☆
錬金術のアトリエ 41
「もう、ぼちぼちシルヴァリアの完成なのではないですか?」
夜中の2時、コンテナから出てきたプラフタに、ソフィーは起こされる。
「おおっ……プラフタ!?」
事後ハダカ族のソフィーは身体を起こす。
オスカーも起きて、身体を起こした。
「マナの柱が、錬金釜の状況を心配して、私に知らせてくれたのです。寝過ごす勢いみたいでしたから」
プラフタはそう告げると、錬金釜へと向かう。
「なんか、プラフタは動じないんだなぁ……あれ?オイラが居るのにコンテナから出れたのかい?」
オスカーはハダカのまま、暖炉へと向かう。
「お忍びで開ける事は出来るみたいですので。今回は一大事だから、と。今はもう開きませんが。それと、私は本の頃から目の当たりにしていますので」
プラフタは錬金釜を眺めて、言う。
「えへへ……やばかったねぇ……」
ソフィーはそのまま肌襦袢を着て、錬金釜へと向かう。
「オスカーと充実して白熱するのは結構な事ですけれど、今後は気をつけて下さい」
「は~い。でも本当に助かったよぉ……」
汗とエロ汁で肌襦袢をぺたぺたさせながらも、ソフィーはシルヴァリアを完成させる。
オスカーは暖炉に向かって身体を洗い、服を着た。
「さて、旅はまた双葉の日だから……今回は時間があるな。ともかく、また農家さんの所で肥料研究してくるな」
服を着たオスカーは、アトリエを出ていく。
そんな朝3時。
「オスカーはオスカーで、やる事があるのですね」
プラフタはそそくさと出ていったオスカーを見送り、呟く。
「旅先の植物の予習と、八百屋の手伝い、今は土が痩せちゃってる農家さんの所で肥料の研究と……結構忙しいみたいなんだ」
そんなプラフタの後ろ姿に、ソフィーが説明する。
「ともかく、ソフィー。あなたもマナの柱の所で綺麗にした方が良いのではないですか?」
プラフタはソフィーを見て、言う。
何故かこのまま、次の調合計画を考えていた。
「えへへ……ちょっと眠りたいかも……一緒に行こ?」
ソフィーは乱れた頭を傾げて、プラフタに言う。
「……まあ、それはいいのですが……」
ソフィーに色目を使われて、ベッドの不思議毛布を持って、プラフタもコンテナへと付いて行く。
扉の前の棚に、ソフィーとオスカーの汚れがついた毛布を置く。
棚には奥行きも広いので、毛布を広げて置いて、尚余裕がある。
番人ぷにちゃん達が、毛布にも取りつく。
今や毛布も時間がかかるけど、汚れを食べ尽くせる。
「番人ぷにちゃんも可愛いよねぇ……」
ソフィーは肌襦袢も脱ぎつつ、番人ぷにちゃんの群れをつんつんする。
プラフタは服の構造が複雑で、脱ぐのには少し時間がかかる。
「……よく来た……残りは128時間だ……」
ぷにちゃんは口を開く。
「さっきの今で来てしまったので、あまり汚れてもいませんが……」
プラフタはそんな所を気にしながら、ぷにちゃんの中へと入る。
「プラフタのエロエロ儀式って、もう終わったのかな?」
ソフィーはプラフタに抱きつきながら思う。
そう思うと、その思いが響き渡ってプラフタにも伝わる。
「あ……つい先程……」
プラフタも思わず真面目に応える。
しかもソフィーとオスカーとのエロエロ再現で……
「あ、あはは、あたしとオスカーのエロエロ儀式の間、ホラ、ヒマヒマだもんね?」
ソフィーはプラフタを深く抱き締めて、頬を頬に寄せる。
「まあ……それもあるのですが……」
プラフタもそんなハグに応えて腕を回す。
もう既にきゅんきゅんしてて、落ち着かなく腰や足をうねうねさせる。
「それも?」
ソフィーは意地悪い所に食い付く。
「そんな所、気にしないで下さい!」
プラフタはソフィーを抱き締める力を入れて、照れをごまかした。
「えへへ……でもあたしね、プラフタとうねうねするよりも、オスカーの時の方がきゅんきゅんして、ふにゃふにゃになるんだよね……」
ソフィーは思う。
プラフタは、ソフィーに対してきゅんきゅんして、ソフィー程じゃないけどふにゃふにゃしてくる。
……好きって気持ちは、人によって違う……
そんな好奇心。
「それは知っています。ソフィーにとって2番でも、私にとっては、ソフィーが1番なのも。こうした気持ちは……不思議ですね」
でも、エロエロ儀式明けだからか、プラフタはそんなふにゃふにゃしてなかった。
「コルちゃんだと、ロジーさんにメロメロだけど、ハジケ合ってるあたしとかモニカは、そんなでもないもんね」
ソフィーはコルちゃんを思い浮かべる。
ロジーさんにだけ特別メロメロで、モニカがほわほわしてお母さんみたいで好き。
次にソフィーで、なんと妹みたいな気持ちで好き。
「そうですね。コルネリアは好きな人が多いのですが、その差が歴然でわかりやすいですね」
プラフタはくすっ、と笑う。
「えへへ……ともかく、プラフタとこうして眠るのも、しあわせなんだよねぇ……」
ソフィーはプラフタを抱き締めて目を閉じる。
「私も、まさかあなたとこうして抱き締めて眠れる、というのは幸せです……」
プラフタも目を閉じる。
……ソフィーは疲れていたのか、すぐに眠りに落ちた。
……でもプラフタは眠ったばかりで、眠れない……
「ソフィー……あなたは恋人のようでもあり、娘のようでもありますね……」
プラフタはソフィーを抱き締めて、目を閉じる。
「私は……女の身でありながら……女であるソフィーに恋をしているのでしょうか……」
プラフタは1人、呟く。
ぷにちゃんの中で、3時間程でソフィーは目を覚ました。
「おはようございます、ソフィー」
「おはよう、プラフタぁ~♪」
ソフィーはプラフタの頬に頬ずりする。
「ちょっと!どうしたのですか」
プラフタは慌てて、ソフィーから離れようとする。
「えへへ~……なんか起きたらプラフタが居るって、嬉しいんだよね~……」
すっかりピカピカのソフィーは、にへら~、と笑って見せる。
そんな笑顔に、プラフタはどきんとしたり。
「そ、それは……そんな事を言われてしまうと、私も嬉しいような……」
プラフタは思わず顔を綻ばせて、そう言って顔を逸らした。
そしてアトリエに戻る。
ソフィーは錬金コートをバッチリ着て、錬金釜へと向かう。
「さて、何を作ろうかなぁ……」
ソフィーは錬金釜の前で、図鑑を開く。
目新しい調合は、達人の錬金釜だけど、カテゴリ力が足らなくてあまりいい出来上がりにならない。
なのに24時間浸け置き……
なので、ひたすら後回しになっている。
「特性持ちを増やす錬金術になるのでしょうか?」
「む~ん……新しい錬金術をしたいよねぇ……よし!街にお出かけしようよ!」
ソフィーはパンッ、と手を叩く。
「ですが、まだ朝の3時……外は暗いみたいですけれど」
プラフタは窓を眺める。
「すぐに朝になるから平気だよ~。本屋さんで調べものもしたいんだよね」
ソフィーは杖を取りにうろうろして、錬金術士のトレードマーク、杖を持つ。
特に使う事は無いのだけど、外出の時は必ず持って行く。
「まあ、私も本屋には行きたいと思っていた所です。行きましょうか」
2人はアトリエを出る。
まだ暗いキルヘンベルを2人は歩く。
住宅街にさしかかると、モニカが家から出てくる所だった。
「あらソフィー、プラフタも……こんな時間にどうしたの?」
バッチリキッチリいつもの格好のモニカは、2人に尋ねる。
「あたし達は本屋で新しい錬金術を探そうと思って!それと、依頼品のお届けだよ。モニカこそ、まだ暗い時間だけど、何かあったの?」
輝く街灯の並ぶ住宅街の白い道を、そう話しながら歩く。
「私はいつもはこの時間に出て、剣術稽古してるわ。それと、教会へ行くのよ」
モニカはそう話す。
「ほえぇ~……」
そんなモニカにソフィーは感心する。
……さすがキルヘンベルの模範女子……
「ソフィーだって日がな1日、錬金術してるんじゃない?それに比べるとまだまだよ」
呆けているソフィーに、モニカはそう、付け加えた。
「モニカの上昇思考は見習うべき部分ですね。私も色々と考えさせられます」
プラフタは口許に手を置いて、そう呟く。
……そんな話をしながら、3人は教会へと向かい、ソフィーとプラフタはその先、旧市街へと向かう。
本屋の前に着いた時、まだ暗かった。
……さすがにアトリエを出るのが早すぎたのか。
「む~ん。でも、清々しい朝だね!お空がぼちぼち朝になる感じだし!」
旧市街の大木、オスカーの師匠の傍らで、ソフィーとプラフタは空を眺める。
「こうした時間の、こうした場所もいいものですね。味わいのある景色と言いましょうか」
プラフタは空を眺める。
ソフィーはふと、旧市街の街並みと師匠の大木を眺める。
「この木がね、オスカーの師匠なんだって。あたしとオスカーが出会った所が、この時間の、この場所だったなぁ……」
ソフィーはそんな昔を思い出す。昔って言ったって10年くらい前ってだけなんだけど。
………
痩せていた小さなソフィーは、色々と考えて、でも何を考えていいのか分からない頃、なんか落ち込んでた時に、ふらふらとキルヘンベルを歩いていて、この時間のこの場所でオスカーに出会った。
……この頃、オスカーは師匠の大木にご執心だったのだ。
それまでも、よく顔は見ていたし、アトリエ前によく出没していたのだけど、話すようになったキッカケはこの時間のこの場所……師匠の大木の前だった。
オスカーとしては、ちょうど色々とやりたい事があって、子分が欲しかった時だった。
そこに、ちょうど良く宙ぶらりんのソフィーが現れた訳だ。
それからは、オスカーと近くの森へ通う日々となった。
食べられる草とか花とか、芋とかを探す日々。
オスカーの子分ってだけで、周りからは一目置かれる感じになった。
いつからかモニカも加わると、冷やかす子供たちも近づけなくなって、いつからか子供達を引き連れて、キルヘンミルクスネークを追いかけるようになったんだ。
………
ソフィーはそんな話をプラフタにする。
6歳ぐらいからの付き合いで、恋人になったのは13歳くらいか。
「そんな頃からの付き合いだったのですか。オスカーは昔から変わらない、みたいな感じがしますけれど、やはり変わってないのでしょうか?」
プラフタはソフィーに尋ねる。
「ん~……昔は口うるさかったような気がするなぁ……それであんまり友達も居なかった感じだし、人より植物の方が大事だったからなぁ……」
ソフィーはそう話す。
でも、オスカーのおかげで元気になれたし、錬金術は出来なくても、蛇とか捕まえる為に杖を振っていたし……
そんな昔話をしていると、プラフタが頭を押さえた。
「あうっ……!これは……っ!」
「プラフタ!?どうしたのプラフタ!?」
しゃがみ込んだプラフタに、ソフィーが寄り添う。
しばらくプラフタは呼吸だけをしていて、ソフィーはそれを見守る。
「私の……昔の記憶……何かを守る為に……何かと戦っていました……思い出したくない記憶が……今……」
プラフタはよろよろと立ち上がり、ソフィーが身体を押さえる。
「大丈夫?プラフタ……?」
「もう少ししたら、大丈夫になりそうですが……何という記憶が……」
それからは、あまり話さずに師匠の大木の所に座って過ごす。
朝焼けが来て、エリーゼお姉ちゃんが通りかかった。
「あっ!朝帰り!」
ソフィーは立ち上がり、プラフタはずっこける。
「も~!何だってこんな時間に居るの!?」
エリーゼお姉ちゃんは顔を真っ赤にして驚き、本屋に逃げて行った。
「プラフタ!これは……放っておけないよ!」
「あなたも、昨日はお楽しみだったのですけれど……」
ソフィーは本屋へと行くものの、鍵がかかっていた。
「うぬぬ……ここで待つしかないっ!」
ソフィーは座り込む。
そこに小説好きな女の子ソフィーダちゃんと、ちょっとオトナなお姉さん、アナミさんが出勤してきた。
「あれ~?ソフィーじゃん!どうしたの?」
ソフィーダちゃんは、カン高い声で尋ねる。
「実はね……エリーゼお姉ちゃんが朝帰りしてきてね……」
ソフィーは素早く立ち上がると、ソフィーダちゃんに寄り添い、そう説明した。
「ソフィー!こんな女の子にあなた!」
そんなソフィーに、プラフタは慌てて突っ込みを入れる。
「人形のおじちゃんでしょ?知ってるよ!それに昨日は本屋の閉店から、2人一緒におじちゃんの家に行ってたもん!」
ソフィーダちゃんは、事も無げに話す。
「まあ……おかげで私達も、堂々と恋の話も出来るようになりましたから……人形のおじさまには感謝なのですけれど」
アナミさんも、そう話した。
それからも話は弾む。
どうやらエリーゼお姉ちゃんが、フリッツさんとイイ感じになってからというもの、ソフィーダちゃんもアナミさんも、彼氏を本屋に呼んだり、そういう話も出来たり、イイ感じなのだとか。
少し遅く開いた本屋に入り、錬金術関係の本を探す。
プラフタは何か夢中になる本があったみたいだけど、ソフィーは特にそういう事もなく、プラフタを置いてカフェに依頼品を渡しに行く事にした。
途中、コルちゃん露店を通る。
そこにロジーさんも居たり。
「おはよう!ロジーさんも露店のお手伝いですか?」
ソフィーは能天気に声を掛ける。
「ソフィーか。今、露店の受けた注文を鍛冶屋に持って帰る所だよ。露店の手伝いする程暇だったら、いいんだけどな」
ロジーさんは注文書きのメモに落としていた顔を上げる。
「そんなに暇だったら、不安になって情緒不安定になってしまうのです」
コルちゃんが苦笑いしながら、そう話した。
「ま、まあ……そうかな。剣を打つ需要が無い日々って事だもんな」
ロジーさんは頭を掻く。
「それよりもこの度、地底湖の噂を聞いているのです。危険な魔物と、良質な鉱石が眠る……ジュリオさんモニカさんも納得の場所を!」
コルちゃんがテンションを上げる。
「おお~!これは新しい錬金術の予感もビンビンだね!」
ソフィーもテンションを上げる。
原っぱ遺跡のミニデーモン、セイバークロウの戦闘も危なげなく突破していたし、新天地大歓迎だ。
「あまり油断しないようにな。ソフィー、コルネリア」
ロジーさんはそう言うと、鍛冶屋へと帰って行った。
「確かに。まずは無事に帰らないとだから……妖精の道標の回数は確認しておこうかな……」
ソフィーは腕組みをして考えて、そう閃いた。
「それは、凄く大事な所です」
コルちゃんも納得する。
「それ以上は皆で相談だね!取り敢えず依頼品を渡しにも行かないと……」
ソフィーは手をひらひらさせて、コルちゃんと別れる。
そして八百屋にてマルグリットさんと立ち話をして、依頼品を渡しにカフェへ。
なんかホルストさんは忙しそうで、すぐにカフェを出る。
レオンさんの仕立て屋さんの前を通ると、レオンさんから手招きをされた。
「おはようございます。どうしました?」
そのにこやかなお誘いに、ソフィーはホイホイとレオンさんの所へ行く。
「どう?ここの新作達は。ソフィー、あなたならどれがお気に入りかしら?」
「う~……あたしはこの服がお気に入りだから!」
ソフィーはその服たちに背中を向ける。
「頑ななのねぇ……」
「あたしがそういう服を着たら……なんか錬金術が使えなくなっちゃいそうで……」
ソフィーは背中を向けたまま、そう呟く。
「なるほどねぇ~……でもでも、普通の女の子としては、どれがお好み?アタシが錬金術士風に仕立てて上げようかって思ったのよ。結構ずっとその服でしょ?」
レオンが言うと、ソフィーは振り返る。
「うぐぐ……変なこだわりでしょうか……」
「変なこだわりこそが、服なのよ!変なこだわりがあればあるほど、服にうるさいのよ。アタシは、そんな服にうるさい変なこだわりのある人にこそ、服を作る職人なのよ?」
レオンさんはそう話す。
「確かに……」
「あなたは青が好きなのかしら?何となく、その色じゃないように思うのよね」
レオンさんはにやけ顔でソフィーを眺める。
「……これかな……」
ソフィーは鮮やかな黄色い服を指差す。
「いい趣味だわ!やっぱりこういう色よね!でもこの服のデザインは、ソフィー向きじゃないわねぇ」
レオンさんはそう言うと、ソフィーをじろじろ見る。
「プラフタみたいな露出は……さすがに……」
じろじろ見られて、ソフィーは照れ笑いする。
「あれは必要みたいだからそうしたまでよ。さすがにあそこまでの露出は……この地域ではちょっと目立ち過ぎるわよね」
レオンさんは顎に指を置いて、少し考えながら話す。
「ですよね~……でもそう考えると、あれは上手く出来てますよね」
「でしょ?かなり悩んだんだから!あら、いらっしゃい」
そう話した所でお客さんが来て、ソフィーは退散する。
「プラフタはまだ本に夢中かなぁ……」
ソフィーは旧市街へと向かう。
少し雨が降ってきて、急ぎ足で本屋へ。
……そして本屋に着くと、雷雨になっていた。
「うひゃあぁ……危なかった~……」
ソフィーは本屋に入り、ため息をつく。
「あらまぁ、外は雨みたいねぇ……」
エリーゼお姉ちゃんは、ふわモフタオルを持って来て、ソフィーの頭を拭きに来た。
お客さんは、プラフタしか居ない本屋さん。
「でも雷が鳴る前にはここに到着したから、そんな濡れてないでしょ?」
エリーゼお姉ちゃんに拭かれながら、ソフィーはにへへ、と笑う。
「これはこれは……」
そこにフリッツさんが入って来た。
「あらまあ……こちらはずぶ濡れで」
エリーゼお姉ちゃんが驚きの声を上げた。
「ふわモフタオル、まだある?」
「あるわよ。本は水を嫌うから、沢山用意したのよ」
エリーゼお姉ちゃんはカウンターの方へと行き、プラフタは1冊の本を手にフリッツさんとソフィーの所へと、歩み寄る。
「フリッツ、この本のこの記述なのですが……」
プラフタはフリッツさんと難しい話を始めて、ソフィーはエリーゼお姉ちゃんと一緒に、フリッツさんを拭く。
なんか、コールリングで離れた何かを動かす話をしていた。
ソフィーも、邪魔をしないように聞くだけ聞いていたけれど、何の話かはよく分からなかった。
フリッツさんは自分の調べ物をしていて、プラフタはまだその本を眺めている。
本を読んでる……
というよりは、本を手に何か考え事をしているような……
ソフィーは雷雨が続く音を聞きながら、端っこに座っているだけだったり。
「ソフィー!私も作って欲しい物が出来ました!」
そんなソフィーの所に、プラフタが来た。
「おお~!どしゃ降りだけど、帰る?」
ソフィーは立ち上がる。
どしゃ降りの中を出歩くのは、全然気にならない系女子だ。
プラフタが嫌がると思って、本屋さんに留まっていただけだったし。
「どしゃ降りだけど、帰りましょう。雨も克服しなくてはいけませんから」
プラフタはくすっ、と笑ってエリーゼお姉ちゃんに振り返ると、手をひらひらさせてドアを出る。
むしろソフィーが追いかけて行く。
雨のキルヘンベル。
ソフィーとプラフタは、アトリエに帰る。
「雷雨バリバリだよぉ~……」
ずぶ濡れソフィーとプラフタは、アトリエのドアに鍵を入れて、ドアを開ける。
雨の滴るプラフタの手に、ソフィーはやたらと目を奪われた。
「暖炉の側で乾かさないと、ですね」
「このままぷにちゃんの所で喜ばれるよ。新鮮な雨水も好物だから」
「では……」
ソフィーとプラフタはそのままドアに鍵をしてコンテナへと入り、ぷにちゃんの部屋の扉の前で服を脱ぐ。
相変わらず棚の番人達が集まると、細いぴょこんをぴょこぴょこして服をねだる。
番人ぷにちゃん達が、脱ぎ辛いプラフタの服に飛び乗り、留め具を外すと棚へとジャンプする。
「そ、そんな技まで……」
ソフィーはそんな番人達に驚く。
番人ぷにちゃん達は、戻った棚でわっしょいわっしょいしてる。
「残り128時間だね。時間を止めるのがお望みみたいだから、止めてるよ」
ぷにちゃんの部屋に入ると、ぷにちゃんは口を開ける。
「そうそう、需要な事なんだけど、私もおじいちゃんの人格に会えたんだよ。今までで1番マナの柱の力が強くなってるんだね」
ぷにちゃんはそう言って笑う。
「へえぇ~♪やっぱり知ってる人だったりしたの?」
ソフィーが尋ねる。
なんか、知ってる人だった的な思いも伝わって来たけれど。
「うん♪知ってる人だね。でも、どう知ってる人なのかは、記憶に辿り着けないんだよね」
ぷにちゃんはそう話す。
記憶に辿り着けないと言うけれど、そんな事はあまり気にならないみたいにあっけらかんとしていて、なんか上機嫌だ。
「記憶に辿り着けない?」
プラフタが尋ねる。
「そう。記憶があるのは解るんだけど、その記憶には辿り着けないんだよね。何かの細工をされているみたいで。まあ、それよりも何か……強くなりたいオーラが凄いね♪」
そんなプラフタに、ぷにちゃんは応える。
しかも辿り着けない記憶にはあまり興味ないのか、プラフタのやる気を刺激してきた。
「そうなの!?それで苦手な雨も突き抜けてアトリエに帰って来たんだ~」
ソフィーはプラフタを見る。
「まあ、そういう事ですね。それに私の武器にも心当たりがありまして……」
プラフタは伏し目がちに答える。
そこからは、新しい錬金術のイメージも伝わって来た。
「……!?何か、チョー難しい調合イメージ来たけど、なんじゃこりゃあぁ~……」
ソフィーは頭を抱えて苦しむ。
「……落ち着いて理解出来るように、ちゃんと紙に書きますから……」
プラフタは苦笑いしながら、ソフィーを眺める。
「と、ともかくちょっとシルヴァリアの調合をしてから、またまったりしに来ようかな」
「シルヴァリアの調合は、特性などは必要ありませんが、ともかく品質高めでお願いします。品質を犠牲にして形にする事になりそうです」
ソフィーはアトリエに向かい、プラフタはぷにちゃんの中で瞑想する。
ソフィーはハダカ族のまま、シルヴァリアを仕込んでいると、コンテナからプラフタが出てきた。
ぷにちゃんの部屋に残ったプラフタは、時間が止まった世界で8時間程、ゆっくりじっくり構想を練って、それから服を着て、アトリエに戻って来たのだけど……
ソフィーは錬金釜の中に配置を決めて、1つため息をついた。
「ふう……これで、よし!……あれ?」
ハダカ族のまま、錬金釜にシルヴァリアを仕込み終えたソフィーが、コンテナに戻ろうとベッドの方を見ると、そこには呆れ顔のプラフタがソフィーを見ていた。
「ソフィー……あなたと言う人は!」
「わぁお!ちょっとタンマ!すぐに戻ろうと思っただけだって!」
「だとしても!肌襦袢を着ればいいじゃありませんか!」
アトリエのドタバタが始まる。
そしてひとしきりドタバタして、雷雨も止んだ頃、ソフィーとプラフタはレシピ構築を始める。
シルヴァリア完成までは9時間………
ヘクセ・アウリスと名前のあるそれは、腕輪と連動して動く巨大な腕。
駆動機兵という、錬金術が作り出す機械であり、腕は消えたり現れたり出来る。
そして更に成長する腕なのだ。
なので形にさえなれば、自ずと時間を掛けて魔力を補充し、完成品となる。
「うへえぇ……これは厳しいよぉ……でもなんとか形には出来そう……かな」
「ソフィー、あなたの作るシルヴァリアの品質はズバ抜けていますからね。錬金術レベルが足りないのは承知の上で、挑戦して貰えると助かります」
「まあ、失敗しても素材を失うだけだから、全然やるけどね!それにこういうハードな錬金術、したかったし!」
そんな事を話していると、ソフィーのお腹が鳴った。
「ん~……お昼だね」
「もう14時ですが……食事は大事ですね」
そう話していると、コルちゃんがやって来た。
「こんにちは~……今日もぷにちゃんを頼りに来ました」
「コルちゃんいらっしゃ~い。今からお昼なんだよぉ~」
ソフィーはプラフタと煮物を作っている。
「ソフィーさんは今日も、食事を忘れるくらい錬金術に夢中なのですね。頼もしいです」
コルちゃんはネコの目で笑って、口許を隠すいつものポーズで言う。
「まあね~♪今回の調合から、ちょこっと調合の方もだいぶ凄い事になりそうなんだよね!」
ソフィーも笑う。
けれど頭からは、知恵熱から来る煙が出ている。
「くれぐれも無理はなさらぬように」
コルちゃんはその煙を見て言うと、コンテナの中へと入って行って……
5分くらいで出てくると、帰って行った。
それからも錬金術生活は続く。
ヘクセ・アウリスのレシピ構築にはやたらと時間がかかり、開花の日、10時に仕込んだシルヴァリアは19時に仕上がったものの……
翌日、果実の日、朝の9時にヘクセ・アウリスのレシピはようやくまとまった。
それからヘクセ・アウリスの作成!漬け置き24時間!
「決まった……!後は祈るだけ!」
配置完了後に、頭から煙を出しているソフィーは、くるくるふらふらとベッドに移動すると、ベッドに倒れた。
「お疲れさまです。暖炉の所なら、井戸水で頭を冷やせますよ」
「ぷにちゃんの所で冷やすのが……いい!」
ソフィーとプラフタは、ぷにちゃんの部屋で休む事にした。
「人が来るねぇ……」
アトリエに向かう山を登る人を察知して、ぷにちゃんが教えてくれた。そんなお昼過ぎ。
「お腹も減ってきたし、アトリエに移動しなきゃ!」
プラフタに甘えながら頭を冷やしていたソフィーは、すっかり元気になってぷにちゃんの部屋を出る。
プラフタも後に続いた。
「ああ~!釜が泡立ってる!」
いつになく、しゅわしゅわ感のある錬金釜を見て、ソフィーは慌てて言い出した。
「品質を落としながらの調合だと、こうした感じになりますよ。ソフィー、あなたの錬金術だとこういう事は初めてでしょうけれども」
プラフタは落ち着いて錬金釜を見る。
しゅわしゅわ感はあまりに弱く、成功出来るパターンだと思いながら。
「う~……ドキドキするよぉ……」
ソフィーは錬金釜を見守る。
そんなアトリエにやって来たのは、オスカーとコルちゃんだった。
「こんにちはです。ぷにちゃんを頼りに来ましたので、オスカーさんは外ですが」
プラフタがお出迎えして、コルちゃんが入って来た。
ソフィーは、錬金釜にしがみついて見守っている。
「……?どうかしたんです?」
コルちゃんはそんなソフィーを見て、プラフタに尋ねる。
「いつになく難しい調合でして……ピンチでもないのですが、気になる展開でして……」
プラフタが答えると、コルちゃんは首を傾げつつも、コンテナへと入って行く。
そして5分程で出て来て、オスカーと入れ替わる。
コルちゃんは帰って行った。
「いよう。昨日の雨で農家さんの栄養剤も行き渡ったみたいでさ……今日はゆっくり出来そうなんだよ……って……」
入れ替わりで入って来たオスカーは、そう言いながら、のしのしとアトリエに入って来て……
錬金釜にしがみついているソフィーと目が合った。
「今、なんか危なっかしい調合が成功するようにね、祈ってる所なんだ……」
「そうか……でも危なっかしい感じはしないけどな。ダークマターのアトリエの頃にさ、色んな失敗パターン見てきたけれどな」
オスカーは暖炉の側のテーブルに手を置いて、そう話す。
「ほう。オスカーはその頃に詳しいのですか?」
そんな話にプラフタが食いついた。
「そうだなぁ……」
オスカーはダークマターのアトリエの頃の話をする。
ソフィー以上に、やたら詳しかった。
……そんな話に花を咲かせて、まったりと過ごして……
オスカーはお茶受けのクッキーまで焼いてくれて……
夕方になる。
完成は明日、種の日の朝だ。
「オスカーはソフィーとエロエロしに来たのではないのですか?」
何かの話の調子に、プラフタがそう尋ねた。
「昨日、したばっかりだからなぁ……でもこうしてのんびりしてるのも、贅沢な時間だろ?錬金釜にしがみついてるソフィーも、なんか懐かしい感じするよ。そういうのも、いいんだよなぁ……」
オスカーは、いつものおとぼけボイスでそう話す。
……暖炉のテーブルでうとうとしたりするオスカー……
……錬金釜にしがみついたまま、うとうとしたりするソフィー……
プラフタは、そんな2人を眺めたりしながら、アトリエの本を読み進めていたり。
そんなまったりのんびりな夜は更けて行く。
「じゃ、教会で皆に伝えておくよ」
朝になり、オスカーはアトリエから教会に向かう。
ソフィーとプラフタは錬金釜に張り付いている。
そろそろヘクセ・アウリスの完成だ。
「うん、上手く行ったら今度の旅はプラフタも行けるかもだよ!」
胸の前で指を絡めて、ソフィーはオスカーを見送る。
結局錬金釜にひたすらしがみついて、朝になった。
「行けるといいよな。でもあまり急ぎすぎは……そこらへんはジュリオさんとか、フリッツさんに任せるけどな」
オスカーはひょい、と片手を上げて歩き出す。
「よし!出来た!……なんか溶けかけてる感じだけど……」
朝の9時。ヘクセ・アウリスを取り出す。
銀の両腕は溶けかけていて、それでも一応、形にはなった……のか。
「まあ、これもマナの柱仕上げで、形になるのかと。そういう話もしてありますので」
プラフタは落ち着いてヘクセ・アウリスの片方を持つ。
ソフィーも片方と、腕輪を持つ。
「なるほど!プラフタもぷにちゃんの仕上げ前は、顔とか髪とかちょっと怖かったもんね」
「あまりしっかり見てないのですが、そうだった気もしますね」
そんな話をしつつ、ぷにちゃんの部屋へ。
「話していた武器が出来たんだね♪あと、残り115時間あるよ」
ぷにちゃんの部屋の扉の前、番人ぷにちゃん達が、ぴょこんをぴょこぴょこしながらそう言った。
「結構残念な出来上がりなんだけどね」
服を脱ぎながら、ソフィーが話す。
「それでも、ヘクセ・アウリスを形に出来るなど、目覚ましい成長をしているのですね。頼れる錬金術士になったものです」
プラフタも服を脱ぎ、番人ぷにちゃんに渡しながら話す。
「ともかく、仕上げも含めてお任せあれ♪」
今回もぷにちゃんは上機嫌だ。
ヘクセ・アウリスを持って部屋に入ると、ぷにちゃんは口を開ける。
どんどん大きくなって、また更に大きくなっているような……
「今回のエロエロ儀式で、プラフタの能力も完成するよ。旅に行く野望も、これで叶っちゃうね」
「ええ!?あたしの時は1ヶ月以上かかってたけど……プラフタ凄い!」
「マナの柱の力が、あの時よりも解放されてるからね。それに慎重にならないといけない能力も無かったし」
「む~……ともかく、エロエロ儀式で凄い力、ゲットなんだね!ここは気合い入れて……」
「……1つ、お願いしましょうか……」
プラフタも乗り気だった。
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[事後ハダカ族]
ハダカ族の更に上位版。
[マナの柱]
魔力の発生源。色んな事が出来る。
[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエの地下にあるマナの柱。
[番人ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエ、コンテナの番人達。汚れを食べまくっているので、コンテナの中はピッカピカ。
[エロエロ儀式]
マナの柱できゅんきゅんしてビクンビクンすると、魔力の器を得る事が出来る。
[師匠の大木]
旧市街、本屋のほど近くにある大木。オスカーが色々な事を教わった、物知りな木。
[ソフィーダちゃん]
本屋の店員さん。小説好きで若い。
[アナミさん]
本屋の店員さん。魔物に詳しいお姉さん。
[ふわモフタオル]
ちょこっと調合品。ふわふわモフコットの白バージョン。
[ハダカ族]
服を脱いだ状態。誰もが、服を脱いだらハダカ族。
[ダークマターのアトリエ]
錬金術の力を得たソフィーが、方法はないまんま錬金術をしまくった時期。ダークマターしか出来上がらなかった、釜爆発の日々。