蛇の草かぁ……アレ普通に旨いよな」
オスカーは呟く。
「蛇の草か……酒に合うな……」
ハロルさんも呟く。
……ソフィー的には、あまり蛇の草は好きじゃないけれど……
カレーの中に入ってるやつは美味しい。
「砕けた星が降ってきた場所って事は……星の欠片とか拾えるのかしらね?」
モニカとコルちゃんでそう話す。
「んじゃっ!太陽と月の原野に行こう!」
ソフィーは星の欠片には興味があって、そう声を上げる。
お墓ばかりの場所に、行きたくはないけれど。
キルヘンベルを8時に出る。
そして恵みの森~太陽と月の原野へと向かう道。
「ハロルさんは荷車でラクが出来るから来たのに……乗らないのです?」
コルちゃんが荷車の2階から顔を出す。
「本当にイキナリ乗り込んだら……格好悪いだろう?お前みたいなマスコットが羨ましいが……」
そう言いかけて、ハロルさんはオスカーを眺める。
いつも通り荷車から少し離れて、植物に声を掛けて回っている。
「……あの倅はいつもあんな感じなのか?」
歩き始めてからかれこれ3時間……
オスカーは生き生きとした顔で植物達に挨拶回りだ。
「いつもあんな感じよ。おデブちゃんは」
レオンさんが微笑む。
ハロルさんが来て、やたら嬉しそうだ。
お昼。
恵みの森~太陽と月の原野の途中、前回もお世話になった泉でお昼ごはんにする。
「ここの雛鳥の芋、今日も沢山あるなぁ……畑みたいだよ」
オスカーとモニカ、ソフィーとジュリオさんで芋を掘る。
「よし!よしよし!」
ハロルさんは泉の向こう側で何か探していて、見つけたらしく帰って来た。
「何か見つけたの?」
ソフィーが聞くと、ハロルさんは赤いトカゲを数匹刺した、ナイフを見せる。
「ヤブトカゲの赤いやつが居たぞ……旅もしてみりゃウマい目を見るんだな」
いつも不機嫌そうな顔をしてるハロルさんが、にんまりしてる。
「薬になったりするの?」
ソフィーは尋ねる。
……なんかレオンさんが目を輝かせてる。
「あなたさすがだわ!よく見つけたわね!」
そうして食事の時間。
ハロルさんは荷車に入れた道具箱から、細い串を出して来るとトカゲを刺して、焼き始める。
6匹、串にして6本……
「ハロルさん、そのトカゲは食べられるのかい?」
オスカーが尋ねる。
オスカーも知らない料理のようだ。
「これがウマいんだよ。ヤブトカゲの赤なんて、なかなか値が張るもんだから、そうそう口にしないがな」
オスカーの芋スープと、ハロルさんのトカゲ串……
皆で味見をする。
「にがぁ……あたし無理だこれ……」
ソフィーは囓りかけをハロルさんに返す。
「私もこれはちょっと……」
モニカも口を押さえて、串をハロルさんに返す。
「僕も……あまり趣味に合わないかな……」
ジュリオさんはそう言いながらも、食べる。
「これは……美味しいです!」
「なかなか……イケるんじゃないか?」
オスカーとコルちゃんは食いついた。
「コル助が食えるのは意外だな……」
ハロルさんとレオンさんは好物のようだ。
コルちゃんもパクパク食べてる。
そんなお昼ごはんを過ごし、ソフィー達は太陽と月の原野へと向かう。
そして夕方……
もう夜になる時間に太陽と月の原野に到着した。
「相変わらず、蛇の草がスゴいなぁ……」
なんかやたら生い茂る蛇の草の群れが、風にそよいでいる。
そんな祈りの絶えた教会……
死神と小悪魔をやり過ごし、目的地である月見の墓所へと向かう。
月見の墓所……
ここも赤プニと死神、思い思いに過ごしているだけなので、やり過ごしやすい場所。
「魔物って、こんなに穏やかだったのか?」
空を眺めてぼ~っとしている死神君を見て、ハロルさんが呟く。
「ここの魔物は、なんかそんな感じみたいだね。こちらに気づいても、あまり近付いて来ない、って感じなんだよね」
ジュリオさんが答える。
「おおっ!ソフィー……あれ……」
オスカーが指差す。墓地の横……
ぽつぽつとしか墓石の無い場所に、光の粉が低空飛行しているような……
そんなキラキラがあっちへこっちへ……
「幻想的だわ……何これ素敵……」
レオンさんが思わず呟く。
「輝く小虫の群れみたいだな……」
その隣でハロルさんが、そう言ってしまう。
「ハロルさん……それを言ってしまっては……」
ソフィー達はそんな光の粉を見守る。
死神君がふらふらしていて、その上を光の粉があっちへこっちへ……
その粉は地面に落ちて行くのもある。
死神君の頭にも、降りかかってる。
「あの辺りに星の粉って事なのかな?」
ソフィーはそんな死神君を見つめる。
「ようやく試し撃ちの時間になった……って事だな」
ハロルさんは胸のホルダーから銃を抜いている。
青い死神2体……
出会った事のあるやつに、ミニデーモンがついてきて、戦闘となった。
まずは防御の陣形、そんな中、ハロルさんは銃を空に向ける。
ダン!ダン!ダン!
……ババババババ……
炎の雨が相手に降る。
「スゴい!ハロルさん強い!」
相手の攻撃も、スイスイとフォローして受けてくれるし。
恐ろしく戦い慣れている。
そして攻撃の陣形、ミニデーモンにコルちゃん波動拳、コルちゃん昇龍拳と決まっていく中でも、ハロルさんの銃撃が入る。
ババババババ……
炎の雨が定期的に降りそそぐ。
この技は1回ではないみたいだ。
死神とミニデーモンは危なげなく倒せた。
「あなた!なんでこんなに強いの!?」
ソフィー達が光の粉を採取する中、レオンさんがハロルさんに尋ねていた。
「ふふふ……やっと俺の銃が出来上がった訳だからな……張り切ってるだけさ」
ハロルさんも光の粉を集めながら、レオンさんにそう答えていた。
「星の欠片って……虫の死骸の粉みたいだな……でもまた熱を帯びてるし光ってるし……」
大量に集めると危険なやつで、コルちゃんの作り出す小ビンに入れる。小ビンだらけになった。
「インテリアに重宝しそうです……」
コルちゃんが呟く。
「さて……これで用が済んだかな……ところで僕は祈りの絶えた教会の、地下に興味があるんだけど……」
ジュリオさんが言い出す。
「……地下?そんなのあるんですか?ジュリオさん」
ソフィーは尋ねる。
……あの教会の地下……
鳥肌レベルで怖い。
「そういえば、教会の脇に地下に続いていそうな扉があったな」
ハロルさんも言う。
……これは……
地下がある率が上がった……
とはいえ、まずは腹ごしらえ……
夕食は蛇の草の煮物となった。
そしてソフィー達は祈りの絶えた教会へと戻り、教会の脇にある、地下への扉へと行く。
教会の入口……
跡地はなんか、死神君が守ってるみたいなんだけど、この扉はノーマークだ。
そして地下へ行く。
荷車も入れる……
大きな扉の先に、広い下り階段……
皆で荷車を運ぶ。
「しじまの寝室……とはここか……なんでも錬金術士のアトリエでもあった……とエリーゼの本屋で見つけたんだよ」
ジュリオさんが言い出す。
ソフィーはそれを聞くと、恐怖もぶっ飛んで目を輝かせた。
「へぇ~……!あたしやる気が湧いてきました!」
「はははっ、ソフィーは現金だなぁ……」
オスカーが笑う。
コッ……
コッ……
しじまの寝室に入り、ハロルさんがナイフを投げて黒いトカゲを貫いて歩く。
しかし、恐ろしく正確に投げるもので、荷車にトカゲが採取されてゆく……
「ふふっ……やはり旅はいいな……高価なつまみがタダで採れるなんて、素晴らしいな……」
コッ……
やたら居るトカゲに、ナイフが刺さる。
しじまの寝室を進むも、魔物はむしろ外のやつよりも弱く、スイスイ進む。戦闘もスムーズだ。
「これ……!錬金術に使えそうなパワーを感じるよ!」
ソフィーが出来損ないの欠片を見つけて喜ぶ。
「……なんだこのゲテモノは!?」
ハロルさんが怯む。レオンさんも怯む。
「なんでそんな物にパワー感じちゃったのよ……この子は……」
そんなこんなでソフィー達は奥へと進む。
しじまの寝室での採取品は、古い石板や鉱石なんかと、ハロルさんが仕留めるトカゲだった。
「さすがにこういう場所だと、オイラは出番が無いや……」
オスカーが呟く。
そうして行き止まりまで奥へと進むと……
「錬金釜!?」
祭壇に、小さくなっている錬金釜が鎮座している。
ソフィーが手に取る。
……少し古びた骨董品だけど、何となく気難しいオーラを感じる。
「冒険した甲斐があったね。ここの魔物は物足りないばかりだったけど……」
ジュリオさんは微笑んで言う。
素早さ的な都合で、コルちゃんとソフィー、ハロルさんが活躍する感じだったし……
「さて……」
ソフィーは妖精の道標を取り出す。
「それは、こんな場所でも使えるのかい?」
ジュリオさんは尋ねる。
「それは分かりませんが、使っちゃってもいいかな……?」
ソフィーが尋ねると、皆で頷く。
ここからは戻るばかりだし、荷車はそこそこ満ちて来ているし。
「じゃあ!使ってみます!」
ソフィーが妖精の道標を掲げると、今来た道を示した。
そしてその道を見ると、この地下室の天井が、すぐに終わっていて、森への道が見える。
「これ……ちゃんとアトリエに続いてるような道がちょっと遠くに見えるわ……」
レオンさんが驚く。
ソフィーも内心、驚いてるんだけど……
ともかく、ソフィー達は歩く。
振り返ると、錬金釜のあった祭壇が見える。
先には、昼の日差しの小路……
アトリエのある山の景色……
そしてアトリエに向かって歩き……
アトリエ前に到着した。
……種の日。
12時……
空は明るいけれど、小雨が降りだした。
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[新鮮な黒プニ汚れ]
新鮮だと黒が薄い。放っておくと黒いのが濃くなる。
[ぷにちゃん]
魔力の発生源。ぷにちゃんの魔力の色の世界になるんだとか。
[採取品]
調合に使える素材とか、調合には使えないけど、食べられる物とか、綺麗な物とか。
[HPバリア]
ダメージを受けると、そのダメージを肩代わりしてくれる魔法バリア。骨を折ったりしなくなるので、ちょっと強気で冒険できる。
[銀いもパワー]
銀いもの皮が持つ、防腐能力と回復力、そして防御力。銀いもは腐らないんじゃないか……くらい長持ちする。
[番人ぷにちゃん達]
プニプニしてる。汚れを食べるのを待ち構えている。
[吸収する物]
ソフィー達の汚れや、採取品の汚れなんかの事。黒プニの人生とか土の知る情報とか、様々な物を吸収しているので、汚れた物、大歓迎。
[若い女の子の人格]
ぷにちゃんの人格は2つ。女の子の人格は明るくて好奇心旺盛で、エロエロ大好きで、食いしん坊。
[赤ちゃんを取り出す]
妊娠した赤ちゃんを、マナの柱が取り出し、マナの柱の命とする。これをするとマナの柱がより強く大きくなれる。
[スッキリシャッキリのポーズ]
コルちゃんの編み出したやる気のポーズ。
[ヒマヒマタイム]
図鑑調合の、長い時間。この時間に寝たり逆立ちしたり、杖を振り回していたりする。
[カレー]
スパイス的な材料を入れた煮物。
[ヤーペッツさん]
食通商人のオジサン。美味しい物を求めてこのキルヘンベルへと来たらしい。そして、この場所は凄く良いらしく、ハイテンションな日々を過ごしているのだとか。
[本を少し吸い寄せる事が出来る]
プラフタの能力。字を書いたりも出来るけど、なんか大事なモノを失うらしく、ちょこっとした事にしか使わない。
[本屋の裏、柵囲いの井戸]
エリーゼお姉ちゃんの付近の井戸。
[ハダカ族]
服を着ていない状態。
[蛇の草需要]
魔法の草スープよりも、蛇の草スープの方がお腹に溜まるとか。
[ヤブトカゲ]
冒険者屋台のレアアイテム。お酒に合うのだとか。