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錬金術のアトリエ 51
夜になった古き妖精の森……
少し草の無い広場に出て、そこには涼しい風が吹いて回っている。
「今度はちょっと寒いくらいだね……」
ソフィーが呟く。
コルちゃんも頷いた。
壊れた建造物らしき物が、そこら中に散らばる場所に入り、相変わらずトリッカーとミニデーモンが猫みたいにふらふらしている。
「ここも、元々は人の住む場所だったようだが……今や何も残ってはいないな……」
落ち着いた声で呟きながら、フリッツさんは、そんな瓦礫達に触る。
「森に住む、美しい女王の治める国だったみたいだな……木々がまだ覚えているみたいだよ」
オスカーは話す。
マナの柱もあり、錬金術士も居た平和な国は、鋭く入り込んだ悪意に狂わせられ、滅びたのだそうだ。
そう話していると、土の中からキンモクジュとアルラウネが生えて来た。
そして敵意を剥き出してる。
「マナの柱の悪意が、どうやら弱まっている、と言う事でしょうか……」
普通にキンモクジュ達を倒すと、それぞれキンモクジュ達は起き上がり、また土の中に帰って行った。
身体は丈夫みたいで斬られても元に戻るし、なんか土に戻る姿は元気そうだ。
底知れぬ強さを感じる。
2本の樹が門のように立つ、雨宿り出来る……
ぐらいしかない浅い洞窟に、錬金釜が落ちていた。
その中に文字の掘られてる石が入っている。
「魔法の草を束ねて……」
それぐらいしか読めない石。
「魔法の草を束ねる……これですね万薬のもとのレシピは」
プラフタが閃いて、ソフィーはメモを走らせる。
ともかく、収穫上々で、朝にアトリエに帰る事にした。
……帰って来たアトリエ前、朝食はこの場所でとる事にした。
ギラギラしてる銀いも、土いもが美味しそうで、こういうのは焼くのが美味しいし。
「ソフィーとプラフタ、モニカとコル助はぷにちゃんを頼って洗っておいでよ。終わる頃には朝食も出来てるだろうからさ」
オスカーに言われて、4人はぷにちゃんの部屋へと行く。
コルちゃんと一緒に眠り、綺麗になって出てくると、朝食はもう少しで出来上がるタイミングだった。
こういう所を見ると、時間が本当に止まってるんだなぁ……
と、実感する。
「いよいよ、万能厄除け香まで完成させられるような感じになりました!ジュリオさん!」
朝食を食べながら、ソフィーは明るく話す。
まだ万薬のもとのレシピも詰めてないし、万能厄除け香も作れるか分からないのだけれど……
でも万薬のもとさえ作れれば、万能厄除け香は合わせるだけだ。
なので、もはや出来たも同然!
……という頭だ。
「おお~!それがあればナザルスさんを……」
ジュリオさんも喜ぶ。
「こうして能天気が伝染するのでしょうか……」
プラフタは、ため息をついて話す。
まだ万薬のもとのレシピは、構築に手も付けていない事。
万能厄除け香が作れるかはまだ分からないし、ナザルスさんの状態に万能厄除け香が本当に効くのかどうか、それも分からない、そういう話をした。
「ま、まあ……でもやれる事があるかも知れないなら、やっぱりソフィーに頼んだのは正解だったな。僕には成功を祈る事しか出来ないけれど、少し光が差して来た気分だよ」
プラフタの話を聞いて、ジュリオさんはそう言ってソフィーに笑い掛ける。
「あたしも!プラフタに負けずに頑張ります!」
ソフィーは得意のガッツポーズで、気合いを入れる。
「なぜ私を悪役に……」
プラフタは呆れた顔をした。
そしてやる事やって、錬金術生活!
まずは万薬のもとの「毒材料」用に、中和剤(青)を作る。
その1時間で万薬のもとのレシピを詰める。
「ん……案外簡単に出来そうだね。これなら……ただ、9時間掛けないと、駄目だね」
あっさりとレシピを詰めて、中和剤(青)を完成させると、万薬のもとの仕込みに入る。
「ソフィー、あなたの錬金術はどんどんしっかりしてきますね。本能型の天才を見る気分です」
プラフタは微笑んで、言う。
「プラフタ……なんか当たった?」
ソフィーは意外そうな顔をして尋ねる。
「当たった……とは……?」
プラフタも不思議そうな顔をする。
「いや、あの……ほら、古き妖精の森のお芋とか食べたから……なんかプラフタのだけ……」
「私があなたを誉めるのは、そんなに意外なのですか?これは、真意を判らせる必要がありますね」
浸け置きで9時間……
ソフィーとプラフタはぷにちゃんの部屋へと行く。
誰か来たら教えてくれるし、時間があるとアトリエ前に行くか、ぷにちゃんの部屋に行くか……
お昼過ぎて、ソフィーとプラフタはぷにちゃんの部屋から出てきた。
「も~……プラフタがケダモノ過ぎるよぉ……」
6時間程……
じっくりまったりエロエロした後で、ソフィーはそう呟きながら錬金釜を見る。
順調に浸け置かれてるので水面は静かに光っていたり。
「ま、まぁ……マナの柱の時間もそろそろ増やさなければ、というのも……」
プラフタは俯いて、ごにょごにょ話す。
「でも、どんどんプラフタの本性が分かったりして、嬉しいかなぁ……」
そう話して、ソフィーはプラフタに抱き付く。
「それはそれとして、万能厄除け香のレシピ構築もしないといけませんから……」
抱きついて来たソフィーの頭を抱いたりして、プラフタがそう話す。
「そうだった!しなきゃいけない事をしないとだよね!」
ソフィーは思い立ってプラフタから離れる。
もう随分とイチャイチャした訳だし……
次は万能厄除け香の調合をしたい。
そして錬金術生活……
万能厄除け香まで仕込んで夕食時、コルちゃんとモニカがやって来た。
「いらっしゃ~い!これから夕食だけど~」
ソフィーが出迎える。
コルちゃんとモニカの素材も、大部分はコンテナにあるので、実は食べ放題だったりするけども。
「今日はロジーさんは、冒険者仲間と悪いお店に行くみたいなので、こちらで夕食を、と思いまして」
肌襦袢に紫のケープ、髪を下ろしたコルちゃんがそう言ってネコの目で笑う。
「私も、ジュリオさんもエルノアも、今日は夜まで忙しいみたいだし、ぷにちゃんの時間も残り少なくなってるって聞いて……来ちゃったのよね」
モニカも、襟のお洒落な短いジャケットにスカート、という出で立ちで現れた。
でもクリーム色で華やかな感じ。
「おやおや、モニカは礼服としても着ていけるような……」
プラフタが食いついた。
「レオンさんが作ってくれたんだけど、最近のお気に入りなのよ。パトロールが多いから、着る機会はあまり無いんだけどね」
モニカはそう話す。
ジュリオさんと出掛ける時も、ジュリオさんの隣でこの服なのも浮いてしまうので、いつもの服になるみたいだ。
「ジュリオさんは、いつも鎧姿なのです?」
「そうなのよ……」
色々なおしゃべりをしながら、ゆっくりと夕食の時間を過ごし、そしてぷにちゃんの部屋に行く。
「あ、そう言えばモニカ、最近教会の聖歌じゃないのも練習してるでしょ?それ聞きたい!」
番人ぷにちゃんの脱げ脱げダンスの場所で、ソフィーは服を脱ぎながら言い出す。
「ちょっ……そ、そうだけど……!」
モニカが顔を真っ赤にした。
「職人界隈でも、モニカさんの歌声は評判が高いのです。是非私も聞いてみたいです」
素早くハダカ族になっていた、コルちゃんも食いついた。
「我も……歌などに触れるのは……無い事……是非……触れてみたいものだ……」
ぷにちゃんまで食いついた。
「もう!無理よ無理!歌なんて人前じゃ歌えないもの!」
脱ぎかけのモニカが悶え出した。
ともあれ、4人はぷにちゃんの部屋へと行く。
「残り……34時間だ……」
ぷにちゃんの中に入った4人に、ぷにちゃんが告げる。
「まあ、減ったわよね……」
モニカが思う。
主にコルちゃんが減らしてるのだけど、増やす錬金術の弊害なので仕方ない部分もあるし……
「さて、コルちゃんとロジーさんのエロエロでも……この身体に聞いてみますか!」
ソフィーもノリノリで、コルちゃんに取りついた。
そんなこんなで、ぷにちゃんの中でじっくりまったり、エロエロして過ごす。
そんなエロエロの後で、ぷにちゃんに説得されて、モニカが歌ってくれた。
恥ずかしい、って気持ちもぷにちゃんの中でなら、抑えてくれたりするし、人前で歌えないなら、歌の価値って無くなるし、歌う事で色々な歌が集まってくる……
そういうモノなのだと悟されて……
そして歌に合わせて風が吹いて回った。
少し涼しい風は、4人を包み込むように吹いて集まって、そして吹き上がるように上へと昇る。
「やっぱりいい歌声だよね~……」
ソフィーは目を閉じて思う。
コルちゃんもプラフタも、ぷにちゃんもそう思って穏やかな時間を過ごした。
「こんな遅い時間に大丈夫?コルちゃん……」
中途半端に時間を止めて過ごしたものだから、夜中になって帰る事になった。
「ふふふ……このまま裏市街へと行って、ロジーさんのお迎えも行きますので、この時間が都合がいいのです」
ニセレストランに顔見知りの護衛が居るみたいで、コルちゃんとモニカは帰って行く。
勝手の知らないソフィーやプラフタが来ると、あまり良くない、との事で結局は見送る事になった。
「いやぁ~……女の子って楽しいよね♪」
アトリエに戻り、ソフィーはプラフタに言う。
「そう……ですね。すっかり楽しんでしまいましたから、言い訳も出来ません」
「おおう!堂々としてるぅ~♪」
「もう、開き直るより仕方ありませんからね」
そして更に錬金術生活は続く。
「種の日!人形劇!万能厄除け香バッチリ!更にオスカーの究極栄養剤、緑を育む活性土も………持った!」
意気揚々と、ソフィーはアトリエを出る。
雷雨のキルヘンベル。
「くおぉぉぉ~……でも、人形劇する頃には止んでるハズ!」
変な声を出して、ソフィーはプニ助と歩き出す。
「まあ……何であれ行くのですけれどね……」
プラフタも、後に続く。
雷雨の中でお祈りの時間。そして噴水端会議をする頃には、雷雨は止んで晴れた!
「晴れた~♪祈りは……通じました!」
ソフィーは高々と杖を掲げて、そして北の人形劇の場所を見る。
「それよりソフィー、ジュリオとオスカーに渡す物があるのではなかったのですか?」
プラフタに言われて、万能厄除け香と緑を育む活性土の存在を思い出すソフィー。
そして思い出したので、ジュリオさんとオスカーに伝える。
「じゃあ、この次はナザルスさんの所、でいいのかな、ソフィー」
雷雨ずぶ濡れの、ジュリオさんの顔も綻ぶ。
「そうなるわよね。もう随分と待たせてしまっているものね」
そしてモニカも、そう話す。
教会の中で歌っていたものだから、もう乾いていたり。
「そうですね!ナザルスさんが治るかどうか、試してみないと分かりませんし、でも治るハズですから!」
噴水端会議は、次の冒険の話で盛り上がった。
晴れたので、北の人形劇を教会の子供達と一緒に見る。
プニ助も子供達に大人気だったりするし。
そしてお昼。
噴水のテスさんとコルちゃんの屋台、錬金荷車1号の所で、オスカーの特製バスケットが届くのを待つ。
そんな時に、オスカーよりも先に髭の商人の人が来た。
「この箱だが……どうにも装飾の感じがね……コルネリアが居たという、東方の国のものじゃないかと思ってね……」
髭の商人の人は、そう言うと綺麗な箱をコルちゃんに渡す。
「おお……確かにこの装飾は……これは是非欲しいです。おいくらでしょうか?」
コルちゃんはその箱を手に、少しの間見とれていたけど、髭の商人の人に向けて顔を上げる。
「エールと2代目を1つ、もらおうかな。壊れ物だから、それでいいよ。いつもお世話になっとるし」
髭の商人の人は、それだけを手に南の人形劇の方へと歩いて行った。
「ふむ~……その箱は、何が入ってるの?コルちゃん」
ソフィーが食いつく。
「ボタンがありますが……開きません……」
開かない箱を見つめて、コルちゃんが呟く。
「それ、オルゴールじゃない?ハロル時計店で直るかもだよね」
テスさんが、ひとしきりお客さんを捌いて、戻って来た。
その時、オスカーもやって来た。
「特製バスケットお待たせ~」
商人の人達と職人さん達、おばさんに冒険者、賑やかな噴水広場。
晴れた青空の下にみんな居て、そんな穏やかなキルヘンベル。
「オスカー!お腹ぺこぺこだったよぉ~♪」
いつになく甘えた声で、ソフィーはオスカーに駆け出す。
晴れたキルヘンベルの噴水広場。
今日はそんな気分。
「お?どうしたんだソフィー。何かいい事でもあったのかい?」
オスカーは少し驚きつつ、うまくソフィーをいなして特製バスケットを置いて、そして八百屋へと帰って行った。
「昼食が終わりましたら、ちょっとハロルさんの所へ行ってみます」
コルちゃんはサンドイッチを手に、そう話す。
ソフィーとプラフタは、昼食過ぎに本屋さんへと行く。
なんとなく足を向けたのだけど……
本屋に行きたいのはプラフタで、ソフィーとしてはあまり本、って気分ではなくて………
「あれ?」
本屋のドアで、ソフィーは振り返る。
「どうしました?」
プラフタは、そんなソフィーに尋ねる。
「なんか、あれ。凄い絵を描いてる人がいるんだよね……」
ソフィーは崖っぷちのベンチ2つの場所を指差す。
イーゼルを使った絵描きの人が、何か描いてた。
そして、ソフィーはそちらへと走り出す。
「ソフィーがゆっくり本を読んでる、というのは見た事がありませんね……」
プラフタは1人呟いて、本屋に入る。
「何を描いて~……うわぉ!」
ソフィーは絵描きさんの絵を見て驚く。
まるで鏡に映したかのように、めちゃくちゃ上手い絵が描かれているからだ。
「つい先日、この街に来ました、イコラと申します。エリーゼさんの本屋でお世話になっていますけれど、あなたは?」
絵描きの人がそう尋ねる。
「あ、あたしはソフィーって言います。錬金術士をしています」
ソフィーも自己紹介をする。
エリーゼお姉ちゃんの所に……
また1人増えたのかな?
……そう思いながら。
見事な絵を眺めながら、ソフィーはイコラさんと話をして過ごす。
イコラさんは、絵を描いて旅をしているみたいで、今は絵に凄く興味を示したエリーゼお姉ちゃんの紹介で、フリッツさんの家で寝泊まりしているそうだけど、もうじき市街地の空き家に入れそうなんだと話した。
そして錬金術で知る話としては、時操りの砂時計の話を聞く。
その話だけでは閃かなかったので、ソフィーは本屋へと行く。
「プラフタ!ちょっとハロルさんの所に行ってくるね!」
そう伝えて、ソフィーはハロル時計店へ。
途中の噴水広場では、南の人形劇が賑やかで、お酒臭い。
そんな場所を駆け抜け、ストリートも駆け抜けて、ハロル時計店へと行く。
ハロル時計店では、1番弟子として時計店の店先を任された、テッド、という青年が居た。
ハロルさんは居ない。
「いらっしゃい」
背の高いテッドは、ソフィーを見下ろす。
12歳にして、ソフィーよりも背が高い。
「ちょっと壁掛け時計を見に来たんだ。ちょっとお邪魔するね」
ソフィーはそう言って、壁掛け時計の並ぶ一角へと行く。
それぞれの時を刻む音が聞こえる。
「よし!」
ソフィーはメモを取り出すと、新しい錬金術のレシピを記す。
そしてハロル時計店を後にする。
ソフィーが噴水広場に来た時、プラフタも噴水広場に訪れて、遠目に見えた。
「プラフタ、本屋さんは終わり?」
教会のすぐ前で、ソフィーはプラフタを捕まえる。
「ええ、ソフィー。あなたも時計店は終わったのですか?」
「うん。バッチリ閃いたよ!」
そして2人はアトリエへと帰る。
そしてまた、錬金術生活だ。
そして夕食時……
コルちゃんとオスカーがやって来た。
コルちゃんはいつものようにひと休みしに、オスカーは緑を育む活性土で元気になった朧草の報告と、夕食しに来たのだそうで……
取り敢えずコルちゃんを待つ、という事でアトリエの外、カワニレの木の所でオスカーと待つ事にした。
「長くこうしてなかったね」
ソフィーは呟く。
アトリエ前のカワニレの木の場所は、崖になっていてキルヘンベルの街を見下ろせる。
「そうだなぁ……」
オスカーはおとぼけボイスで呟く。
ここはよく風が吹く。
……あたしは、何にもなれない……
そう悩んで、だけどオスカーに言われた場所。
……ソフィーは、ソフィーになれるだろ?
オイラも、ソフィーにはなれないけど、オスカーにはなれる。
そして、オスカーにしかなれないんだよ……
……カワニレの木は、カワニレの木。
……オスカーは、オスカー。
……あたしは、あたし。
植物も、そうして伸びるのだそうだ。
だけど細く高く伸びて倒れる者。
伸びずに太陽に当たらなくなり、徐々にその身体を弱くして朽ちて行く者。
その植物の数だけ、伸びた者も朽ちた者も、様々。
その中に、ソフィーの見る木と草花達がある。
景色を埋め尽くす沢山の植物達。
だけどソフィーの見る事の無い、朽ちて果てた草花、木々もある。
それは、景色を埋め尽くす大量の植物よりも、更に沢山……
朽ちて果てている……
……あの時、オスカーはそう話した。
「ソフィーは、オイラが立派に見えてるのかも知れないけどな。ほんの少し大きさの違う土いもみたいなもんだ。これから、ソフィーがどれだけ大きくなるかなんて、オイラにもソフィーにも、誰にも分からないじゃないか」
やせっぽちで、これからの事なんて考えたくもなかったソフィーに、オスカーはそう話した。
「ソフィーさん、終わりました」
コルちゃんがやって来て、そう挨拶すると帰って行く。
コルちゃんを待つ10分くらい……
カワニレの木の側で、ソフィーもオスカーも、あまり話さずに過ごしてた。
「オイラも、冒険に出ないとなぁ……でもそれはまだ背伸びなのかも知れないよなぁ」
コルちゃんを見送ってから、オスカーが呟く。
「あたしもプラフタも居るじゃん……」
ソフィーは弱い声で呟く。
「オイラはオイラの、勝手気ままな旅をしないとだから、ソフィーは連れて行けないよな。ソフィーはソフィーの旅をしなきゃだろ?」
オスカーはカワニレの木を見上げて、そう言う。
昔からの、そういう約束。
「……だよね~……あたしは、オスカーと離れたくないけど……」
ソフィーはそう言ってみる。
昔から、一応はそう言ってみるんだ。
「オイラの旅の先には、またソフィーが居る気がするけどな。でもその時、ソフィーの隣に誰か居ても、それはしょうがないよな」
オスカーも、お決まりの答えを言う。
「まあ、プラフタは居るよ!絶対に!」
ソフィーは笑顔でそう話す。
これは今回、変わった事。
「そうだな。プラフタも一緒の錬金術だもんな」
オスカーはそう言うと、笑って見せる。
「そうだ。食材用意しないと、お腹減ったもんね」
ソフィーは明るくそう言うと、歩き出す。
これから夕食だった。
ちょうどプラフタが、入って来ない2人に疑問を持って、アトリエのドアを開けた所だった。
夕食を済ませて、プラフタはぷにちゃんの部屋へと行く。
そしてオスカーを洗おうとした時……
コンテナからプラフタが出て来た。
「ソフィー、なんかオスカーもコンテナまでは入れるそうです」
「嘘ぉ……更に成長したんだねぇ……」
ともかく、汚れ物も任せられる、との事でソフィーとオスカー、プラフタでコンテナの中へと入る。
「あ、でも思ってる事が全部伝わっちゃうんだけど……オスカー、何かあたしに隠し事とか、ない?」
一応、聞いてみる。
「ん~……無いな」
ちょっと考えて、オスカーは答える。
なんか、凄くあっさりだ。
「ん?って事は……ソフィーも、オイラに隠し事とか無いか?」
そして更に考えて、そう尋ねた。
「無いよぉ~……無いよね?……ん~……無いと思うけど……無いかなぁ~……」
ソフィーは思い当たる事を探すけれど、別に何も思い付かなかった。
「おお~……これ、アトリエよりも広いんじゃないか?」
ともかく、入り口の階段を降りたオスカーは、感嘆の声を上げる。
「あ。そう言われてみればそうだね」
ソフィーも、口許に指を置いてそう答える。
相変わらず、棚いっぱいの番人ぷにちゃんの群れだ。
「これが、ソフィーの言う番人ぷにちゃんってやつか……すげぇ沢山居るんだなぁ……」
オスカー近くの番人ぷにちゃん達は、オスカーに向けてぴょこんをぴょこぴょこしていて、オスカーはそこに指を伸ばしてみる。
すると番人ぷにちゃんの1つが、オスカーの指にしがみついた。
「ソフィーの……恋人の青年だな……」
ぷにちゃんはそう、オスカーに語り掛ける。
「おお……師匠の樹と同じ声だ……師匠の樹も、あんたなのかい?」
オスカーは目を見開いて驚き、そう尋ねる。
「それならば……師匠の樹より……そうだと伝えている……我と……師匠の樹は……別だ……」
番人ぷにちゃんはそう、答えた。
更にぷにちゃんがパワーアップして、オスカーとロジーさん、ジュリオさんは、コンテナまでは入れるようになったらしい。
それと、預かる子供が男の子だった場合も、殺さずに預かれる、との事だった。
ソフィーとオスカーはハダカ族になって、コンテナの棚の廊下に座り、服に群がる番人ぷにちゃん達を眺める。
プラフタはぷにちゃんの部屋の、閂の杖が外れないので、アトリエの方へと行った。
「すげぇ……すげぇキレイになってくぞオイラの服……」
オスカーは立て膝になって、番人ぷにちゃん達に汚れを食べられて、キレイになる服を見つめる。
ソフィーはそんなオスカーのお尻を眺めていたり。
「オスカーは番人ぷにちゃん、何色に見える?」
ソフィーが尋ねる。
「濃い緑だな。まるで勢いのある葉っぱみたいな色だよ。ソフィーは……灰色だっけ?」
オスカーは棚の下段にしがみついて、キレイになる服を見つめながら答える。
「うん。まあ、キレイな灰色だよ……雲の影みたいな感じ」
ソフィーはそう答える。
そう言ってみると、天井に常に張り付いてる番人ぷにちゃんが、雲みたいにも見えて来た。
「雲の影かぁ……」
オスカーは呟く。
それから、キレイになった服を持ってアトリエに戻る。
ハダカ族2人を見たプラフタが、呆れた顔をしていたけれど、オスカーの身体には取り付けないみたいで、それは仕方ない、という話に……
「コンテナには、モフコットがあったでしょうに……隠す、という考えがそもそも無いのが問題です」
仕方ない……
という話には、ならなかった。
プラフタがコンテナへと入り、これからはどうやら、オスカーがアトリエに居ても、コンテナにもぷにちゃんの部屋にも入れるみたいだ。
「色々とぷにちゃんがパワーアップしてるんだなぁ……」
ソフィーに洗われながら、オスカーがおとぼけボイスで呟く。
「確かに、番人ぷにちゃんの数も、もう数え切れないもんね」
オスカーの背中に泡を擦りながら、ソフィーも呟く。
「気になったのは、あのコンテナさ、何の匂いも無かったんだよな。匂いの無い場所ってのは初めてだよ」
オスカーはそう話す。
そしてぷにちゃんの力がパワーアップするにつれ、匂いの色や形も分かるようになってきたんだと話した。
「そ、そんな事になってるの!?」
ソフィーは手を止めて驚く。
「なんだか、こんな事話す機会無かったのと、ソフィーの匂いの色と形を聞かれるのは、ちょっと答えづらかったからなぁ……」
オスカーは身体を洗いながら話す。
相変わらずの耳に心地好いおとぼけボイスは、平静にアトリエに響く。
「……うっ……さすがにそれは聞くのもなんか……」
ソフィーはまた手を動かし出す。
……夜は更けて行く……
ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。
[錬金術生活]
計画と実践。でも漬け置き時間が長いので色んな暇つぶしをしていたりする。
[ぷにちゃん]
時間まで止まるし、凄く便利な空間。時間を止めないで過ごす事も勿論可能。
[ニセレストラン]
裏ストリート裏酒場の程近くに出来たらしいレストラン。飾り付けが華やかみたいだけど、エルノアさんの飾り付けに比べると、かなり劣るのだとか。
[イコラ]
絵描きの人。旧市街を抜けた、見晴らしの良い場所で絵を描いている。最近、キルヘンベルへやって来たのだとか。
[テッド]
時計店で働きたい、教会の男の子。イケメンで落ち着いていて、品がある。