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錬金術のアトリエ 44
ナザルスさんが落ちて、床が抜けた古い部屋を出ると、古い廊下ではなく、アトリエへの道となっていた。
妖精の道標……
相変わらず凄い……
そして少し赤い太陽の照らす道を通って、アトリエへと帰る。
蕾の日の夕方。
「はぁ~……安心するなぁ、この場所」
ソフィーは安堵する。
とんでもないお化け屋敷に冒険してしまったものだけど、ここで解放された気分になる。
そしてコンテナの外に、持って来た素材達を運び入れて行き、空の錬金荷車2号と、フリッツさん、ハロルさん、レオンさん、ジュリオさんは帰って行く。
カワニレの木の場所で、オスカーは待ち、ソフィーとコルちゃん、モニカとプラフタでコンテナの中に素材をしまう。
「ん?なんか番人ぷにちゃんが更に増えてるような……」
コンテナの中で、ソフィーはふと思う。
「うわあぁぁ!ちょっと!天井!」
上を指すモニカ。
天井を見ると、番人ぷにちゃん達が天井一面に張り付いてぷにぷにしてる。
「うわあぁぁ!」
「なんと!」
「これは!」
ソフィーとプラフタ、コルちゃんも驚く。
こんな広大な天井を埋めているのだから、とんでもない数なのだ。
「ええ!?これって……結構前からこうだったの?」
ソフィーは棚の番人ぷにちゃん達に聞いてみる。
「いえいえ、錬金術士殿。つい先日、こうなりました」
番人ぷにちゃん隊長が答えた。
「この場所での調合もあるし、もっと大きい調合の予感もしたからね。ど~んと増えておいたよ」
番人ぷにちゃんも答える。
今のぷにちゃんは女の子の人格みたいだ。
そして服を脱げ脱げダンスしてる。
今コンテナに入れた素材もぺたぺたしてるし。
「ソフィーさん、ここでも調合してるですか?」
コルちゃんは、脱いだ服を番人ぷにちゃん達に渡しながらソフィーに尋ねる。
「あはは……ついこの前から、ね」
ソフィーは指を絡めて笑う。
ともあれ4人は、ハダカ族になってぷにちゃんの部屋へ行く。
「お帰り~。時間はあと114時間あるよ」
今日もご機嫌、とんでもサイズのぷにちゃんが口を開ける。
「いやぁ~……今回は本当に怖かったよぉ~」
ソフィーは頭を掻きながらその口の中に入る。
不安とか悩みなんかも、ぷにちゃんの中なら涼しい風が忘れさせてくれるし。
「ソフィーは怖がり過ぎなんじゃないかしら?」
モニカは言う。
「確かに。特に帰る間際の怖がり方は尋常ではなかったように思います」
コルちゃんもそう言って首を傾げる。
でも、そう話してから繰り広げられた、ソフィーのイメージを見てしまった。
………
フリッツさんも、言っていた。
パンドラの箱の中に入り、仲間を失った……と。
ナザルスさんも、1人でこの封印された寺院の魔物を、どうにかできるくらいの強さを持っている。
でも、そんなナザルスさんの手に負えない程の強敵と戦い、今は1人……
魔物と人間の合間をさまよっていて……
ソフィーも、このまま新しい調合……
新しい調合……
新しい強敵……
と進んだ先に、まるで待ち受ける罠のように、何かいけない場所に踏み込むのかも知れない……
その結果……
左腕から魔物になり、1人でさまようナザルスさんの姿は、そのままソフィーには他人事ではなかった。
そう考えると、プラフタも……
きっと錬金術を進めた末に……
本になり、記憶を失って……
そんな風に思えてならない……
……罠に踏み込めば……
モニカを失い、コルちゃんを失い、オスカーを失って……
ソフィーもたった1人で……
ナザルスさんの姿かも知れないし、プラフタのように、本の姿かも知れない。
フリッツさんは……
でもフリッツさんも1人で、ふらふらとこのキルヘンベルへと来た。
………
「確かに怖いわ………」
モニカは理解する。
ナザルスさんであれフリッツさんであれ、プラフタであれ……
一体何が起きたのかは分からないけれども……
でもモニカもソフィー同様にぷにちゃんの力で、驚異的に強くなったのだ。
……その強さの先にあるもの……
「確かに怖いですね……封印された寺院だって、既にソフィーさんの特性適用が無ければ……とても手に負える場所ではありません」
コルちゃんも考える。
「私も……でもそうですね。1人で色々な採取地に行っていた、とは考えづらいですね。そう……私もナザルスのように……そう考えるのが自然なのかも知れません……」
プラフタも思う。
「ふむ……いつになくシリアスだね?でも、眠るには邪魔だねぇ……吹き飛ばしておく?今、悶々とする?」
ぷにちゃんは尋ねる。
そして時間を止めてゆっくり悶々としてから……
結局は吹き飛ばしてもらって眠る。
起きて、4人でコンテナを出て……
モニカとコルちゃんと共に、ソフィーはカワニレの木の所に居るオスカーの所へと行く。
「じゃあ、また旅は双葉の日で!」
そして帰るモニカとコルちゃんを見送る。
「そうね。そこまでは調合で忙しいみたいだし」
「難解な薬も目指さないとなんですよね」
モニカとコルちゃんは帰って行く。
そしてソフィーはオスカーとアトリエに帰る。
ソフィーの中の、あれだけ怖いイメージも、ぷにちゃんに吹き飛ばしてもらうと、ほとんど戻って来なかった。
「腹減ったなぁ……」
オスカーは肌襦袢で出てきたソフィーの肩に手を乗せる。
「赤いうに、どう食べようか?」
ソフィーはオスカーのお腹を手のひらで叩く。
そうして2人で帰るアトリエ。
ともかく、暖炉の側でオスカーを洗う。
プラフタはぷにちゃんの部屋に残っていて、アトリエには居ない。
「なんかやたら怖がってたから心配したけど、平気そうだな。ソフィー」
まずは服から洗ういつもの流れ。
ソフィーとオスカーでオスカーの服を洗っていく。
「まあね~。ぷにちゃんの部屋で寝ると、寝るのに邪魔なモヤモヤとかウキウキワクワクとか、吹き飛ばしてくれるんだよね。それにかなり長い時間過ごしてるからかなぁ……」
肌襦袢を少し濡らしながら、ソフィーはオスカーのズボンを洗う。
草の汚れがとにかく多い。
「オイラからするとものの10分くらいだから、不思議に思う、ってだけかぁ……」
オスカーが相変わらずのおとぼけボイスで話す。
聞くと安心する声……
「でもね、あたしも危険な場所に突撃しまくってるから、ナザルスさんみたいに手に負えない強力な魔物に出くわすのかな、って考えたんだ」
安心しながらも、ソフィーは不安を話す。
いや、安心したから話せた話なのかも。
「なるほど。封印された寺院も、知らない所への突撃だったもんなぁ」
オスカーはそう話すと、少し手を止めた。
「うん。ナザルスさんも、そんな感じで冒険したのかな、って。そしてプラフタも、フリッツさんも」
ソフィーも手を止めて、オスカーを見る。
「なるほど。そう考えられるなぁ……悪い方に考えてるなんて、ソフィーらしくない、とオイラは思ったけど、これからは慎重さも必要かもだなぁ」
オスカーは泡だらけの手を顎に置いて、遠い目を少し上に向ける。
「なんか、3人で雛鳥の林に冒険してから……全然時間なんて経ってないのに、こんなに強くなってさ、それは嬉しいけど、不思議なんだよね。ぷにちゃんパワーの都合も良すぎるし、夢みたい」
ソフィーはまた、オスカーの洗濯物に手を付ける。
「痩せてたのも、解決したもんなぁ?」
「ダークマターのアトリエは長かったんだけどね?」
「あぁ……それに比べると、トントン拍子過ぎるよなぁ」
そんな話をしつつ、ソフィーもハダカ族になって、自身も泡に濡らしながら、次はオスカーの身体を洗う。
そして、さすがにエロエロする気分ではなくて、夕食を食べると、オスカーは帰って行った。
オスカーが帰って行くと、コンテナからプラフタが出てきた。
「さすがに気分ではありませんでしたか」
ベッドに横になったソフィーに、プラフタは話し掛ける。
新しい錬金術衣装のソフィー。
「まあ、ねぇ……」
ソフィーはベッドから飛び出てる足をぱたぱたさせて、ベッドの天蓋を眺めて呟く。
「邪魔をしないように気を遣ってしまいましたが、やはりマナの柱の中の方が、万能厄除け香のレシピも、記憶を辿るのに良いみたいですね」
プラフタはそう話すと、ソフィーの乗るベッドに座る。
「ナザルスさんを治せるやつ?」
ソフィーは身体を起こし、プラフタを見る。
「まあ、治せる公算はありますが、やってみない事には……」
そしてソフィーとプラフタで万能厄除け香のレシピ構築。その主成分である、万薬のもとのレシピはわからず、なので作れない。
なので、普通に装飾品でのパワーアップを目指す錬金術生活、と方針が決まる。
モノクログラスを更にハイクオリティーにする為、雪花水晶の作成6時間。
これを仕込む。
「寝たばっかりだからなぁ……夜なのに眠れないよぉ……」
ソフィーがボヤく。
そして、長い錬金術生活が始まる。
………
「ふむ……今日は遊びに出るか……」
所は変わり、時計屋。
ハロルが遊びに行く服を着る。
少し破れたふくらはぎまでのパンツ、腹を見せる短いシャツ。それに帽子と短いマント。
旅の吟遊詩人をイメージした服装。
それに装飾品がチャラつく。
旅に出ていたのは双葉の日、蕾の日。
それも蕾の日の夕方には帰って来たものだから、時間もある。
「あら、飲みに行くのかしら?」
アメリアが尋ねる。
アメリアは今、身体を洗ったりした後なので、白い短パンにそれを隠すくらいの長いシャツ。
こちらはあっさりスッキリなスタイル。
「酒と、地下室が取れれば地下室だ」
ハロルはニヤリと笑う。
ラーメル宿が持つ秘密の地下室、これの常連の1人がハロルだ。
商売の女の子を連れては、欲望を吐き出してきたそうで、今はアメリアがそこに行っている。
「もう、じっとしていられないんだから……」
アメリアもいそいそと準備をする。
何もかも吐き出させられるハロルの責めに、クセになっている感じがあって……
「お前も好きだな?だがまずは腹ごしらえだがな」
ハロルは怪しい笑みを浮かべる。
その向けられた笑顔に、アメリアはきゅんと来て胸を押さえた。
そして2人は裏ストリート、ラーメル宿へ。
ガラの悪そうな冒険者連中も、ここ最近で随分増えた。
「ローンは空いてるか?」
ラーメル宿にそう尋ねる。地下室を指す合言葉。
「空いてるよ。今は夕食で外してるがね。ハロルはこれから夕食かい?もう済ませたのかい?」
ラーメル宿の受付のオヤジが応える。
「これからだ。じゃあ、いつもの屋台か、その隣に居る」
「伝えて、向かわせるよ」
ラーメル宿も混む程に、賑わっている。
そんな人々を縫って、ハロルは出ていく。
「ソレオマール入荷あと2つだよ~!早いモン勝ち1000コールだ!」
ガラの悪そうな冒険者で賑わう屋台。
ハロルとアメリアは空いてる席に座る。
「ローンも食うだろう多分。ソレオマール、こっちだ」
ハロルは手を上げる。
「あいよ!うおぉ……ハロルか……」
屋台のオヤジは近づき、ソレオマールが小物であると明かす。
「どんぐらいだ?」
ハロルは尋ねる。
「こんなもんよ」
オヤジは両手で示す。
大エビ、ソレオマールとしてはやたら小さい。
「まあ、それでいい。ソレオマールと煮物だな。それとラーメル酒」
「あたしも、ラーメル酒ね」
注文をして座って待つ。
「あのオヤジさん、あなたに怯えてるんじゃない?」
アメリアが微笑む。
「随分と暴れたからな。今回は罪滅ぼしだ」
ハロルはそう答える。
あまり待つ事もなく、ラーメル酒と煮物が出てきた。
喧騒の中、2人の時間が流れる。
こんがり焼けたソレオマールが出て来た頃、ハロルとアメリアは2杯目の酒を頼む。
「お待たせしました~」
その時に、ローンが来た。地下室の案内人であり、身体を売る女で、22歳。
あまり客に受けない女だ。
顔がやたら長い。
「おお。お前も食え。ソレオマールとはいえ、小物だけどな。酒も頼んでいいぞ」
ローンはラーメル酒を注文する。
地下室の案内人となったのも、顔の長い客ウケのしない女を、抱き合わせで売りつける為だった。
屋台でゆっくりと食事をして、お楽しみの地下室へと行く。
これがスラム住宅の中にあり、そのボロ屋だけ、深い地下室がある。
アメリアの服を脱がすのはローンの役目。
女を縛ってハジケさせる、この場所の番人だ。
「ふ~ん……今日も綺麗になってるな」
初日にローンを殴り倒したハロルが呟く。
地下室の番人のクセにあまりにも地下室が汚く、思い知らせてやったのだが、1年前の話だ。
「まあ……客もないので……」
ローンは小さな声で言う。
そして繊維布、革のベルト、ふわふわクロース、ロープと鞄から道具を取り出す。
「さて、今日もハジケ飛んで貰うとするか、アメリア」
服を脱がされているアメリアに、ハロルが微笑む。
アメリアは頬を染めて俯いた。
………
オシャレ貴族な風体のハロルにアタックしたのは、レオンと名乗るアメリアだった。
面倒臭そうな顔をしていたものの、酒を飲みに行き、色々と話す。
そうして話して判った事は、アメリアが、嘘が下手だと言う事だった。
「お前と付き合うのは構わない。悪い奴じゃなさそうだからな。だが、嘘と付き合うのは気持ちが悪い。見え透いた嘘だからな」
ハロルはそう言った。
レオンという名前が偽名であることも、ほんの少し話しただけで、ハロルは嗅ぎ付けた。
恐ろしく嘘に敏感なのか。
アメリア・レオンマイヤーと名乗ると、ハロルは納得をした。
誰に広める訳でもないし、嘘も尊重する、とハロルは約束してくれて、人前ではアメリアとは呼ばないと言った。
旅人だから、と時計屋で寝かせて貰える事になった。
時計屋……
だけどハロルは銃を作る。
あまり器用な人ではないみたいで、銃も粗末な物だった。
そして打ち明けてはみたものの、ハロルはアメリア・レオンマイヤーのブランドも、マナの柱の事も知らなかった。
程なくして、アメリアからベッドに誘うと、乗って来た。
が、それはアメリアが満足出来る程には、ハジケたり出来ないものだった。
「俺の専門は地下室だからな。悪い気はしないが、ここで、となるとあまり気乗りはしない」
ハロルはそう言って、程々で目を閉じる。
「地下室?ここに地下室があるの?」
アメリアは尋ねる。
「ない。ラーメル宿が持つ部屋だな。俺も男だし、裏ストリートの常連だからな。女は一晩買う専門だ。その時に地下室を使う」
目を閉じたまま、ハロルは話す。
「そ、そうなの……」
アメリアは言葉に困る。
「どうしても満足するまでハジケたい、と言うなら今度、地下室に案内しようか。そうでもないなら、こんな感じだ」
目を閉じたまま、ハロルはそう話した。
あくまで、ハロルが引きずり込んだりはしないみたいだった。
それからの日々も、言葉は交わす。
そんな中にマナの柱の話になった。
「ついさっき殴られたんだが、全く身体に影響が無かった……これがマナの柱の力か?」
ホルストの裏酒場で、冒険者と出て行ったハロルが戻り、そう言った。
「え……?マナの柱の力って事かしら……?」
アメリアは驚く。
マナの柱の神殿の外でも、この力は男の人に移る、という事を始めて知ったからだ。
「どういう事だ?」
「ここでは話せないわ……」
アメリアは喧騒の酒場を見る。
そして時計屋に戻り、アメリアは話す。
マナの神殿、と呼ばれる場所で力を得る事が出来た事を。
ただ、そのマナの神殿と呼ばれる場所は、薄汚い、神父やら神官やら、そういう役職をもつ男達に守られていた。
仕立屋として社交界に入り、無能な男共を内心蔑んで生きてきて……
その先で、マナの神殿に入る許可を得る事が出来た。
1人の神官に取り入って、結婚までして、ようやく……
それまで2年程かかった。まだ19歳の頃……
そしてマナの柱の力を得る為の契約をする。
それは1年の間、自分を神殿に捧げる事だった。
結婚相手は没落し、自分を捧げるのだから離婚となった。
アメリアの1人娘は、そこに仕えていた、人の良い商人が引き受けてくれたそうだ。
それからの1年……
今まで蔑んでいた神父神官、何らかの色々な肩書きのある男共に、慰み者となって生きて……
それが終わると放逐された。
健康であったし、中々の金を受けた。
そして、マナの柱の力を得た。
契約は、ちゃんと守られた訳だ。
アダレットへと流れて来て、仕立屋として働き、アダレット服飾品評会で優勝となり、レオンマイヤーブランドとして店を持つに至り……
でもその生活になぜか満足出来ず、こうして1人旅としてキルヘンベルへと流れ着いた。
今、24歳になった。
……そう話した。
「マナの柱の力ってのは、身体を重ねた男に移る……それで俺は殴られても痛くなかった訳か」
暗い時計屋の寝室。
一通り話を聞いたハロルは呟く。
「実は子持ちだったなんて、ガッカリした?」
「そんな所にこだわりはないな。だが波乱に富んだ人生で、俺なんて田舎で暴れてるだけだからな……恵まれているというのも考え物だ」
ベッドで寝る2人。
ハロルはアメリアの肩を撫でる。
どこからともなく訪れたアメリアは、すぐに懐いた猫のように、すっかり寝床を共にするようになった。
「波乱……ねぇ……」
アメリアは枕に頭を沈めて、ため息を吐いた。
「お前は力を勝ち取った訳だからな。俺は、気付いたら貰っていた、というだけの話だ」
「ふふん、それがキッカケで、貴方も何かを勝ち取らないといけなくなるんじゃないかしら?」
アメリアは目を閉じる。
「そうだな。ともかく、俺もお前に興味が出てきたな。明日、是非とも地下室に連れて行きたくなった」
ハロルは身体を起こし、アメリアの胸に手を置いた。
「それは……どういう事かしら?」
アメリアは薄く目を開き、置かれた手に、手を重ねた。
「お前は、地下室に行きたくはないか?1年も慰み者になったのなら、ハジケ足りない……そう思っているんじゃないか?」
ハロルは少し乳房を握る。
そしてアメリアの頭のすぐ横に、顔から沈める。
「それは……思っているけれど……」
アメリアは目を閉じる。
「どうせ今じゃない。今は寝るだけだ」
ハロルはそう言って寝転がり、ベッドに身体を沈める。
「さて、どうする?」
後日、ハロルは朝の1番に時計屋を閉めながら聞く。
まだ仕立屋も始めてない、コル露店も無い頃……
特にやらないといけない事も無い。
「お手並み、拝見しようかしら?」
アメリアは笑う。
元々そのつもりで、ハロルもアメリアも裏ストリート行きの服装だった。
そして地下室案内人、ローンと共に朝食を取り、地下室へと向かう道を行く。
「この子は?」
「助手だ。身体を重ねて俺が満足する……そういう事じゃないからな。それにこうして地下室に連れ込む女は、お前でもう……何十人目かだ」
ハロルは答える。
地下室の常連、という話であり、なんと、女から金を取ってやる事の方が多いのだ、とローンは話した。
「そ、そんな人なの?あなた……」
アメリアは怯む。
「俺がそんな紳士に見えたのか?」
ハロルは微笑んで見せる。
そして、地下室を持つスラムの民家へと来た。
民家には貧しい服装のオヤジが寝ている。
そして酒臭い。
これも、この地下室をカムフラージュする為の、ここに住むオヤジらしい。
……手が込んでいる。
「あなたの他にも使う人が居るの?」
「……さあな。それは詮索するべき話でもない」
3人は地下室へと降りて行く。
深い地下室に入ると色々な道具があり、その為の場所だと判る。
「さて、始めようか?アメリア」
ハロルは微笑む。
「んっ……」
ハダカになり、アメリアは椅子に座る。
両方の手首に繊維布、革のベルト、小さな毛布と巻いて、太い紐の輪を掛ける。
その金具からは縄となっていて、天井に掛ける。
まずは両手を広げるように……
ハロルはアメリアの乳首に銀の糸を巻く。
その糸の感覚に、アメリアは少し声を立てた。
「アメリア、お前は1年もの間、慰み者になったと言ったな……こうして縛られる事もあったんじゃないか?」
ハロルは手際よく乳首に糸を巻き、ほんの小さな金具で縛る。
それを左右に掛けながら、そう尋ねる。
「まあ……そうね……」
アメリアは答える。
もっと豪華な部屋で、縄の跡がつくぐらいに縛られて……
そんな事を思い出す。
「人に話したくない事が沢山ありそうだ……秘密があればあるほど、お前はそれを吐いた時に気持ち良くなれる」
ハロルはそう言って、乳首の糸をもみ込む。
「んっ……これっ……」
その感覚にアメリアは声を立てる。
肩が震えて、途端に息が荒くなる。
糸が食い込む感覚は優しくて、それでいてハロルの指遣い、力加減が上手いのか、目を細めて口を開く。
「敏感だな、アメリア……」
ハロルが言う。
アメリアは身体を捩らせるように動き、広げて繋がれた縄を引く。
ローンはアメリアの足首にも同じベルトを掛ける。
少し開くように、床に固定されていく。
「あなた……こんな上手いなんて……」
アメリアは顔を上げる。
ハロルは平然とした、でも真剣な顔つきでアメリアを見ていた。
「女が金を払う程だ。技術は磨いているさ。何もかも吐き出して、気持ち良くなれば、美容にもいいらしい。俺はそうして吐き出す役目、ここはその為の場所だ」
ハロルはそう言って、乳房に手のひらを広げる。
乳首の糸は食い込んだまま、乳房のマッサージをされると、アメリアはまた顔を下げて口を開く。
唇の端から涎が垂れた。
「思ったよりも溜まってるみたいだな。こうされる事を知ってる身体なら、尚更か」
ハロルの手のひらは乳房に広がり、背中に、肩に游ぐ。
そうされる手のひらの熱に、アメリアは身体を捩らせ、震わせる。
……乳首に食い込んだままの糸が、あっさりとアメリアを降参させる。
「うっ……はぁんっ……はっ……」
「しかし、可愛いな……1年の慰み者生活の時も、さぞや人気だったろう?代わる代わる男に抱かれて遊ばれて……」
身体を揺らし、震わすアメリアにハロルが尋ねる。
耳許で、落ち着いた声……
「あ……あっ……」
耳許の声に、アメリアは顔を赤くする。
ローンはそんなアメリアの腰を掴み、両手を繋ぐ縄を引き、立つように促す。
「代わる代わる抱かれた日々を、お前の身体は忘れてやしないんだな?だからここに来たんだ……」
アメリアは立ち上がり、ハロルは背中をさする。
腰に游ぎ、お尻の割れ目に指を游がせ、背中に戻る。
「そっ……あっ!……んうぅっ!……」
不意にワレメを撫でられて、アメリアはびくん、びくん、と身体を震わせてハジケる。
その手はすぐに引っ込み、お尻を撫でる。
「で?どうだ?代わる代わる遊ばれて、こうしてハジケ回ったんじゃないのか?」
肩を、頬を撫でるハロルが尋ねる。
「こ……こんなもんじゃなかったわ……」
そんなハロルに、アメリアは言う。
「こちらも、心得てる。ちゃんと何もかも吐き出させてやれるように、な」
ハロルは微笑み、アメリアに唇を寄せる。
そして唇を求め合うようなキスをする。
「あなたも、こうして色んな女の子と?」
唇が離れて、アメリアは言う。
「キスの話か?そりゃそうだろ。だがアメリア、お前はいい味がしたな」
お互いの髪が触れ合う距離で、ハロルは言う。
いつもの声に、アメリアは少し安心する。
「嘘よ」
アメリアは微笑み、明るい声で言った。
「どうだろうな」
ハロルも微笑み、顔が離れていく。
………
「さて、もう何度目かな……」
ハロルはアメリアの乳首に銀の糸を巻きつけ、そう言った。
「あたしも好きよね……呆れちゃうわ」
アメリアはちろっ、と舌を出して見せる。
……コル助が露店を開く前にこうして……
コル助が露店を開いて……
ソフィーのパーティーに参加するようになって……
レオンの仕立屋を開いて……
錬金荷車1号2号を作って……
気が乗った時に、こうしてこの地下室へと来る。
その度に色々な事を白状した。
言ってはいけないだろう事を白状する度に、より強く……
より激しくハジケ飛んでしまえる。
1年、代わる代わる色々な男にオモチャにされた時よりも、優しく激しく狂わせて……
何もかも吐き出させてくれる。
「こうする度に、アメリア……俺もお前に吸い込まれていくようだ……お互い様だな」
そして地下室の情事は続く……
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[錬金荷車2号]
2階建て荷車。荷物も沢山積める。そろそろ空間を誤魔化す錬金術を施して、更に沢山積めたり小型化したりしたいと、企む所。
[カワニレの木]
ソフィーのアトリエの側にある木。オスカーが待ち時間によく話す木。
[番人ぷにちゃん達]
遂に天井に張り付くようになっていたり。その天井も高い。
[番人ぷにちゃん隊長]
見た目、番人ぷにちゃんと何も変わらないので、見分けるのは不可能。
[ぷにちゃん]
更にでっかくなった!もはやアトリエよりも、ぷにちゃんの部屋の方がでかい。天井も高いし。
[肌襦袢]
オシャレオリエンタルなパジャマ。エロエロしやすくもある。
[ハロル×アメリア]
ゲームでも、2人の配置はやたら近い。なお、レオンの身の上話は、ゲーム上では全く全然そんな設定はない。「アダレットの服飾品評会で優勝」「社交界に触れる生活」というのだけは、ゲームでも語られる。
[秘密の地下室]
ラーメル宿が持つ貸部屋。その場所はラーメル宿から離れた民家の地下室。離れた場所に点在する。ハードなエロエロをする需要にも応えている。
[ローン]
1番地下室の案内人。客受けしない容姿の女。
[ソレオマール]
真っ赤ガニに似たザリガニ。こんがり焼くと凄く美味しい高級食材。
[ラーメル酒]
ビールとウィスキーの中間みたいな酒。アルコールの強いビール、といった感じ。