錬金術のアトリエ 1   作:東京のぷるぷる

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錬金術のアトリエ 34

錬金術のアトリエ 34

 

モニカとコルちゃんと合流して、レストランで夕食を済ませて、3人でアトリエへと向かう。

「遂にプラフタさんが人間に……なるのかも知れないなんて、凄すぎるです」

「人形だけど、あれはもうほとんど人間と変わらないわよね。マナの柱って凄すぎるわよね………」

3人、そう話しながら歩くアトリエへの道。

すっかり夜の空になっている。

 

 

「うわ!ぷにちゃん!?」

ハダカ族になって、ぷにちゃんの部屋に入った3人は驚く。

ぷにちゃんが家の形をしていて、ドアの前に丸く囲われた場所もあるのだ。

「プラフタが……人形まで迷わぬ様に……アトリエを……再現してある……今はプラフタ以外は……入れぬ……」

ぷにちゃんの方が準備万端だった。

 

そして、これからの打ち合わせをする。

 

 

「じゃあ、プラフタの魂を移すの……始めちゃおう!」

ハダカ族3人はコンテナに引き返し、脱いだ服を見る。

まさに今、番人ぷにちゃん達が取りついた所だった。

……長い打ち合わせも、時間が止まっていたのだから一瞬だったのだ……

 

「じゃあ、色々と準備しないとだね!まずはプラフタを呼んで来ないとね!」

ソフィーはハダカ族のまま、アトリエに顔を出す事にした。

「あまり大急ぎでなくても、いいと思うのですが……」

コルちゃんはそう呟いて、ソフィーの後ろ姿のお尻を見送る。

……モニカも隣で見てる。

 

広くなって長くなった廊下の向こう、階段の上がアトリエの扉なのだけど、ハダカ族のまま、ソフィーが上半身と顔を出してる。

モニカとコルちゃんで、そんなソフィーのお尻を眺める。

 

「プラフタ~……」

ベッドの隙間から顔を出したソフィーが呼ぶと、プラフタはふわふわと飛び、その場所へと近寄る。

「ソフィー……何だってあなたはそんな姿で……」

「ぷにちゃんがもう、プラフタの為に準備万端なんだ。だから呼びに来たんだけど……」

呆れるプラフタの言葉を遮って、ソフィーが話す。

「アトリエに誰も居なくなるのであれば、鍵を掛けないといけないのではないですか?」

プラフタは、ふわふわと飛ぶ。

 

「言われてみればそうだね」

ソフィーはハダカ族のまま、ベッドの扉から出る。

「もう!横着なんですから……」

アトリエのドアに鍵を掛けて、ソフィーはプラフタとコンテナに入る。

「……あなた達までハダカ族なのですか?」

ソフィーとプラフタは奥へと進み、モニカとコルちゃんの待つ、ぷにちゃんの部屋の扉の前に着く。

そしてプラフタは呆れたようにそう言った。

「まあ、まだ汚れを食べてる所だから……しょうがないのよね」

「はい。袖が無いのは落ち着かないのですが……仕方ない話なのです」

モニカとコルちゃんはそう言うと、汚れを食べてる番人達をツンツンする。

 

「いよいよ始まるのですか……ハダカ族の前ではありますが、緊張しますね……」

プラフタは扉の前をパタパタと飛ぶ。

 

 

3人が汚れの食べ終わった服を着て、プラフタとも打ち合わせをする。

……プラフタの魂が本と人形に別れる事。

その状態で、コンテナで服を着せて、アトリエの錬金釜の前に移動。

その場所で、幽世の羅針盤を使い、全ての魂を人形に移す。

「魂とは、分けられる物なのですか……?」

プラフタが尋ねる。

 

魂のカタチなど、思い描いた事は無いものの、糸の束のようなモノなんて、誰が思い描いただろう。

「ぷにちゃんが言うには、そんな感じみたいなんだよね。人形の命に、あたしの子供の命を使うみたい」

 

打ち合わせされた事を、ソフィーは話す。

ぷにちゃんに子供を預けていない場合、何らかの子供を提供する必要が出てきた。

今回はソフィーの子供、コルちゃんの子供を提供した事で、ぷにちゃんは人形に命を使う事が出来るそうだ。

「人形だけでは……やはりダメなのでしょうね……」

プラフタの声が少し曇る。

「人形だけでも行けるみたいですけど、命を使った方がプラフタさんの負担が少ないみたいです」

コルちゃんがそう話す。

ぷにちゃんから聞いた話。

 

「それと、あたしの子供が受けるだろう能力……魔法バリアとか錬金術なんかも、使えるようになる可能性が出てくるんだって。人形だけだと、その能力は受け取れないんだって」

ソフィーも話す。

どれも、ぷにちゃんに聞いた話。

 

ゆくゆくは旅にも出れる、なんて望むのなら……

命を使うのは、必要な事みたいなのだ。

「それに、もしプラフタが次の段階……本当に人間の身体になれる場合……その命に魂が入れられるとか……言ってたわね」

モニカも話す。

錬金術が進んだ場合、そういう事も考えられるそうだ。

 

「そんな事まで……つまり命を借りて、ゆくゆくはソフィーの子供も自立できる望みがあると……」

「へへ~……あたしに似た感じの子なのかな~……その頃にはあたしはお婆ちゃんになってるかもだけど……」

3人とプラフタで語り合う。

 

少し語り合った所で、モニカが扉を見つめる。

「ぷにちゃんが待ってるのよね……」

「そうですね。私も覚悟を決めなくてはいけませんね」

「じゃあ、扉を開けるね?」

ソフィーとコルちゃんで扉を開ける。

 

 

開けた扉の先には、アトリエの形をしたぷにちゃんが待っているのが見える。

 

「……いよいよなのですね。色々と関連する品物に触れていたり、話もしていたのですが……」

プラフタはそう呟きながら、ぷにちゃんの近くへとふわふわと飛んで行く。

ソフィー達3人も、プラフタについて行く。

「さて……今のこの部屋に……魂が複数あるのは……良くない……プラフタ以外は……出ていてもらおうか……」

ぷにちゃんはそう話す。

今や3人とも、触れずともそう伝えるぷにちゃんの思いが分かる。

 

 

「さて……では説明するか……」

3人が出ていき、プラフタとマナの柱だけになった部屋で、マナの柱が語る。

……魂とは、束になった糸のような物であること……

……その束を本の身体に7割程残し、3割程を人形に移す事……

その後で、この場所ではなく、ソフィーのアトリエで魂の全部を人形に移す事……

……アトリエで魂の全部を移す時に、幽世の羅針盤は使われる事……

 

 

「さて、扉は開くのかなぁ……」

扉の外、3人は心配そうに扉を眺める。

「158時間を使いきらない限り、すぐ開くのよね」

モニカが呟いた時、扉は開いた。

「おおー!」

そして本のプラフタと、あのプラフタ用の人形が出て来た。

「ちょっと……大丈夫!?」

あまりにも頼りない足取りの、目を閉じたままの人形を、モニカとコルちゃんが抱き止める。

「今……魂を分けている状態ですので……早めに錬金釜の所へ」

プラフタの、本の方がそう話す。

「服を着せないとです」

「……よろしく……お願いします……」

 

3人は人形のプラフタに服を着せて、コンテナを出る。

人形のプラフタは目を開かず、なんとか歩いている……

という感じで身体を動かしていた。

そんなアトリエまでの道のり。

棚に挟まれたほんの短い道のりで、ソフィーは堪らなく不安に思う。

……果たして本当に……

……本当に……

プラフタは人形に……

 

 

プラフタの人形が錬金釜の前に立ち、本もパタパタと浮かぶ。

ソフィーはなんとなく窓を眺める。

夜の星明かりが照らすいつもの景色。

 

そして手に持つ幽世の羅針盤……

プラフタの魂を人形へと導く道具……

……やれるはず……

 

「……じゃあ、やるよプラフタ」

意を決して、ソフィーはプラフタに、笑顔を向ける。

 

……絶対大丈夫……

プラフタは必ず人形に辿り着く……

 

「はい。お願いしますソフィー」

ソフィーは幽世の羅針盤を持つ両手を、人形のプラフタへと向けて、真っ直ぐに伸ばす。

 

アトリエの部屋が一瞬暗くなり、また元の明るさに戻る。

 

……「なぁソフィー……ちょっと脱いでみてくれよ。オイラ最近、興味あるんだよ」

オスカーの声。

 

……「ソフィーや、ちょっと暖炉に洗濯物を干しておいて」

おばあちゃんの声。

 

……「凄い臭いわね……また爆発させたの?」

モニカの声。

 

……「私もこの臭いは、苦手だわ……」

ウメさんの声。

 

このアトリエで起きた事、このアトリエで話した事が巡る。

幾つも幾つも……このアトリエで起きた色々な事が、このアトリエの中に渦巻いていて、それらは気まぐれにソフィーに語りかける。

 

ソフィーは目を閉じたまま、プラフタに伸ばした手に集中する。

 

……プラフタの本から魂が消えたのを感じる……

ソフィーの両手が、急に軽くなった。

……!!

ソフィーは怯む。

 

………………プラフタの魂を探そうと思うけど、すぐに止めて、そのまま手を伸ばす。

 

……信じるんだ……

 

風が吹いた。

光が風となって吹き抜けた。

……魂の世界の風……

なぜか……そうなんだと感じた。

 

「ソフィー……成功しましたよ」

プラフタがソフィーの肩に触れる。

「ソフィーさん、プラフタさんは人形に移ったみたいです」

「やったわね!ソフィー!」

……このアトリエの記憶?

 

……これは惑わす為の……

 

散々流れ続けている、このアトリエの記憶の海。

でもこれは何か今までのと違う……

 

そう感じて、コルちゃんとモニカの声に、ソフィーは目を開ける。

 

プラフタは目を開き、ソフィーを見ていた。

ソフィーは力が抜けて床に座り込む。

「あ、あはは……」

そう笑うソフィーの目から、涙が零れた。

「もう!本当に成功して……安心しちゃったよぉ……あはは……」

「ソフィーが必死に導いてくれましたから。魂を合わせる時、ほんの僅かに揺れただけでしたから、こうして魂を移せました。心配掛けましたね」

プラフタはソフィーの頭に手を置くと、そう言って微笑む。

 

「ヤバかったよぉ……ふぇぇ……良かった!……良かったよぉ……」

ソフィーはプラフタにしがみついて泣き出す。

そんな2人を、モニカとコルちゃんは見守っていた。

 

「ところで、プラフタさんめちゃくちゃ可愛いです!」

コルちゃんが見守っているのにも飽きて、プラフタをぺたぺたする。

「服も凄い露出よねぇ……レオンさんてば究極攻めてるわよね」

モニカもぺたぺたする。

「……ぺたぺたされても、触られてる感覚というものはありませんので……ですが何か気恥ずかしい感じがしますね……」

 

プラフタはしきりに自分の身体を見ていたけれど、コルちゃんとモニカと鏡の場所へと向かう。

べそべそするソフィーは置いてきぼりで、そんな3人を眺める。

「これは何と大胆なカットなのでしょうか……色遣いといい、華やかですね……」

プラフタは、鏡に映る自分を眺めて呟く。

股の所の露出がビキニみたいな……

ヘソも見えてるし。

「これは鼻血が出そうです」

コルちゃんもそう呟き、プラフタはコルちゃんを見る。

「その感想は……」

 

そして後ろからソフィーもひっついた。

「プラフタ、めちゃくちゃ可愛いよぉ~……」

そして鏡の前で、4人はファッションチェックして過ごす。

 

 

「さて、随分と遅くなりましたし、私達は帰ります。明日は種の日。プラフタさんの御披露目も楽しみです」

「ぷにちゃんにも、ちゃんと忘れずに報告しなさいよね?」

モニカとコルちゃんは帰って行く。

「そっか。ぷにちゃんにも報告しないとだね~」

「そうですね。マナの柱にはお世話になりっぱなしですし、私も晴れて中に入れるのでしょうから」

ソフィーはベッドの間、コンテナへの扉を開ける。

「アトリエが空になってしまいますね……鍵を下ろして来ましょう」

プラフタはしっかりとした足取りで、アトリエのドアへと向かう。

ソフィーはそんな後ろ姿を眺める。

宝石のしっぽ、ねじまきが揺れていた。

 

「さて、行きましょうか」

「プラフタ、あまりコンテナとか入りたがらなかったもんね?少し嫌なんでしょ~?」

ソフィーは意地悪な笑みを浮かべる。

本の時にも、プラフタはコンテナに入れたし、ぷにちゃんにも会えた。

だけど、あまり行かないのだ。

「無い記憶が疼くので、そこに不快感がありますね。不思議な所です」

プラフタはソフィーに続く。

 

コンテナの中、広くなった両側の棚は、番人ぷにちゃんと採取してきた物で賑わっている。

その棚は突き当たりの、ぷにちゃんの部屋の扉まで続き、半分手前ぐらいまで賑わっている。

「あまりこの場所は見なかったのですが、材料で溢れ返っているのですね」

プラフタは素材のひしめき合う棚を眺めて言う。

図鑑調合で材料枯渇!

なんてするには、軽く1ヶ月とか掛かりそうな量があるのだ。

 

「そうだね~……でも旅が面白かったり、新しい錬金術の為には、まだ見ぬ世界へ!……なんてあーだこーだそーだこーだで、出掛けちゃうんだよね」

そんな話をしながら、棚の廊下を歩く。

歩いて行くと、ぷにちゃんの部屋の前へとたどり着く……

 

「さて、ぷにちゃんはどんな反応なのかな~……」

ソフィーが服を脱ぎながら呟く。

番人ぷにちゃん達は、みんな揃って眠ってるみたいだった。

「脱がないといけないんでしたね」

プラフタも服を外し始める。

「んむ?」

そしてつっかえる。

「なんか、着せるのも難しかったんだけど、脱ぐのも難しそうだよね~……」

ソフィーも手伝い、プラフタの服を脱がせて行く。

 

……苦労して脱ぎ、そしてぷにちゃんの部屋へと入る。

 

「おお……プラフタも無事……魂を……移し終えたのか……残り時間は……155時間ある……プラフタの動力は……10%程だ……」

ぷにちゃんは口を開く。

「本の時には、マナの柱は灰色だったように感じましたが、鮮やかなオレンジ色なのですね」

プラフタはぷにちゃんを前に呟き、ソフィーに続いて口の中へと入る。

「オレンジ色かぁ……いいなぁ……あたし黒の強い灰色みたいに見えるんだよね。なんでだろ?」

ぷにちゃんは口を閉じる。

ソフィーにとっては灰色の、ぷにちゃんの中。

プラフタにとってはオレンジ色の、ぷにちゃんの中。

 

プラフタの感覚が、人間のように感じ出す。

そしてプラフタは自分の手を見る。

「あまりにも鮮烈な……」

風を受ける肌の感覚、そして身体の中まで通り抜ける風……

プラフタは驚き、オレンジ色の回りをきょろきょろする。

 

「今まで……感覚は無かったようだから……新鮮に思うのだろう……我の外に出れば……その感覚は無くなる……さて……プラフタに命を使っている……事により……力を与える事も出来る……」

ぷにちゃんはそう伝える。

 

「力……?錬金術の力ですか?」

「そうだ……が……どの力を受け取れるかは……今の命次第……だと思われるが……」

「おお~!でも、その為の命だったんだもんね……そっかぁ~……プラフタもエロエロ儀式かぁ……」

ソフィーがそう思い浮かべると、プラフタに伝わり、プラフタは顔に熱が上がるのを感じる。

 

「!?ええ!?ここで……今は痛みも感覚もあるのにそんな事を……!?」

プラフタはうろたえる。

「心の準備が……出来てからにしよう……それに……今はまだ……ゆっくり眠るといい……だろう……」

ぷにちゃんはそう伝える。

そして少し暖かい風が吹いた。

 

 

……充分に眠り、ソフィーが目を覚ます。

「あうぅ……スッキリシャッキリ~……」

そして妙なポーズでぷにちゃんの外側へと、ふわふわ進み、外に出る。

プラフタはまだ夢の中みたいで。

「……プラフタの眠りは……少し長くなるだろう……とはいえ……それも1時間……2時間ぐらいの……話だ……」

ぷにちゃんに言われて、ソフィーは頷く。

 

棚の廊下に出て、ソフィーが服に取りついてる番人ぷにちゃん達を見ていると、プラフタも出て来た。

「おはよう、プラフタ。外に出ると夜になったばかりの時間のまんまだけどね」

ハダカ族のソフィーが、棚の廊下の果てを見る。

「人間になった途端にハダカ族……というのは少し想定外でしたが。久しぶりに眠る、という感覚を味わいました。いいものですね」

プラフタは、プラフタの服に取りつく番人ぷにちゃん達を眺める。

「本の時、眠ってる時あったでしょ?」

ソフィーは話す。

結構、本の開きになっていたり、閉じて横たわっていたり、本棚に収まってみたりしていた訳だし。

「そうなのですが……やはりそうでもないのです。休んでいるのと、眠っている……というのがこれほど違うとは……と、認識を改めています」

「ふむふむ。でもぷにちゃんの中で寝るのは格別だよね~……通っちゃう1番の理由は、それかも!」

 

そうして2人の話しは続き、服を着るとアトリエへと戻る。

 

錬金術生活をして過ごすと、すぐに朝になる。

 

「お祈りから!行くよプラフタ!今日はあっそぶぞぉ~!」

朝のキルヘンベル。

起きたソフィーが窓を眺める。

 

プラフタと2人で山を降りる道を行く。

そして教会。もう人で一杯だから、後ろの方で。

 

 

「こ、これがプラフタなの!?本当に信じられないけど、こんな事もあるのねぇ……」

恒例の噴水端会議。

エリーゼお姉ちゃんが、プラフタをぺたぺた触りながら言う。

「うむ……完璧だな……しかしこれほどまでの出来上がりとなると……私も感慨深い物があるな」

フリッツさんも、プラフタを凝視しながら呟く。

「何だか、髪の色的に妹が出来たみたいじゃない?ほらほら~♪」

上機嫌なレオンさんも取り付く。

服のセンスも相まって、オシャレ姉妹のようでもある。

「コホン、私は500年前から生きています。そうなると、あなたが妹なのでは?」

プラフタは言う。

見た目的には、プラフタの顔の幼さ具合、あどけなさ具合が、妹!……って感じがするけど。

「も~……こんな可愛い子が居るのに黙ってるなんて~……ソフィーもつれないわ~♪」

パメラも取り付いてる。

そんな噴水端会議。

北の人形劇チームへの御披露目となった。

 

そして人形劇。

プラフタも参加して、人形劇をして過ごす。

演技へっぽこのソフィーは今回、ひたすら観客だった。

 

 

「もうお昼なのですか……」

北の人形劇は午前中のみ。

片付けもして、エリーゼお姉ちゃんとモニカ、フリッツさんとレストランでお昼ご飯、となった。

プラフタは食事してもしなくても平気なんだけど、食事した方がいいみたいだ。

 

「……しかし、フリッツはいつまで観察するのですか?」

背中を眺めている変なオジサンに、ようやくプラフタが突っ込む。

「いや、あまりの出来の良さに痺れている所だ。案ずるな」

「あはは、案ずるな言われても……ねえ?」

「あまり感覚が無いからでしょうか?恥ずかしい、みたいな感じも無いので、構わないのですが、周囲の目というものがあるのでは?」

プラフタは冷静にそう言って、困った顔をする。

 

 

「コルちゃんがアトリエに来たら、閉まっててびっくりしちゃうから、南の人形劇も見に行っておこうよ」

午後は南の人形劇。

テスさんとコルちゃん、それに自警団の人達に職人のおじさん達への御披露目となった。

「あは!ははははっ!なんと……」

南の人形劇の午後……

南側は、もはや人形劇ではなく、芸人師匠と弟子の漫才に、コント。

プラフタはやたらツボってて、笑い転げていた。

「笑いの浅い姉さんだな~……」

隣の職人さんが苦笑いしてる。

「あまり見に来れなかったが、これほど面白いとは……こちらも研究する余地があるな……」

フリッツさんとエリーゼお姉ちゃんも、便乗して楽しんでるし。

 

でもソフィー的には、漫才コントはちょっと分からない感じだった。

「ようソフィー、ひょっとして、あの笑い転げているのは、プラフタかい?」

サンドイッチ販売のオスカーと会う。

ソフィーが席を外したら、職人さんに取られてしまい、途方に暮れてた時だ。

「うん。あたしにはちょっと難しいんだけどね……プラフタには分かるみたい」

ソフィーは胸の前に指を絡めて、話す。

 

「なんだか、楽しんでるみたいで安心したよ。退屈な、何もないキルヘンベルじゃなくなってて、良かったなぁ……」

オスカーは遠い目をして、南の漫才を眺める。

「それはあるよね。まだ!これから温泉を作る野望もあるんだよ~♪」

ソフィーはガッツポーズをする。

なんかホルストさんに聞いたら、大浴場の計画はあるみたいで、そこに乗っかれそうだし。

「そうだったな。お湯はどうするのか、さっぱり分からないけどな」

旅立ちのカフェの光景を思い浮かべて、オスカーは呟く。

「ふふ~ん、あたしの錬金術が更にレベルアップすれば!フラム大先輩がこう……どう……?」

 

ソフィーはガニ股になって、手をこう……こう……どう?と動かす。

「まあ、楽しみにしてるぜ。オイラはまた店に戻らないとだな」

オスカーは笑って、去って行った。

 

 

夕方、南の漫才も終わって、コルちゃんとジュリオさんとモニカの家に。

エルノアさんとモニカで、パーティーの準備をしてくれているそうで。

エリーゼお姉ちゃんとフリッツさんとは別れた。

 

「まさか、パーティーまで準備されているとは……何だか悪い気もしますね」

プラフタはそう話す。

「私は……アトリエに向かうだけの筈が、パーティーにご相伴出来るとは……これぞ棚ぼたです」

コルちゃんも、ジュリオさんの背中を追い掛ける。

「タナボタ?」

ソフィーが聞き慣れない言葉に、プラフタに尋ねる。

「……私も縁のない言葉ですね」

プラフタも首を傾げる。

「こちらでは馴染みの無い言葉でした。思いがけない幸運、という意味の言葉です」

コルちゃんがそう説明してくれた。

 

……元々は、「棚からぼたもち」というらしい。ぼたもち、というのがなんか美味しいお菓子みたいで、そんな美味しいお菓子が棚から降って来るんだそうだ。

「……プラフタも、棚から降って来たみたいな感じだったような……」

ソフィーは呟く。

「……確かに、棚に居たらソフィーに会った……そのような出会いでした。ぼたもちとは……まさか私の事なのでは……」

プラフタも考え込む。

「ぼたもち、というのが何者なのか、気になる所だね」

ジュリオさんはコルちゃんに尋ねる。

そんな住宅街へと向かう坂道。

 

 

モニカの家に来たら、食通商人のヤーペッツさんも来ていた。

「何度も助けて貰った縁がありますからな!どうぞどうぞ、お待ちしてましたぞ?」

モニカの家の前で待ってたらしい、ヤーペッツさんがドアを開ける。

 

「こんなパーティーまで……うわぁ!?」

ソフィーが入り、中を見て驚く。

「一体何が……ええええ!?」

ジュリオさんも驚き、仰け反る。

造花がとんでもなく集められていて、お花畑なのだ。

更に装飾の群れがとんでもない。眩しい。

「……これが……エルノアさん暴走の全力……」

ソフィーは思わずそう呟く。

レストラン事情の、エルノアさんの話はそこそこ聞く話なんだけど……

確かにこれは眩し過ぎる。

 

プラフタもジュリオさんと共に、呆然とする。

「一度、どこまでも飾って飾って、飾り尽くしてみたかったのよ~♪あなたがプラフタなのね?こんな飾りにも負けないくらい可愛い子ね!」

エルノアさんが出てきて、プラフタと握手すると席へと促す。

「エルノアさんは、レストランの飾り付け部の部長さんですからな!油断するとここまでやってしまうから、セーブするのが一苦労ですが……」

ヤーペッツさんにも促され、とんでもないキラキラワールドで、夕食。

出てくる夕食も、凄くキラキラしてた。

 

 

そんなキラキラの夕食で、ヤーペッツさんに「ぼたもち」とは何者なのかを聞く。

麦の仲間に、米というのがあって、その米を使って作る縁起物のお菓子なのだと言う。

でも、黒くてむにゃむにゃしてる……

のだそうだ。

「……ダークマター?」

ソフィーは閃く。

「ソフィーさん……それは流石に……」

コルちゃんが呆れた顔をする。

「私は、そのダークマターというのを見た事がないので、興味ありますな。話ではよく出てくるので、幻の物体なのですが」

ヤーペッツさんが興味を示す。

「ダークマターなら、今でもさくっと作れるかも!」

ソフィーは立ち上がる。

……そう言えば最近、作っていない。

「後片付けが本当に大変だからやめて!」

モニカも立ち上がる。

……そんな楽しいパーティー。

 

 

「これ、今日はこの中で寝るのよね?そう考えるとそのまま天国へ行っちゃいそうだわ……」

楽しい夕食が終わり、別れ際にモニカはそう言って、苦笑いしてた。

 

 

そしてコルちゃんとプラフタ、ソフィーの3人でアトリエへと向かう。

モニカは後片付けしつつ、仲良く家族3人で寝るのだとか。

いつの間にやら、ジュリオさんも家族の一員に……

 

「なんか、バッチリ御披露目しちゃったね♪」

こちらも仲良く帰る3人。

ソフィーとプラフタ、そしてコルちゃんで手を繋いで歩く。

「はい。笑い転げてましたので、職人さん達のプラフタさんの評判は、バッチリです」

コルちゃんはネコの目で笑い、プラフタを見る。

「色々と驚きの1日でしたね。それに新しい発見も遊び場も出来てしまいまして……アトリエに鍵を掛ける事も増えるのかな、と予感します」

プラフタがそう話す、星明りの眩しい夜。

3人でアトリエに帰る。

 

そしてぷにちゃんの部屋へ。

コルちゃんとしては、やたら遅い時間になってしまった。

「あと……153時間残っている……時間は膨らませるか……?」

ぷにちゃんはそう言って、口を開く。

 

「膨らませたいです!もはや遅い時間になってしまっていますので!」

元気良くコルちゃんが答える。

「ゆっくり眠れるのは、ありがたいですね。ハダカ族なのは気に掛かる所ですが……」

プラフタも乗っかった。

「今日はなんか、疲れたよね~……楽しかったんだけどね♪」

そしてぷにちゃんの中……

3人はあっさりと眠りに落ちる。

 

 

プラフタが最初に目覚めた。

「目覚めたか……」

「はい。凄く休まりました」

「そうか……その間にも……我はプラフタの……身体を探っていた……」

マナの柱はそう伝える。

エロエロ儀式の為……

プラフタの身体を休める為……

色々と探らねばならない、という事がプラフタに伝わる。

 

その結果。

まず、エロエロ儀式が出来ない。

プラフタに使った命は、ソフィーの子供で、まだ赤ちゃんにも満たない命。

これでは無理なので、せめて10年程度待たないと難しい。

だが、プラフタの魂が抱えてる時間がある。

プラフタの魂に溜まっているというか、時間を抱えてしまっている。

その時間を取り出せば、その10年20年をプラフタに使えるのだ。

マナの柱としても、抱えてる時間を取り出す、なんて事は未知の領域。

まず時間を抱えてる、という状態が不可思議な現象。

 

「色々と問題があるのですね……」

「我は錬金術については……知らぬ事も多い……それに錬金術についての知識は……抜けてしまうのだ……それに……記憶にも……封印が施されて……いる……」

マナの柱はそう伝える。

プラフタにとってそれは、SOSにも感じた。

 

「そうですね。私も自分を思い出したいあなたの気持ち、痛い程良く分かります」

「マナの柱を殺すのは……怒り……妬み……そうした激情が……渦巻く事……我の……封印された記憶は……もしやそうした……記憶かも知れぬ……」

マナの柱は伝える。

記憶を取り戻したとして、その記憶は良いものとも限らない。

悪い記憶だった場合、記憶を取り戻してしまう事で、マナの柱は魔物を産み出し続ける、パンドラの箱となるのかも知れない。

 

「この土地でも、そうした記憶だとしたら……あまりに悲しく思います」

「ともかくまずは……プラフタの抱えた……時間を取り出す為の……何かが……必要だろう……それは……錬金術の……領分だと思われる……」

そう話していると、ソフィーとコルちゃんも、目を覚ました。

 

「おはよ~……」

「ふあぁぁ……何だかほわほわしてます……」

プラフタはそんなハダカ族2人を見る。

素直に可愛いと思える仕草で、起きるなり動いてる。

 

そしてぷにちゃん+3人で、その話をする。

エロエロ儀式しないと、プラフタが旅に出る事は出来ない。

 

 

「長く過ごしましたが……夜のままなのですね。不思議な気分です」

アトリエに戻り、帰るコルちゃんを見送って……

ソフィーとプラフタは錬金釜の所へと向かう。

「へへ、なんか今は錬金術したくないや……プラフタを見ていたいかな」

ソフィーがそう言って笑う。

「ふふ、そうですね。何だか私もそんな気分でした」

プラフタも笑う。

「ぷにちゃんの部屋に行くと、何もかもバレちゃうよね?何か今のうちに言っちゃいたい事ある?」

ソフィーはそう言うと、机の上に置いてある本と軍手を眺める。

プラフタだった本と軍手……

 

「確かに。どうしても隠しておきたい事は無いかと思いますが……言い出すには辛い、みたいな事柄はあるかも知れません」

プラフタは窓を眺めて笑う。

「あたしも、オスカーの事で悩んでたんだよね。でも言い出せなかったかな……結局ぷにちゃんの所で知ったんだけどね」

ソフィーは話して、痩せていた自分を思い出す。

あの頃からそれほど時間は経ってないけれど、なんだか遠くなってしまった……

あの頃の自分。

 

「オスカーの事……どんな事です?」

プラフタは暖炉の方へと歩く。

ソフィーも暖炉テーブルへと向かう。

「あたしがね、オスカーと恋人になった時に、モニカには恋人って居なかったんだよね。だから、出し抜いちゃったのかなって思ってたけど、言えなかったんだ」

ソフィーは暖炉の火を眺めながら、テーブルに着く。

「ほほう……それは言い出し辛いですね。で、どうだったんでしょうか?」

プラフタも暖炉の火を眺める。

「本当にな~んとも思ってなくてね。ほっとしたよ~……ホラ、オスカーってあれだけ魅力的じゃない?だからドキドキしたんだけどね~」

ソフィーはそう話すと、目を閉じて椅子に寄りかかった。

「ふふふ、そうですね。あまりモテるタイプではないかと思いますが、知性的であり、タフでもあるみたいなので、頼り甲斐もありそうですね」

そんなソフィーを眺めて、プラフタは笑う。

「プラフタも、何かない?なんかそんな話」

 

「あまりに記憶が曖昧なのですが、話すには良いタイミングですね。私にも恋人が居たように思います。ですが、その当時から特にラブラブ……ではなく、仕方なしに付き合っていた……そんな記憶です」

「へぇ~……でもラブラブじゃないのに恋人なの?」

「さあ……ラブラブの時期もあった……と思いたいですが、あまりにも曖昧で……ソフィーにおけるコルネリア……モニカ……ジュリオ……レオン……と仲間も居たように思いたいのですが、その辺りはさっぱりでして」

 

「そっかぁ~……でも恋人の事は思い出したんだ?」

「そうですね……恋人とも呼べるのかどうか……ですが、私の側に何者かは居たと記憶しています。ほんの僅かに、その記憶が影を持った……だけなのですが」

「何だか、ぼんやりだねぇ……」

「そうですね。こんな事を考えるよりも、抱えてる時間とやらを取り出す錬金術の話をした方が良いのでは?」

 

そんな話を繰り広げる暖炉テーブルの2人。夜は更けて行く……

 

 

ソフィーがうとうとして、テーブルに突っ伏して眠っていたりすると、プラフタはふらふらと歩く。

本を読んでみたり、なんとなく落ち着かない。

……ソフィーは、テーブルに突っ伏して眠ってるフリをする事にした。

すると、プラフタがベッドの方へと行く。

その足音を聞いて、こっそりとプラフタを見る。

 

「ふふふ……」

鏡を見てにやけてるみたいだった。

レオンさんの服……

オシャレで大胆だもんな……

ソフィーはそう思いつつ、眠る。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[レストラン]
女性に人気の、リーズナブル価格から仰天価格のコース料理までを提供する食事処。食通商人のヤーペッツさんが思うまま、腕を奮っている。教会の子供達の中に、このレストランで料理修行してる子も居るとか。

[マナの柱]
古代の錬金術で産み出されたとされる魔力の源。世界中に点在している。
[ぷにちゃん]
マナの柱のひとつ。ソフィーのアトリエの地下に居る。記憶を封印されていて、おばあちゃんの事とか、錬金術の記憶なんかが抜けている。

[ハダカ族]
服を着ていない状態。髪をセットしていないコルちゃんも可愛い。

[番人ぷにちゃん]
コンテナに住むコンテナの番人のぷにちゃん。素材の汚れを食べ尽くすので、いつもピッカピカ!

[ベッドの扉]
ソフィーのアトリエから、地下のコンテナに続く床にある扉。コンテナの1番奥が、ぷにちゃんの部屋。

[魂のカタチ]
糸の束のようなカタチで、ほどけて細くなってしまう魂もあるんだって。怖い……

[あたしの子供の命]
ぷにちゃんが取り出したソフィーの赤ちゃん。産まれてないから赤ちゃんでもないけれど。

[コルちゃんの子供]
ぷにちゃんが取り出したコルちゃんの赤ちゃん。産まれてないから赤ちゃんでもないけれど。

[噴水端会議]
井戸端会議の、噴水バージョン。種の日にお祈りで集まる流れで発生する。

[北の人形劇]
種の日午前中、噴水端会議の後から始まる子供達向けの人形劇。パメラとエリーゼお姉ちゃんが主催。
[南の人形劇]
種の日午前中、噴水端会議の後から始まるおじさん向けの人形劇。芸人師匠と弟子が主催。午後には南の漫才。歌広場と、お酒飲み会場となる。

[芸人師匠と弟子]
ゲームでも登場するが、南の人形劇とかしてる訳ではない。

[大浴場]
キルヘンベルにも温泉欲しい計画。

フラム[大先輩]
オレンジ色の爆弾。温泉の火力にならないか画策中。

[エルノアさん]
モニカと一緒に住む可愛いおばさん。華やかな飾り付けが趣味。
[ヤーペッツさん]
食通商人。美味しい料理を作るのが人生。

[エロエロ儀式]
ぷにちゃんにエロエロされて、体液を食べられる事。そうする事で魔力の受け皿が目を覚ます。血液を抜き取る、では時間は膨らむけれど受け皿は目を覚まさないそうだ。

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