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錬金術のアトリエ 35
「よ~し!今日もお出掛けするよ~!」
「うわぁ!?」
朝の5時、突然起き出してポーズを取るソフィーにプラフタは驚く。
「なんであなたはそう、いたずらに人を驚かそうとするのですか!?」
鏡を眺めて、ベッドに腰掛けていたプラフタは、飛び上がる程驚き、怒ってソフィーを追い掛ける。
「驚くプラフタが可愛いから!」
「あなたという人は!」
ソフィーはアトリエのドアの外に出て、プラフタはそれを追い掛ける。
ソフィーは急に止まると、プラフタを受け止める構えを取った。
「きゃあっ!?」
「大物、捕まえた~!」
ソフィーはプラフタを抱き締めると、草地に倒れ込む。
「今日、カフェからまた、旅に行くんだけどプラフタも来る?」
「……それは考えましたが、古本補修のアトリエとなりますから……そうも行かないでしょう」
「エリーゼお姉ちゃんとウメさんが……あら」
プラフタを抱いて倒れ込んでいるソフィーが、既に来ていたエリーゼお姉ちゃんに気付く。
「その……わざわざ外でやらなくても……」
エリーゼお姉ちゃんは少し笑いながら横を向き、なのに演技慣れしていて、照れ臭そうにそう言った。
「こ!これは違うのです!ってか、離しなさい!ソフィー!」
大いに慌てふためくプラフタ。
「違くないもん!違くないもん!」
ソフィーは足まで絡めてうねうねし出す。
「こら!本当にあなたって人は!」
もがくプラフタ。
「ソフィーったら、本当にプラフタが人になって嬉しいのね」
ともかく……
もう6時になり、旅立ちのソフィーを、エリーゼお姉ちゃんとプラフタで見送る。
「あ、ウメさんおはようございます!」
ウメさんとすれ違いながら、ソフィーはカフェへと向かう。
今日は少し曇ったキルヘンベル。
「あれ?」
教会前、噴水広場に差し掛かったソフィーは足を止める。
オスカーとハロルさん、コルちゃんにヤーペッツさん、バーニィさんとエルノアさんと、なんか集まって噴水端会議していて、解散する所だった。
「よお、ソフィー」
オスカーがひょい、と手を上げる。
「なんか楽しい話?」
ソフィーは尋ねる。
コルちゃんとハロルさん、オスカーとカフェへと向かいながら。
「ん?商店会の会合なんだよ。オイラは母ちゃんの代わりなんだけどな」
いつものトーンで、オスカーが話す。
「お店かぁ……憧れるなぁ……ケーキ屋さんになるのが夢なんだよねぇ……」
ソフィーは口許に指を置いて、ぼんやりとそんな事を思い出す。
「お前、小さい頃にそんな事を言ってたな……」
そんな話をハロルさんが拾った。
「裏市街入り口のパン工房で、ケーキも焼いてるけどな。今はレストランでちょっとだけ使ってるくらいじゃないか?」
オスカーが話す。
ラーメル麦なんかの納品もあるから、詳しい。
「確か……そんな感じでした。キルヘンベルは甘い物が人気なのに、ケーキはあまり人気ないみたいです」
コルちゃんもそう話す。
パン屋にも、何かしらの営業ルートがあったりするのだろうか?
……そんな話をしながら、ホルストさんのカフェに。
「ケーキですか?また風変わりな物をお求めですねぇ……ソフィーのだけ、パンをケーキにして出しましょう」
その話を引きずりながら、朝のカフェ。
モーニングのサービスの、ソフィーの分だけ、焼いて焦げ目を付けた、パウンドケーキがパンの変わりに出てきた。
「おおおお~!お洒落!」
焦げ目パウンドケーキに、バターひと切れとハチミツ。
それに気まぐれいちごが1つ乗っかった1品に、大いにはしゃぎ、左右に揺れるソフィー。
ジュリオさんとコルちゃん、レオンさんで依頼内容と冒険の場所を吟味する。
今日も、メーベルト農場行きの馬車と一緒に出発できそうなので、ゆっくりだ。
「でもこれはお高い感じするね!」
ソフィーはおしゃれナイフとおしゃれフォークで、パウンドケーキを切りながら、ホルストさんに輝く瞳を向ける。
「まあ、モーニングのサービスですので。パンの変わりにケーキにしただけですから」
ホルストさんは、そんな微笑ましい光景に顔を綻ばせながら、そう答えた。
……ともかく、今回は巨大ハクレイ石の噂に需要が絡み、青葉の丘へ。
それとそこだけでは、魔物との戦闘が物足りないハズなので、更に森の奥へと足を伸ばすコースとなった。
「ぬっふっふっふっ……」
馬車の後ろで、フリッツさんが新調した剣を少し抜き、怪しい笑いをする。
「ん~……」
時々、ハロルさんも新調した銃を眺めていたり。
「しっかし、あんたら本当に馬が好きだなぁ」
マレフに乗るレオンさんに、ブレストと仲のいいコルちゃん、ロザリにようやく触らせて貰えてるソフィーを眺めて、おじさんは微笑む。
そんな旅の道……
メーベルト農場で馬車と別れる頃、夕方から夜になる。
森に差し掛かる道……
雨が降り出して来た。
メーベルト農場から、有閑広場へと向かう道。
「ほぉ……今日は巨大ハクレイ石が依頼品なんだねぇ……」
錬金荷車2号を引くジュリオさんの横で、ソフィーが呟く。
旅の目的地を、今更知る。
「ソフィーはケーキに、ロザリに夢中だったからね」
ジュリオさんは話す。
「まあ……それもありますけど、プラフタの抱えてる時間を取り出す錬金術を考えないと……で考えてたりするんですよね」
ソフィーは寂しい森の道を歩きつつ、呟く。
ジュリオさんはその顔を見て、自信がありそうだと見て取り、微笑む。
「抱えてる時間、というのが良く分からないけど、ソフィーには何か思い当たる所がありそうだね」
暗がりの森の中の道。
ジュリオさんの横顔のシルエットは、そう話す。
「さすが、見抜いちゃったりしますね」
ソフィーは空を見上げる。
森の木々の覆う天井に、時折出来てる隙間の星の光を探して。
「でも、それは過信かも知れないかな。詳しくは分からないけれど、僕にもそうした、結局裏切られてしまう自信っていうのは経験したからね」
ジュリオさんのシルエットは、話を続ける。
「そうなんですよね~……でもあたしの抽出錬金術、ちょこっと調合編ぐらいしか思い当たらなくて……あ!フリッツさんなら何か分かるかも!」
ソフィーは錬金荷車2号の後ろを歩く、フリッツさんのシルエットへと向かう。
「なんだか忙しそうなのね?旅に無関心なのかと思ったら」
ソフィーの居た場所に、モニカがやって来る。
「そうだね……ソフィーはなんだか、いつも何かを目指しているみたいで……僕も頑張らないと、と思わせるね」
「私も、何か頑張らないといけないわね」
ジュリオさんとモニカは、少しだけ顔を見合わせて、前を向いた。
「フリッツさんフリッツさん……」
星明かりが木々で遮られてしまい、暗い森の道。
ソフィーはフリッツさんの歩く場所へと、姿勢を低くしてやって来る。
「ふむ……プラフタが動き出してはしゃいでいるみたいだな」
そんなソフィーを見て、フリッツさんは微笑む。
「えへへ……分かります?」
そしてソフィーは、プラフタの抱えてる時間の話をする。
「ふむ……命まで込めたとなるとそうか……失念していたな……」
フリッツさんはそう言うと、手帳を取り出して、あざやかにふわっ、と荷車に乗り込む。
「お、おお~!これはあたしも……とうっ!」
ソフィーも荷車に頭から飛び込む。
フリッツさんがそれを受け止めて引き寄せ、すとん、と1回転してフリッツさんの膝に乗れた。
「今をときめく錬金術殿を、お姫様抱っこ出来るとは、光栄ですな」
フリッツさんはそう芝居がかった台詞を言うと、微笑む。
「あざやかなキャッチですね……」
ソフィーは、もう一度やりたいな~……
とか思いつつ、言う。
荷車の床に置かれて、フリッツさんは手帳と、懐から光る石を取り出す。
「おお~……オシャレ……」
ソフィーはその姿を眺めて、フリッツさんは手帳の内容を探る。
……しばらくして……
「これだ……メクレット、アトミナという人形を手掛けた時のメモによると……魂の抱えてる時間の抽出にはだな……大型ガラス瓶、ハクレイ石のメビウスリング、夜光石の蓋……星の粉とガラスの破片を合わせて作った……『砂』を用いた砂時計を媒体として、抽出錬金術を行う、とあるな……」
フリッツさんは手帳を眺める。
「メクレットとアトミナ!?あたし、アトリエで会った事ある!」
ソフィーは驚き、フリッツさんを見る。
あの2人もフリッツさんが作ったとは……
「ほほう……彼もまた太古の魂だったようだが……プラフタも太古の魂だと思われる魂……と、話には聞いたかな」
「500年前って話していたから、太古の魂ですね!ひょっとしたら、知り合いかもですね!」
「ならば、ソフィーの錬金術次第、という事なのかな?」
「あ、メモ取らせて下さい。大型ガラス瓶……ハクレイ石で作るメビウスリング……夜光石で作る蓋……星の粉とガラスの破片で作る砂……そして砂時計……」
ソフィーはメモを取る。
まさか、これほど具体的に知っているとは思わなかった。
……これも図鑑にある錬金術なのだろうか?
夜中、有閑広場に到着。ここから青葉の丘までは3時間掛かる。
「サカサキノコの強壮剤が取れた所だよね?」
「ぷっ!あれは完全に、ちんちんでした」
荷車を引くソフィーと、その隣のコルちゃんで他愛の無い会話をしながら歩く。
「もっと他にも取れていたハズなんだけどな~?あなたたちの思い出は、それなのかしら~?」
レオンさんも、荷車の横を歩き、2人にジト目を向ける。
「あれほど笑ったのも無いもんね~?」
そんなジト目にも気付かず、ソフィーはコルちゃんを見る。
「はい。まさしくちんちんで、もう大爆笑でした。しかも先っちょが……ぷぷ」
あの時笑い転げていたコルちゃんは、そんな思い出し笑いを見せる。
「ぷっ!も~!思い出しちゃうじゃん!」
そしてまた笑い出す2人。
……コドモなんだよなぁ……
と、思いながらレオンさんは、そんな2人を眺めて歩く。
「さて!目的の巨大ハクレイ石……と黒いアイツだね!」
夜中3時……
黒プニ洞窟に入る頃には朝になろうとしている。そしてジュリオさんの目が輝き出した。
「ぬっふっふっふっ……」
フリッツさんが新しい剣を少しだけ抜いて怪しい笑いをする。
「さて……」
ハロルさんも、新しい銃を眺める。
「オイラも、新しいシャベルだったな……土を掘る段階でもう、なんだかとんでもないシャベルなんだけどな……」
オスカーも、シャベルを地面に刺してポーズを取る。
「あたしの斧も、きっと強いよ!」
そしてソフィーも杖を掲げる。
三日月を模した先端のフローリッシュハートは、その三日月部分が斧っぽい刃物なのだ。
目を輝かせたものの、ジュリオさんは剣が大き過ぎて新調間に合わず、最前線はフリッツさんとなった。
「はっ!はっ!」
あの日、ジュリオさんのスペシャルアタックにも耐えた黒プニは、フリッツさんの斬撃1回で倒れる。
「よし、ソフィー……あれだ」
ズドン!ズドン!
「と~うっ!」
ハロルさんの銃撃、ソフィーの追い打ちでも倒れる。
あの日のぽかすか祭りは、もはや無い。
あっさり倒されまくる黒プニ達。
戦闘はあっさりだ。
「でかい!これはでかいね!」
巨大ハクレイ石を荷車2号に乗せていく。そして次なる目的地、の前にサカサキノコの強壮剤レシピの昼食となった。
「最初はあんなに可笑しかったのに、今はそうでもないです……」
葉っぱの裏のサカサキノコを眺めて、コルちゃんが呟く。
「確かに、あまりにも小さいもんね……」
ソフィーも呟く。
またゲラゲラ笑おうと思っていたけれど、アテが外れた。
サカサキノコのヌルヌル入りの黒プニ君のスープが、お昼ごはんとなった。
「なんか、変な気分になったりしないでしょうね?」
モニカが疑う。
モニカとレオンさん、ジュリオさんとフリッツさん、オスカーは掘りたての芋のスープだ。
ちょっと小さい芋しか無かったので、コルちゃんとソフィーのごはんは、朝食にも食べた黒プニ君になった。
「黒プニ君も元気が出るよね~♪更にサカサキノコパワー……鼻血が出るかも?」
ソフィーがスープの器を高く掲げる。
「まあ、サカサキノコの強壮剤が強烈になるには、もうひと手間必要だからな。普通に使っただけだと、元気が出るくらいだよ」
オスカーはそう言って、スープを傾ける。
「黒プニ君、いただきます!」
ソフィーもスープを傾けた。
そして昼過ぎには有閑広場に戻り、更に森の奥深くへ目指す。
戦闘が物足りないので、このルートの奥……
困惑の迷い道を目指す。
有閑広場~静寂の湖畔への道。
太陽がギラギラしているみたいで、森の中の道もやたら暑い。
「……なんか、コルちゃんが歩いてるのは珍しいね?」
荷車2号の横を歩くソフィーが、その横を歩くコルちゃんに声を掛ける。
「まあ……たまにはこういうのも悪くないと思うのです」
コルちゃんは口許を隠し、ソフィーから視線を外す。
「しかし、暑いな……陽が通ってやがる……」
ハロルさんが呟き、歩く。
今回、誰も荷車に乗っていない。
サカサキノコの強壮剤のパワーで、眠れなさそうだし、こうして汗をかいて歩いてるぐらいがちょうどいい……
みたいな感じなのだ。
静寂の湖畔に着いた時、雷雨だった。
夕方なのに暗くなり、荷車2号から霧が出ている。
「なんだか、今回は波乱に富んだ旅だね」
ずぶ濡れジュリオさんが笑う。
「巨大ハクレイ石からの冷気が気持ちいいのよねぇ……」
「なんか、不思議な感じだわ~……」
モニカとレオンさんは、荷車2号を見つめる。
湿り気を受けて霧を大発生させている巨大ハクレイ石……
その霧はちょうど涼しくて、心地好い。
「せっかくの湖畔なのに、こんな雷雨と霧……残念だけど、なんか新しい感じですね……」
「確かに、こんな場面にはそうそう会うものでもないな……」
ソフィーとフリッツさんも、そんな雷雨と冷たい霧を浴びながら湖畔の方を眺める。
「夕食、ゲットです!」
コルちゃんが暗闇に呼吸を向ける。
するとほんの少し暗闇が揺れた。
「でかしたコル助」
ハロルさんがナイフを数本投げる。
そして大きな蛇を仕留めた。
……そんな連携技が……
「なんか、自由よねぇ……」
相変わらずの挨拶回りしてるオスカーと、仕留めた蛇を持つコルちゃんとハロルさんを眺めて、レオンさんが呟く。
夜、菌糸の楽園に着く頃に、雷雨が終わった。
「こんなでかいタランバ、よく捕らえたなぁ……」
オスカーが感心して、ハロルさんとコルちゃんの仕留めた獲物を捌く。
菌糸の楽園付近には雨が降って居なかったみたいで、乾いた木材がやたらとあり、野営もしやすい。
タランバ、って名前らしい蛇の丸焼き料理にみんなで舌鼓を打ち、そして更に先、困惑の迷い道へと向かう。
「しかし、汗臭いわ……」
レオンさんが自分の腕を嗅ぐ。
「雨に打たれた分、薄まってるみたいだがな……」
ハロルさんがその近くを歩く。
「湖畔をアテにしていたけど、あまりに冷えてるから敬遠しちゃったからね」
ジュリオさんも加わる。
今回、この巨大ハクレイ石の冷気のおかげで、いつもと勝手が違う。
ともかく夜中、もはや開花の日となって、目的地である困惑の迷い道に、到着となった。
「コルちゃん……完全にダウンしてるね……」
ソフィーは、オスカーに背負われて眠るコルちゃんを見る。
今回、荷車が冷え過ぎている為、荷車で眠る事が出来なかった。
眠そうなコルちゃんを見かねて、オスカーが背負った訳だけど、そんなオスカーは普通に元気だったりする。
「ああ……自分を消耗する錬金術らしいし、何かあるんだろうな」
オスカーは相変わらずのおとぼけボイスで言う。
そして荷車2号を離れて、また植物に目を向ける。
「子供できたら、こんな感じなのかなぁ……」
コルちゃんを背負うオスカーの後ろ姿を眺めて、ソフィーは呟く。
困惑の迷い道……
サンダラスという黄色い悪魔と、ヘルゲートという青い悪魔が今回の目的。
攻撃力も備えてしまったフリッツさん、ハロルさん、そしてオスカーとソフィーで迎え撃つ。
意外とあっさり倒せてしまい、邪な核石がぽろぽろ手に入る。
採取生活の賜物としては、クプルフ鉱石、妖精の毒草、土いも……
うに、赤うに。
と、ありふれた何気ない物ばかりで、物珍しい物は取れないみたいだ。
でも、品質が凄い。
うにならうにの、理想形みたいなのが採れる。
特性的にも、キルヘンベルでは絶対取れない特性を持っているのだ。
「なんとハンサムな土いもなのでしょうか……」
コルちゃんが土いもの1つを高く掲げる。
「こんなに香りが強い土いも……オイラも見た事ないぞ?それにでかくてみっちりしてるなぁ……」
オスカーも大絶賛の一品ばかりが採れるのだ。
「パンドラの箱の中に近い……ってことなのかしらね?オジサン?」
レオンさんが芋掘り中のフリッツさんに尋ねる。
「そういう事だろうな……だがこれはまだ入り口付近、とした所だろう」
フリッツさんはそう呟きつつ、芋を掘る。
そんな採取生活……
お昼には荷車2号がいっぱいになり、妖精の道標の出番となった。
開花の日のお昼……帰り道が無いというのは本当にありがたい。
「じゃ……それ♪」
一行はキルヘンベルへと帰る。
「しかし、こいつは便利だな……」
「そうよねぇ……とんでもないアイテムとしか言いようがないわねぇ……」
アトリエ前。
ハロルさんとレオンさんは、レストランへと向かう。
丁度お昼だし、ステキ食材満載だし……
という事でヤーペッツさんを誘う予定となった。
ソフィーとモニカ、コルちゃんはアトリエに荷物を運び……
オスカーとジュリオさん、フリッツさんはアトリエ前の井戸の側……
調理の準備をする。
ソフィー達がアトリエに入ると、今はまだ古本補修のアトリエとなっていた。
「おかえりなさい、ソフィー」
プラフタがお出迎えするその奥には、エリーゼお姉ちゃんとウメさんが、古本補修をしていた。
「なんだか、深い森の匂いがするのね。嗅いだ事は無いけれど、そんな匂い……」
エリーゼお姉ちゃんが気付くと、荷物を持ち込むソフィーとモニカ、コルちゃんを見る。
「エリーゼさん、大当たりです!」
ハーブになるという、色々な木の枝を抱えたコルちゃんは言う。
「エリーゼお姉ちゃん、鋭い!」
リュックいっぱいにピカピカ芋、かごいっぱいに虫とか草とか根っことか入れてるソフィーも感心する。
「……というか、そうした感じの匂いしかしないんじゃないかしら?」
妖精の毒草でもっこりしてるかごを持ったモニカが言う。
「そりゃそうだ」
「そりゃそうです」
ソフィーとコルちゃんは、口をあんぐりさせながら、モニカを見る。
「うふふ、そんなに沢山持って来ていたら、そうよね。少し飽きて来た所ですし、キリのいい所で片付けるわね」
エリーゼお姉ちゃんは、そう言って微笑む。
「あ。お昼、皆で外で食べようよ!森の奥地の、とんでもないハンサムな土いもが、おいっし~んだから!」
旅汚れたソフィーは、モニカと共にエリーゼお姉ちゃんとウメさんを誘う。
そしてお昼は、皆で囲む食事となった。
「なんだか、私も旅に来てるみたいな気分だわ」
エリーゼお姉ちゃんが、旅汚れてるソフィーを見て言う。
お昼の食事はハンサム土いものスープ。
香りの葉っぱ付きだ。
「こんな気分で食事が出来るなんて、私も幸せな気分だわ……」
オスカーの隣で、ウメさんが呟く。
「も~……こんな汚い姿なのに食事なんて……慣れて来たけどね……」
旅汚れたレオンさんとハロルさんも、お互いを見ていたり。
そしてお昼の食事が終わって解散してく。
帰ろうとするジュリオさんを引き止めつつ、まずは時間を止めてソフィー、コルちゃん、モニカを綺麗にする計画。
プラフタはオスカーとジュリオさんの話相手、という事になった。
「よし、行ってくるね~♪」
オスカーとジュリオさん、プラフタでアトリエに入る3人を見送る。
「ところでプラフタ、食事をしても大丈夫なのかい?」
無表情で食べていたプラフタに、気になったジュリオさんが尋ねる。
「はい。香りだけ、わずかに感じるだけ……なのですけれど、マナの柱に入った時に、消化される構造となっています」
プラフタは答える。
答えてから、ふと考える。
「ジュリオとしては、今回の食事はいかがでしたか?何分、味を感じないもので」
「香りが凄く強い感じかな。苦味もあって大人の味……という感じだから、コルネリアのは葉っぱは乗せていなかったね。彼女はお茶も苦手みたいだから」
そうこう話しながら待つ5分……ぴっかぴかになったソフィーとコルちゃんが出てくる。
「ジュリオさん、お待たせしました~♪」
髪を上に縛り、サムライヘアのソフィーがジュリオさんに微笑みかける。
「ああ、そういう髪型もアクティブでいいね」
「えへへ~♪」
ジュリオさんはアトリエへと入る。
「私はお店に戻るです」
コルちゃんは、そそくさと帰って行く。
オスカーとプラフタ、ソフィーで荷車2号の側、思い思いに語らう時間。穏やかな風が吹いた。
「さて!錬金術やるよ~!」
ジュリオさんとモニカを見送り、オスカーを綺麗にして……
オスカーはまたまた本屋へと。
そしてソフィーは錬金釜の前に立つ。
「ふふふ。なんだかワクワクしますね。人の姿で錬金術の側に居ると、見え方も気分も違うものです」
プラフタはそんなソフィーの側で微笑む。
「記憶も蘇っちゃうね♪」
「そうですね」
そして、防具用アダールクロス!
……の特性用のリフレッシュオイルを仕込んだ所で、プラフタが思い出す。
「私の好きな食べ物は、土いもの入ったシチューでした……なぜか今、思い出しました」
「ん?お昼に食べたよね?」
「そうですが……そうではないのです。あれほど立派な土いもですと、別物というか……」
「確かに。あそこまでツヤピカぎっしりだと、ちょっと違うよね。せっかくだし、再現してみよっか?」
ソフィーとプラフタはコンテナへ入り、土いも在庫を見る。
「イメージに一番近いのは……これでしょうか?」
プラフタは、1番みすぼらしい土いもを手に取る。
「それ~?……でもプラフタってば植物用栄養剤も不良品のやつに反応してたよね~?」
「言われてみればそうですね……どうやら私は貧しい村にでも住んでいた……と言う事でしょうか……」
「貧しい……かぁ。なんかあたしも最近はぴっかぴかごはんだけど……昔は……そんな貧しくもなかったような………でも食べるのがしんどくて……」
2人は土いもを前にそう話す。
でもプラフタの記憶は、それ以上は具体的に思い出せなかった。
「あ~!あたしが思い出した!」
ソフィーはメモを取り出す。
「騒がしい人ですね、相変わらず」
フリッツさんから聞いた時間を取り出す媒体、ハクレイ石の砂時計のメモをプラフタに見せる。
「これなんだけど……」
「これはかなり難しい調合ですね。星の粉を更に細かくしつつ、爆発はさせない……という錬金術になりますし、図鑑にはない、応用力を試される錬金術になりますね」
プラフタはメモを見てそう話す。
ともかく、リフレッシュオイル仕込み中の時間……
みっちり錬金術談義となった。
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[うねうね]
抱き合ってうねうねしてる感じ。ラブラブ!
[ウメさん]
アトリエ前の井戸によく訪れるおばあちゃん。最近はエリーゼお姉ちゃんと古本補修してる。
[ヤーペッツさん]
食通商人のおじさん。でも痩せてる。
[バーニィさん]
キルヘンベルの治安に目を光らせる、ヴァルム教会の先生。
[エルノアさん]
レストランの飾り付け部長。飾り付けがキラキラ眩しい!
[裏市街入り口のパン工房]
パンとケーキを作って納品している工房。メーベルト農場から麦の納品が来る。
[モーニングのサービス]
ホルストさんのカフェの、ソフィー達へのサービス。依頼で稼げるんだって。
[メーベルト農場行きの馬車]
キルヘンミルク、麦を運ぶ馬車。結構大きい。
[マレフ]
メーベルト農場の馬車のお馬。茶色でハンサムなお兄ちゃん。
[ブレスト]
メーベルト農場の馬車のお馬。黒っぽい毛並みに風格のあるおじいちゃん。
[ロザリ]
メーベルト農場の馬車のお馬。白い毛並み、美人で気難しい妹ちゃん。
[錬金荷車2号]
2階建ての荷車。今回は積み込んだハクレイ石から冷気と霧がもわもわしてた。
[メクレット]
褐色の男の子。錬金術を求めて旅をしている。
[アトミナ]
褐色の女の子。錬金術を求めて旅をしている。
[サカサキノコ]
葉っぱの裏から逆さまにぶら下がってる、ちんちんみたいなフォルムの芋虫。
[タランバ]
森の奥に住む蛇。あまり大きくないけれど、大きいものだとソフィーの背丈を超える長さになる。毒は持っていないけれど、凄い跳躍をするらしい。
[ハクレイ石の砂時計]
ゲームには登場しない。ちょこっと調合品としては、難易度の高いシロモノ。