☆
錬金術のアトリエ 49
そして第2回の旅に出る。
もう帰りは果実の日になるか、種の日になってしまうか……
今回は西へと向かう道。
新しい錬金術の手がかりがあると言う、淀の小島へと向かう。
まずはぷにちゃんの所で眠って元気なソフィー、コルちゃんとモニカ、プラフタが錬金荷車2号を固めて歩く。
ジュリオさんとハロルさん、レオンさん、フリッツさんは荷車で眠る。
オスカーは相変わらず、荷車から離れて植物たちに挨拶回りして歩く。
疲れ知らずの化け物だ。
朝9時には恵みの森を通過、15時には月と太陽の原野を通過……その頃にはジュリオさんとハロルさんが完全復活していて、コルちゃんが荷車で眠る。
「オスカー……本当にどこまでも元気だよねぇ……」
ソフィーはジュリオさんに呟く。
トイレと言えば穴を掘って準備し、野営と言ったら料理をする。
移動となったら植物に挨拶回りして、変なルートを急ぎ足で歩く。
そんなオスカーが、旅立ちから今まで全く止まらない。
「確かに。彼のそういう所は驚異的だね。しかも目がギラギラしてるからね」
ジュリオさんも頷く。
「本当に、なんであんな元気なのかな~……」
ソフィーは口許に指を置いて呟く。
「オマエも大概、元気だけどな。そこから力を覚醒したから……いっそ壊れて止まらなくなったんじゃないか?」
すぐ後ろで、ハロルさんがそう話した。
「……あれ?そうかも?」
ソフィーは首を傾げる。
「冗談だ。あの倅が、そういう星の元に産まれてるんだろうな」
ハロルさんはそう言うと、離れて行った。
ハロルさんも、そんなに寝ないのだけど……
「大変だソフィー!こっちに来てくれ!」
月と太陽の原野を通過したくらいで、オスカーが走って来た。
「どうしたのオスカー?」
ソフィーもモニカも、オスカーを見る。
しかし、どこまで元気なんだ……
「赤い蛇の草の群れがあったんだ!赤い蛇の草温泉、ってのはこの場所かも知れないぞ!」
オスカーが言って、そちらへと行く。
蛇の草を掻き分けて進み、赤い蛇の草の群れは、街道を外れたらすぐに出て来た。
赤い蛇の草の群れも、掻き分けて進む。
とにかく密度が凄いものだから、掻き分けるのに苦労する。
「温かい風が今……」
皆で風上を見る。赤い蛇の草の群れしか見えないけれど、そちらへと進む事にした。
「この地方は、温泉が多いのか?」
ハロルさんが呟く。
「一応、本に残ってる物であと6つあるよ。近くに来たら探してみるけどな」
オスカーが答える。
いつも勉強してるだけある。
そして温かい風の方へ行くと、赤い蛇の草の群れの中、地面に穴が空いていた。
「温かい風がここから来てるわね……あたしの水着、出番が多いわねぇ……」
レオンさんがにんまりして、言う。
そして錬金荷車2号と共に入ると、キラキラした壁が辺りに多く埋まっていて顔を覗かせていて、夜でも明るい場所みたいな……
「ほぇ~……ん?」
壁に埋まる綺麗な宝石を眺めていたソフィーは、ふと足元を見る。
凄い小さな赤プニの群れが、1列になってどこかへ向かっている。
「赤プニの赤ちゃんとか?」
レオンさんもその行列を眺める。
ジュリオさんもハロルさんも、その行列を眺めて、みんなして踏まないように歩く。
「アリみたいだな……」
ハロルさんが呟く。
確かに、アリっぽい行列。
壁づたいに続いてるけど、時折壁から離れてる行列……
そうして奥へ進むと、温泉と、巨大な赤プニが居た。
その回りにも大きい赤プニと、いつもの赤プニ、少し小さな赤プニが、温泉に浮かんでいたり泳いでいたりする。
「赤プニ天国だね……」
ソフィーは呟く。
巨大赤プニは、いつもの何を考えているかわからない笑顔を、ソフィー達に向けている。
「温泉です!1番乗りです!」
いつの間にやら着替えていたコルちゃんが、荷車2階から飛び出す。
新しい、青いフリフリの水玉の水着。
そしてソフィー達が止める間もなく、温泉に入った。
「警戒心というものが欠けているな……しかし」
フリッツさんが構えて見守る。
赤プニ達の大部分が逃げて、少しだけがコルちゃんに寄って来る。
「あはははっ!あひゃひゃっ!これはっ!無理です!ひゃ~っ!」
赤プニを全身にくっ付けて、コルちゃんが出て来た。
みんなして、コルちゃんにくっついた赤プニを剥がす。
小さい赤プニがやたらくっついてる。
「これじゃ入れないわねぇ……」
血とか吸ってるんじゃないかと思ったけれど、そんな事はないみたいだ。
そしてお湯はぬるいらしい。
仕方ないので諦めて、ソフィー達は先へと進む事に。
そして西へ西へと目的地に向かう。
せせらぎの忘れ物、という不気味な遺跡群を通過して、淀の小島に到着したのは、夜中の2時。
もう果実の日だ。
涼しい風が吹く……
そんな感慨に耽る場所……
凶暴な魔獣に襲われて、戦闘だらけになった。
ジュリオさんが生き生きしてる。
結局、銀いもパワーの回復の方が強かったりする。
そしてそこの近くの山に造られた洞窟……
願い無き供物台へと入る。
「遠い昔だけどね、ここに錬金術士が住んでいたようで、幾つか書物も残っているらしくてね……」
ジュリオさんがそう話す。
錬金術製と思われる照明が、今もこの洞窟の中を照らしている。
「なんか、錬金術士が居たとしても……不気味な感じの錬金術士が居たのかしらね?」
モニカもそう話す。
お化けの魔物がやたら襲いかかってくる場所。
だけどやはり、銀いもパワーの回復の方が強かったりする。
「錬金術士……そうだね。僕が会ってきた錬金術士は、男の人でどこか気難しい人が多かったかな。ソフィーみたいに、目をキラキラさせている女の子、というのは初めて会ったね」
ジュリオさんがそう話す。
「ん?錬金術士と言ったら女の子、じゃないの?」
ソフィーが反応した。
「僕が出会った錬金術士は、ナザルスさんよりも気難しい感じの男の人に、縁があったかな」
ジュリオさんは話す。
ナザルスさん……
随分と時間が経ってしまったけれど、未だ万薬のもとが作れていない。
「あ……プラフタ、ナザルスさん大丈夫かな?」
ソフィーはプラフタに聞いてみる。
「あの地下に何があるかも分からないので、分かりかねますが、彼よりも強烈な魔物が居る場合、よろしくないかと」
プラフタは答える。
「じゃあ、大丈夫かな。ナザルスさんは1人で竜も倒す猛者だからね」
ジュリオさんが言う。
……そんなとんでもない人だったのか……
「ここが行き止まり……?」
一行は突き当たりに進む。
探してみると、1冊の本があった。
特に錬金術っぽい物……
釜とか箱とか机とか棚とか……
まるで無かったけれど……
ともかく、行き止まりなので帰る事にする。
今回はこれが2回目だから、もう果実の日になってしまっていたりするし。
勿論、妖精の道標を高く持ち上げて……
……そして、アトリエ前。
お昼も過ぎている時間のキルヘンベル。
「どうだい?土いもの凄いのが採れているけど、ここでお昼にするかい?」
オスカーが言う。
錬金荷車2号には、オスカーがいつの間にやら採った土いも、赤い蛇の草、蛇の草、キノコ、香り花に野良白玉ニンニク、野良黒玉ニンニク……
と、いつも通り揃っていたりする。
「帰って身体を洗ったら、ひと寝入りしたい所だからな……食べておくか」
「そうね。これだけ役者が揃ってるんじゃ、食べないと勿体ないわ」
ハロルさんとレオンさんが賛同して、みんなで遅い昼食になる。
ちょうどウメさんも居たので、ウメさんも一緒に昼食を囲んだ。
昼食が終わり、ソフィーとプラフタ、モニカとコルちゃんでコンテナへと入る。
今回の採取品を入れてる時に、青プニになったすーぱーぷにを思い出した。
青プニ君は、番人ぷにちゃんにぺたぺたされながら、またすーぱーぷにに戻っているみたいで、棚でぷるんぷるんしてる。
「ん~……プニ助と名付けようかなぁ……」
ソフィーが、すーぱーぷにをぺたぺたする。
「え~?プニ君、がいいんじゃないかしら?」
モニカも、すーぱーぷにをぺたぺたする。
「魔物を置いて行くとは、錬金術士殿……思いもしませんでしたな」
番人ぷにちゃん隊長が、ぺたぺたしながら言う。
「砕けたマナの柱みたいだね。記憶はほとんど残ってないけど、おかげで色々と勉強になってるよ」
番人ぷにちゃん達も、ぺたぺたしながら話す。
今のぷにちゃんは女の子の人格のようで。
「砕けたマナの柱……なのです?」
コルちゃんは、そんなぺたぺた集団をプラフタと眺めながら、服を脱ぐ。
ぺたぺた集団とは別に、服を脱げ脱げ集団も居たり。
「プニ助、持ってく~」
ハダカ族ソフィーが、すーぱーぷにを抱える。
「ただでさえ覚束ない記憶が、蒸発しそうだから持って来ないでね。コンテナもあんま良くない感じだからなぁ……」
番人ぷにちゃんに言われて、やっぱり棚に置いておく事にした。
すーぱーぷにには、ほんの少しの記憶が残っていて、その記憶すら、ぷにちゃんの中に入ってしまうと飛んでしまうみたいだ。
ぷにちゃんの部屋に行って綺麗にして、モニカとコルちゃんと別れて……
そして錬金術生活!
願い無き供物台から持って帰った本から、精霊の涙とガイストアイゼンのレシピを構築出来た。
「プニ助~♪」
ソフィーが呼ぶと、すーぱーぷにがぴょん、と跳ねて応える。
そしてぷるんぷるんしている。
「懐いたものですね」
そんなソフィーを眺めてプラフタが感心する。
滅びて、砕けてしまったマナの柱の欠片が、このすーぱーぷになんだと言う。
「おお!バッチリ懐いてるじゃないか。でも大丈夫なのかい?すーぱーぷには、結構暴れたら手が付けられないぞ?」
夜にオスカーが来て、ソフィーに懐いてるプニ助を見て、言う。
「へへ~♪大丈夫。なんかね、このプニ助はマナの柱の欠片なんだって。それで~……別のマナの柱の力を獲得出来る核の部分みたい」
暖炉のテーブルに乗せたプニ助に頬ずりしながら、ソフィーは答える。
「ん?よく分からないけど、それって大丈夫なのか?」
オスカーはプラフタを見る。
「こほん、もはやソフィーが夢中ですので……」
プラフタは答える。
「まあ、そこだよなぁ……ともかく、プニ助の分も夕食作るかな」
「そう来なくっちゃ!」
そして3人とプニ助で夕食になった。
プニ助は口のすぐ横から、にょきにょき生やした猫のヒゲみたいな6本の触手?
で、器を持って口に運んだり、スプーンを掴んで口に運んだり……
ちゃんと器用に食べる。
「おお~!プニプニって……そうやって食べてたんだな……」
オスカーがやたら注目していた。
そしてプニ助、ネコ舌みたいで、めっちゃふーふーしてた。
そしてオスカーを洗って、イチャイチャして眠る。
オスカーがすぐに寝てしまい、ソフィーは調合とか始めたり。
むしろプニ助とイチャイチャして眠った。
「種の日!お祈り!人形劇!」
種の日の朝3時。
オスカーとソフィーが起き出して、アトリエを出る。
アトリエを出ないとプラフタが出て来れないから、とそうなった。
晴れたキルヘンベル。
「さすがにこの時間は早くないか?」
「まあ、もうちょっとゆっくりしてから行くんだけどね」
肌襦袢のソフィーがへへへ、と笑う。
昨日はオスカーがすぐに眠ったので、いっそ調合していたり。
オスカー爆睡すると起きないし。
「また、特製バスケット作って行くよ。今日はコル助のリクエストで、肉々サンドになるけどな」
そう言ってオスカーは帰って行く。
ソフィーもアトリエに戻る。
プニ助も眠ったままで、プラフタもまだ起きてなかったっぽい。
そして朝の5時、プニ助とソフィーとプラフタはアトリエを出る。
お祈りの時間と噴水端会議、そして人形劇!
今回、噴水端会議はちょっと珍しいメンバーで集まった。
ヤーペッツさんにエルノアさん、エリーゼお姉ちゃんとコルちゃん、ジュリオさん、ホルストさん……
オスカーとモニカ、ロジーさんと仲間の冒険者の人まで。
今までで1番、ソフィーの所に大人数で集まった感じに、更にパメラとレオンさんが加わった。
プニ助にちょっと驚くも、なんか馴染んだ。
そして、皆での話は……
獣たちの寄合所から、北へと草を掻き分けて行くと、山に阻まれる。
その山に洞窟があって、温泉があるのだという話なのだ。
キルヘンベル温泉計画もあって、是非とも商隊+エリーゼお姉ちゃんとホルストさん……
これの護衛をソフィーのパーティーと、ロジーさんのパーティーに頼みたい、との話だった。
勿論、そんなのソフィーとしては大歓迎なんだけど、ジュリオさんが洞窟の場所や規模、準備する物なんかを話して、少し緊張感が走る。
ソフィーのパーティーには格下の相手……
寄合所の獣も、商人の人やエリーゼお姉ちゃんにとっては一撃が命取りになる。
そして噴水端会議は解散して、ソフィーはジュリオさんとモニカと、北の人形劇へと向かう。
「でも魔物なのに、こんなに懐くなんて驚いたよ」
人形劇の席に座り、プニ助を見てジュリオさんが言う。
「えへへ~、もう一緒に寝た仲なんですよ~……もう可愛いですよねぇ~……プニ助!」
ソフィーはジュリオさんの間に鎮座した、プニ助をなでなでしながら言う。
「さて、今度の双葉の日に、温泉計画となった訳だけれど……ソフィーがそんな感じで大丈夫かな?」
ジュリオさんはデレデレするソフィーを見て、困った顔をする。
「大丈夫です!バッチリ切り替えますから!……と言ってしまいたい所なんですけれど……不安です……」
ソフィーはガッツポーズを取り、そのガッツポーズを崩してうなだれる。
「一応、決まってはいないからね。これからフリッツさんに相談しないといけないだろうし」
ジュリオさんはそう言って、空を見る。
「なんかこういう時、ソフィーってダメだった時の事ばっかり考えちゃうのよね」
ソフィーの隣に座ったモニカが言う。
ソフィーは頷く。
「はぁ……今から帰って何か作らないとかなぁ……」
ソフィーは遠い目をして呟く。
何故か、プニ助も遠い目をして俯いてた。
「まあ、そう言う気分じゃソフィーは真価を発揮しないのよね。今は人形劇を見てなさい。護衛の詳しい話は、ジュリオさんとフリッツさんと詰めておくから!」
モニカは微笑んでそう話すと、ソフィー越しに、プニ助に手を伸ばす。
「え?いいの?」
ソフィーとプニ助は、モニカを見る。
「なんで、すーぱーぷにとリンクしてるのよ!護衛は、私とジュリオ、ロジーさんとフリッツさんの専門なんだから、任せておきなさいって事よ!大体、頼られてるのはソフィーじゃなくて、その辺りなんだからね!」
モニカはそう言うと座席を立ち、ジュリオさんとどこかへ歩いて行った。
そしてソフィーとプニ助は、人形劇が始まると夢中になり、お決まりのお昼。
噴水の所でコルちゃんとテスさんとプラフタで食べる。
お決まりの種の日ライフ。
午後は、プニ助と子供達と、追いかけっことか、かくれんぼとかしてた。
「あ!夕方じゃん!」
近くの森で、木の上の子供達を捕まえながら、ソフィーは、ほんのり赤くなった空を見て気づいた。
教会に子供達と戻ると、プラフタとコルちゃんが待っていて、モニカとジュリオさん、パメラも居たり。
「えへへ……木のてっぺんに隠れてるもんだから探しちゃって……」
ソフィーは頭を掻く。
「なんか、あの頃と変わらないのね」
モニカはそう言って優しく微笑む。
「ソフィーは、なんかそんな感じがいいね」
ジュリオさんも微笑む。
「え?何?何かあったの?」
戸惑うソフィー。
そしてなんだかんだ談笑して、ソフィーとプラフタ、コルちゃんはアトリエに向かって歩き出す。
「今日はすっかり遅くなってしまいました」
コルちゃんが空を見て、言う。
もう夜になろうとしてる時間。
「えへへ……なんかプニ助人気から、かくれんぼまでする流れになっちゃいまして……」
ソフィーはごまかし笑いしつつ、今はプラフタが背負う、プニ助を見る。
「確かに、心奪われる可愛さですね。コルネリアも心を奪われてみますか?」
プラフタは背中のプニ助を、コルちゃんに向ける。
コルちゃんもぷに助に背中を向けると、プニ助は飛び移る。
「おおお……なんかひんやりするです……」
コルちゃんも、なんか緩んだ顔をした。
そんな帰り道。
プニ助はアトリエのベッドに置いて、3人でコンテナへと入る。
……ゆっくり眠る時間……
コルちゃんの睡眠時間の都合で、ソフィーとプラフタも眠る事にする。
そして夕食。
コルちゃんも、プニ助が器用に食器を使って食べるのを見て驚いていた。
人形劇の話をしていたら、プニ助が頷いていた。
言葉が分かるみたいだ。それにも驚いた。
コルちゃんが帰り、錬金術生活……
そして旅立ちの朝……
カフェ前に錬金荷車1号と2号が並び、既に商人の方々、冒険者の方々が居た。
「うわぉ……賑やかだねぇ……」
ソフィーも思わず呟く。
「確かに。なんか、これなら大丈夫な感じもありますね」
プラフタも呟く。
しっかりとプニ助も連れて来たので、冒険者の注目の的になった。
「ソフィーは食事をしておいて下さい。私はあまり必要がありませんので」
プラフタに言われて、ソフィーは朝食にありつく事にした。
でも出発は9時みたいで、皆して全然早いだけだった。
ジュリオさんとロジーさん、フリッツさんとモニカを先頭に、足並みを揃えての出発となった。
雛鳥の林の北にも温泉があるらしいけれど、洞窟が崩れて塞がっているそうだ。
なお、やたら猿が居る朝凪のほとりの温泉も、同じ山なんだけど反対側で、結構北にある洞窟。
その際、ソフィーとプラフタはあまり活躍しないように言われて、ソフィーもモニカもプニ助も、錬金荷車1号と2号に乗ってるだけだったりする。
変な噂になると良くない、との話で。
「魔物、居るのねぇ……」
ソフィーの横で、エリーゼお姉ちゃんが呟く。
「そりゃあ、居るよぉ。ジュリオさんが格好いいんだよねぇ……」
その隣で、ソフィーも能天気に呟く。
緑プニを冒険者の人が倒していた。
そんな調子で、危なげなく獣たちの寄合所まで辿り着く。
辿り着くと、ハロルさんが少し遠くに何かを投げた。
トパンッ!
……と音が鳴る。
やたらデカい豚ネズミがわらわらと出てくると、ハロルさんに撃たれて3匹ほど倒れる。
「これで獣は、こっちを食べるだろうさ。行くぞ」
そのまま、獣たちの寄合所……
森を進む。
キメラビーストは見かけないで、プニとマンドラゴラが時折、遠くに居るくらいで、目的の洞窟に到着した。
「おお~……キメラビースト居なかったね」
ソフィーが錬金荷車1号を降りる。
エリーゼお姉ちゃんも降りて辺りを見回した。
もうすぐ夕方。
そんな時間。
「こんなに遠い所だったのね。話には聞いていたんだけど、みんな歩き通しで大丈夫なのかしら?」
エリーゼお姉ちゃんが周りの冒険者の方々、フリッツさんなんかを見る。
「いつも歩いてますからね」
「鍛え方が違うからな」
「歩いてるだけみたいなもんだから、ラクなもんだがな」
冒険者の方々は、それぞれに答える。
「さて、噂の通りいい匂いですなぁ……」
錬金荷車2号から降りたヤーペッツさんも、洞窟を眺めて呟く。
あの、タマゴの腐った臭いがする。
「初めて来たけど、朝凪のほとり温泉の匂いだね~……お猿さんも居たりするのかな~?」
ソフィーは能天気に話す。
まず洞窟へは、フリッツさんとオスカー、レオンさんで入って行った。
温泉は朝凪のほとりの温泉と同じだけど、朝凪のほとりの温泉よりも、少し深いらしい。
そしてお猿さんは居ないんだけど、猫とタヌキ、亀が居るらしい。
安全ぽい、という事で、まずはレオンさんとモニカを護衛に女の子チームで温泉に入る。
「うわぉ!カメ……デカい!」
ソフィーは温泉の脇に居る亀に近寄る。
亀は欠伸をして、また口を閉じた。確かに害は無さそうだ。
「おおお……ぽんぽこぽんぽこです」
コルちゃんは太ったでっかいタヌキを撫でる。
何故かタヌキは寝転がり、お腹も撫でていたり。
しかも他のタヌキ達も寄って来て、コルちゃんにすりすりと身体を寄せた。
「動物って……そうなの!?」
エリーゼお姉ちゃんが、水着に着替えてるモニカを見る。
「本当は違うんでしょうけど、ソフィーが居るとね、ソフィーのマナの柱の能天気パワーに当てられて、能天気になっちゃうみたいなのよ。魔物も、冷静で居る時は能天気になるわね」
モニカがそう話す。
「なんか、凄い力なのね。マナの柱ってひと地域の空気をまるごと変えてしまうらしいから……ひと地域まるごと能天気って事なのかしら?」
エリーゼお姉ちゃんも、レオンさんの用意した水着に着替える。
「それも、なんかどんどんパワーアップして、今じゃプニ助なんて、元々人懐っこくて、ついてきちゃってるんだものね」
モニカはプラフタの側で、タヌキに寄り添ってるすーぱーぷに、プニ助を見る。
相変わらず能天気な笑顔だ。
「何だか、私が思っていた世界とは違う世界……って事なのかしら。ま、まあ……能天気な世界は悪くないけれど……」
エリーゼお姉ちゃんも、水着に着替えて温泉に入る。
レオンさんは、一応槍を持ったまま温泉に入り、プラフタが見張りをしていた。
温泉から出て着替えて……
今度は商人の方々に冒険者の方々が洞窟に入る。
ソフィーだけは動物達を能天気にさせる為、と言う事で洞窟に残った。
洞窟の土と粘土をしこたま錬金荷車1号と2号に乗せて、妖精の道標でキルヘンベルに帰る。
妖精の道標は、コルちゃんの店でも売られているものではあるけれど、ソフィーにしか使えないそうで、売れない高額商品となっているそうだ。
しかも増やすのに苦労するらしい。
あっと言う間にアトリエ前。
朝の5時だった。
土と粘土を採る作業は時間が掛かる……
そしてソフィーのパーティーは、依頼も受けているらしく、更に旅立つ。
商人の方々、冒険者の方々とはお別れとなった。
「ふぅ……キルヘンベルの人が外に興味を持つ、というのは頼もしい事だね」
旅の道……
メーベルト農場へ向かう道でジュリオさんが呟く。
「そうだけど、なんか落ち着かなかったわね。肩が凝っちゃったわ」
モニカも、そう話す。
今回は東の森林地帯へと向かう道。
連理の樹門が目的地だ。
木材需要もあって、こっちへの旅となったみたいで。
ソフィーとプラフタは、錬金荷車2号の後ろを歩く。
「温泉の匂いがするなぁ……」
教会の横に、土も粘土も下ろして来たけど、残り香がする。
そんな残り香にソフィーは呟いた。
荷車の2階では、トマトのぬいぐるみとプニ助を抱いて、コルちゃんが寝ていたり。
お昼過ぎて、メーベルト農場を通過。
雨が降りだして、メーベルト農場には誰も見えない……
牛に挨拶して、先へと進む。
そして西への道、有閑広場へと向かう。
この道で広大な森林地帯に入って行く。
「メーベルト農場から有閑広場って遠いよねぇ~……」
荷車1階から、プニ助を抱いたソフィーが顔を出す。
荷車の横を歩くコルちゃんが、空を眺める。
「そうですねぇ~……でも有閑広場には色々と人が往き来しているみたいで、道がしっかりしてるです」
手甲をふらふらさせながら、コルちゃんはそう話す。
このふらふらのバランスで、歩くのがラクになるとかなんとか。
「鳥イチゴ、またあったぞ~……」
オスカーがやって来て、荷車に黄色いブドウみたいな実、鳥イチゴを入れる。
小さい実で、これが甘酸っぱくて美味しい。
「おぉ~♪ありがとうオスカー、甘い?」
荷車1解で、ソフィーが四つん這いになり、頭を上下する。
メーベルト農場のでかい犬の構えだ。
「ポトスかぁ~……会いたかったな」
オスカーはポトスと名前のついた、でかい犬のマネをするソフィーを見て呟く。
「凄い高速だもんね!この……これが!」
ソフィーは高速腕立て伏せみたいにして、ぶんぶん頭を上下させる。
プニ助も上下してる。
「あなたは、本当に動物が好きねぇ……でも女の子なんだから、そういうのしちゃダメよ?」
レオンさんが苦笑いしてソフィーを見てた。
そして皆で鳥イチゴを食べたりしながら、旅の道は進む。
深い森に入る。
静寂の湖畔に差し掛かった時、遠くに2匹の島魚が居て、なんか凄くどすんどすんしてた。
「子作りかしら?」
そのどすんどすんを見て、モニカが呟く。
「雌を巡って争っている……のかも知れないな」
荷車を引くフリッツさんが一瞥して、そう言った。
実際はなんだろうか?
そして菌糸の楽園を越えて、困惑の迷い道……
ぼちぼち朝になる頃、深い森の中の街道に、馬が居た。
街道と言っても、こちらの方向は草の丈も高く、街道なのか森の一部なのかわかりづらいんだけど、お母さん馬と3頭の子供……
と、言った感じで、お母さん馬が立ったまま、寝てた。
「さすがに子連れで能天気もないだろう」
ハロルさんが小さな木の枝を馬に投げる。
パタッと軽い音がして、お母さん馬が起きると、こちらをめっちゃ警戒しだして、どこかへ行った。
困惑の迷い道を抜けて、朝の野営は泥ヘビ。
ついさっき、ハロルさんのナイフで仕留められたやつだ。
「泥ヘビは懐かしいわ。こんな大物、見た事ないけど」
モニカが呟く。
ソフィーとしても思い出深い食事になった。
その先が今回の目的地、連理の樹門。
広大な森の中、色々な所に色々な名前が付いたものだ。
上質なキーファ、丸太が転がっている。
こんな深くまで来ると、それなりにジュリオさんも納得の魔物も現れて、採取生活になる。
「あたしが更に強くなったら……この辺りの動物とか魔物が更に能天気になる……って事かな?プラフタ~」
ソフィーがプラフタにくっつく。
プラフタは妖精の毒草を片手に、そんなソフィーの方を向く。
「おそらくはそうなのでしょうね。あどみらプニも、書物を見る限りでは……」
プラフタが話す。
何でも、どこにでも現れる影のように水溜まりが現れて、人を飲み込んでしまうのだと言う話で、全くもってあんな目立つ姿ではないし、あんな能天気な顔……
どころか顔もないそうだ。青プニだって顔なんて無いハズだし。
「ふむ~……青プニ君なんて、でもその頃からぷにちゃんパワーが炸裂してる訳かぁ」
口許に指を置いて、ソフィーは呟く。
更に妖精の毒草も、近づけないくらいの危険植物なのに、かなりマイルドになっているみたいだし……
ともかく、ひとしきり採取生活をして、アトリエに帰る事にした。
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[錬金荷車2号]
作って良かった錬金荷車。空間の改造はまだだけど、充分に広い。旅の大部分は街道の移動なのである。
[植物に挨拶回り]
ゲームでは、特に道中のイベントというものが、ほとんど無い。この小説では、オスカーは疲れ知らず知らずの化け物となっている。一応、ゲームにおいてもオスカーのLPは特に高い。
[赤い蛇の草]
蛇の草と同じように葉っぱがなく、茎だけにょろにょろっと伸びてる草。肉厚で食べられる。蛇の目に当たる部分に丸い花が咲いてるのだけど、花には見えない。こちらは、にょろにょろっと伸びてる部分が赤い。
[赤プニ温泉]
月と太陽の原野の少し西。大小さまざまな赤プニが占拠する温泉。ヒルみたいにくっついてもにゅもにゅされるので、入れない。
[ウメさん]
アトリエ閉めてるので、古本補修のアトリエはやっていないけど、やはりアトリエ前の井戸、この場所が落ち着くみたい。
[プニ助]
付いて来たすーぱーぷに。砕けたマナの柱の欠片のなれの果てみたいだけど……ともかく可愛い!
[噴水端会議]
種の日のお決まりイベント。色んな人達が思い思いに談笑する時。
[ヤーペッツさん]
食通商人のおじさん。最近は羽振りがいいみたいで、夜にカフェでお酒を飲んでいたりもするみたい。
[エルノアさん]
モニカと住む可愛いおばさん。華やかな飾り付け大好きで暴走気味らしいけど、服装は地味だったりする。
[北の人形劇]
毎週のソフィーのお楽しみ。エリーゼお姉ちゃんとパメラ、教会の子供達が今日もノリノリ!
[能天気パワー]
キルヘンベルのマナの柱の魔力。主をソフィーとするぷにちゃんの力は、魔物も含めて生態系を能天気な感じにする、との事で名付けられた。地域によっては、プニプニだってスライム、とかウーズという名前で液体のモンスター。いとも容易く人の命を奪う存在だったりもする。それが、能天気笑顔付きのプニプニになるのだから、能天気パワー恐るべしである。
[鳥イチゴ]
鳥達が大好きな木の実。甘ずっぱい。
[泥ヘビ]
泥水によく居るヘビ。キルヘンミルクスネークを取る日々でキルヘンミルクスネークの百倍は取ったヘビ。洗うと茶色だったり青だったり緑だったりするので、色んな種類が居たのかも。食べてどうこう、ってヘビは居なかったので、どれも食べられる。