ゼロファイト《シンフォギア》   作:ブレイアッ

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 最初ッから開放全開でブッ飛ばすッ!
 着いてこれる奴だけ着いてこいッ!


1話 『巨影、現る』

 日本、都市部に近いダムに併設された水力電気発電所。

 都市部に近いとは言っても山に囲まれたそこは人々の喧騒から程遠く、水の流れる音と風が草木を撫でる音、生き物達の声、時折やって来る登山客の話し声がする、静かで穏やかな場所だ。

 しかし、この日、この瞬間においてそこは阿鼻叫喚の様相を見せていた。

 

「に、逃げろぉッ!」

 

「なんなんだアレはッ!?」

 

 そこにいるのは巨大な影。

 黄色地に黒い模様のある体色、胴体より長大な尾、そして本来の動物なら眼が存在するであろう位置で三日月形の角が回転している、巨大な怪獣が発電所へ歩みを進めていた。

 一歩足を進めるごとに水が高く飛び上がり、地が揺れる。

 

「ピキィーー! キキィーー!」

 

 怪獣が甲高い鳴き声を上げながら手を振り上げる。そのまま振り下ろせばダムは崩れ、発電所はコンクリートの下敷きになってまだ施設内にいる人々が巻き込まれる事は想像に難くない。

 

「誰か! 誰でもいい! この声が聞こえているなら、助けてくれぇッ!」

 

 通信機に向かって叫んでも答えは無い。窓の外に目を向ければ怪獣の影がいっぱいに映っていた。

 

「あぁ……ッ、今際(いまわ)の際に見るのがこんな訳の分からないものとは……南無三ッ!」

 

 死を覚悟して目を閉じる。

 

[……ッ、生きるのを諦めないでッ!]

 

 その時、通信機の先から聞こえてきたのは強く優しい言葉、そして……。

 

「歌……ッ!?」

 

 

 獣の咆哮にも似た駆動音を上げながら木々を押し分け、失踪する青の影一つ。

 それは青いバイクに乗るシンフォギアを纏う3人の少女達。バイクを駆るは青き剣、風鳴翼。後部座席に座るは赤き弓、雪音クリス。そして前輪より前に伸びた刃の上にしゃがみ座るは橙の槍、立花響。

 

≫≪激唱インフィニティ≫≪

 

「飛ばすぞッ! 行けるな、立花ッ!」

 

「はいッ!」

 

「「「いざ飛ばんッ!」」」

 

「レッツ、ファイッ!」

 

「「空へッ!」」

 

 失踪する青の影から赤い矢(ミサイル)が飛び立つと、急制動をかけながら回転、そして刃の先に立つ橙の槍を怪獣へと投げ放つ。

 

「「「いざ行かんッ!」」」

 

「レッツ、ファイィィイッ!」

 

 響は腰のバーニアから火を吹いて空中で加速し、怪獣の脳天へとその()を叩きこんだッ!

 

「「明日へッ!」」

 

「ギキィーーッ!?」

 

 怪獣は怯み、その動きを止める。

 

「今だ雪音ッ! その怪獣をダムから離すんだッ!」

 

「任せな先輩ッ! とっておきだ、たらふく食らいなァッ!」

 

MEGA DETH PATRTY

 

 怪獣の頭を飛び越えた赤い矢(ミサイル)から飛び降りたクリスが腰部アーマーを展開。無数のミサイルを怪獣に食らわせ、怪獣にたたらを踏ませてダムから離す。

 

「「「熱い歌が」」」

 

「レッツファイッ!」

 

「「あるのか!」」

 

 疾走する青は川の流れに逆らいながらさらに加速し、影を貫く(つるぎ)へと変わり、怪獣の足へと突貫する。

 

「迸るほどッ!」

 

「君のぉッ!」

 

 激突する寸前にバイクから飛び上がり、剣と化したバイクは怪獣の足に激突。

 

「強き熱!」

 

「爆ぜるッ!」

 

 翼が印を切るとバイクが爆発。

 バランスを崩した怪獣に叩き込むようにダムの上から響が飛び立つ。

 

「無限大の(ソウル)がッ!」

 

「「「手と手を繋ぐよ──ッ!」」」

 

「激唱ォッ!、インッ、フィニティィィィイイッ!」

 

 右腕の装甲が変形し、ブースター、ナックルガードを生成。腕部のブースターと腰部のバーニアで一気に加速、自身を1つの槍とした拳が怪獣の胴体に突き刺さる!

 

「はぇ……ッ!?」

 

 かに思われた一撃は空を切った。

 勢いそのまま、ずべーっと川に突っ込んで滑る。

 

「なんだ……あのデカブツの姿が……」

 

「薄れて……消えた、だと!?」

 

[高エネルギー反応、ロスト!?]

 

[周辺を精査……それらしき反応はありません!]

 

 通信を通して聞こえる声がさっきまでいたはずの怪獣が跡形も無くその場から消えた事を示していた。

 クリスがダムから飛び降り、装者3人が一ヶ所に集まって顔を見合わせる。

 

「どうなってやがんだ一体……」

 

「司令、指示を」

 

[むぅ……今からそちらにヘリを出す。装者は一時、S.O.N.G本部へ帰投してくれ]

 

「了解です。聞こえたな、立花、雪音」

 

「はいッ!」

 

「ああ」

 

 

 

≪≫≪≫≪≫

 

 

 

 港に停泊している『S.O.N.G』本部の潜水艦に装者を乗せたヘリが着艦。ヘリから降りた彼女達はすぐに中に入って発令所へと向かった。

 装『S.O.N.G』とは、国連直轄下の超常災害対策機動部タスクフォースとして編成された組織であり、『Squad of Nexus Guardians』の通称である。

 

 S.O.N.G本部、発令所。

 

「装者三名、到着しました!」

 

「待たせたな、おっさん」

 

「師匠、あの怪獣は!」

 

 そこで待っていたのは赤髪の偉丈夫、S.O.N.Gの司令を務める風鳴弦十郎だ。

 彼の険しい表情を見た彼女達は何か良からぬ事が起きたことを察す。

 

「先ほど、ギャラルホルンがアラートを発した。それと同時に、新たな並行世界へのゲートが開かれた」

 

 ギャラルホルン。北欧神話に登場する神の世界と人の世界を繋ぐ虹の橋の番人である神ヘイムダルが世界に危機が迫った時に鳴らすといわれる角笛。

 このS.O.N.G本部に保管されるギャラルホルンは先史文明の遺産であり、『完全聖遺物』と称される異端技術(ブラックアート)の産物である。

 その力は並行世界の異常を察知するとアラームを鳴らし、並行世界へと繋ぎ、行き来出来るゲートを開くというもの。

 

「先ほど出現した怪獣、あれは新しく繋がった並行世界での異変がこちら側(・・・・)に与えた影響だと考えられます」

 

 白衣を着た少女、エルフナインの言葉に響達はハッとする。

 

「それって、前にセレナちゃんの世界と繋がった時にも起こった……!」

 

「あの時はネフィリムのヤローだったが、今度は怪獣って訳か!」

 

「だったら話は早い。司令!」

 

 ギャラルホルンのゲートで繋がった並行世界はお互いに干渉することがある。例えば並行世界の同一人物と精神的に繋がったり、並行世界で現れた敵が影としてこちら側に現れたりだ。

 ゲートの先の異常をそのままにしておけば自分たちの世界に災厄が起こりかねない。

 故に、ギャラルホルンのアラートが鳴れば開いたゲートの先の世界で起こる異変を解決するのも彼女達装者の役目なのだ。

 

「ああ、他の装者は現在……マリアくんは海外で任務中。調くんと切歌くんは……テストで赤点を取って補習中だ。よって、今すぐ動ける君達に並行世界での任務を頼みたい。行けるな?」

 

「はいッ!」

 

「あったりめぇだ!」

 

「無辜の民を防人る事が我らの使命なれば」

 

 響達の気の良い返事に弦十郎は頷く。

 

「頼んだぞ、お前達ッ!」

 

 弦十郎の号令を合図に響達はギャラルホルンゲートが待つ聖遺物保管庫へ駆け出した。

 

 

 

≪≫≪≫≪≫

 

 

 

 ギャラルホルンのゲートから不規則に7色に変わる虹の回廊を通り抜けた響、翼、クリスの3人が足を踏み入れた先は、山の中だった。

 

「何処の山だろ、ここ?」

 

「さあな、それを調べるのもあたしらの仕事だろ?」

 

「ああ、この並行世界にも二課やS.O.N.Gに類する組織はあるのか、私達の世界とどれほどかけ離れているのか、把握しなければならないことは山ほどある」

 

「山の中だけにってか」

 

「おおっ! クリスちゃんがダジャレを!」

 

「? いきなり何を言い出すのだ、雪音」

 

「……いや、何か変な電波を受信したみたいだ。気にしないでくれ……ん?」

 

「どうした、雪音」

 

 慣れないダジャレなんて言うもんじゃねーな等と思いつつ、話をそらすためにスマホを取り出したクリスは、並行世界故にあまり役に立たない地図アプリを立ち上げる。

 運良く現在地が分かれば御の字。この世界のクリス達のような山に大穴開けて達磨落としするような存在が地図を書き換えていたり、そもそも地形の成り立ちそのものが異なる場合があるため、アテにならないのが殆どなのだが。

 

「何だ、これ」

 

 アンテナは1つも立たない。しかし、クリスのスマホは奇妙な音を受信していた。

 

「何だろう? 変な音……お化けの声とか?」

 

「な、や、やや止めろよバカッ! そういうのッ!」

 

「雪音、音量を上げてくれるか?」

 

「あ、ああ」

 

 音量を最大にまで上げて受信する奇妙な音を2人にも聞こえやすくする。

 ノイズまみれの音から現役歌手の翼が何かを聞き取った

 

「これは……一定のリズムを刻んでいるようだな……音楽、と呼べるやも知れん」

 

「音楽だぁ? ん~、言われてみれば確かにそんなような気もしないような……?」

 

「…………助けて」

 

「あん?」

 

「立花?」

 

「助けてって、言ってるように聞こえませんかこれ!」

 

「助けてって……まま、まさかお化けとかがそそそっ、そーいう」

 

「落ち着け雪音。まだ幽霊とは決まったわけでは無いだろう?

 しかし、立花の言うこともあながち馬鹿には出来んな。一定のリズムを刻む音楽ならば、この音色に乗せて何かを伝えているという可能性もある」

 

「なら、」

 

 響が言葉を続けようとした時、ガササッ、と近くの草が不自然に揺れた。

 

「! 誰だッ!」

 

 険しい目で音のした方を睨む翼。

 草の影から現れたのは虫のような異形の頭をした、到底地球の者とは思えない人形(ひとがた)だった。

 

「女の子……?」

 

 体つきだけを見れば少女のようにも見える。しかし、異形の頭に地球の物とは思えない服がどこか異物感のようなものを感じさせる。

 

(あの姿、人間では無いな……)

 

「貴様、何者だ」

 

「──!」

 

「逃げた!? 追うぞッ! 立花、雪音!」

 

「あ、ああッ!」

 

「えっ!? ちょっと待ってくださいよぉ!」

 

 異形頭の少女は山の中を走り回り、装者達も翼を先頭にそれを追う。

 やがて辿り着いた先は開けた山頂。カルデラ湖の畔だった。

 異形頭の少女が振り向けば翼が、背には湖。

 

「何故逃げる、貴様は何者だッ!」

 

「──ッ!」

 

 異形頭の少女が何かを察知したのかバッと振り返ると湖の一部が異様な(あぶく)を立たせ、そこから怪獣が現れた。

 

「ピキィーー! キキィーー!」

 

 黄色地に黒い模様のある体色、胴体よりも長大な尾、そして本来の動物なら眼が存在するであろう位置で回転する三日月形の角。間違うことなく、元の世界で水力電気発電所を襲った怪獣そのものだ。

 

「アイツはッ!」

 

「やはり私達の世界に現れたのは、この世界の怪獣の影ッ! まさか貴奴が操っていたというのかッ!」

 

「エレキング──ッ!?」

 

 異形頭の少女がその名を口にする。

 エレキングは生物であれば口に該当する箇所に存在する発光器官に電気エネルギーを収束。三日月型の光弾として響達めがけて発射した!

 

「ッ! 散開ッ!」

 

 翼の声を合図に三方に跳び、辛うじて攻撃をかわす。

 

「あの者が怪獣を操っているのか!? ならば、往くぞッ!」

 

 翼の言葉に響とクリスが頷き、3人がそれぞれの胸からぶら下げているペンダントを手に取る。

 

Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

 ペンダントが輝き、歌を鍵に閉じられていた力が開放され、3人の少女は歌を鎧と身に纏う。

 シンフォギア。先史文明の遺産たる聖遺物の欠片より生み出された人類の叡智の結晶。ウタノチカラによって稼働するそれは人類を防人る剣であり、誰かの居場所を守る弓であり、未来へ突き進む槍。

 これを纏う少女は装者と呼ばれ、響、翼、クリスは世界で両手で数える程しか存在しない装者その人である。

 

≫≪月下美刃≫≪

 

「あゝ……風に鳴るは、哀し……剣ノ唄──ッ!」

 

 風鳴翼が纏う青きシンフォギアは絶刀・天羽々斬。人を防人る剣であり、悪業を即瞬殺せんと剣ぐ破邪なる刃である。

 

「虎も恐るる如き、唸る「蒼ノ一閃」ッ!」

 

蒼 ノ 一 閃

 

 

 巨大化した刃身を振り抜き、放たれる蒼い刃がエレキングの首に命中し、爆発する。

 しかし、

 

(無傷!? ならば軒の玉水が石を穿つが如く、刃を重ねるのみッ!)

 

「地獄へと通りゃんせ、一つッ! 二つッ! 罪をッ! 数えて候ふ──ッ!」

 

 装者としての経験が特に長い翼の、並々ならぬ集中力と技量によって放たれた合計4つの蒼ノ一閃が同じ箇所に命中。

 エレキングの硬い皮膚を斬り裂いた!

 

「ギキィーー!」

 

 暴れるように口から三日月型の光弾を翼目掛けて連続発射するエレキング。1つ1つが強大な威力を持つそれは同じく強力な威大を持つミサイルによって相殺された。

 

「はっ、どうよ!」

 

 雪音クリスが纏う赤きシンフォギアは魔弓・イチイバル。つがえられた矢はミサイルや弾丸と化して誰かの居場所を奪う不届き者を射抜き、決して守るべき居場所に向けられる事の無い、強い意思の込められた弓である。

 

「そんなにバラ蒔きたいんならあたしが付き合ってやるよッ!」

 

 両手のボウガンがガトリングと化して無数の弾丸を放つ。

 1つ1つの威力は蒼ノ一閃ほど無くとも、群雀が如く当たれば意識をそちらに向けざるを得ない。

 

「ピキィーー!」

 

 甲高い鳴き声を上げ、顔をクリスの方に向けて口部の発光器官にエネルギーをチャージする。

 

「今だ、やれよバカッ!」

 

「うぉぉおおおおおおッ!」

 

 立花響が纏う(とう)きシンフォギアは擊槍・ガングニール。あらゆる障害をブチ抜き、未来へと突き進む槍。その歩みはたとえ神であろうと決して止める事は出来ない!

 

 全力の響の拳がエレキングの後頭部に突き刺さり、そのまま衝撃でエレキングの体を湖の底に叩きつける!

 

「翼さんッ!」

 

「いざ、翼参るッ! (たと)え神でも、不義理は許さぬ──ッ!」

 

 元の大きさへと戻したアームドギア()を天高く放り投げると蒼ノ一閃を放った時よりも大きく、大きく巨大化する。

 

「仏に逢うては、仏を斬りて──喉笛かっさばく──ッ!」

 

 続けて翼も跳躍。巨大化した剣の柄があった場所を蹴りこむ。

 

「介錯すら、甚だしいッ! 下郎に遅れなど可笑しい──ッ!」

 

 両足のブースター()を展開して落下の勢いを加速させる!

 

「覚悟の太刀影のォッ! 錆になりてぇぇぇッ!」

 

天 ノ 逆 鱗

 

「還らむ──んッ!」

 

 エレキングに落とされた超特大の剣が湖の水を天高く打ち上げ、辺りに雨と降り注ぐ。

 

 確かな()応えがあった。しかし、天ノ逆鱗の刃金(はがね)を通じて電気が流れ、シンフォギアのバリアコーティングを抜いたそれによって翼は感電する。

 

「ガッ!? ァ──ッ!」

 

 ぐらりと湖の中に落ちようとする翼に追撃として水中から伸びた巨体な尾が振り下ろされる。

 感電して意識を失った翼には防御の手段は無い。通常ならばシンフォギアにはバリアコーティングがあるため大半の攻撃は通らないのだが、歌えない状況ではギアの出力が低減してしまうため、それすらもアテにならない。

 

「──ッ! 翼さんッ!」

 

 翼を助けようと飛び出した響が寸前のところで届いた手で翼の体を押し出し、エレキングの尾の軌道から外す。ガングニールの突撃力でもって押し出された翼は湖の畔に落とされた。

 

「間に合──」

 

 しかし、寸前であったが故に響は翼の代わりに尾の一撃をまともに受けてしまうこととなった。

 

「ぐぁ──ッ!?」

 

 ゴキッ、と背骨が砕ける音がギアのヘッドホンからクリスの耳に届いた。

 

「な……ッ!」

 

 続けてトドメとばかりに逃げ場の無い水中での放電攻撃。

 あまりのエネルギーに湖の底から尾の発光が見え、電気分解された水素と酸素が無数の泡となって水面に浮かび上がる。

 放電が終わると、湖の底から赤い液体が浮かび上がり、水を赤く染め始めた。

 

「嘘だろ……嘘だろ、おいッ! バカッ! 返事をしろッ! おいッ!」

 

 シンフォギアの通信機能をフルに使って響に呼びかけるが返事は無い。それどころか、通信すら繋がっている様子も無かった。

 

(ギアが解除された? それとも破壊されたのか? だとしたら……ッ!)

 

 嫌な考えばかりがクリスの頭の中を駆け巡る。

 

「ピキィーー!」

 

 湖の中からエレキングが姿を現す。

 天ノ逆鱗によって胴体に大きな傷がついているものの致命傷には至っていないのか、動きが少し鈍った以外に変化は見られない。

 

「何なんだよ……何なんだよテメェはぁッ!」

 

 巨大なミサイル、小型のミサイル、ガトリング、持てる全てをエレキングに向けて一斉発射するが、全身から発せられた電気によるバリアによって阻まれる。

 

「……クソッ! 今の全力を食らってもピンシャンしてやがんのかよッ!」

 

 翼は意識を失い、響は生死不明、クリスの攻撃はエレキングに届かない。

 撤退しようにも口部から放つ光弾に討たれるだろう。

 

「こうなりゃ絶唱で──」

 

 自滅覚悟の大技、絶唱を唱おうとしたその時。

 空の彼方から飛んできた2つの刃がエレキングの体を斬り裂いた!

 

「デェェェェヤァッ!」

 

 続けて足に炎を纏った巨人がエレキングの胴体を蹴り飛ばし、激しく水柱を上げながら着水した。

 

「な……んなんだよ今度は……!?」

 

「……っ、雪音……」

 

「先輩! 気がついたのか!?」

 

「私は……そうだ、立花は!?」

 

 空中を飛翔していた2つの刃が巨人の頭部に装着、もとい戻る。

 巨人は水中から何かを拾い上げ、翼とクリスの前に優しく下ろした。

 それはギアを纏わぬまま、全身から血を流し、手足があらぬ方向に曲がっている響だった。

 

「立花……おいッ! 立花ッ!?」

 

「ぁ……バカッ! おい! しっかりしろッ! しっかり……おい……息しろよバカァッ!」

 

「あぁ……そんな……」

 

 どれだけ声をかけても返事をしない響。それどころか、肌は冷たく、心臓の鼓動も無く。

 立花響という少女の命はあの怪獣によってあまりにも呆気なく潰されてしまったのだと、それを実感させるには十分に過ぎた。

 

 巨人は苦しそうに翼とクリスから視線を外し、エレキングを強く見据える。

 震えるほど固く、強く 、強く握られた拳が何を意味しているのかは、この場にはその巨人にしか分からないだろう。

 

「シェアッ!」

 

 右手を腰だめに、左手を真横に伸ばして光のエネルギーをチャージ。そして右腕を縦に、左腕を真横にL字に組んで光線をエレキングに放つ。

 その巨人が得意とする。あらゆる強敵を倒してきた必殺の光線を受けたエレキングはそのまま爆発四散した。

 

「…………」

 

 振り返った巨人は片膝をついて翼とクリス、そして響を見下ろす。

 クリスは翼と響を背に、両手を広げて巨人の前に立った。

 

「アンタがあいつを湖の底から掬い出してくれたくれたことには感謝してる……だけど、それとアンタを信用するのとは話は別だ! もしもアンタがこのバカに変なことをするようだったら、あたしがブチ抜いてやるッ!」

 

 巨人は「変なことはしない」とでも言うように優しく首を横に振ると、右手を胸に当てた。

 すると巨人の体は金色の光へと分解され、光の粒子となった巨人は響の体へと吸い込まれていった。

 

「な……っ」

 

「立花の体が……」

 

 するとボロボロだった響の体が瞬く間に元のように治っていくではないか。

 驚きに目を丸くさせる2人をよそに、すべての光の粒子が響の中に吸い込まれ、そして──。

 

「カヒュ、ぁは、げほっ、げほっ、けほっ」

 

 水を吐き出し、息を吹き返した。

 

「あれ……翼さん? クリスちゃん?」

 

「立花……立花ッ! 立花ァッ!」

 

「いたっ、痛いですよ翼さんッ! いきなり抱き着くなんて、痛ッ! イタタタタ!?」

 

「あの巨人が……助けてくれた、のか……?」

 

「あれ、どーしたの? クリスちゃん? 顔涙でぐしゃぐしゃだけど」

 

「~~ッ! こんっの、バカッ! 大バカヤロウッ!」

 

「ええっ! 何で私、いきなり罵倒されてるの~!? 私何かしたッ!?」

 

「ああ~~もうッ! ワケ分かんねー事ばっかだッ!

 …………でも、生きてて良かった」

 

「??? あっ、クリスちゃんも来る?」

 

「そうか、私ばかりが一人占めしてては雪音に悪いな。よし、来いッ!」

 

「ちょっ、センパうわっ!?」

 

 翼にぐいっと引っ張られたクリスは、そのまま3人で抱き合う。

 そこで響から確かな肌の温もりと心臓の鼓動を感じ、どういう理屈かは分からないが響が生き返った事を実感するのだった。

 

 

 突然、キィィーーン、と空気を切る音と共に上空を大きな戦闘機が横切った。

 戦闘機は何度か3人のいる湖の上空を回り、そしてホバリングして湖の畔に着陸した。

 

「奇妙な飛行機だ。まさか先の者の仲間か? 下がっていろ、立花。敵であれば、私が斬る」

 

「先輩にだけやらせるわけにはいかねぇな。あたしもやってやる」

 

 3人が警戒しながら謎の戦闘機に注意を向ける。

 

「君達ッ! 無事かッ!?」

 

 謎の戦闘機から降りてきたのは赤髪の男性。それは3人にとって非常に見覚えのある顔だった。

 

「師匠ッ!?」

 

「叔父様ッ!?」

 

「おっさんッ!?」

 

「む? 君達、何処かで会ったか?」

 

 謎の戦闘機のパイロット。それはS.O.N.G司令風鳴弦十郎と瓜二つ。否、この世界の風鳴弦十郎だった。

 




使用楽曲
激唱インフィニティ
月下美刃

 謎の巨人。一体、何トラマンゼロなんだ……ってな感じで第一話おしまい!
 本作はギャラルホルンで繋がった並行世界という名のウルトラなシンフォギア世界が舞台です。つまりは当たり前のように宇宙人が出てくるし怪獣、ロボットも出てくる。頑張れシンフォギア。頑張れ装者達。


 並行世界の風鳴弦十郎が操縦する戦闘機に乗り、装者達がやって来たのは地球防衛基地。
 宇宙人の侵略、怪獣兵器の出現、風鳴大戦……。あまりにも大きくかけ離れたこの世界について知る中、基地内にアラートが鳴り響く!
 次回ッ!『光を掴め』

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