誤字報告、感想ありがとうございます。
シリアスくんの最後の雄姿を、どうぞご覧ください。
「そう、やっぱり貴女は、自分から危険に飛び込んでしまうのね」
悲しげな声が聞こえる。
瞼が重い。鉛の様だ。
それでも、その悲しげな声の主を見つけたくて瞼を持ち上げようとするけれど、誰かの手によって遮られてしまった。
声の主の手なのだろうか。ひんやりとしたその手の平は気持ちよくて、それでいて泣きたくなるくらいに懐かしい。
分からない。分かれない。でも、私はこの人を知っている。
不思議な時間が流れる中、懐かしい声はしゃべり続けた。
「いつだってそうだった。私のため、民のためと言って、貴女は常に誰かのために動いていた。貴女の願いを叶えるためとはいえ、その根幹も結局は他人のため。……私は、それが嫌だった。嫌だったんだよ」
頭を撫でられる。
優しいその手つきには、まるで母親のような慈愛が満ちていた。
身体から力が抜けてしまう。
頭の奥が痺れるように、思考が纏まらなくなっていく。
ぼんやりとした頭の中を、とりとめのない思考が川の流れのように急速に流れていく。
ああ、私はこのまま眠ろうとしているのだと、本能的に察知した。
「その結果が
頬に、雫が落ちる感触がした。
泣いているのだろうか。
だとしたら……それは、嫌だ。
「貴女と私が出会わなければよかった。そうすれば、貴女が私の『薪』になることもなかった。でも、駄目だよ……もう私は、貴女が隣にいない世界なんて考えられない」
がち、がち、と時計の針が巡る音がする。
がち、がち、がち。
でも、その音は掠れていて、まるで壊れかけた時計を無理くりに動かしているような印象を受けた。
手を伸ばそうとしても、体は動かない。……いや、視界が塞がれている今、私には本当に体があるのかも怪しい。そんな感覚に陥っていた。
「もう死なないで。無事でいて。貴女が元気に笑ってくれれば、私はそれだけでまだ頑張れる。約束のために、まだ進めるから」
五感がざあっと遠ざかる。
もう音が聞こえているのか、私の幻聴なのかも分からない。
それでも、このまま終わっていいはずがないと、私は回らない頭で考えた。
だから、必死に顔を動かして笑って見せた。
たぶん、口元しか見えていないと思うけど。
今の私には、こんなことしかできないから。
「……だい、じょうぶ」
もう、失敗しない。
貴女を泣かせたりなんか、するもんか。
「だから……待ってて」
懐かしいとは少し違う感覚。
けれど、泣きそうなまでに鮮烈なその感覚は、覚えている。
絶対に、忘れない。
「もう一度、いっしょ、に……」
意識が薄れる。もう限界だ。
でも、もう少しだけ。
全身全霊で、目を開く。少ししか持ち上がらない瞼だったけれど、手が外されたおかげで相手の姿を確認することが出来た。
新雪のように真っ白な髪。その顔を彩るのは、宝石よりも鮮やかな紅の瞳。
きらきらと輝く涙を湛えたその瞳は驚愕を宿し、そこには大人と子供の中間のような、少しだけ子供じみた私の顔が映っていて。
神性を宿したその
「一緒に、ごはん、食べよう─────」
「─────雛ちゃん」
そして、私の意識は途切れた。
瑠璃色の瞳が開いた。
視界に映るのは、見慣れない、そして知らない天井。
何か夢を見ていた気がする。けれど、その記憶は霞のように薄れてどこかへと消えてしまう。後に残ったのは、ただ何かを約束したような気がする、という曖昧な印象のみ。
ここはどこだろうか。
過去の記憶を漁ってみるものの、直近の記憶があやふやで、ただ腹に凄まじい熱を感じたような感触だけが嫌に残っていた。
リリアは自分の腹に触れてみたものの、そこには傷跡一つ無い真っ白な肌があるだけだった。
……うん、腹?
お腹に手を当てた状態でこてん、と小首をかしげるリリア。腹筋に力を入れ、足を振り上げ勢いをつけてから起き上がると、彼女の肩からするりと真っ白なシーツが滑り落ちた。
シーツの感触がやけに鮮明に伝わる。くすぐったさに身をよじったリリアは、そこで自らの格好を認識した。
全裸であった。
一糸纏わぬ生まれたままの姿。採光のために天井に設けられた天窓から差し込む光を、蒼銀の髪が反射してきらきらと光っていた。
「な……なぜ!?」
「あ、起きましたか!良かったぁ……」
くわっ、と目を見開いて驚愕するすっぽんぽん。そんな彼女の声が聞こえたのか、リリアが横たわっていた寝台がある部屋の隣から、扉を開けて一人の少女が入ってきた。
年頃は千恵と同じくらいか。美しい髪は編み込まれる事無く流されており、少女の自信を窺わせる。顔立ちはヒューマンとしては最高峰と言えるほどに整っており、見目麗しいものに目がない神々からの求婚が絶えないであろう美しさだ。
驚きを露わにする全裸を見て、何故か涙目になった少女にリリアは見覚えがあった。より具体的に言えば、彼女が覚えている最新の記憶から一日ほど前に出会ったことのある少女であった。
「えっと……ヘルン、さん?」
「はい、ヘルンです。状況を説明しておきますと、ここは私たち【フレイヤ・ファミリア】の
「重傷……え、オッタルさんがここまで?」
「はい。フレイヤ様のご指示で」
「女神さまの……」
呆然とした表情でヘルンの言葉を繰り返すリリア。
いったいどうしてそのような事態になっているのか分からないリリアは、ヘルンが入ってきた扉から現れた人物を見て次こそ状況の理解を手放した。
「リリアちゃんが目覚めたって、本当ですか!?」
「えっ、千穂ちゃん!!?」
「良かった……!!」
「ぎゃあああ」
リリア達がいる部屋に息を切らして入ってきたのは、【ニニギ・ファミリア】団員のはずの千穂であった。全裸で自分を見つめるリリアに気が付いた千穂は、その瞳に涙を浮かべるとリリアに全力で抱きつきにかかった。
幼子とはいえ、その身に
そんなリリアの様子に気づいた様子のない千穂に、ヘルンは慌てて声をかける。
「ち、千穂さん、落ち着いてください!リリアさんがその、今にも気絶しそうな……」
「……きゅう……」
「り、リリアちゃーん!!?」
再び夢の世界へと旅立ったリリアに、焦る千穂。
『戦いの野』の診療室は、瞬く間に
「はい、リリアちゃん。あーん」
「ぬん、千穂ちゃん、私、一人で食べれる……」
「あーん」
「……あ、あーん……」
数分後。
再度目が覚めたリリアは、ヘルンによって用意された衣装に着替え、千穂が厨房を借りて作ったという卵雑炊を手ずから食べさせられていた。
ニコニコ笑顔で匙をリリアの口に近づける千穂の圧力に屈し、大人しく口を開けるリリア。一体どうしてここにと質問する暇もなく、千穂は雛鳥に餌を与える親鳥の如くせっせと世話を焼く。
仕方がない、久しぶりの千穂の手作りご飯だ、大人しく食べよう。
諦めたリリアは口の中に差し込まれた匙をはむっ、と咥え、卵雑炊を味わう。
「どう、リリアちゃん?」
「ん、おいしい」
「よかった!」
リリアの返答に笑顔を見せる千穂。うお眩しっ、とその笑顔の輝きに目を細めたリリアは、もぐもぐと口を動かして誤魔化すように食事を進める。
お邪魔虫は退散しますね、とばかりに診療室から出ていったヘルンが言う事には、リリアは
自分が襲われたということは、他の異端児も襲われたということ。そのことを聞きたい衝動にかられたものの、
状況が気になりはするものの、リリアの頭の中は徐々に口に運ばれる卵雑炊の事でいっぱいになっていった。
回復したてのリリアの事を考えてか、消化に良い雑炊として運ばれてきた米は丁寧に取られた出汁を吸い込み、その旨味をリリアに伝えてくれる。
鶏ガラをベースにしているのだろうか。いつもとはまた一味違った風味を持つ出汁は、あっさりとしておりながら深い旨味を内包しており、水分を含んだことで柔らかく、また甘みを増した米との見事なハーモニーを奏でている。
その調和を下から支えているのが、ふわふわとした触感の溶き卵だ。
料理上手な千穂の手によってきれいに流し入れられた溶き卵は、その触感をまるで絹のように滑らかなものへと変貌させていた。舌で押し切れる程に柔らかいその卵は米と出汁の味を邪魔することなく、しかし彼らの主張をある程度中和してまとめ上げる
卵と米と出汁。
おにぎりと同じく素材の少ない単純な料理ではあるが、だからこそ料理を作る者の腕の差が顕著に表れるといってもよい。
千穂の作った卵雑炊は、若干薄味ではあるものの、薄味であるからこその優しい味と思いに包まれている。
はむはむと餌を与えられる雛鳥の如く千穂から雑炊を食べさせられるリリア。いつしかその表情は柔らかくなり、他派閥の拠点内でありながらすっかりリラックスしてしまっていた。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした。……食器洗って返してくるから、そこで大人しく待っててね」
「はーい」
千穂の言葉に手をあげて返事をするリリア。何か違和感を覚えるものの、それももうどうでもよくなっていた。ぱたんと音を立ててしまった扉を見つめ、寝台の上に無造作に倒れ込むリリア。
幼い体を柔らかく受け止める寝台の感触に、うとうととし始める。
もう一度寝てしまおうか、ヘルンさんもゆっくり休んでと言ってたし。
そう考えながら瞼を閉じたり開いたりと繰り返すリリア。ぼうっとした意識の中で、千穂が部屋に入ってきた気配を感じた。診療室の中は静かで、ただリリアに注がれる日差しの温かさだけが気持ちよい。
くす、とほほ笑む吐息が聞こえ、頭をゆっくりと撫でられた。その手つきに懐かしいものを感じながら、リリアは眠りに落ちようとして─────
「……いや、なんで千穂ちゃんがここにいるのぉ!?」
「ひやぁ!?」
寸前で正気に戻った。
「おお、目覚めたかリリア。心配したぞ」
「うわああああん、リリアちゃん、良かった良かった!!」
「んむぎゅ」
「おい、千恵、リリアが潰れてる」
「はぁ……なんでお前はいつもこう、やることなすこと全部大事なんだ……」
再び診療室を訪れたヘルンと共に部屋を出て、【フレイヤ・ファミリア】の主神であるフレイヤの神室へと向かう。部屋の主の許可を得て入室した部屋には、何故か他派閥の人間であるはずの【ニニギ・ファミリア】の面々が勢ぞろいしていた。
半泣きでリリアに抱きつく千恵と、そんな彼女を諫める伊奈帆。都市最強派閥に保護されていたリリアに苦い表情を隠せない穂高や、素直に安堵の表情を見せるニニギなどいつものメンバーに囲まれ、目を白黒させるリリア。
千恵の抱擁から抜け出した後、どうしてここに、と彼らに疑問をぶつけようとした時、リリアの背後からパンパン、と手を叩く音が聞こえた。
振り向くと、そこには銀の髪を無造作に流す『美の化身』がいた。
下界に生きるどの美術家であれ再現することは不可能な、恐ろしいほどに整った相貌に浮かぶのは、無邪気かつ嗜虐的な笑み。無造作に流された銀髪がその体にまとわりつくものの、それすらも彼女のだらしなさではなく美しさを際立たせる装飾となる。
その身に纏う黒いドレスは、彼女の司る愛と情欲を示すかのように蠱惑的な魅力を周囲に振りまいていた。
美神、フレイヤ。
天界において最も美しいと言われる美の神の筆頭であり、全てを茶番に変えることのできるほどの魔性の「美」を持つ
その証拠に、彼女の姿を視界に入れた伊奈帆や穂高、同性である千恵までもがその美しさに生唾を飲み込み、立ち竦んでしまっていた。
「無事に回復できたみたいで何よりだわ、リリア」
「ありがとうございます、女神様」
「あら、お礼はヘルンとオッタルに言って頂戴。私はただあの子たちにお願いしただけ。助けたのはあくまでもあの子たち、よ」
「はい、分かりました」
しかし、そんなむせ返るほどの「美」にも一切動じない馬鹿が一人。
笑顔でフレイヤにお礼を述べたリリアは、彼女の言葉に頷くと後でお礼を述べることを心のメモ帳に書き込んだ。なお、このメモ帳は米を見るたびにちょくちょく紛失する。
リリアの返事に気をよくしたのか、満足げに頷いたフレイヤは、続いてリリアの隣で身を固くしている千穂へとその銀の視線を降らせた。
遠慮というものを知らない容赦のないその視線に、千穂は居心地が悪そうに身じろぎする。
自身の美に魅了された様子を見せないその行動に面白そうな表情を浮かべたフレイヤは、表面上柔らかく見えるほほえみを浮かべながら、千穂へと話しかけた。
「それで、貴女は満足?……びっくりしちゃったわ、誰にも伝えてないし、漏れるはずのない
「うっ、そ、それは……」
「ふふ、別に怒ってはいないわ。貴女の行動は全て彼女を思っての事ですもの。愛でこそすれ、大人げなく叱責することはないわ」
「……ありがとう、ございます」
フレイヤの微笑みに、引き攣った笑いを浮かべる千穂。
虫の知らせと言うほかない感覚に後押しされ、居ても立ってもいられずに『
直後に彼女を追ってきた【ニニギ・ファミリア】の団員や主神もまとめて自陣内へと招き入れるその大胆な行動は、都市最強の名を冠する
獲物を前にした蛇のような光を宿す瞳に見つめられ、冷や汗を流す千穂。そんな彼女を庇うように前に出たリリアは、フレイヤに気になっていたことを質問することにした。
「あの、女神様。今、この街で何が起こっているんですか?」
「……それは、どちらの事を聞きたいのかしら。地上の事?それとも……」
彼女の答えに微笑みを返したフレイヤは、質問に応えるべく口を開く。
「現在、オラリオには『武装したモンスター』と呼ばれている
「……っ、それって……!」
「はじめは
「そんな、それじゃあ……!」
「安心して。まだ彼らは全滅してはいないわ」
「え……?」
女神の言葉に翻弄されるリリア。そんな幼子の様子を、笑みを浮かべて見守るフレイヤは、可愛らしいものを見る目で話を続ける。
「黒い
「モーさんが……じゃ、じゃあ、モーさんは、アステリオスは……!?」
「さぁ?【
「腕を……そんな」
「そのことについて、補足だ」
愕然とした様子を見せるリリアに、後ろからニニギが声をかけた。振り向いたリリアの目に飛び込んできたのは、男神が手に持っている一つの水晶玉。
独特の色合いを放つそれは、元賢者の生み出した叡智の結晶、
「ニニギ様、それは!」
「異端児たちとは連絡を取った。あの骸骨をはじめ、異端児側に欠員は無し。アステリオスも逃げおおせたようでな、後はお前の回復待ちだったという」
「……よ、よかった」
「あら、私の前でその話をしてもよかったの?」
「……お前には隠し事をしても無駄だと悟った。それに、お前はリリアが悲しむことはしないであろう?」
「……不本意だけど、その通りね」
ニニギの言葉に、不承不承と言った様子で頷くフレイヤ。実際、リリアに付けた目印のおかげで、彼女を取り巻く事情や都市の創設神であるウラノスの秘事も大体把握できている。
迷宮都市を、そして冒険者の在り方を揺るがしかねないその存在を知り、なお眷属を使って滅ぼさないのは、ひとえにそれが自らを蝕む退屈の毒を殺せそうであること、そして
自らの行動原理を、会って間もない
和やかな空気がフレイヤの神室に流れる。
仲間の無事を確認できたリリアは胸を撫で下ろし、今はただ純粋に
『グオオオオォォォォォ──────────』
『アアアアアァァァァァ──────────』
恐ろしい怪物の咆哮が都市に木霊する、その時までは。
時が止まる。
短い間ではあったが、密度の濃い付き合いを続けていたリリアは分かった。
あの叫び声は、ただの怪物なんかではない。
あの叫び声の主は─────他でもない
「……ニニギ様」
「……なんだ、リリア?」
リリアは自らの主神を仰ぎ見た。彼女が信仰する主神は慈悲深く、自らの眷属に向けられるその瞳には優しい光が宿っている。─────
リリアの背筋が凍る。
短い付き合いではあるが、派閥の仲間として、血を受けた眷属として理解した。
彼は、ニニギは─────
「
「ああ、無事だ。……無事に【ロキ・ファミリア】の団員達から逃げおおせ、現在迷宮に帰還するために彼らと戦っている」
「ッ、どうして!!?」
叫ぶ。
目を見開き、信じられないという心情を痛いほどに宿した瞳で主神に問いかける。何故、どうして─────幼い眷属からの糾弾に、彼の神は眉一つ動かすことなく返答した。
自らの眷属に対する慈悲に溢れ、かつ他の者には情け容赦の無い『戦の神』としての側面を見せながら。
「彼らにお前を預けたのは、彼らがお前を外敵の危険から守り抜くと誓ったからだ」
「そ、れは」
「今回の件でお前は死にかけ、かつあの異形どもは暴走し街に混乱をもたらした。
「でも!!それは、仲間が傷つけられたから!!」
「仲間のため。ご立派な志なことだ。……それで、彼らは自分の首を絞めたのだがな」
「っ、うっ」
「今回の事態は防ごうと思えば防げたはずだ。不測の事態が起ころうとも対処できるだけの戦力、想定、装備や道具の準備。お前を傷つけないためのそれらを行って初めて彼らはお前を預かる準備ができたと言えた。それが出来るはずの力が彼らにはあった。……だが、リリア、現にお前は傷ついた」
いっそ冷酷なまでに異端児を切り捨てる理論を述べるニニギ。リリアはそれに対し反論しようとするが、余りにも隙が無いその正論に全ての反論を封殺される。
今、この瞬間。
リリアは選択の時を迫られていた。
「お前が精霊の力を振るって助けるか?ああ、出来るだろう、出来るだろうさ。そうあれかしと願われ、
突然転がり込んだ自分を受け入れてくれた
千穂を見る。
泣きそうな顔でリリアを見つめ返す彼女の手は、小刻みに震えていた。
「お前が派閥を抜けると言っても無駄だ。関係が疑われた時点でもうこの都市に我々の居場所はなくなる。お前は知らないだろうが、現在【ヘスティア・ファミリア】が陥っている状況がそれだ。……勘違いはしないでほしい。私も伊奈帆達も、悪として世間から扱われるのには
短い間とはいえ、共に過ごし強い絆を育んだ
ニニギが最後の通告を告げる。
その瞳に甘さは無い。その声に慈悲は無い。
ただ厳格に、選んだ先を教えた後に、一人の眷属の決断を迫った。
「選べ、リリア。……家族か、怪物か」
「……私は」
声が震える。
背後にいる女神は何も喋らない。
ただ、目の前の幼子が下すであろう決断を、無邪気な笑みを浮かべて、銀の瞳を輝かせながら見守っていた。
既に自らが蒔いた「種」と交わり、これから始まるであろう、退屈を殺す最高の「喜劇」に心を震わせながら。
「私は─────ッ!!!」
そして。
悩みぬいた末に幼子が至った結論は。
「っ、ふふふ!!いいわ、面白そうじゃない!!」
「……やはり、
銀の女神を愉しませ。
男神に諦めの表情を浮かばせた。
「伊奈帆、穂高、千恵。
「「「了解」」」
「ええ、別に構わないわ。ただ、少しでも私や私の
「思ってもいないことをよく言う。安心しろ、お前たちに害はない」
幼子たちは手を取りあう。
そこに正義は無い。そこに道理は無い。
ただあるのは、子供じみた我儘のみ。
「リリア、主神である私の前で大見得を切ったんだ、結果は出せ」
「……はい、ニニギ様!!」
「澄ました顔をした
神の号令が下る。
こうして、常識人(神)全ての胃を破壊する存在が、迷宮都市に降臨した。
※大精霊たちは創設神の下にカチコミに行っています。
次回「『神伐兵器』」
異端児騒動終息後、最初のお話
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闇鍋(表)
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闇鍋(裏)
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稲作戦隊米レンジャー
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鰻のかば焼き
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和製びーふしちゅー