Fate 二次創作 臨終編 終了
後
聖杯と呼ばれる魔力の塊と俺の令呪がつながってから数分、魔力はなおも令呪へと流れ続けている。いつまで待てばいいのだろう。魔力は聖杯、令呪、俺という経路で伝わるのだろうか。それにしては俺にはまだ少しの魔力も供給されていない。少し心配になって来た。
俺の心配をよそに、大量の魔力が俺の方まで流れ込んでくる。俺一人の人生では到達できないほどの魔力を必要とする術式だが、じきに魔力で満たされるだろう。
落ち着こうとして、呼吸を整えている間に必要な魔力が集まった。聖杯には魔力がまだ残っているが、……まあ留あたりが何とかするだろう。後のことは俺の知ったことじゃない。それよりも最終確認だ。術式が遠く離れた地にいる兄とつながっていることを確かめる。……問題ない。後は使うだけ。
俺は自身の魔術回路に魔力を流し込んだ。その魔力の奔流は、俺の魔術回路を通過して、俺が大切に準備していた術式を食い破るように通過した。ちょっと待て!何が起こった!失敗?
異常事態に俺の頭に様々な考えが浮かんだが、それを眼球の奥の痛みが塗りつぶす。何が起こったのかもわからないまま、俺が集めた魔力は右の手のひらに集まって、俺から生れ落ちるかのように一つの姿をとった。
俺の右手からしみだすように出現したのは、その姿は、見覚えがある。
「ナイス!到くん。あなたのおかげでこんなに早く戻ってこれたわ」
少し前に死んだはずの吸血鬼、隼が目の前に出現した。意味が分からない。それよりも目の奥が痛い。膨大な魔力を無理やり流したためか、俺の魔術回路が焼き付いていて、魔力と触れ合ってざらついて気持ち悪い。吐きそうだ
「早速なんだけど、一緒に行くぞ!到くん」
ぐったりした俺を肩に担いで、隼が扉を蹴り破って廊下に出る。隼は屋敷に仕掛けられた罠をものともせず進んでいく。それはどうでもいい。もうどうでもいい。
だめだ。泣くな。…………でも、……もう……。涙が止まらない。
俺は、こんな……ところで。目前で、……本当に指かけたところで、失敗したんだ。
兄の期待を裏切ったんだ。
あふれ出た涙は止まってくれない。
視界に広がる青空が少しづつぼやけていった。
「到様!」
声が聞こえた。その声も薄れていく。
もうどうすればいいんだ。もうどうでもいい。
………
変哲もない駅近くの貸し会議室の中。長机を囲むように人が座っている。作業着の男、つまらなそうにコーヒーが入ったペットボトルを空中に浮かべている少女、落ち着きのない少年、鼻が長い天狗のような面をつけた有翼の異形、長い黒髪を後ろでまとめた陰気な女性、怪しげな五名だ。
新たに一人、フード付きのコートに身を包んだ女性が入って来た。座っていた人々の視線を受けて口を開く。
「それでは吸血鬼に攫われた建持到くんの奪還について話をしましょうか」