素朴な幸せでオペレーターを籠絡する話。   作:杜甫kuresu

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色々気づいちゃったんですけどフロストリーフってロドスに来てから結構経ってるみたいですね…………つまりドクターの不在期間に来てる可能性がある、と。
加えて未読の第四章の内容によっても色々起きる。
うちは基本気にしない方針で。この作品はあくまで実験なので連なる別作品の時に調整してみたいと思います。

【要するに】
この世界線ではフロストリーフの所属する傭兵組織の吸収合併はつい最近の出来事です。私の世界ではそうなんです。ついでにヘッドフォンも最初から付けてる、何故って分かりにくいからだよ。


血より冷たく、カップ麺よりあったかく~その3~

「結構美味しかったな」

「そりゃ何より」

 

 冷えた指先を食べ終えたカップ麺に当てると、残った温度が染み込んでいく。この鋭い熱はいつまで経っても慣れないものだが、戦場で指がかじかむなどとは言ってられない。

 

 手が冷たいのは心が温かい証拠だ、なんて言われたことも有る。実際そんな事実があるかはさておき、だとするなら私の今は何なのだろう。

 心も冷め、身体も冷たく、残った小さな人らしさでどうしろと? そんなものより武器を持てと言われてきた私に、今更どんな熱を持てというのか。

 

 怒っているのとは違う、分からないだけ。

 

「手先、冷えるの?」

「…………ん。そうだな、外にいると指が動かなくて困るが――――――!?」

 

 指先第一関節の人肌に思わず目を見開いてしまう。

 気づけば手を当てられていた。私とは似ても似つかない、僅かに節くれだった一回り大きな手。

 

 ヤヒトの顔を見るが、にやりと口元を吊り上げている。この男…………。

 

「俺の手なんか結構温かいって評判でさぁ、レッドとか外回り終わると俺の手に飛びついてくるんだよな。どう、温かいの?」

 

 いや、そういうことではない。口元が滑るだけで言葉は出てこなかった。

 

 温かい。それは認めよう、レッドとやらがどんな生命体かは知らないが寒い時期なら飛びつきたくもなるかもしれない。

 だが私は違う。

 

「は、離してくれ。人が近いのは苦手だ」

「え? はぁ…………でも自分から俺の所来たじゃん」

「……!? いや、それは違う。違うぞ」

 

 私は夜中に食堂から物音がするから覗いただけの話であって、別にそれ以上の意味はない。

 偶々そこにヤヒトが居たから何事かと話を聞きに来たのは確かだが、だからと変に距離を詰めようとしたりしたわけではない。仕事上のコミュニケーションに支障をきたさないことも仕事の内だとドーベルマンも言っていた。

 

 待て。何で私はこんなに頭の中で言い訳してるんだ、別に直接言うわけでもあるまいに。まるで図星みたいだろう。

 

「…………どうしたんだ? 急に小さくなっちまって」

 

 覗き込んできた。

 耳元で声が聞こえて背筋がぞわりとする、いつもとも違う温かな何かが這う感触。押し当てられた肩は自分とは比べ物にならない体格を否応なく理解させられる。

 

 何でだ。いつもなら嫌だとはっきり言えるところだ、私はそこで一々言葉を取り繕うような振る舞い方をしてきたか? 

 していないはずだ。それで冷たい奴だと言われてきたことも有ったし、それでも私は何も改めてこなかったはずじゃないか。

 

 何で突き放せないんだ。

 ちょっとだけ良いかもしれないなんて、そんな。変だ。強がれない、いつもどおりの声が出ない。

 

「何でもない…………ともかく少し離れてくれないか。お願いだ……」

 

 慌てたように距離を取られる。何だか凄く、気分が良くない動きだ。

 

「悪い。嫌ならしょうがないな、次からはしないように気をつける」

「別に嫌なんじゃなくて……いや…………何でもない」

 

 そこまで気を遣わなくていい、そんな言葉が喉元までやって来ていた。自分で辞めてくれといったくせに一体どういう了見だ。

 しどろもどろになってしまう私を見て何を感じ取ったのか、ヤヒトがまた違う方面で慌て始める。忙しい男だ。

 

「どうした、まさか夜中にカップ麺なんか食わせるから体調崩したか!?」

「その、仮にも医者がそんなありえない想定をするものか…………?」

「まさかってのもあるだろ、デコ出しなさいデコ」

 

 詰め寄ってきたかと思うと額に手を当てられる。熱い、目を合わせられなくなる。

 間延びした声を出しながら自分の額と温度を比べて唸る。

 

「むしろ冷えてね…………? ちゃんと温かくして寝るんだぞ、風邪引いたら事だし」

「分かったから至近距離に来るんじゃないっ!」

 

 

 

 

 

 

 

「お前は女との距離感サイアクだからな…………そのフロストリーフ?ってやつも不憫なもんだ、後で謝っとけ」

「俺は何が悪いのかさっぱり分かってないんですが? 謝る意味なくね?」

 

 悪いと思ってないことを謝ってどうするんだという話だ。ズィマーも確かにそうかもしれん、と言わんばかりの顔をしている。

 結局怒られが発生してフロストリーフに逃げられてしまったというのが事の顛末であるわけだが、ズィマーには随分呆れられた。

 

 というかコイツ面倒見いいよな、俺も気づいたらこんな他愛ない話振っちゃってるし。

 

「敢えて言うなら女に不躾に触ったり近寄り過ぎるな。お前は確かに気がないし、見りゃ分かるって言えばそうだが、だからって許される理由にならねえぞ」

「うーん…………そりゃそうだよな。何ぶん女と縁遠かったもんでよ」

 

 ズィマーが首をかしげる。

 

「お前…………記憶喪失なんだろ?」

「…………ってアーミヤも言ってたんだよな~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!! いや~記憶喪失前から出来ないことが今サラッとできるってことはね~だろうな~~~~~~~~~!!!!!!!!」

 

 あっぶね!? そう言えば俺は一応記憶喪失という体でしたね!?

 かなり怪しんでいるのか、腕を組んで俺にすげえ目つきの悪い顔を向けてきているがあくまでシラを切り通す。

 

 事実かどうかはともかく、話もそこそこデリケートだと理解してくれているからか追求はする気がなさそうだった。静かな溜息が俺の心に突き刺さる。

 ちゃうねん、ちゃうねんなマジで。

 

「まあちょっと隠し事が有ってもどうこう言いやしねえ。ただ、不用心に親身になるのは毒ってもんだぞ」

「…………分かってるよ」

「分かっててもアタシが言うことに意味があるんだ、黙って聞けよヤブ医者」

 

 毎度思うがヤブ医者は酷いと思う、実際今はヤブ医者だけど。

 

「少年兵ってやつがどんな扱いなのか、アタシは正直わからねえ。ただ学校行ってるよりはずっと碌でもない事を強要されてんのは間違いねえし、それに耐える為に…………っと。言い方が悪い、”慣れる為に”だな。まあ中身も多少は歪んじまう」

「不用意に優しくするな。お前には辛そうに見えるかもしれないが、一生懸命やってんだからそっとしてやれ」

「お前が頼るに値すると思われてんなら、きっちりアッチから言葉が来る。それに答えてやりゃあ十分だろ」

 

 要するに要らぬお節介は何処まで行こうが要らぬお節介だから辞めておけ。そんな言葉だった。

 言いたいことも理解してる、俺が元から分かっててやってしまっていることもズィマーは知っているだろう。

 

 こういうのは俺じゃなくて、第三者が言うのが大事なんだ。そういう話。

 助かるのはズィマーはそれをズバズバ言うし、そして切り替えもスッキリ出来てしまうという所。俺より年下の女の子ではあるが、情けなくも頼りにしてしまっていたりする。

 

「後なぁ、ちゃんと飯を食え。そんなにアタシの不味い料理が食いたいかよ」

「んなこと言いつつ割と美味い流れじゃん。頼むわ」

 

 ズィマーの顔がくしゃ、っとなったかと思うと乱暴に頭をかき始める。

 

「そういうとこだぞ」

「どういうとこだよ」

「…………噂をすれば件のやつが来たんじゃねえか?」

 

 腕を組んでわざとらしく俺の後ろの方に首を伸ばして視線を向けるズィマー。

 ごった返す食堂の入り口から確かにあの子がやってきた。つけていたヘッドフォンは首にかけていて、いやしかしこんな朝っぱらからどんな音楽を聞いていたのかはちょっと聞いてみたい。

 

 どうでも良い質問について考え込んでいると、ズィマーに机をとんとん叩かれる。

 

「行ってきてやれ。新入りだし、何よりアイツの所属してたらしい傭兵組織は衣食住の環境がかなり怪しいらしい。食堂のシステムも分かってねえかもしれねえぞ」

 

 気が利かねえ男だ、と頬杖をつくなり溜息をつかれた。俺に相当ご立腹らしい。

 

「とは言うものの教えてくれる辺り、ズィマーも面倒見が良いよな」

「あんまり役に立たねえとお前の立ち位置も分捕るからな、早く行け」

 

 軽く礼を言って席を立つ。曰く、”お前のそういう所が嫌い”らしい。

 個人としては敵に塩を送るスタンスのほうがよっぽど不可解で面白いが、ズィマーにとっては俺のほうが変なものに見えてるようだ。

 

 うろうろーっと緩慢な動作で見渡すフロストリーフの目の前まで歩いた。

 

「おはよう」

「ん。ドクター、此処ではどうやって配給を貰っているんだ」

 

 確かにズィマーの予想は当たりだった。いや全く、ガサツなように見えてあの子にはかなわん。

 

「メニュー含めて案内するか。ドーベルマンも言っといてやれよな…………」

「私が手持ちの携帯食で昨日は済ませてしまった。恐らくそのせいだから、彼女を責めても仕方ない」

 

 携帯食ねえ、黙々と齧る様子を想像すると何だか小動物のような絵面を思いついた。見てみたかった気もする。

 

「カップ麺もあるにはあるぞ、まあ猫舌には厳しいか」

「猫舌じゃない」

 

 昨日めっちゃフーフーしながら食ってたけどな。相当筋金入りらしく、スープはすごくチビチビ飲んでた。

 突き放すような感じがある割にそういうところだけ子供っぽくて笑えてしまう。

 

「そうか。取り敢えず行こう」

 

 先導する俺に黙って付いてきた彼女の瞳は、昨日よりちょっとだけキラキラしていたような気がする。思い込みだろうか。




そう言えば二話でドクターと喋ってた女学生がズィマーだって気づいてた人いるんですかね? 服装と口調で好きな人は分かるんだろうか、私はギリギリモブじゃない扱いで出して今更回収したというのが本音だったりするんだけども。

ガチ恋距離に弱すぎるフロストリーフいいぞ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!
でも特に恋愛要素を押し出す予定はないです(矛盾)。そういうのじゃないよね彼女の扱い方って。
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