#1 転入しました
キーン……コーン……カーン……コーン……
登校時間が終わる合図のチャイムが鳴る。今日は4月2日、ここ『
聖スカーレット学園は小中高一貫校。中等部、高等部からの途中入学も受け入れている。
今日は何故だか、中等部の、2年生のとあるクラスが騒がしい。
「なぁなぁ、霊夢!聞いたか!?あの話!」
「何よ……そんな騒ぎ立てるような話、あった?」
「転校生だよ、転校生!このクラスに!」
「ふーん……え?こんな時期に?」
どうやら、転校生がやってくるらしい。だが、市外などからやってくる大抵の生徒は、中学1年か高校1年で来るのが普通……。
「みんなー、席につけー」
「今年度、君たちの担任を務める『上白沢 慧音』だ。よろしく」
「げっ、上白沢って言ったら……」
「しーっ、聞こえるでしょ」
「突然だが、ここで皆に転校生を紹介する」
ガラガラガラ
『わー、可愛い……』
『すごい美人……』
肩につかない程度にカットされた髪と、薄い輝く色の瞳を持つ少女が、どこかふらふらしている足取りで教室に入ってきた。
適当なチョークで、黒板にカリカリと名前を書く。
「
パチパチパチ……。
「篝火の席は……「こっちだぜ!」……霧雨の後ろが空いているな」
──
私は篝火美嵩、今日から聖スカーレット学園に通うこととなった中学2年生である。
担任の上白沢先生と、金髪で制服の上にパーカーを羽織った少女……霧雨というらしい、に案内されて席に着いた。
……金髪?そんな髪色は、前までいた街ではあり得なかったような……。
担任の上白沢先生も、まだそこまで歳をとっていないようなのに、白みの強い銀の髪を持っている。
霧雨の隣の生徒は、ごく普通の黒く、丁寧に手入れされた長い髪を持っている。その髪をハーフアップにして、結び目に大きな赤いリボンを結んでいるのは、少し変わっていると言えるか……?
「何ぼーっとしてるんだ?あっ、私は霧雨マリサ、普通の女子中学生だぜ」
隣の席の少女も、普通の黒い髪である。
「おーい?」
「霧雨」
「あっはい」
窓際なせいか、肌がジリジリと痛くなってくる。
キーンコーンカーンコーン
「あっ、始業式のチャイムよ」
ワイワイガヤガヤ
赤いリボンの生徒……博麗霊夢というらしい、に連れられて、文化ホールのような場所へとたどり着いた。
座席が階段状になっている。入念に掃除されているようで、道には埃も紙くずもない。
学校名の『聖』でだいたい察していたが、やっぱりここはお嬢様学校である。
周りの生徒も、医者の娘とか重役の娘とか、代々継がれてきた名家の娘とかに見えてきた。
私が座ったのはステージと同じような高さにある、真ん中の席。マリサと霊夢の提案によって決められた。
下手したら話している人と目が合いそう……。
「起立。修礼」
「聖スカーレット学園第1学期始業式を始めます」
まずは校歌斉唱。……歌詞知らないから黙っていよう。
「理事長の言葉」
初等部も、中等部も、高等部も、今日は1年生がいない。全員、明日の入学式から登校することになっているから。内部進学の生徒はわざわざ入学式する必要ないと思うけど……。
「私がこの学校の理事長を務める『ホルスト・バリッシュ・スカーレット』。今年度より転入してきた生徒には、是非覚えていただきたい」
うーん……ん?スカーレット?
スカーレットって……紅魔財閥の……。
新聞とかテレビとかでは聞いたことあったけど、顔を見るのは初めて。まさか、学校も運営しているだなんて……。パンフレットに書いてあったっけそんなこと……。
「学園長の言葉」
次の瞬間、目を見張った。
「え〜、聖スカーレット学園、学園長を務める『八雲 紫』よ〜。転入生の子たちは
「……う、嘘……」
「どうした?ミカサ……」
丁度目が合う位置にいる私に気づいた学園長……いや、八雲さん……。軽くウィンクをして、すぐに手元の文面を見ながら話し始めた。
八雲紫は、私……の母親の学生時代からの友人である。今も時折会ってお茶会をするほど。
小学生の時は、毎回一緒について来させられていた。あちらの娘も同様に。あちらの娘と言えば……『八雲 藍』。
このホールに来るまでの間、霊夢さんが『どうせなら藍先生が良かったわ……上白沢先生でも、マリサの暴走を止められるならいいんだけど……』と言っていたから、多分絶対この学校の教師をしている!
あぁ、会いたくないな……A組だけ藍先生の教科なければいいのに……。
「起立。修礼」
「5分後より、着任式へ移ります」
どうせ知り合いなんていないはずだし……いたら怖い。抜け出そう。
「どこか行くのか?」
「ちょっとトイレ……」
ギィィィィィ……と気味の悪い音を奏でて開いた扉を音が出ないように閉め、走らないようにしながら玄関を出た。
適当にウロウロしよう……警備員とかいたら捕まるかもしれないけど。
それにしても、この学校は大きい。
正門を通ってまっすぐ前には総合管理棟、左には文化部棟、右には運動部棟があり、右端には中等部、左端には初等部、中等部の奥には高等部。さっきまでいたホールは文化部棟の真ん前。まだ見ていないが、多分総合管理棟の奥にはグラウンドがあるはず。
体育館は初等部の奥、裏にある。
他にも、スケートリンクにカーリング場、陶芸室、木工室、大規模実験室などの建物が至る所に設置されている。……らしい。パンフレットにはそう書いてあったけど……。
あっ、ホールから人が出てきた。もうそろそろ教室に帰らなきゃ。……誰にも見られないうちに。
「なんで帰って来なかったんだ!?なぁ!!」
「ちょっ……マリサ……くるふぃ……」
はい、帰って早々首絞められてしまいました。いや痛い痛い痛い!セーラーだから痛みがダイレクトに伝わってくるの!というか会ったばかりの人だよ!?どんだけ怒ってんの!?
「だって、着任式とかめんどくさいし!」
「おいそこ、席につけ」
「……はい」
「ゼェ……ハァ……」
「篝火は放課後、職員室に来るように。あと霧雨も」
キーン……コーン……カーン……コーン……。
3時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。今日は始業式だから、これで今日の授業……と呼べるのかは微妙だが……は、終わった。
だがしかし、まだ地獄が待ち受けている。
「────────!」
ヅドーン!
「……」
はい、頭突きされました。諭されるかと思ったらまさかの物理攻撃。泣きそう。声も出せない衝撃って……。
頭突きされる前になんか言ってた気がするけど、緊張で聞こえなかった……。
続く
「おぉ、おろかおろか」と言われるような主人公にしたい