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錬金術のアトリエ 38
コンテナの番人ぷにちゃん達が汚れを食べ尽くして、ピッカピカになった服をそれぞれ着て……
そしてアトリエに戻る。
夜中の3時……
ミネラルエキスを仕上げて、そのミネラルエキスで中和剤を作る。
品質を大きく上げる特性、「超クオリティ」が増えていく。
「ふむ~……この特性があれば、少し残念な品質の素材達も、5割増しで輝く……素敵な特性だけど、なんかズルい……みたいな気もするなぁ……」
輝く中和剤を眺めて、ソフィーは呟く。
「まあ……手を加えている訳ですし、ズルい感覚も分からないではありませんね」
プラフタも輝く中和剤を眺めて、呟く。
「それはともかく!今日は種の日!コルちゃん用のドナーストーン伯爵を持って……休日のキルヘンベルを満喫しなきゃ!」
ソフィーは杖を持ち、鞄を背負う。
「そうですね。私もこの街に馴染まないといけませんから」
アトリエに鍵を下ろし、まだ薄暗い外へと出る。
そして山を降りて市街地へと差し掛かった時、オスカーがやって来た。
「おお、早いなソフィー」
相変わらずのおとぼけボイスで、オスカーは片手をひょい、と上げる。
「オスカー!どうしたの?こんな時間にこんな所で」
ソフィーはオスカーに体当たりして、そう尋ねる。
「昨日は忙しくてさ、ソフィーの事忘れてたから、今から行く所だったんだよ」
そしてオスカーは踵を返し、3人で並んで歩く。
「今、思い出したって事なの~?でも嬉しい!今日はこれから、教会から人形劇から鍛冶屋さんから……キルヘンベル満喫コースなんだよ!」
凄くご機嫌なソフィーがそう話す。
「へぇ~……オイラはまた農家さんの所でさ、ソフィーの栄養剤をヒントに、栄養剤の量産計画なんだけど、八百屋に寄ってくれたらさ、特製バスケットを用意しておくよ。昨日のお詫びにな」
オスカーは、そう話す。
プラフタは、そんなオスカーを眺めて思う。
……足は短いのに、歩くのは早い……
「お詫びなんて、いいよ~。農家さんの野菜のピンチじゃ、しょうがないもん。でも特製バスケットは楽しみかも!」
「だろ?張り切って作っておくからさ、顔出してくれよな!」
オスカーはそう言うと、走って行った。
「……彼は太っている割には素早いのですね」
プラフタはそんなオスカーの後ろ姿に、呟く。
「へへ~……昔っからそうなんだよね~」
ソフィーとプラフタは、教会へと向かう。
モニカ達の聖歌を聞いて、教会の外でお祈りの時間。
教会の中は子供達と、そのお母さんとかでいっぱいだから、いつもの光景。
そして噴水端会議。
ホルストさんとテスさん、レオンさんとコルちゃん、モニカとジュリオさん、ソフィーとプラフタで世間話グループを作る。
ハロルさんは、いつもの冒険者集団の世間話グループに居て、フリッツさんとエリーゼお姉ちゃんは、北の人形劇の準備をしていたり。
「エリーゼさん、あれは……ついに少女から脱皮したわね」
レオンさんが言い出して、皆で北の人形劇の方を見る。
歩く姿に違和感があって、これは……
昨夜誰かとエロエロしたな……
と、いう話になった。
「……そうなの?それって分かるものなの?」
ソフィーが口許に指を置いて首を傾げる。
「まあ……確かにあからさまではありますが……彼女にもそうした相手が出来た……という事なのでしょうねぇ……」
ホルストさんが、しみじみと話す。
「ん?ひょっとしてあたしも……あからさまだったり……!?」
ソフィーは初体験の頃を思い出す。
あまり思い出せなかったけれども。
「ソフィーも果実の日でしたね。そしてこの時間に、マルグリットと話したりしたものです。今や懐かしい話ですが」
「ソフィーの場合、私に報告して来て、何て答えていいか、全く分からなかったわ」
ホルストさんはしみじみと語り、モニカがソフィーにジト目を向ける。
「あ、あはは……そうだっけ?と、とにかくエリーゼお姉ちゃんの相手……誰だろ?」
ごまかし笑いのソフィー。
「こんな詮索は気が引けるのだけど……僕としてはフリッツさんじゃないか、と思うな。彼女と釣り合う程の知性がある男性……で、更に彼女の憧れる物語を幾つも持ち合わせている人だからね」
ジュリオさんが話す。
「あのオジサン~?でも確かにエリーゼさん、最近はあのオジサンのトコに出入りしてるみたいだったわね……」
レオンさんが、にやけて話す。
「エリーゼがフリッツと……騙されてるのではないでしょうか?」
北の人形劇準備を眺めて、プラフタが呟く。
そんなプラフタを見て、また北の人形劇の方を眺めるレオンさん。
「そうと決まった訳でもないんだけどね。何だか一生バージンで居そうな人だから、これはこれで良かったんじゃないかしら。朝から微笑ましい話ねぇ」
にやけるレオンさんが話して、それからもエリーゼお姉ちゃんをサカナに世間話は続いた。
噴水端会議が解散になり、ソフィーとプラフタは八百屋へと顔を出す。
特製バスケットを貰って、北の人形劇を見る。
今日もフリッツさんとエリーゼお姉ちゃん、それと教会の子供達で人形劇が始まる。
銀いもに恋する土いもの話………
旅する学者と砂と月の話………
ピエロと歌姫の話………
人形劇に夢中になる2人。
回りのおばさんやパメラ、観客側の子供達とヤーペッツさんにエルノアさん……
みんな夢中で人形劇を見て、終わるとお昼になった。
「エリーゼお姉ちゃん、演技に磨きが掛かってるよぉ……」
「確かに。凄く引き込まれてしまいました。まさかもうお昼になっているとは……」
「あ~ん、午後もやって欲しいわ~……」
パメラとソフィー、プラフタ3人で特製バスケットを囲み、人形劇の感想を言い合いながらのお昼。
北の人形劇の観客席……
丸太に座って昼食、という人は、結構居た。
「お飲み物はいかがでしょうか~?」
やたら可愛く飾られた錬金荷車1号と、コルちゃんとテスさんがやって来た。
「わお!コルちゃんとテスさんは人形劇、見てたの?」
ソフィーが尋ねる。
「あたしはそういうの、刺さらないんだよね~……ドライな女なのサ」
テスさんは答える。
「私も、ドライな女でして……他の物語よりも、私の物語に夢中と言うか……利己的というか……」
コルちゃんも口許を隠しながらそう話す。
「あら……昨日といい今といい、私の物語、ってのがキーワードなのかしら?」
そんなソフィー達の所に、エリーゼお姉ちゃんがやって来た。
「お!来たね噂の人!」
テスさんが、にやけて言う。
「お、お相手は……やはり!?」
コルちゃんも、エリーゼお姉ちゃんに迫る。
「フリッツさんよ……歩く姿がアレだから、って理由で人形劇を休む訳にも行かないものね。それに、そんな私の物語は……滑稽であっても、そんなに嫌がられる物じゃ無さそうだし……」
エリーゼお姉ちゃんは顔を赤くして、そう答える。
凜と答えようとして失敗したみたいな……
「特製バスケット、お届けです。お代は既に終わってますので、どうぞ」
キラキラ飾りの錬金荷車1号から、コルちゃんがバスケットを渡す。
「手間を掛けるな」
フリッツさんがバスケットを受け取る。
……いつの間に……っ!
「素敵な物語に、私からキルヘンミルクをプレゼントです」
エリーゼお姉ちゃんには、お茶の入ったミルク瓶。
ソフィーとプラフタ、パメラにも配って行く。
「職人さん達、南にも行かないとだね!ごちそうさまでした~☆」
そしてテスさんコルちゃんは、荷車1号と共に南へと行った。
「さて、人形劇の方はいかがでしたかな?今日が初お目見えの話もあったのだが……」
フリッツさんがそう話すと、ソフィーは切り替わる。
「凄く良かったです!もう、感動モノでした!」
エリーゼの話よりも、全然食い付きが違う。
そして、人形劇の感想を言い合いながらのお昼となった。
「さて……コルちゃんのドナーストーン伯爵を届けたりしないとね!」
お昼が終わると丸太の片付け。
フリッツさんと子供達、教会騎士の方々と張り合って丸太を運んだりする。
そんな後に、ソフィーはドナーストーン伯爵を思い出した。
「ソフィー……あなたは、結構怪力なのですね」
プラフタは感心しながら話す。
丸太片付けでソフィーが張り切っていて、教会騎士の方々も驚きのパワーだったものだから。
「旅先で呪われたキーファとか……採取生活だったし、装備品の能力強化も大きいのかなぁ……HPMPLPバリアも、それぞれ育ってるし……」
「旅で強くなっているのですね。筋肉は感じられませんでしたけど」
「痩せてひ弱だったあの頃とは、全然変わったんだよね!」
2人そう話しながら南へと歩くと、歓声が聞こえて足を止める。
「はっ!やっ!とっ!」
モニカとジュリオさんが戦っていて、鮮やかなモニカの剣さばきを、ジュリオさんが受け止めて前進している。
南の人形劇の午後、こんな格闘劇に……
「モニカの剣はあれほど速いものなのですか……」
プラフタは感心しながら、戦う2人を見る。
「はあっ!」
守りながらもジュリオさんが詰める。
モニカが横にかわすと、ジュリオさんの剣が1回転して、モニカは後ろにかわす。
その剣は速く、モニカを掠めてHPバリアを削る。
「ジュリオさんが鉄壁すぎるよぉ……モニカはどうしたら勝てるんだろ……?」
1回転して、すぐにジュリオさんは大剣を構えて、にじり寄る。
カン!ギン!ギギン!
ジュリオさんがモニカの攻撃を受け止める。
あの大剣を盾に、ジュリオさんは進んで……
急にしゃがみ、低い所で大剣を後ろに構える。
モニカが飛び、ジュリオさんを上から襲うも、大剣は上に振られ、ジュリオさんは大きく後退。
モニカは大剣を受けて、くるくると空へ飛んで行った。
息を飲む攻防戦の結果は、ジュリオさんの勝利だった。
強い。
「うわぁ~……モニカも凄い剣だったんだなぁ……」
ソフィーは呟く。
「旅先というのは、こうした実力が無いと難しそうですね。特にソフィーのパーティーは、なんかとんでもない場所へ行くとか……」
プラフタが尋ねる。
「そうだね~……あ、そうだお届け物をしなくちゃだった」
「確かに。思わず忘れる所でした」
2人は、鍛冶屋へと行く。
ドナーストーン伯爵を、ロジーさんの鍛冶屋にお届け。
「次はこれか……なんか試される素材を使う武器なんだな……」
ちょうど一仕事終わったみたいで、ロジーさんはドナーストーン伯爵を受け取る。
「これは……これもロジー、あなたが作ったのですか?」
プラフタが尋ねる。
あまりにもきらびやかで、目を引く槍なのだ。
「まあ……そういう注文を受けたから……作ったんだが……やはり変かな?」
ロジーさんは、少しバツが悪そうに頭を掻く。
「とんでもない!こんな物まで作り出せる職人が、この街に居るとは……コ、コルネリアの!?」
プラフタは急に顔を赤くして、やたらと距離を置いた。
さては……
ぷにちゃんの中での、コルちゃんとのラブラブエロエロの相手だから……
その体験を思い浮かべてしまったな……
と、ソフィーはにやける。
「な、コルネリアが何か?」
ロジーさんは戸惑う。
そりゃあ、プラフタのリアクションに戸惑うだろう。
「いえ……これは……何でもありません。ちょっと昔の記憶に似た人が居まして……」
プラフタはごまかし、髪をかきあげる。
……最近のロジーさんたら、ハダカのコルちゃんを装飾なんかしてエロエロしてるもんだから……
この見事な槍も、そんなエロエロ欲求の賜物……
みたいに見えてしまう。
「と、とにかくコルちゃんの武器も、頑張って下さい!では!」
ソフィーはプラフタを連れて退散する。
「めっちゃ思い出しちゃったよぉ……プラフタのせいだからね!」
ソフィーは苦笑いして話す。
「彼としても、別に悪い訳ではないのですが……ついつい思い出してしまいました。コルネリアは、ここの鍛冶屋の青年と、恋仲なのでしたね……」
鍛冶屋の前で、そんな話をする2人。
オスカーの特製バスケットは、まだ半分くらいあるから、晩ごはんもサンドイッチなんだけど……
鍛冶屋に忘れて来ていたり。
「特製バスケット忘れた。……ちょっと取ってくるね」
ソフィーは鍛冶屋へ。
プラフタは鍛冶屋の前で1人待つ事に。
……
……目の前はコルネリア露店。
おつまみで飲むおじさん達がちらほら。
少し遠くにはレオン仕立て店。
ソフィーを待つプラフタは、賑わうキルヘンベルのストリートを眺める。
……
「お待たせ~……なんか夕食がね、チケットに変わっちゃった」
ソフィーはキルヘンベルの裏酒場横、冒険者の営む料理屋のチケット2枚を手に、出てきた。
「どういう流れだったのですか?」
プラフタは尋ねる。
「なんかね、コルちゃんの武器を作るのに釜を離れたくないみたいで。サンドイッチだとちょうどいいし、あたし達は昼も夜も同じってのもアレだし……そんな流れで交換しちゃった」
ソフィーは説明して、手に持つチケットを見る。
プラフタも、その2枚のチケットに注目する。
「そのお店は、どこにあるのですか?」
チケットに店の場所は書かれておらず、プラフタは尋ねる。
「それ、コルちゃんに聞かないとなんだよね」
ソフィーも店の場所を聞かなかったものだから、首を傾げる。
「すると、今アトリエに戻るのも時間が無いですね……」
プラフタは噴水広場の方を眺める。
外で食べるなら、アトリエに帰ると夕食時に近い。
「ホルストさんのカフェで、テスさんチケットの交換品でも見てみようかな……」
ソフィーは鞄を開いて、テスさんのチケットを取り出す。
絵心のない絵がそれぞれ描いてある、自由を感じるチケット。
「それはそれは……私も外に出ないと……この街の事も、知らない事だらけですね」
ソフィーとプラフタは、ホルストさんのカフェへと向かう事にした。
その途中、レオン仕立て店の横に、レオンさんとフリッツさんが話し込んでるのを見かけて寄り道をする。
「こんにちは~……」
「おお、ソフィーにプラフタか!身体の調子はいかがかな?」
フリッツさんが振り向く。
「あら、2人仲良くデートの1日なの?あたしもそんな1日を過ごしたいわぁ……」
レオンさんも笑顔でそう話す。
フリッツさんがレオンさんに、人形の服の作り方に磨きをかけるべくアドバイスを貰っていたそうで。
フリッツさんてば、人形の服まで自分で作っているのだそうだ。
色々と話して、ついつい長居するも、ホルストさんのカフェへと向かう。
「テスの店でしたか……テスは南の人形劇で売り子をしていまして……リストはこれですね」
ホルストさんのカフェは落ち着いた感じで、ソフィーは交換リストを眺める。
「ペンデグリュンなんてあるのですね。ペンデロークはよく見る素材ですが……それにハルモニウムなんて……この品物、あまりにもスペシャルな……」
プラフタがリストに食い付く。
「そうなんだ……あたしにはちんぷんかんぷん過ぎて……じゃあ、ペンデグリュン下さい!」
ソフィーは意気揚々と手を上げる。
「もう少し考えても良いのでは?」
リストを手に、プラフタはそんなソフィーに驚き、振り返る。
「ペンデグリュンを見てから、手にとってから、聞いてからじゃないと、考える事も出来なかったり。てへへ……」
「なるほど……」
チケット20枚を渡すと、ホルストさんは奥へと消える。
そして緑色のペンデローク……
ペンデグリュンを持って来た。
「結構、大きくて綺麗なものなのですね。では、これを」
持ってきたホルストさんは、ペンデグリュンに感心しながら、それをソフィーに渡す。
ソフィーはペンデグリュンを手に取ると、上に持ち上げて眺める。
「でっかい!どんな力が宿っているんだろうな~……」
「本屋で調べたり出来そうですね」
「それだ!」
ソフィーとプラフタは、ペンデグリュンをソフィーの鞄に入れて、ホルストさんのカフェを出ていく。
本屋に向かうと、途中に噴水広場。
南の人形劇は、師匠と弟子の漫才の時間。
キラキラ飾り錬金荷車1号と、コルちゃんとテスさん、モニカとジュリオさんがその漫才を眺めていたり。
「あ!このチケットのお店で夕食にしようって流れになったんだけど……」
せっかくコルちゃんが居るし、ソフィーは経緯を説明して、聞いてみる。
「ロジーさんがこれを……なるほど。でもソフィーさんとプラフタさんで行くには物騒な場所ですので、オススメは出来ない所なのです」
コルちゃんはチケットを見ると、残念そうな顔をした。
コルちゃんも行くには、ハロルさんも一緒じゃないと……
という、危険な場所なのだとか。
「ジュリオさんと私なら、まあ平気だから貰っておこうかしら。夕食ならウチで食べて行けばいいわ。エルノアも、プラフタに会ったら喜ぶんじゃないかしら」
モニカは手を出し、ソフィーはチケットを渡す。
「そうだね。キルヘンベルの裏酒場の隣じゃあ、少し物騒だからね。僕も今日はエルノアさんの夕食に呼ばれているから、少し食材を追加したら、彼女も喜ぶんじゃないかな」
ジュリオさんもチケットを眺めて、そう話す。
「食材なら、アトリエに余らせている物を使えそうですし。キルヘンベルの街中を見るには良さそうですが、何分、私がまだ戦える状態ではありませんし……」
夕食が、モニカの家に決まった。
でもまだ夕食にはまだ早い時間……
「じゃあ、夕食時に行くね。ちょっとエリーゼお姉ちゃんの本屋で、調べものして来ないとだから」
ソフィーとプラフタは、本屋へと向かう。
「エリーゼとフリッツの噂……気になる所ですね」
本屋への道。プラフタが呟く。
「そういえば、そうだね~……でもさすがに聞きづらいよねぇ……」
なんとなく上の空で、ソフィーは相槌を見せる。
……こういう時、ソフィーは違う事を考えていて、それにしがみついてるのだ。
今はおそらく、ペンデグリュンの事ばかりになっているのか……
「あなたは、錬金術の事となると他の事は見えなくなりますからね」
プラフタは微笑む。
プラフタとしても、そんなソフィーが望ましいと思うのだから。
旧市街へと続く石畳、幾つかの階段を登る時、日の傾く感じと、風が髪を揺らした。
少し寂しい景色に、プラフタは振り返ってみたり。
「あれ?ハロルさん?」
本屋に入ると、ハロルさんがちょうど出てくる所だった。
「おう。店を開けてるもんでな。ちょっと急いで帰る所だ」
そう言うと、ひょい、ひょい、と素早く帰って行く。
「相変わらず早いなぁ……」
ソフィーは振り返り、そして本棚を眺める。
探そうにもどう探したものか、さっぱりだ。
今回はエリーゼお姉ちゃんが居たので、現物を見せてみる事にした。
「これを調べてみたいんだけど……」
プラフタに合図して、プラフタがソフィーの背負った鞄から、ペンデグリュンを取り出す。
「凄く大きいペンデローク……とは違う物みたいね?」
エリーゼお姉ちゃんは驚きながらも、ペンデグリュンを少し触りながら見つめる。
「本を探すには時間がかかるわ。それと、ペンデロークマニアであるパメラか、人形にもよく使う素材だから……フリッツさんが詳しいんじゃないかしら」
「さすが知の番人!」
ソフィーは明るい笑顔で言う。
その声がでかい。
完全にいつものトーンだ。
「本屋では静かにお願いね」
エリーゼお姉ちゃんは苦笑いする。
本屋の紙切れをちょこちょこ買って、ソフィーは本屋を出る。
「あれ?早いのですね………」
プラフタも、そんなソフィーを追いかける。
「フリッツさん、家に居るかな……」
ソフィーは本屋を出て、向かいの民家に一直線。
そして窓に張り付いた。
「これ!行儀悪いですよ……」
プラフタがたしなめる。
「確かに、行儀が悪いが、ソフィーらしくもあるな」
その背後から、フリッツさんが現れた。
「うわぁ!」
ソフィーは驚いて飛び退く。
「どうやらソフィー……君の中で私は、同年代の友達みたいな位置付けなのかな?」
フリッツさんは頬を掻く。
「プラフタ!」
ソフィーは背負った鞄を指差す。
「はいはい……」
プラフタはまた、ペンデグリュンを取り出す。
「どうやらいいコンビになっているようだが……それはウォー・ハークではないか」
フリッツさんはそう言って、ペンデグリュンを撫でる。
「ウォー・ハーク?」
「ああ、こちらではペンデローク……ペンデグリュンと言うと正しいのかな」
フリッツさんはそう言って名前を言い当てた。
なんか詳しそうな……
「なぜこのような物にも詳しいのです?」
プラフタが尋ねる。
「マナの柱が人間の味方をしている地域に転がる、魂の欠片がワー・ハーク。マナの柱が人間を敵視し、魔物の巣窟となっている場所に転がる、魂の欠片がウォー・ハークだからな。1つの目印として覚えがあるのだ」
フリッツさんは事も無げにそう話す。
フリッツさんの中で当たり前の話みたいに。
「ワー・ハークというのがペンデローク、ウォー・ハークというのがペンデグリュンなのですね」
ペンデグリュンを手に持つプラフタが、そう話す。
「ほぉ……なんで呼び方が違うの?」
ソフィーが不思議そうな顔をして尋ねる。
「国が違えば言葉も違って来るからな。私は傭兵時代に、砂漠の国の傭兵とパーティーを組んで、数年を過ごした経験がある。その言葉にも、馴染みがあったりするな」
フリッツさんはそう説明して、鍵を取り出した。
ソフィーもプラフタも、家の中へと招かれて入って行く。
「少し珍しいお茶を手に入れてな。1つ、楽しんで行くといい。いつも世話になっているしな」
玄関先にテーブルがあり、フリッツさんはそこにお茶を並べる。
「魂の欠片……なんですかぁ……何か錬金術にも使えたりするかなぁ……」
ソフィーはテーブルの上にペンデグリュンを置いて、考えるポーズを取る。
「錬金術に関してはあまり詳しくないが……宝石として綺麗で、加工もしやすいからな。人形の服の装飾に重宝しているな」
フリッツさんは部屋の中央に陣取る人形を示す。
人形劇には使わない、リアル路線の人形が幾つか居る。
「おお~!王子様とお姫様……馬まで!すご~い!」
ソフィーとプラフタは、その人形を見つめる。
プラフタは遠かったので、人形に歩み寄る。
「これは見事な……」
そして部屋の壁の所にある大きな鏡を見る。
「私も、またフリッツの作品なのでしたね。少し毛色が違うようにも見えますが……」
プラフタの映る大きな鏡に、フリッツさんも映る。
「それは、プラフタの魂を反映した、マナの柱の作品……なのだろう。私は土台となる人形を作ったに過ぎんからな。私の思惑とは、いささか違う出来となっているので、余計に興味深いのだが」
フリッツさんは、プラフタの肩に手のひらを置こうとして、大袈裟に手のひらを上げる。
「だが、このようなオジサンに……あまり興味を示されても迷惑だろうからな。控えておくとしよう」
そしてプラフタを残して、ソフィーの座る玄関先のテーブルへと、戻って来た。
「む~……」
ソフィーはテーブルの上のペンデグリュンを見つめて、唸っていたり。
「お茶が冷めてしまうぞ?あまり見つめ過ぎても、見えなくなってしまうのではないのかな?」
フリッツさんはそう言って微笑む。
「……そうですね。鞄にしまっちゃいます」
ソフィーはそう言ってごまかし笑いをすると、お茶のカップを傾ける。
「他の事……そうだ!エリーゼお姉ちゃんとのロマンスはどうなんですか?」
ソフィーはペンデグリュンを鞄に仕舞いながら、急に明るい表情になった。
プラフタもぴくっ、とフリッツさんの方を見る。
「そう来たか……」
フリッツさんは大いに苦笑いして見せた。
「そう来ちゃいますよ。エロエロ大嫌いなエリーゼお姉ちゃんを……一体どうやって……と興味あります!」
ソフィーは鞄を抱き締めて、前のめりになる。
「そうだな……私には妻も娘も居るのだが……彼女はそうした事で、憧れを諦める人物では無かったようだ。また、私はそうした物語を幾つか紡いでいるからな。彼女の事も受け止めるにやぶさかでも無かった、と言う事だな……」
フリッツさんはお茶を手に、冷静に話す。
「……?プラフタ、翻訳して」
ソフィーはプラフタを見る。
「どうやらエリーゼからのアプローチだったみたいですね。それも、フリッツが妻子持ちである事を承知の上だった、と。それと、そうしたロマンスは、傭兵であるフリッツとしては、あまり珍しいものでも無い……という所でしょうか」
プラフタはそう話してフリッツさんを見る。
「本当にいいコンビだな君たちは」
フリッツさんは呆れて笑う。
そしてプラフタのカップを手にすると、プラフタに向ける。
「……ありがとうございます」
プラフタは受け取り、ソフィーの隣に座った。
「しかし、これでは説明としては1つ、大事な所が抜けているな。……私も、エリーゼを魅力的だと思って居るし、そう仕向けた所もある。決してエリーゼの片思いではないが……私は結局は妻の元に戻る男だ。それほどに妻との物語は深く、私を惹き付けるものでな」
そう話して、フリッツさんはお茶を飲む。
「プラフタ、翻訳を」
ソフィーはプラフタを見る。
「今のも必要かな?」
苦笑いのフリッツさんはずっこける。
「……フリッツの方も、エリーゼが好きだと。ですが、妻の元に戻る……という事だと」
プラフタは冷静に話す。
「じゃあ、おめでたい話……なの?」
ソフィーはプラフタを見て、フリッツさんを見る。
「それはおめでたい話だろう。エリーゼは勇気を出して歩み寄って、その思いが成就しているのだからな。私にとっても、めでたい話だな」
フリッツさんは微笑む。
「それじゃあ、おめでとうございます!エリーゼお姉ちゃんに何かプレゼントでも送ろうかなぁ……」
ソフィーは口許に指を置いて、遠い目をする。
「プレゼントならば、絵の画材を欲しがっていたな。今は商人から取り寄せた物を使っているようだが、どうにも色が暗い、と話していたし、私もそうした画材はあるとありがたいな」
フリッツさんはそう話す。
「画材……それならちょこっと調合でばんばん作れちゃいますから、明日にでも用意できちゃいますよ!夕食後にでも、やるだけやっておきますね!」
ソフィーは明るい顔で引き受ける。
明るい色付きのクレヨンと蝋絵の具。
ちょこっと調合で作るのは、なかなか楽しかったりするし。
「エリーゼは私と似ているように思いまして、そうした女性の認める相手というのは、気になるものでしたが……」
フリッツさんの家を出て、アトリエへと向かう道。
プラフタはそう話す。
「ガッカリ?」
「いえ、フリッツに対してはガッカリではありませんし、納得も出来るのですが……私が何も感じない事にガッカリ……なのでしょうね」
プラフタは空を見上げる。
……肌の感覚も、匂い的な感覚もないからだろうか……
そう思いながら。
「だって、プラフタには恋人が居るからね。さて、コンテナから食材ゲットして、エルノアさんの手料理を食べなきゃ~♪」
ソフィーはプラフタの手を取り、歩く。
「……そ、そうでしたね」
プラフタも、手を取られて歩いてく。
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[番人ぷにちゃん達]
コンテナに住むソフィーの頭サイズのぷにちゃん。色もそれぞれ見える色が違い、ソフィーには灰色がかった黒、プラフタには黄緑色、コルちゃんには透き通った青に見える。どんどん増えてる。
ドナーストーン[伯爵]
フォン・ゲオルク・ドナーストーン伯爵みたいに、更にカッコいい名前にしたくもある。
[噴水端会議]
噴水の回りでの雑談会。色んな話が飛び交う。
[北の人形劇]
種の日のお楽しみ。これぞ休日!って感じ。
[フリッツ×エリーゼ]
エリーゼお姉ちゃんにもお相手が!でもエリーゼお姉ちゃんは冷やかしづらい。
[エロエロ]
18禁!なので全年齢対象のゲームでは一切出てこない。誰もが禁欲生活なのだろうか。
[ヤーペッツさん]
食通商人。レストランで腕を奮っている、凄腕料理人でもある。
[エルノアさん]
ヤーペッツさんの元で料理の腕も上げているのだとか。華やか素敵な盛り付けの料理が得意。
[特製バスケット]
オスカーの特製サンドイッチの詰まったバスケット。豚ネズミの肉を乾燥させた、乾燥肉と特製調味料の合わせ技で、美味しさ満点!
[コルネリア×ロジー]
意外とケンカする事も多いんだとか。
[テスさんのチケット]
ゲームでも登場するチケット。絵心のない絵が描かれている、という設定はない。
[南の人形劇]
芸人師匠と弟子が主催する、漫才と歌なんかの催し物。お酒を飲む場所にもなっているので、錬金荷車1号とテスさん、コルちゃんがお酒とおつまみを売っていたり。八百屋特製のサンドイッチも好評。
[ウォー・ハーク]
ペンデグリュンの外国語版。完全に造語。
[ワー・ハーク]
完全に造語その2。ペンデロークの事。
[マナの柱]
魔力の源。色んな事が出来る。